笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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婚約破棄の報告

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居間に移ってローテブルにお茶が用意されるとジオ公爵夫妻とヒューゴ様、お父様と私だけになった。

「タリー伯爵家はアフレック・ハングベリーの婚約者サリー・フォステルトとは血縁があって、タリー家とヘインズ家は昔から仲の良い間柄だそうで、それで誘われてあの日遅れてタリー家のパーティに行きました。
シャルル様が友人達と休憩室にいると聞いて向かうと話し声が聞こえてきたのです。私のことが嫌いでずっと婚約解消を望んでいたと。笑いながらそんなことを友人達が話していてシャルル様はそれを肯定しました。でもそれは分かっていたことでしたので想定内でした。だからといって何も感じないわけではありません。
それより、もう無理だと思った理由は私に高位貴族との橋渡しを求めていたことです。交友関係を分けることも婚約の条件の一つだったのにですよ?…シャルル様はヘインズ夫人に頻繁に催促されていたらしいのです。ですが簡単に紹介なんかできません。特にシャルル様は女性関係が淫らでしたし、それを黙認しているのはヘインズ伯爵夫妻だからです。私はそこまで盲目ではありません。築いてきた信頼を壊すことなんてできません。なのにそれをしない私が悪のように言われて…シャルル様の友人達はそれが妻の役目だと言っていてシャルル様も否定しませんでした。
結婚したらヘインズ家から当然のように求められるのかと思ったらもう無理だと悟ったのです。何か一つだけなら我慢できたかもしれませんが、これまでのことを含めた上でとなると…。
ですから、婚約を解消したいというシャルル様の気持ちをその場で受け入れました。だけどヘインズ伯爵夫妻は続けたがるでしょう」

「だから破棄なのだな?」

「はい」

「分かった。私が話をつけるからもうヘインズ家とは関わらなくていい」

「既に王都の屋敷に指示済みです」

「公爵、ヒューゴ殿、娘をお任せして不在にしてもよろしいですか」

「もちろんです。揉めるようでしたら仰ってください」

「クリスティーナ、明日出発するからここで留守番をしていなさい。ヒューゴ殿」

「はい」

しばらく留守にすることになったお父様は当面の指示を出しにヒューゴ様を連れて行った。
話を済ませて戻ってきたお父様達と夕食を一緒にとりながら伝え忘れたことを伝えた。

「あの…タリー家のパーティでシャルル様が私の手を掴んで放してくれなくて、タリー伯爵夫人が間に入ってくださったのです。ヘインズ家と懇意にしているにも関わらず味方をしてくださいました」

「分かった」

「あと、フォステルト家のサリーが私の側にいましたので、私に聞こえたことは彼女にも聞こえているはずです」

「分かった」

後は部屋の中であれこれ言っていたシャルル様の友人達の名を告げた。

「分かった。フォステルト嬢に話を聞いて、タリー伯爵夫人に御礼を伝えて話を聞いて、その後でをしてこよう。クリスティーナは心配せずにのんびりしていなさい。夫人の言うことを聞くように」

「はい」

「ヒューゴ殿は分かっているね?」

「はい。お任せください」

こうしてお父様は王都に向けて出発した。


本来なら建物が仕上がっているのだから栽培地に寝泊まりした方が楽なはずなのに、ヒューゴ様は毎日屋敷から通っている。必ず寝るときは私と一緒に大人しく寝ている。
日中は夫人にかまってもらい、領都にも連れ出してもらったり、分家のお茶会に連れて行ってもらった。

「まあ、セルヴィー家の!」

「初めまして子爵夫人」

「嬉しいですわ。領地こちらは初めて?」

「初めてではありません」

「ヒューゴがクリスティーナに夢中で強引に連れ回すのよ。拉致するかのように勝手に学園に迎えに行ったりセルヴィー領に押しかけたり、本当に迷惑をかけているのよ。今回はクリスティーナが来てくれたの」

「まあ、そうでしたのね。そうだわ、息子達を呼んできましょう」

それは早いわ。ヒューゴが騒ぐと困るからもう少し後でね」

騒ぐ?

「もしかしてもうお決まりですか?」

「ええ。うちはね」

「ではもう確実ですわ」

「そうでもないのよ」

「まあ」

何の話?

「あの?」

「今ヒューゴがクリスティーナしか見ていないって代わりに惚気ていたところよ」

「っ!」

「ニャオン」

パッと声のする方へ向くと猫が歩いて近寄ってきた。

「猫はお嫌いですか?」

「大好きです」

「この子の名前はキャロットといいます。人見知りするから寄って来ないはずなのだけど…こら、キャロット!」

キャロットはピョンとジャンプして私の膝の上に乗った。

「大丈夫ですよ。キャロットちゃん、こんにちは。クリスティーナというの。仲良くしてね」

「ニャオン」

「オスなのよ」

「キャロットくんね」

「ニャオン」

「まあ、ヒューゴがライバル視しそうだわ」

キャロットくんはゴロゴロ喉を鳴らしながら私の胸に顔を擦り付けていた。

「キャロット、こっちにいらっしゃい。討伐されるわよ」

「ニャオン」

キャロットは構わず私に甘え続けた。

「いいこね」

擦り付け終わると立ち上がり、頬や顎や口元を舐め始めた。

「んっ!」

「こら、キャロット!」

「んふふ」

「大丈夫よ、クリスティーナは喜んでいるわ」

「んふふふ」

「キャロットの一目惚れね」

「ひゃっ」

今度は耳たぶを吸い始めた。

「キャロット…クリスティーナとは番えないのよ?」

「すごい懐き様ね。どうやって引き剥がすのかしら」

今引き剥がそうとすると爪を食い込ませてドレスに穴が開くから…

「キャロットくんの好物を用意してください」

「そうね、その手があったわね」

猫の好物を持ってきてもらうと私から離れた。その隙に公爵夫人と一緒に帰った。

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