笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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青いドレス

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おかしい。

いつも私達は尋問を受け 自白剤でも飲まされたかのように洗いざらい打ち明けるのに、エルザとジネットは言葉を濁す。

王太子夫妻のガーデンティーパーティの夜に客室でどう過ごしたのか教えてくれない。

2人は少し雰囲気が変わった気がする。ジネットは発言が大人びてきた気がする。特に男女間について。

ヒューゴ様に聞いても、
“ウィロウ嬢は規則があるが、ゼオロエン嬢はあの夜一気に階段を駆け上がったんだな”としか教えてくれない。
“そんなに問い詰められても 俺は何も聞いていないから事実は知らないぞ”と言われて、確かにと納得した。

何故かモルゾン公子からは“ありがとう”というメッセージカードと特級のバラの花束とビンテージワインが贈られてきた。
それを話したらヒューゴ様は笑いながら、“負けていられないな”と言った。



夏の長期休暇の前にヘインズ伯爵夫人の誕生日パーティが開かれる。それが今日だ。

「お嬢様、さすがにお召しになってください。婚約者のお母様のパーティに、婚約者から贈られてきたドレスを着ないのはまずいです。
ヘインズ夫人もドレスの存在をご存知のはずです。それなのに着て行かなければ祝い事に水をさしてしまいます」

「……はぁ。分かったわ」

メイドが用意したのは2日前にシャルル様から贈られてきた青いドレスだった。
青にも種類があるというのに、よりにもよってシャルル様の瞳の色とそっくりの青色のドレスだなんて。

「黒に染めちゃえば良かった?」

「お嬢様」

「冗談よ」

2年以上青いドレスに袖を通していなかったので、贈られたドレスを着て鏡を見ると違和感しかなかった。婚約したての時は、青のドレスに身を包んだ自分の姿にうっとりしていたのに。

このドレスのせいで、また令嬢達から何か言われないかしら。また飲み物をかけられたり料理を取ったお皿をぶつけて来るかもしれない。

「念のために替えのドレスを持って行くわ。靴も馬車に積んで」

コンコンコンコン

「あの、お嬢様…ヘインズ伯爵令息様が迎えにいらっしいました」

「え?」

そんな約束していないのに…

「替えのドレスは諦めるわ。シャルル様に少し待つようにお伝えして」

「かしこまりました」

軽く化粧をして髪を結い終えると一階に降りようとしたら階段を上がって来て私の手を取った。
こんなことしてくれたことは一度もなかったのに。

「ドレスをありがとうございます」

「よく似合っているよ」


馬車に乗ると視線を感じる。私はいつも通り、彼が不快にならないよう外を見ている。
昔、“あんまりジロジロ見ないで欲しいな”と言われたから。なのに前回のアマルト子爵家の夜会でも彼の視線を感じた。あの時はキスマークがバレたのかと思ったけど、今日も視線を感じるなら違う理由で見ているのだろう。

ヘインズ伯爵邸に到着すると伯爵夫妻が機嫌良さそうに迎えてくださった。

「おめでとうございます」

「素敵なプレゼントをありがとう」

「ドレス、よく似合っているね。今日はゆっくりしていってくれ」

「ありがとうございます」

「クリスティーナ、行こう」

シャルル様が私の手を握って大広間に入った。
手を握られたのも初めてだった。一体どうしたのかと思ったけど、もしかしたらヘインズ伯爵の前だから良好な関係を装ったのかもしれない。

招待客の顔ぶれは夫人個人やヘインズ家と繋がりのある方々だったので私達の世代は1割ほどのように見えた。

「まあ、セルヴィー嬢、お久しぶりですわ」

「お久しぶりです タヂラム男爵夫人」

「今日は娘を連れて来ていますのよ。セルヴィー嬢は3年生でしたわね。うちの子は1年生ですの」

「初めまして、エレノア・タヂラムと申します。
お久しぶりですシャルル様」

「初めまして、クリスティーナ・セルヴィーと申します」

「久しぶりです、夫人、エレノア嬢」

「シャルル様、ダンスを踊ってくださいませんか」

「僕?……」

どうして私を見るの?

「セルヴィー嬢、一曲お借りしてもかまいませんよね?」

「それは私に聞かないでシャルル様とタヂラム嬢の2人で決めてくださる?」

「すまないけど、今日は令嬢とは踊らずにご夫人を誘うつもりなんだ。母の誕生日だから、クリスティーナと踊って母と踊った後は、夫人1人で出席した2人を誘うつもりだよ」

「そうですか…
セルヴィー嬢のドレス、素敵な青ですね」

色の話はしないで欲しいわ。

「ああ、これは僕が選んでクリスティーナに来て欲しいと贈ったんだ」

「そ、そうなのですね」

あー この反応。きっとこの子は私とシャルル様が上手くいっていないことを知っているのね。そして私の片想いだってことも。
だからわざわざ青いドレスを話題に出してシャルル様を刺激しようとしたのね。シャルル様が贈ったと聞いてすごく驚いたもの。

次はヘインズ家の親戚の姉弟が話しかけてきた。
姉モーナの方はシャルル様の1つ歳上で、弟フレイルの方は2年生だったはず。
合うのは今日で4回目。シャルル様の私への扱いも知っている2人だ。そして姉モーナはシャルル様に気がある。それは今も変わらないことが彼女の表情から分かる。
彼女はシャルル様にダンスを誘ったけど、さっきと同じように断られてしまった。

「シャルル様がご夫人と踊っている間、セルヴィー嬢は私とダンスを踊ってくださいますよね?」

「…ダンスのお誘いをいただけるのでしたら」

「本当ですか!?では2番目にお願いします。
前からお誘いしたかったんです。勇気を出して良かったです」

「オルドー様は選択は何になさったのですか?」

「フレイルと呼んでください。私もクリスティーナ様とお呼びしても?」

「はい」

「ありがとうございます。私は乗馬にしました」

「お好きなのですか?」

「既に得意なものを選択するなんて狡いですよね」

「そんなことはありませんわ。ほとんどの方が少しでも得意なものを選んでいるのではありませんか?」

「クリスティーナ様も?」

「私は消去法で刺繍にしましたが、ちょっと後悔しています。得意なご令嬢が多くて…意外とセンスが影響するので仕上がったものを見ると恥ずかしくて」

「クリスティーナ様が一生懸命刺繍してくださったら私なら喜んで持ち歩きますよ」

「まあ、慰めてくださるのですね」

「…今度 私の誕生日パーティに来てくださいませんか」

「いつですか?」

「夏休み明けの第3日曜日の日中です」

「日中なら」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

フレイル様は興奮気味に私の手を握った。

「フレイル…近い」

サッとシャルル様が私とフレイル様の間に入ったことでフレイル様の手が離れた。

「す、すみません」

こんなこと今までになかったのに…
シャルル様がおかしい。

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