笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

文字の大きさ
72 / 215

幸せ

しおりを挟む
幸せを感じる。
ムズムズするような胸の温かさを感じる。


以前のシャルル様の誕生日のパーティでは…

『妻じゃあるまいし 僕と一緒に挨拶はしなくていいよ』

『はい、シャルル様』

そう言われて私は端で立っている。

その後はファーストダンスまで一緒にいられる。
会話を振っても適当な返事をされ、あまり話を振りすぎると注意される。
ファーストダンスが終わるとヘインズ伯爵夫妻は自身の友人知人のところへ行って話に夢中になる。
その間、彼は側に寄ってくる令嬢達と歓談する。こういう時はあまりサリモア公女やオヴェル子爵令嬢を選ばない。彼女達は普段一緒だから。

伯爵夫妻はどんなパーティーでもあまり最後まで会場にいないことが多いらしい。後は若い人達でと言った感じで退場する。夫妻のご友人も一緒に退場して、別室で座りながら大人の歓談に切り替えるのだ。私と婚約してからは元々不在の時もあった。
だから、シャルル様がその夜のお相手を選んで令嬢の腰に手を回し 会場を去る姿を私が端で見送っていることをヘインズ夫妻は知らなかったようだ。私はてっきり後で使用人から報告を聞いているものだと思っていた。怪我をした後にヘインズ伯爵に聞かれて今までの関係について話した時に驚かれてしまった。
“息子が申し訳ない!どうかやり直してやって欲しい!”と頭を下げられた。

だけど私がどれだけ悲しくて胸を痛めて込み上げる涙をこぼさないように我慢したかは伝えていない。
彼の誕生日パーティ、ヘインズ伯爵家のパーティ、王宮主催のパーティ、そして私の誕生日のパーティでさえ…。

シャルル様が他の令嬢とベッドへ向かう姿を見送り、その後は選ばれなかった令嬢達から言葉の袋叩きに遭う。飲み物をかけられたり、後ろ髪に何かのソースが付いていたり酷い時はドレスを切られていることもあった。
それでも、彼に誘われたら笑顔で受けた。同伴したらどんな目に遭うのか分かっていても。

「ティナ? 大丈夫?」

「あ、ごめんなさい。楽しくて幸せだから嬉しくて」

つい楽しくて、今までのことを思い出して比較してしまった、

「ティナには幸せになる権利があるのよ?」

「そうだよ。ヒューゴは交際経験が無いから不器用なところもあるけどクリスティーナ嬢を大事にしてくれるはずだよ」

「今日は俺のパーティなのだから余計なことは考えるな。分かったか?」

「はい、ヒューゴ様」

「あっついわ。もうダンスを始めてはどうですか?続けて3曲踊ったら、妄想という夢を膨らませた雌ネズミ達が散っていきますわ」

「ハハッ!ゼオロエン嬢の言う通りにしよう」


ファーストダンスはしっかりと踊り、2曲目と3曲目は私の怪我を考慮した緩やかなステップで踊った。
3曲目が終わるとホールで唇にキスをされた。

「んんっ!」

長い長いキスを…。


その後はみんなに揶揄われ、なかなか上を向けなかった。

「こんなに可愛い子を見たことがないよ」

「顔を真っ赤にして涙目になっちゃって」

「ヒューゴがいなかったら口説いているよ」

「うちの妻は婚約中もこんな可愛い反応しなかったぞ」

「うちもだよ」

みんながジネットを見た。

「わ、私を見ないでくださいっ」

「これはどっちの反応だ?キスはまだ早いのか、キスくらい済ませているのか」

恥ずかしがるジネットを私の背に隠した。

「おっ? だからそんな目で見上げたら食べられちゃうぞ?」

「本当に可愛いな」

ジネットを背に隠した私をヒューゴ様が背に隠した。

「俺のクリスティーナだ」

「おお怖っ!降参降参!」

「いや…睨むなって」

「ヒューゴ? 本当に違うからな?」

「大きな親猫だな。親猫の機嫌を取れるのは子猫だけだ。クリスティーナ嬢、ヒューゴを宥めてくれないか?」

私は頷くとヒューゴ様に腕を回して背中にしがみついた。

「クッ!見たか?ヒューゴの顔!」

「デレデレじゃないか」

「顔が溶けて目も鼻も落ちそうじゃないか」

初心うぶカップルの誕生だな」

もう恥ずかしい!

なのにヒューゴ様ったら…

「もう部屋に連れて行っていいか?」

「駄目です!ティナとパーティを楽しんできます」

ジネットは私の手を繋ぐと彼らから離れた。

「デザート食べましょう」

「そうね」

結局直ぐにヒューゴ様とモルゾン公子が追いかけてきた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜

水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」 効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。 彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。 だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。 彼に残した書き置きは一通のみ。 クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。 これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

一年だけの夫婦でも私は幸せでした。

クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。 フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。 フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。 更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...