コンバット

サクラ近衛将監

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第五章 ブルボン家の嫁

5―2 結婚式

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 ヴィオラでございます。
 時はあっという間に過ぎて行くんですよねぇ。

 私(ヴィオラ)の婚礼の日がやってきました。
 ロデアルからお父様やお母さまとご一緒に、王都へ向かいます。

 私(ヴィオラ)の従者である者達も一緒ですけれど、私がロデアルに戻ってからまもなく、私(ヴィオラ)付きの従者が交代になりました。
 長らく私付きのメイドを務めてくれたローナが交代することになったのです。

 ローナがクビになったわけじゃないのですよ。
 私がお年頃になったぐらいですから、私が赤子の頃から世話をしてくれたローナもとうに適齢期に入っていて、獣人としても年増と言われる年齢になりかけだったのです。

 以前から、彼女には誰か良い人を見つけなさいと言っていたのですけれど、あいにくと幼い頃から我が家のメイドとして入り込んでいたローナにはめぼしい男性が居なかったようなのです。
 本人がその気にならなければ結婚なんてできませんから、昨年の冬場に私が最後の切り札を使いました。

 彼女に御似合いの男性を見つけてきて、見合いをさせたんです。
 勿論、ローナやその男性に気づかれるような下手な真似はしませんよ。

 町中でごく自然に出会うように仕向けただけのことです。
 まぁ、ちょっと闇属性と光属性の融合魔法でそれぞれの相手が際立って良く見えるように意識操作をしましたし、ちょっとした買い物途中のローナに当該男性から声をかけさせるように、ほんの少しだけ後押しをしてあげましたけれどね。

 そうしてかげからの私の支援を受けてさほど時を置かずして二人は恋仲になりました。
 獣人って発情期のようなものがあるんですよね。

 その周期がちょうど会うような時期に出会いましたから、あとは獣人男女の慣習なのか、すぐに男女の仲になってしまいました。
 お相手は、我が家のある領都ヴァニスヒルで大工を営む獣人のコルバンというまじめな男性です。

 ローナと同じ年の獣人であり、すぐにも結婚という話になりました。
 結婚したからと言って我が家のメイドをやめる必要は無いのですけれど、ローナが私(ヴィオラ)に付いてブルボン家に行くことはできません。

 結婚しているローナを連れて行くことは新婚の獣人夫婦を引き裂くことになりますから、そんな無体なことはできないのです。
 貴族の娘が他家に嫁入りする際は、出自の家から通常二人ほどのメイドと一人か二人の男性従者を連れて行くのが、ライヒベルゼン王国を含む広い地域の古くからの習わしなんです。

 ですから、そうなる前にローナに良人をくっつけることで既成事実を作り上げたわけです。
 そうでもしなければ、ローナは私に付いてくるでしょうし、そのことで彼女の幸せを逃してしまうことになります。

 ブルボンでも同じような機会を設けることができたかもしれませんが、私(ヴィオラ)の事前調査によれば、ブルボン領内の獣人は比較的少なく、ローナにお似合いの男性獣人は見つけられなかったのです。
 そんなわけで生まれてから十数年も付き添ってくれたローナを手放し、その代わりに新たなメイドを二人私(ヴィオラ)付きにしてもらったわけです。

 新たな私(ヴィオラ)付きのメイドはクララとセリン、どちらも私より二つ年上の娘ですが、ブルボン家にメイドとして入っても恥ずかしくない娘たちです。
 ついてゆく男性従者は、ローガンというやは私(ヴィオラ)よりも年上ですが、武術も相応にこなせる有能な男です。

 これらメイドと従者三人の教育が、今年の初めから、ブルボン家差し回しの先生により継続されてきました。
 彼ら三人が私(ヴィオラ)の面倒を見なければンらないのは当然なのですが、同時にブルボン家のメイドや従者として家風を知らなければならないので、四か月ほどの研修期間があったわけです。

 彼らの日課は私(ヴィオラ)付きの仕事が半分、研修が半分でした。
 ロデアルを出る際にはお世話になった人たちと別れを告げましたけれど、ローナとは抱き合って別れを惜しみましたね。

 彼女も幸せになってほしいと願っています。

 ◇◇◇◇

 結婚式は、お姉さまの結婚式と同じ、サベラ・デ・マヒと言う結婚式場です。
 最初に司教様の前で神々への誓いをなし、市況様から夫婦と認められると披露宴会場に行って、参集していただいた皆様に神々の御前みまえでの誓約がなったことを披露するのです。

 披露宴は長くても一刻半ほどでしょうね。
 新郎新婦は二人揃って、披露宴に出席してくれた方々にご挨拶をして回るのがしきたりです。

 特にブルボン家が侯爵ということもあって、概ね国王派の貴族の九割近くの貴族が顔を揃えていますので、ご挨拶だけでも大変です。
 お姉さまの結婚式の際も、同じようにお姉さまとエリオット義兄にいさまが挨拶回りをしていましたが、今回はそれに輪をかけた人数なんです。

 ブルボン侯爵家の付き合いの深さと人望がよくわかりますね。
 当然ことながら、ご挨拶をするとともに、その顔と名前を覚えておかねばなりません。

 既に私の場合は、ライヒベルゼン王国の貴族全員の名前と顔は知っているんですけれど、直に会うのは初めての人も多いですから、内緒で鑑定をかけてその為人ひととなりを知ることが目的でもあります。
 因みに私が鑑定をかけることで人に気づかれたことはありません。

 魔法の発動を見破ることのできる、お母さま付きの専属メイドであるカテリナやブルボン家のお義母かあさま付きのメイドであるユリアにも、私の鑑定を気づかれたことはありません。
 この二人は、他の魔法の発動なら感知できるんですけれどね。

 私の鑑定魔法の発動は特殊みたいです。
 出席していた貴族の方々全てに鑑定をかけて特段の問題はありませんでしたが、結婚式場のスタッフに怪しげな人物が紛れ込んでいることがわかりました。

 私の鑑定では『王弟派の手先』と表示されましたから、スパイであることは間違いないでしょうね。
 お姉さまの式の際には居なかった人物のはずですので、その動静に注意しなければなりません。

 式神を当該人物に張り付け、出席者の間で重要な密談が交わされるような場合には、当該人物には密談が漏れないよう意識操作をしました。
 最初にこの人物が要注意との無意識の警戒感があれば、密談を中断するはずです。

 何で、私(ヴィオラ)がこんな防諜活動までしなければいけないのかと、若干鬱屈感も増しますけれど、これも貴族の暗闘の一つなのでしょうね。
 このスタッフについては、事後の活動も監視するつもりです。

 場合によっては、排除も考えなければなりませんね。
 単純に、この式場のスタッフを首になれば、それだけでも排除になります。

 結婚式が予定通りに終わると参会者はお帰りになりますが、その際は、ブルボン家当主ご夫妻、エルグンド家当主ご夫妻、それに新郎新婦である私(ヴィオラ)とレイノルズ様が出口付近でお見送りの挨拶を一人一人にしなければなりません。
 それが済んで、ジャクソン義父様とマーガレット義母様、それにお父様とお母様は王都別邸へそれぞれ帰ります。

 私とレイノルズ様は、それぞれの従者やメイドそれに警護の騎士の一団とともに、式場に併設された宿に泊まり、そこで三日の間はハネムーンですね。
 この間にブルボン家当主ご夫妻はブルボン領へお戻りになっている筈です。

 勿論、両親であるエルグンド家当主ご夫妻も、ロデアルに帰還しますよ。
 三日後、私(ヴィオラ)とレイノルズ様は、ブルボン家の馬車に乗ってセルデンに向けて出発です。

 宿でのハネムーンはどうだったって?
 そんなことは、夫婦の秘密ですから話せません。

 夫婦の契りは、つつがなく終えましたとだけ申し上げておきましょう。
 ところで、例の式場スタッフですが、厚かましくも私(ヴィオラ)達の寝室の様子まで窺おうとして天井裏にまでこっそり忍び込んでいましたので、とっ捕まえて、警護の騎士に引き渡しました。

 当然式場支配人からは即日解雇を申し渡され、仲介したギルドにも通報されましたので、以後まともな仕事には付けないでしょう。
 警護の騎士から王都警備隊に引き渡され、そこでかなりの拷問を受けても自白しなかったのは流石ですけれど、捕縛してから五日後には、単なる覗きの罪で百叩きの刑を受けていましたね。

 くだんの男、王都警備隊から放り出されたその足で、夕刻に王弟派の重鎮ベルエッセン侯爵の王都別邸を訪ねたようですが、けんもほろろに門番に追い払われ、とぼとぼと歩いているうちに刺客の手で殺され、遺骸は川の中に放り込まれていましたね。
 王都警備隊の中にも当然のことながら、王弟派の者が入り込んでいるわけですから、捕縛されたその日のうちにベルエッセン侯爵の下にも何らかの報告があったのでしょう。

 王都警備隊に目をつけられた人物をおいそれと侯爵家の執事が受け入れるはずもありません。
 当然のように門番の騎士には、当該人物が現れても追い払えと明確な指示が出されていた筈ですし、事後、何かとこの人物が災いになることを恐れて別邸の執事が刺客を放ったようですね。

 因みに、ベルエッセン侯爵は王都には不在でしたが、一々、主の判断を伺うことなく、即断することができる人物が王都別邸の執事ということなのでしょう。
 ある意味では敵方の家臣筋なわけですが、まぁ、あっぱれと言わざるを得ませんね。

 主の危機を察知したならば即座に判断を下す、それが執事の役割かどうかはちょっと疑問なのですけれど、エルグンド家王都別邸それにブルボン家王都別邸にも同じように政治的手案をある程度持った有能な執事を抱えているのでしょうね。
 私が秘密裏に色々探っても代理の人が独自の判断で動くのですから、中々、暗部の中心人物が浮かび出てこないわけですよ。

 まぁ、それでも殺された男に式神を張り付けておいたおかげで、黒幕がベルエッセン侯爵であるらしいことが判明したことが一応の収穫ですね。
 取敢えずの被害は無かったのですけれど、私(ヴィオラ)に色々と気を遣わせる面倒をかけたのですから、そのうちに折を見てベルエッセン侯爵に何らかの御仕置をしなければならないかもと考えているところです。

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