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第50話・並んで立つキッチン
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キッチンに荷物を運び込むと、琴葉は目を輝かせた。
「わたしもお手伝いしたい!」
その勢いに、奏一は小さく目を細める。
「……では、こちらをどうぞ」
穏やかな声とともに差し出されたのは、エプロンだった。
「わぁ……!」
受け取った瞬間、胸がどきんと高鳴る。
普段なら料理なんてしない。
けれど――奏一と並んでキッチンに立つ、それだけで特別なことをしている気分になれた。
「ではまず、レタスをちぎっていただけますか」
「はーい!」
ボウルいっぱいに、レタスを手でちぎっていく。
ぱり、と軽い音が心地よくて、なんだかそれだけで楽しくなってくる。
その様子を見て、奏一が微笑んだ。
「はい、とても上手ですね」
「……えへへ」
褒められただけで、胸の奥がじんわり熱くなる。
次に渡されたのは玉ねぎ。
「皮をむいていただけますか」
「うん!」
薄皮が指に貼りつき、思うようにいかなくて、思わず顔をしかめる。
それでもどうにか剥き終え、「できたよ!」と差し出すと、奏一は静かに頷いた。
「ありがとうございます」
「うん!」
誇らしい気持ちが、胸に広がる。
やがて、大きなボウルにひき肉、パン粉、卵、炒めた玉ねぎが用意された。
「では、こちらを混ぜてください」
「えっ、私がやっていいの⁉︎」
「ええ、どうぞ」
恐る恐る右手を突っ込んだ瞬間、冷たくて粘り気のある感触に、思わず声が出る。
「うわぁ……! ぬるってしてる!」
顔をしかめながらも、一生懸命こねる琴葉。
その様子を見て、奏一は小さく笑いながら言った。
「はい、よくできています」
次はいよいよ成形だ。
「じゃあ……丸くして並べればいいんだよね」
バットの上に置かれたハンバーグは――三角、台形、潰れかけた円。
どれもどこか歪で、琴葉は困ったように眉を下げた。
「……なんか、変な形になっちゃう」
助けを求めるように視線を向けると、奏一がすぐ隣に立ち、そっと手を伸ばした。
「少し、貸してください」
大きな手が、琴葉の手の上に重なり、一緒にタネを包み直す。
温もりが伝わるたびに、胸がどきどきと騒ぎだす。
そして歪だった塊は、あっという間に綺麗な楕円へと整えられていった。
「こうすれば崩れにくいですよ」
「……っ」
耳まで熱くなって、顔を上げられない。
ただ教えてくれているだけなのに――
どうしてこんなに心臓がうるさいんだろう。
やがて焼き上がると、香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がった。
テーブルに並んだ湯気立つハンバーグを見て、琴葉は思わず声を弾ませる。
「わぁ……! 本当にハンバーグになってる!」
「ええ。とてもよくできました」
箸を入れると、じゅわっと肉汁が溢れ出す。
一口食べて、思わず頬が緩んだ。
「おいしい……! 初めて作ったのに、すごくおいしい!」
「一緒に作ったから、より美味しいのでしょう」
その穏やかな声に、胸の奥がじんわり満たされていく。
少しぎこちなくて、それでも温かい時間。
恋人になったばかりのふたりにとって、それは甘くて嬉しい夕食だった。
食後、お風呂から上がってソファに座ると、体がぽかぽかして、心地よい眠気が押し寄せて来る。
「……ふあぁ」
小さな欠伸をした瞬間、隣から穏やかな声がした。
「眠そうですね」
「ん……ちょっとだけ、ねむいかも……」
はしゃぎすぎたせいだと分かっていても、目がとろんとしてくるのは止められない。
「無理は禁物です。今日はもう休みましょう」
静かで、けれど有無を言わせない声。
その手に導かれるまま立ち上がり、ふわふわした頭のまま寝室へ向かう。
ベッドに横になると、そっと整えられる気配がして――
次の瞬間、額にやさしい温もりが触れた。
「……おやすみなさい」
心臓が跳ねて、思わず目を開けかける。
けれど、そのまま抗えず、胸に残る鼓動の余韻を抱いたまま、琴葉はすぐに眠りに落ちていった。
「わたしもお手伝いしたい!」
その勢いに、奏一は小さく目を細める。
「……では、こちらをどうぞ」
穏やかな声とともに差し出されたのは、エプロンだった。
「わぁ……!」
受け取った瞬間、胸がどきんと高鳴る。
普段なら料理なんてしない。
けれど――奏一と並んでキッチンに立つ、それだけで特別なことをしている気分になれた。
「ではまず、レタスをちぎっていただけますか」
「はーい!」
ボウルいっぱいに、レタスを手でちぎっていく。
ぱり、と軽い音が心地よくて、なんだかそれだけで楽しくなってくる。
その様子を見て、奏一が微笑んだ。
「はい、とても上手ですね」
「……えへへ」
褒められただけで、胸の奥がじんわり熱くなる。
次に渡されたのは玉ねぎ。
「皮をむいていただけますか」
「うん!」
薄皮が指に貼りつき、思うようにいかなくて、思わず顔をしかめる。
それでもどうにか剥き終え、「できたよ!」と差し出すと、奏一は静かに頷いた。
「ありがとうございます」
「うん!」
誇らしい気持ちが、胸に広がる。
やがて、大きなボウルにひき肉、パン粉、卵、炒めた玉ねぎが用意された。
「では、こちらを混ぜてください」
「えっ、私がやっていいの⁉︎」
「ええ、どうぞ」
恐る恐る右手を突っ込んだ瞬間、冷たくて粘り気のある感触に、思わず声が出る。
「うわぁ……! ぬるってしてる!」
顔をしかめながらも、一生懸命こねる琴葉。
その様子を見て、奏一は小さく笑いながら言った。
「はい、よくできています」
次はいよいよ成形だ。
「じゃあ……丸くして並べればいいんだよね」
バットの上に置かれたハンバーグは――三角、台形、潰れかけた円。
どれもどこか歪で、琴葉は困ったように眉を下げた。
「……なんか、変な形になっちゃう」
助けを求めるように視線を向けると、奏一がすぐ隣に立ち、そっと手を伸ばした。
「少し、貸してください」
大きな手が、琴葉の手の上に重なり、一緒にタネを包み直す。
温もりが伝わるたびに、胸がどきどきと騒ぎだす。
そして歪だった塊は、あっという間に綺麗な楕円へと整えられていった。
「こうすれば崩れにくいですよ」
「……っ」
耳まで熱くなって、顔を上げられない。
ただ教えてくれているだけなのに――
どうしてこんなに心臓がうるさいんだろう。
やがて焼き上がると、香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がった。
テーブルに並んだ湯気立つハンバーグを見て、琴葉は思わず声を弾ませる。
「わぁ……! 本当にハンバーグになってる!」
「ええ。とてもよくできました」
箸を入れると、じゅわっと肉汁が溢れ出す。
一口食べて、思わず頬が緩んだ。
「おいしい……! 初めて作ったのに、すごくおいしい!」
「一緒に作ったから、より美味しいのでしょう」
その穏やかな声に、胸の奥がじんわり満たされていく。
少しぎこちなくて、それでも温かい時間。
恋人になったばかりのふたりにとって、それは甘くて嬉しい夕食だった。
食後、お風呂から上がってソファに座ると、体がぽかぽかして、心地よい眠気が押し寄せて来る。
「……ふあぁ」
小さな欠伸をした瞬間、隣から穏やかな声がした。
「眠そうですね」
「ん……ちょっとだけ、ねむいかも……」
はしゃぎすぎたせいだと分かっていても、目がとろんとしてくるのは止められない。
「無理は禁物です。今日はもう休みましょう」
静かで、けれど有無を言わせない声。
その手に導かれるまま立ち上がり、ふわふわした頭のまま寝室へ向かう。
ベッドに横になると、そっと整えられる気配がして――
次の瞬間、額にやさしい温もりが触れた。
「……おやすみなさい」
心臓が跳ねて、思わず目を開けかける。
けれど、そのまま抗えず、胸に残る鼓動の余韻を抱いたまま、琴葉はすぐに眠りに落ちていった。
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