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今更
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【 シャルルの視点 】
セルヴィー伯爵が提示した慰謝料の請求額はかなりの金額だった。
「ペンを持ってきてくれ」
「かしこまりました」
「父上!?」
「これ以上セルヴィー家と揉めたくない。おまえは何故友人の馬鹿な発言を止めなかったんだ。挙句否定するどころか肯定するなど」
「だから誤解なんです!」
「おまえは過去の気持ちを言ったかもしれないが友人達は過去と思って言っていない。そう証言書に書いてある。過去の話だと主張しているのはおまえだけで、同席した友人達もフォステルト嬢もおまえが婚約解消の意思を示したととらえているんだ」
「クリスティーナと話をさせてください!」
「娘は王都にはいない」
「セルヴィー領ですか、それともジオ領ですか!」
「どこに身を寄せようが君にはもう関係ない。婚約は破棄されたのだから」
伯爵の目線の先を見ると父が署名を済ませてしまっていた。
「お願いです!やっとクリスティーナに気持ちが向いて愛を感じ始めていたんです!」
「愛だの恋だのという言葉は相手を守れる男が口にするものだ。傷付ける者が使う言葉ではない」
「お願いです!伯爵」
「娘はティアラの死後に君が気遣ってくれたことだけは感謝していたよ」
「だったら」
「自分が誘っておいて、娘が来ると分かっているパーティで取り返しのつかない失言をしたのは誰だ。これは故意と言っても過言ではない。まだあの子はティアラを失った傷が癒えていないのだぞ。そんな男にチャンスなど与えたくない」
「っ!」
「ではヘインズ伯爵、伯爵夫人、今後はクリスティーナとセルヴィーに関わらないようお願いします。その代わり慰謝料の請求はしません。くれぐれもご子息を近付けさせないようお願いします。手紙も贈り物も待ち伏せも友人知人を使った接触も許しません。記載の通り、付きまとえば請求しますからね」
「分かりました」
「ご迷惑をおかけしました」
「クリスティーナ…」
「これからは“セルヴィー嬢”と呼ぶように」
セルヴィー伯爵が帰ると父が大きな溜息を吐き、母は強い酒を飲み始めた。
「信じられないわ。本来なら結婚式を済ませている時期なのに、逆にセルヴィーとの繋がりが消えてしまったなんて」
「慰謝料を請求されずに済んだだけマシだろう。シャルル、もうセルヴィーに近寄るな。払えなくはない額だが大金だ。痛手であることには違いない。これ以上の醜聞も避けたい」
「やり直せるはずです。最近の関係は良好でした」
「シャルル。私がクリスティーナの立場だったら耐えられなかったわ。婚約者を慕っていたなら尚更よ。どれだけ辛くて惨めだったか。
クリスティーナが学園で揉めていたのはクリスティーナが何かしたのかと思っていたし、あなたがクリスティーナの前で他の令嬢と消えたり、不特定の令嬢と繰り返し関係があったことをもっと早く知っていたら外出を許さなかったわ。急に青いドレスを着なくなったのもあなたのせいね?」
「……はい」
「クリスティーナはよく耐えたわ。次はあなたが耐える番よ。他の令息と結婚して子を産むクリスティーナの幸せを祈りなさい」
「シャルル、これ以上は手に負えない。もう我儘は通しただろう。これ以上は駄目だ」
自室に戻り上着を脱いだ。
物入れの下には箱があり、クリスティーナからの贈り物をそこに投げ込んでいた。
蓋を開けて取り出し、よく見ると彼女の気持ちが伝わってくる。彼女なりに考えて作らせた一点物だろう。だけど最後の贈り物は店の売り物から選んだ品だろう。彼女の心は徐々に冷めていた。そう、彼女の瞳に熱がこもらなくなったこともジオ公子と交際したのも彼女の変化を証明していた。
分かってる。彼女の心に冷たい水を浴びせ続けたのは僕自身だ。
だけど…
今更クリスティーナに惚れるなんて。
セルヴィー伯爵が提示した慰謝料の請求額はかなりの金額だった。
「ペンを持ってきてくれ」
「かしこまりました」
「父上!?」
「これ以上セルヴィー家と揉めたくない。おまえは何故友人の馬鹿な発言を止めなかったんだ。挙句否定するどころか肯定するなど」
「だから誤解なんです!」
「おまえは過去の気持ちを言ったかもしれないが友人達は過去と思って言っていない。そう証言書に書いてある。過去の話だと主張しているのはおまえだけで、同席した友人達もフォステルト嬢もおまえが婚約解消の意思を示したととらえているんだ」
「クリスティーナと話をさせてください!」
「娘は王都にはいない」
「セルヴィー領ですか、それともジオ領ですか!」
「どこに身を寄せようが君にはもう関係ない。婚約は破棄されたのだから」
伯爵の目線の先を見ると父が署名を済ませてしまっていた。
「お願いです!やっとクリスティーナに気持ちが向いて愛を感じ始めていたんです!」
「愛だの恋だのという言葉は相手を守れる男が口にするものだ。傷付ける者が使う言葉ではない」
「お願いです!伯爵」
「娘はティアラの死後に君が気遣ってくれたことだけは感謝していたよ」
「だったら」
「自分が誘っておいて、娘が来ると分かっているパーティで取り返しのつかない失言をしたのは誰だ。これは故意と言っても過言ではない。まだあの子はティアラを失った傷が癒えていないのだぞ。そんな男にチャンスなど与えたくない」
「っ!」
「ではヘインズ伯爵、伯爵夫人、今後はクリスティーナとセルヴィーに関わらないようお願いします。その代わり慰謝料の請求はしません。くれぐれもご子息を近付けさせないようお願いします。手紙も贈り物も待ち伏せも友人知人を使った接触も許しません。記載の通り、付きまとえば請求しますからね」
「分かりました」
「ご迷惑をおかけしました」
「クリスティーナ…」
「これからは“セルヴィー嬢”と呼ぶように」
セルヴィー伯爵が帰ると父が大きな溜息を吐き、母は強い酒を飲み始めた。
「信じられないわ。本来なら結婚式を済ませている時期なのに、逆にセルヴィーとの繋がりが消えてしまったなんて」
「慰謝料を請求されずに済んだだけマシだろう。シャルル、もうセルヴィーに近寄るな。払えなくはない額だが大金だ。痛手であることには違いない。これ以上の醜聞も避けたい」
「やり直せるはずです。最近の関係は良好でした」
「シャルル。私がクリスティーナの立場だったら耐えられなかったわ。婚約者を慕っていたなら尚更よ。どれだけ辛くて惨めだったか。
クリスティーナが学園で揉めていたのはクリスティーナが何かしたのかと思っていたし、あなたがクリスティーナの前で他の令嬢と消えたり、不特定の令嬢と繰り返し関係があったことをもっと早く知っていたら外出を許さなかったわ。急に青いドレスを着なくなったのもあなたのせいね?」
「……はい」
「クリスティーナはよく耐えたわ。次はあなたが耐える番よ。他の令息と結婚して子を産むクリスティーナの幸せを祈りなさい」
「シャルル、これ以上は手に負えない。もう我儘は通しただろう。これ以上は駄目だ」
自室に戻り上着を脱いだ。
物入れの下には箱があり、クリスティーナからの贈り物をそこに投げ込んでいた。
蓋を開けて取り出し、よく見ると彼女の気持ちが伝わってくる。彼女なりに考えて作らせた一点物だろう。だけど最後の贈り物は店の売り物から選んだ品だろう。彼女の心は徐々に冷めていた。そう、彼女の瞳に熱がこもらなくなったこともジオ公子と交際したのも彼女の変化を証明していた。
分かってる。彼女の心に冷たい水を浴びせ続けたのは僕自身だ。
だけど…
今更クリスティーナに惚れるなんて。
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