コンバット

サクラ近衛将監

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第五章 ブルボン家の嫁

5―3 嫁として三年

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 ヴィオラでございます。
 前回と同じく、ブルボン家の嫁として嫁いでから三年、時はあっという間に過ぎ去ってしまいました。

 ブルボン家に嫁いだことで、ヴィオラ・エルディ・エルグンド・ブルボンという名前に変わりましたよ。
 名前の中の『エルディ』は、嫡男の嫁という意味です。

 また、夫であるレイノルズが、お義父とう様の後を継いで侯爵になると、ヴィオラ・エルグンド・ディーヴァ・ブルボンと言う名前に変わります。
 『ディーヴァ』は正室という意味合いですね。

 私(ヴィオラ)がブルボン家に嫁いでから色々な領内改革を手がけました。
 私(ヴィオラ)が子供を産む際に、周囲の者に衛生観念がしっかり根付いていないと、せっかく子供が生まれても病気になる恐れもございます。

 ですから取り敢えずは、出産の際の知識を中心に医療面での衛生知識をメイドたちに教え込みました。
 その上で領内にも衛生観念を植え付けるための教育を普及させたのでございます。

 学校教育はもちろんですけれど、種々の機会をとらえて、住民に衛生的な生活を送るためには何を為すべきかを徐々に浸透させていったのです。
 多分、ロデアル領とともに最も衛生的な領地にブルボン領はなりつつあります。

 そのための製品もたくさん作り始めています。
 医薬品もブルボン家の特産物として奨励し始めました。

 温室での薬草栽培を教え、希少価値のある薬草を育て、その薬草から様々な医薬品を生産できるように薬師を育てたのです。
 お年寄りはとかく頭が固い方が多いので中々に教育も進みませんが、才能を持つ若い薬師を選出して、その者を中心に教育を進めました。

 その者たちが1年もすると老人の薬師達よりも質の良い医薬品を生み出すに至って、気概のある年配薬師が私(ヴィオラ)の行う十日に一度の勉強会にも顔を出すようになりました。
 最近では、王都の薬師ギルトもブルボン領に薬師見習いを送り込んで教えを請いに来ています。

 薬師の能力向上は、ライヒベルゼン王国にとっても大事なことですので、学ぶ意欲のある者は、誰であれ受け入れています。
 上下水道もジャクソンお義父様に進言して、徐々にですが整備を進めています。

 現在ではセルデンの6割、領内の他の地域では3割程度まで上下水道が普及し始めてまいりました。
 更に、ロデアルから来た農業指導員が良い仕事をしてくれました。

 輪作がブルボン領内に根付き、小麦の収穫量が徐々に増えているのです。
 またブルボン領内の悩みの種でもあった銅鉱山についても私(ヴィオラ)がそれとなく導き、セルデン南西部の山地で有望な銅鉱脈の開発を進めさせています。

 少なくともここ五十年は、銅鉱石の産出で困ることはないでしょう。
 問題は、銅の採掘と精錬に伴って発生する鉱毒の処理ですね。

 これまでの銅鉱山では、多分に垂れ流しが横行していたようです。
 これについては、すぐに錬金術師を雇って相応の教育を施し、鉱毒となる銅(銅イオン)、ヒ素、カドミウム、硫酸成分、それに鉛、水銀などの他の微量重金属や亜硫酸ガスの分離を進めさせ、無害なものにして地下の倉庫に貯留しています。

 幸いにしてライヒベルゼン王国有数の銅鉱山とは言いながら、これまでの生産量がさほどでもなかったことから、鉱毒被害は心配するほどには拡大していません。
 それでも銅鉱山の下流域の河川床にかなりの鉱毒成分が溜まっているようでしたので、川の浚渫を行い、こちらも錬金術師により鉱毒成分の分離を行わせています。

 結婚前の私(ヴィオラ)も数度のブルボン訪問では、鉱山の巡視まではしていなかったので鉱毒問題を見過ごしていたのです。
 放置するとブルボン領だけでなく他の領内にまで健康被害が及ぶはずですので深刻ですよね。

 領内は錬金術師に任せて、下流域にあたる他の領内については、時折、私(ヴィオラ)が内緒で川床を除染しています。
 但し、ブルボン以外にもライヒベルゼン王国内の三か所に銅鉱山があり、そこでも同様な問題が生じておりましたので、ジャクソンお義父様に申し上げて王宮に働きかけ、錬金術師による鉱毒の除染を進めるよう進言してもらいました。

 この結果、この除染に携わる錬金術師の養成も、半年ほど前からブルボン家で行うようになりましたよ。
 もう一つ、ブルボン領北側にある山地で隣国との国境周辺にある未だ未発見の鉱山については、ジャクソンお義父様とレイノルズに教えました。

 この段階では私(ヴィオラ)の能力の一部を披歴することに躊躇ためらいはありません。
 色々な改革をするためには、どうしても領主であるお義父様と夫であるレイノルズには種々の協力をしてもらわねばならないからです。

 学校教育の改革をかなり進んでいます。
 まずは子供たちに向けて威圧を放つような教師や学校関係者は順次解雇するようにしました。

 代わりの人物が見つからないと解雇もできませんからね。
 人を見つけてからの解雇になるので、三年経ってようやく役立たずの教師陣は一掃されましたね。

 新たに雇った人物は、ブルボン領だけではなく、王都あたりからも半数近くの人材を集めました。
 また、色々と収益が上がりつつあるブルボン家の家計をにらみつつ、学校教育を無償化するように致しました。

 当初は、なかなか同意を得られなかったのですけれど、最初にヒルベルタお祖母ばあ様を攻略して、そこから順次、ブルボン家の男どもの意識改革を進めたのです。
 人を育てることが、領内の繁栄につながるということを他の実例で気づかせたのです。

 衛生観念の普及にしても文字が分からないとどうしても普及が遅れます。
 文盲もんもうが居なくなるだけで、侯爵家のお触れが領内の隅々にまで伝わるのです。

 鉱毒処理に携わった錬金術師しかり、農業改革に携わった指導員然り、適切な教育を施さねば領内は良くならないのです。
 但し、この教育はある意味で『諸刃の刃もろはのやいば』であり、貴族と平民という階層社会の問題点をもあらわにすることになるでしょうから、将来的にフランス革命のような社会体制の転換をも惹起する可能性はあります。

 その辺は、国王や領主の政策次第になるでしょうね。
 多分、私(ヴィオラ)がレイノルズの嫁である間はそんなことは起こらないと思いますよ。

 ブルボン領での岩塩掘削事業は思いのほか進み、先頃、ようやく岩塩層に達したところです。
 岩塩を掘り出して、製塩するのにも錬金術師で可能なのですけれど、手の空いている錬金術師は鉱毒対策に回していることから、当面は私(ヴィオラ)が造った魔導具での製塩を行なうことにしています。

 先月、ようやく製塩が始まったところですので、今のところ他の領内や他国への輸出までは至っていませんが、ロデアル領とも相談してカルテルを結び、他国に輸出する場合は海岸国からの輸入塩よりも少し高めの値段をつける予定です。
 高めの値段にする理由は、明らかに塩の品質が海岸国の生産塩よりも良質だからなんです。

 従って、ライヒベルゼン王国産と言う、ブランド名で少し高めの値段をつけているわけです。
 その一方で、国内向けに流通する塩は少し安めにしているんですよ。

 そのことで、北方の海岸国からのライヒベルゼン王国への塩の輸入は激減し、西方の海のない国々への輸出が増える流れに変わっています。
 因みに、潮の輸出を止めるために圧力をかけていたレインバルク帝国ですが、国内が三つに分かれて勢力争いを継続しているほか、再三にわたる東征艦隊の難破(私(ヴィオラ)が犯人です)で、三カ国の海岸国へ艦隊を派遣する余裕がなくなってしまったことが圧力解消の原因ですね。

 従って、現在では、ゼラート王国、パルテネン王国、ホルツバッファ皇国は、塩の輸出を回復させているのです。

 ◇◇◇◇

 私(ヴィオラ)の現状は、二人目の子を身ごもっていますよ。
 一人目の男児は嫁になってから1年目に生まれました。

 母体も子供も健康ですし、次世代の後継者もできましたので取り敢えず私(ヴィオラ)の嫁としての御役目の一つはほぼ済んでいるわけですが、レイノルズがラブラブなので、二人目もできちゃったわけです。
 出産には特段の支障はありませんでしたよ。

 子供にとって最良の環境を整えて胎児を育てましたし、出産における注意事項も私(ヴィオラ)に付いているメイドたちにしっかりと叩き込んでおきましたので、何の心配も無かったのです。
 第一子は、チャールズと名付けられました。

 二人目も、私(ヴィオラ)の鑑定能力で見る限り男児ですね。
 次の名前もレイノルズに考えてもらっている最中です。

 因みにチャールズは私(ヴィオラ)に似たのか、普通の子供よりも魔力の保有量が多そうです。
 時折、魔力過多のために幼児の段階で支障を生ずることもあるのですけれど、私(ヴィオラ)がそんなことはさせません。

 体内の魔力の流れを良くして、経路が詰まったりしないように気を使っていますから、健康に育っていますよ。
 流石に、生まれてすぐに魔力の扱いを教えるようなことはしませんが、チャールズが三歳になったら、魔力操作の扱いを教えるつもりです。

 ところで、北側国境周辺にある未発見の鉱脈なんですが、ライヒベルゼン王国ではこれまでに掘られたことのない『タイラントア』という珍しい鉱石なんです。
 この鉱石には、ヒヒイロカネ、アダマンタイト、ミスリル、金、銀 銅などの多種多様の金属が含有されているのです。

 記録によれば、およそ300年前にワオデュール大陸西部にあるカレンフォール王国でタイラントアの鉱脈が発見されたという記述があります。
 この鉱石はアダマンタイトなど非常に硬い金属が含まれているために掘削自体が非常に難しく、現状でも年間に約1~2センティプルト(4トン~8トン程度)を掘り出すのがやっとのようです。

 それでも有用鉱物の含有量は、約3割(1.2トン~2.4トン)に達していることから、採鉱と精錬が容易になれば、大きな利益が望めることになります。

 因みに、ヒヒイロカネは1プルトで白金貨20枚(≒2億円相当)、アダマンタイトは1プルトで白金貨5枚(≒5000万円)、ミスリルは1プルト白金貨二枚(≒2000万円)、金は1プルトで大金貨5枚(≒500万円)、銀1プルト金貨3枚(30万円)で、銅1プルト大銅貨8枚で(≒8000円)、鉄は1プルトで大銀貨1枚(≒1万円)程度の時価のようです。
 他にも希少な金属元素が含まれているようですけれど、生憎とこの時代の冶金業では簡単に利用できていない代物のようですね。

 放射性元素は含まれていないことは、私(ヴィオラ)が確認しています。
 実際のタイラントア鉱石には、各成分の割合にかなりばらつきがあるのですけれど、それを無理に平均化すると、年間では金属含有量合計がおよそ、0.36~0.72センティチプルト(36~72ミルプルト=約1.4~3.6トン)程度の有用鉱石が採掘可能なのです。

 飽くまでも捕らぬ狸の皮算用ではあるものの、含有量から判断して、1センティプルトのタイラントアには、およそ白金貨20枚程度の価値がありそうです。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 注)重さの単位について
 重さの単位は、地域により多少異なるが、樽酒の内容物の重量で重量の単位系が造られている。
 内容物の酒の種類としては概ねワインが用いられているが、稀にブランデーなどの蒸留酒の場合もある。

 このために地域によってどうしてもばらつきがある。
 1レミント(容積単位)が約432㏄~504ccなのだが、この重さを1プルトとしている。

 つまり1プルトは0.4キロ~0.5キログラム弱程度の重さですが、ライヒベルゼン王国を含め、この世界では、単位系がいまだ左程の精度を求められていないことから、地域により結構なばらつきがあるようですね。
 1プルトの100倍を1ミルブルト(概ね40キロ~50キロ)といい、その100倍を1センティプルト(概ね4トン~5トン)と言います。
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