笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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続編:ヒューゴの結婚

溺愛された妻

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翌日の午後、彼女に会うことが叶ったがルクスは俺に敵意を向けているし、伯爵夫人は彼女の肩を抱き寄り添っていた。

「ティナ、誤解なんだ。俺はただ最愛のティナを出産で死なせることが怖かっただけなんだ。ティナへの愛が薄れたわけでもないし、ティナとの子は欲しい」

「ううっ……」

彼女は大粒の涙を次々と溢れさせた。

「ごめん、本当にごめん。最初から相談すればよかった。傷付けるつもりはなかったんだ。ただ俺はいつも強くありたかった。それがジオ家の男だし、ティナがいつでも頼れる存在でありたかっただけなんだ」

彼女の涙はなかなか止まらず、夫人の“待て”という圧を受けて待つこと2時間。

「本当?」

「本当だ。ジュエルも君とルクスを探し回っているぞ」

「ジュエルが?」

「俺にだけ興味を示しているようで違ったらしい。あの子にとってもティナとルクスも大事な家族なんだよ」

「ジュエルぅ」

また泣き出した。

「妊娠すると情緒が不安定になるのです」

なるほど。

「とても繊細な時期なのですよ」

「肝に銘じます」

咎めと受け取り頭を下げた。

泣き止んだ彼女の側に行き、再度謝り抱きしめた。

「怖い。川に流されて行方がわからないと告げられたときの恐怖が鮮明によみがえったんだ。俺にはティナが全てなんだ」

「うん」

「失いたくない」

「うん」

「ごめんな」

「うん」

彼女が身体を俺に預けた重みで許されたと実感できた。


結局悪阻が理由で一緒には帰れなかった。治るまではジュエルを連れて通い、セルヴィー邸で出産すると言い出した彼女を説得する前に伯爵に相談した。

「実は、罪人を妊娠させて帝王切開の実験をさせたんです」

アマンダの妊娠中に妊婦の罪人が現れたので先にそちらを被験体にしたが死んでしまった。アマンダも死んだ。だが次の妊婦は領民の希望者だった。サブマ草の研究施設で働く男の妻が難産で、胎を裂いて取り出さねばどちらも死ぬと言われて頼み込んで来た。妊婦を運び研究医に任せると母親も子も無事だった。

「サブマ草?」

「はい。3人目は成功しました。偶然かもしれませんが備えないよりはマシです」

「わかった。説得しよう」

「義父上?」

どこか伯爵の表情が優れない気がした。

「2人だ」

「はい?」

「双子らしい」

「は!?」

1人でも不安でたまらないのに双子!?

「こちらの領民の中に双子を孕んだ妊婦がいないか当たります。動かせるようならジオ領そっちに送りましょう」

そう言うと伯爵は一緒に彼女を説得してくれた。

「パパは私が邪魔なの?」

そう言って泣き出した彼女を伯爵は抱きしめて優しく背中を撫でている。

「一生側にいて欲しいくらいだ。私達がどれほど愛しているか」

「パパ」

「向こうにはサブマ草の研究施設がある。双子の出産に備えなければならないだろう?」

「こっちにもあるわ」

「こっちと向こうでは研究内容が違うんだ」

「パパ」

これは困った。いつものクリスティーナではなく子供のクリスティーナになってる。

「パパが送り届けよう。途中の町で好きなものを買うといい」

「私が欲しいのはパパなの!」

「そう言ってくれると嬉しいよ。だけどお腹の赤ちゃんのことも考えないと。ジオ領の方が出産に向いてるんだ」

「……」

「いい子だ。産んで落ち着いたらまた戻ればいい」

「本当に?」

「本当だ」

余計なことを!

だけどこれでやっとジオ領へ向かうことを承諾してもらえた。

出発時には伯爵令息が現れた。

「お兄様」

「クリスティーナ、偉いぞ」

「お兄様と会えないなんて寂しくて涙が出るわ」

「いいかい、一番大切なのはクリスティーナだ。いつも言っているだろう?」

「うん」

「泣かなくていい、耐えなくていい、クリスティーナ・セルヴィーは唯一無二の愛しい家族だ。何かあればすぐに帰ってきなさい。今度は家族全員で外国へ旅に出よう」

「うん、大好きよ、お兄様」

「愛してるよ」

まるで恋人同士のように抱擁している。

この馬車には俺だけ。クリスティーナは別の馬車に伯爵と一緒に乗って出発した。まあいい、連れ戻せるのだから。

しかし俺はまだまだ未熟だと痛感した。
クリスティーナは以前、王都で1人で暮らし学園に通っていて伯爵達はずっと領地にいたし、元婚約者のことで虐められたままだったから放任主義もしくは自分で解決させようと大人として扱っているのだと思っていた。
だが彼女が望めば毅然と俺を排除しようとするし、彼女の兄も俺なんか無視で彼女に甘々だ。もしこの兄妹に血の繋がりがなければ、俺は彼に勝てなかっただろう。仕事ばかりして表に滅多に顔を出さない男のくせに俺より女の扱いに慣れている。彼女の信頼しきった瞳が彼に向けられていて、兄妹とわかっていても敗北感を覚えた。
俺の日頃の愛の伝え方では足りていなかったのだと痛感させられた。


ジオ邸に戻ると数日で伯爵は帰っていった。
当面の間は2、3時間ごとに彼女の部屋に行き可愛がり、体調をみて朝とティータイム後に散歩をさせ、眠るまで手を繋いだ。
時々研究施設へ赴いたが出来る限りすぐに彼女の元へ戻った。

「おまえ達、ヤるなら俺の前でヤるな。俺は今禁欲中なんだぞ」

彼女が昼寝をしている隙にルクスがジュエルにかぶさり腰を振っている。

「おまえ……早過ぎないか?」

「ミャー!ミャー!」

あっという間に交尾を終えるとジュエルはうるさく鳴く。幸い彼女は起きることはなかった。
だが、

「おまえ、何回ヤるつもりなんだ」

俺の前で何度も交尾を繰り返す。

「いいなぁ」

は?

何回目かで初めて2匹の交尾を見た彼女が呟いた。

い、いいのか!?

腹のことを考えて、立たせてテーブルに手を付かせた。そして背後から優しく抱いた。何ヶ月ぶりだろうか。初めてのときのような新鮮味があった。やっぱり彼女の中にいると落ち着く。
ルクスに早いとか言っておきながら俺も1分ももたずに果ててしまい、もう一度と彼女の肩を軽く噛みながら再開した。

「ニャー!」

ルクスがこちらを見て鳴いている。まるで“何回ヤるつもりなんだ”と聞き返しているように聞こえた。

「無粋だぞ」

その日以来、俺達の閨事は復活した。
ルクスにはご褒美をやった。
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