母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監

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第四章 東への旅

4ー14 海賊討伐

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 翌朝、朝食後に義父様とうさま義母様かあさまに海賊の掃討作戦を説明しました。
 義父様とうさま義母様かあさまは、既に陸路の馬車での旅で山賊の討伐に幾度となくゴーレム達が無双ぶりを発揮していたのはよくご存じですので戦いになっても余り心配は無いと判断しておられます。

 それでも、陸上と異なって揺れる足場だとか、海にゴーレムが落ちた場合は大丈夫なのかなど多少の質問は有りましたね。
 そもそもグリモルデ号と海賊船あるいは襲撃された船などは甲板の高さがかなり違います。

 海賊の連中は、彼我の甲板の高さが異なる場合には、マストの帆桁ほげたなどからロープを垂らすなどした上で振り子のように簡単に相手船に乗り込んで行きます。
 グリモルデ号の甲板は海賊船の甲板から見るとかなり低いですし、帆桁のようなものもありませんので、そのような方法は使えないですから、単純にゴーレムの脚力で海賊船の甲板に飛び上がって船内に侵入する予定です。

 海賊の方はグリモルデ号を格好の獲物とみて、甲板に飛び降りるなどの方法でグリモルデ号に侵入してくるかもしれませんが、実のところ、グリモルデ号の甲板で人が自由に活動できる範囲は船橋後部のさほど広くないエリアだけなんです。
 ウチのゴーレムは靴底に吸着マットを仕込んでありますのでエリア外でも自由に動けますけれど、仮に、海賊がそのエリアから外れた個所に飛び降りたなら、甲板の摩擦係数が非常に低いですから、間違いなく滑り落ちて海に落ちるでしょうね。

 海に落ちたなら元の船に這い上がるまでは戦力外になります。
 万が一、その狭いエリアに入ってきても、ウチのゴーレム一体で簡単に制圧できます。

 そもそも海賊で生かしておくのは精々一人か二人で残りは全て死んでもらうことにしています。
 百害あって一利なしの病原菌みたいな連中ですから、討伐に躊躇いはありません。

 ですから侵入してきた海賊は遠慮なく殺戮してもらうつもりでいるんです。
 グリモルデ号の船内に残るゴーレムは、エマとセバスだけで、残り5体のゴーレムは海賊船と拿捕された船に侵攻する予定なのです。

 今朝の時点では、風向きも良いためにグリモルデ号の船速は毎時16ケイリほども出しており、海賊船と拿捕された船は毎時8ケイリほどの速度ですから、遭遇が少し早まりそうです。
 彼我の距離から言うと、正午過ぎには追いつきそうですね。

 そうして正午前には二隻の船が前方に見えて来ました。
 するするとグリモルデ号が接近して行くと、二隻のうち海賊船の方が進路を少し変えて、グリモルデ号に向かってくる様子です。

 獲物が来たと思っているかもしれませんが、生憎こちらは逃げようと思えば海賊船よりもはるかに速い速度で航走できますからね。
 普通なら絶対に捕まりません。

 でもそんなことは無視してこちらも接近して行きます。
 半ケイリほどまで近づくと流石に向こうも用心をしてきました。

 海賊船というか私掠船というか、金谷の記憶にある髑髏マークのような海賊を示す旗(この近辺では赤地に黒の×印)を、変針してからマストに掲げたにも関わらず、停船もせずに近づいてくる船は普通はいないものなんです。
 逃げるか若しくは停船するかのどちらかなんでしょうね。

 小型帆船が逃げようとしないばかりか船首を向けて突っ込んでくるから、向こうも何かがおかしいと勘づいているようです。
 上空からドローンで監視をしていますと、海賊船の甲板上で動きがありました。

 どうやらカタパルトを使って火玉を投擲しようとしていますね。
 また、それとは別に搭載しているバリスタも準備しているみたいです。

 「火玉」は、植物の繊維をばらして糸状にしたものに松脂まつやになどの可燃性樹脂を混ぜ、丸く成形したものです。
 火玉を投擲用のカタパルトに載せ、発射直前に火をつけて、目標めがけて投射する弾になるわけです。
 帆船の帆などに当たれば、燃えて帆が使えなくなりますから、相手の船の速度を奪うには優れた武器なんです。

 それに火玉はいったん火がつくとなかなか消火しにくい厄介なものなんです。
 でも残念ながらグリモルデ号の帆は耐火性が強く、千度の熱でも燃えたりしません。

 またバリスタ程度の武器では船体のどこに当たっても跳ね返してしまいますし、帆にも穴が空いたりしませんよ。
 そうしてゴーレム達はと言えば、バリスタの飛翔速度ならば簡単に見切ってかわしてしまいますから、火玉もバリスタも全く脅威にはならないんです。

 勿論、普通の弓や槍など論外です。
 義父様とうさま義母様かあさまには、外に出ず、ずっと居間の方に居てもらうことになっているので安全です。

 お二人には居間のモニターで外の様子を見ていただくことにしています。
 あまり凄惨な場面は直接見られないように、モニターはズームせずに遠くからの俯瞰状態にしておきます。

 僕自身は、まぁ、単独でどんな攻撃を受けても防御できるだけの能力と自信がありますから大丈夫です。
 二隻の船を視認できてからおよそ一時まで経っていないでしょうけれど、海賊側は至近距離に迫ったグリモルデ号を盛んに攻撃してきますけれど、こちらは全く被害を受けていません。

 そのうちに本当に接舷するほどに両船が接近した時点で、ビル船長以下船員三名が3m以上もの高低差と10m近い距離を無視して海賊船に飛び乗って行きました。
 無論、僕が用意した完全武装での殴り込みです。

 海賊船には捕虜が居ないということを僕の索敵で確認しています。
 そうして拿捕された船の方には別途虫型の小型ゴーレムを送り込んでいる最中です。

 拿捕された船は、比較的に速度が遅いまま概ね東方向へ向かっているのですが、どうも被拿捕船には海賊の三分の一ほどが乗り込んで船の操船をしているようです。
 また、船倉と思われる場所に一塊の人が居るのでおそらくはこれが捕虜だと思うのですけれど、虫型ゴーレムで確認するまでは不詳のままです。

 グリモルデ号は、三人の船員を海賊船に送り込むと、そのままあっさりと海賊船を躱して被拿捕船に向かって追いかけて行きます。
 僕が索敵とゴーレム達の視点で海賊船の中を窺っていると、中では虐殺と言って差し支えないほどの討伐が行われていますね。

 ゴーレムには加減をしなくても良いと指示をしていますので、彼らは海賊と対峙すると即座にショートソードで切りかかります。
 一瞬にして切られた海賊は、胴体が上下に泣き別れしたり、首が刎ねられ数mも飛んで海に落ちたり、あるいは額から股下にかけて縦に割かれて分断されるものも居るようです。

 正しくスプラッターですから、義父様とうさま義母様かあさまには見せられません。
 三人が飛び乗ってから30秒ほどで、甲板上に居た海賊の約8割が殲滅されました。

 その勢いと強さに恐れ慄く連中が船内に逃げたり、物陰に隠れたりしていますが、ゴーレム達はセンサーでその行方をしっかりと把握しています。

 そのために三人が飛び乗ってから10分を経過する頃には船内で生きている者は完全に居なくなりました。
 ゴーレム達にはそのまま海賊船の内部調査を行ってもらいます。

 後で僕が迎えに行くので、そのまま海賊船で待機してもらう手筈なのです。
 もう一方の被拿捕船の方ですがこちらにも左程時間をおかずに接触です。

 ほとんど接触するかどうかの距離まで近づいて、今度はゴーレムのクリシュ(御者)とアッシュ(コック)が船内に飛び込んで行きました。
 僕の索敵で確認した限りでは、被拿捕船には海賊が27名乗り込んでおり、捕虜が船倉に15名いるようです。

 そうして、虫型ゴーレムの暗躍でその数と位置、および捕虜の人たちの安否を確認しています。
 うん、僕が予測していたよりも少々捕虜となった人の数が多いですね。

 捕虜をたくさん取るとその面倒を見なければなりませんから、これまでの事例で言うと十人未満と言うのが多いようですね。
 これは、アルビラを出港する前に町の図書館で資料から得た結論なんです。

 どれよりも多いということは海賊側に何らかの事情変更があったか、それとも捕虜が余程の金づるとみられたかのいずれかでしょう。
 何れにしろ15人の人数であれば、グリモルデ号に収容するのはちょっときついかも。

 うーん、捕虜になっていた人たちを救出後、救命筏に収容してグリモルデ号で曳航するしかないかもしれません。
 虫型ゴーレムで確認したところ、捕虜となっているのは女性が8名、12歳以下の子供が7名ですね。

 多少疲弊している様子は窺えますが、命に別状はありません。
 これならば20名乗りの救命筏に収容できると思います。

 怪我人等が居る場合は、グリモルデ号船内に運び込むことを考えていましたけれど、その必要はなさそうです。
 現在位置から勘案して、最寄りの港までは、概ね足掛け三日ほどかかりますけれど、被害者たちには少し不便な生活で我慢してもらうしかありません。

 食料と水は、救命筏の中に20名で五日分があるはずですから、最寄りの港までは十分持つはずです。
 10名未満であれば、窮屈でもグリモルデ号に押し込む予定でしたけれど、15名ではちょっと無理ですね。

 グリモルデ号の秘密を守るためにも、彼らを亜空間の居間などに入れるわけにも行きません。
 海賊船は焼却処分にする予定ですし、もう一方の拿捕された船の方についても最寄りの港へ回航できるだけの人員が居ません。

 被拿捕船は大型の三本マストの船ですので運行要員は最低でも二十名ほどは必要です。
 こちらから分けられるのは精々3名までで、その人数では大型船を動かすのは難しいのです。

 まぁ、後は最寄りの港からの救助船(サルベージ船?)に期待することにいたしましょう。
 拿捕船内でも多少の抵抗はありましたが、結局乗り込んでから20分ほどですべての抵抗を排除できました。

 海賊の一名が捕虜に曲刀を突き付けて逃れようとしましたが、僕が雷魔法で半ば気を失わせ、その直後にユチがその男の首を撥ねて終わりました。
 その際に人質になった子供は多少の血飛沫を浴びましたけれど、この程度は我慢してください。

 何れにしろ、当初の作戦通り海賊討伐は支障なく完了しました。
 実のところ海賊の内一人だけは、半死半生のままグリモルデ号に収容、尋問して海賊どもの巣窟を吐かせました。

 吐いた後は用済みなので、少なくとも50ケイリは離れた洋上に捨てました。
 もしこれで生還できたのならば余程悪運が強い男なのでしょうが、生憎と捨てた海域がサメの狩猟場でしたので放り込んで五分もしないうちにサメの餌になっていました。

 もう一つ、海賊船の船倉にはお宝が一杯あったようです。
 そのお宝の中でも価値のあるものだけを選んで全体量の三分の一ほどを預かることにしました。

 海賊船を退治した場合、その海賊船にあったお宝は全て退治した船が貰っても良いとなっているのが古くからの海の慣習法です。
 その意味では全部を貰っても良いのですけれど、こちらでも左程の金を必要としていないという事情もありますので適度に抑えているわけです。

 一方で拿捕された船の方は既に略奪が行われた後なのか、めぼしいものは無かったようです。
 後から救助船が来た場合を考えて、海賊船にあった残りのお宝は、一応被拿捕船に移動しておきました。

 海賊船は僕の魔法で一気に焼却処分です。
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