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サクラ近衛将監

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第三章 学院生活編

3ー29 冬休みの帰省 その一

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 ヴィオラで~す。
 学院の冬休みが始まり、お兄様、お姉さまとともに馬車で旅の途中です。

 クリスデルお兄様は、もう12歳ですからね。
 前世だと15歳か16歳くらいになるんじゃないでしょうか。

 身長も伸びましたし、体力もついてまいりました。
 まぁ、そうは言っても、周囲の貴族子女よりもチョット魔法が使える男性という程度なので、本気の私にはかなわないはずですけれど、お兄様と勝負なんかしませんよ。

 私は飽くまで少し魔法のできる妹に過ぎませんから・・・。
 スーパーウーマンの真似ごとは時々やっていますけれど、家族には内緒なんです。

 お姉さまは10歳です。
 うーん、前世だと13歳ぐらいなんだと思います。

 初潮もあり、あまり目立ってはいませんけれど、乳房も膨らんできました。
 お母様が乳房が大きいのでその遺伝を引き継いでいれば大きくなるはずなんです。

 いまだ色気は無いですけれど、前世の私の視点から見るととってもかわいい中学生くらいでしょうか。
 私達三人は一緒に帰りますけれど、お兄様は嫡男で世継ぎなので別の馬車です。

 一つの馬車に6人が乗れないことは無いのですけれど、少し窮屈なんです。
 かといって長距離を走る馬車の場合、従者を別の馬車に乗せる訳にも参りません。

 昨年の冬休みは三人がそれなりに幼少でしたから6人乗っても余り窮屈ではなかったので一台の馬車で済みましたけれど、今回からは二台の馬車に分乗です。
 お兄様だけは一台で、私とお姉さまがもう一台の馬車にそれぞれの侍女などとともに乗車しました。

 警護の騎士は、お兄様の馬車に6名、私とお姉さまの馬車に4名で都合10名の騎士がついています。
 そうして別立ての馬車には、三人の工房見習いが乗車しています。

 一応の目安が立ったので、いよいよロデアルに温室を作って、そこで色々と農業改革を手掛けてもらう予定なのです。
 職人見習いで私付きの従者扱いなのですけれど、長旅の場合、貴族の馬車に執事や侍女は同乗できますが、それ以外の従者は乗れない建前になっているのです。

 当然のことながら、その馬車の警護をエルグンド家の騎士にさせるわけにはまいりませんので、当該馬車用の警護要員として冒険者を四名雇っています。
 そうして王都に戻る際には、またロデアルの孤児院から二名ほど連れてくる予定でいます。

 旅程は、王都レリーダからロデアルまで、スレイビア街道を使って行くので、途中五つの宿場町を経由することになります。
 従って、ロデアルまでは、通常五泊六日の旅ですね。

 尤も、旅の間に気候変動や災害などが起きたりすると、その分遅れることもあるんですよ。
 非常に稀なのですけれど、冬場に途中の山岳地帯に大雪が降ったりすると、交通が一時途絶することもあるんです。

 ルテナによれば、七年前に山岳部に大雪が降った際には一週間も物流が止まったそうです。
 前世の日本も首都圏に少し雪が降っただけで大騒ぎになっていましたから、こちらでもおそらく十分な除雪機能がないのでしょうねぇ。

 何だか魔法でやればすぐできそうにも思いますけれど、あるいはそれに対応できる魔法師が居ないのか、それともそんな下世話の作業には魔法を使わないという魔法師特有のプライドみたいなものが邪魔しているのかもしれません。
 ルテナ曰く、七年前は人海戦術の手作業で除雪していたようです。

 今回の旅に関しては、ルテナの長期予報によれば行きも帰りも雪の心配はありません。
 もともとライヒベルゼン王国は降雪が少ない地域なので、降るにしても山間部だけですね。

 王都を発って最初の宿は、ウェイブルと云うデュッヘル侯爵領の領都です。
 二日目はフォルクスロッジと云うエルマーズ子爵領の町になります。

 三日目はコルマン伯爵領のケッヘルデンで、さらに四日目はバイデル男爵領のネルミスなのですが、このケッヘルデンとネルミスの間に山間部があり、冬場には稀に降雪がある地域なのです。
 今回の帰省では、ケッヘルデンを出てネルミスに向かう途上で異変が生じました。

 危険な魔物が出現したのです。
 グランド・レッドベアという特異体のようで、立った時の体高が二尋を超える化け物なんです。

 そうして偶々たまたま私たちの馬車の前を走っていた隊商の馬車が襲われたのです。
 相手は額部分に大きな角の生えた大型の熊の魔物が一匹だけなんですけれど、隊商についていた冒険者の護衛では全く相手にならず、次々と倒されて行く中で、低クラスの冒険者(?)が警護の任を放棄して逃げに掛かりました。

 寄りにもよって、50尋ほど離れた私たちの馬車に向かって逃げて来るんです。
 これはと言って人に魔物などを擦り付ける行為ですので、本来冒険者については禁止されている行為のはずですよね。

 いくらクラスが低い冒険者とはいっても、仮にも隊商の護衛を受けるならば中程度の冒険者であるはずなんです。
 この人達については別途処罰の対象になるでしょうね。

 そんなわけで、私は逃げて来た四人の冒険者について鑑定をかけて、身分や姓名などを念のために確認しておきました。
 貴族の車列に対してこんなことをすれば、そのまま切り捨てられても文句は言えません。

 尤も、ウチの騎士達もそんな余裕はないんです。
 冒険者を追いかけるように物凄い速度で赤黒い巨大熊が接近して来るので、その対応をしなければなりません。

 私はため息をつきながら、式神を用意して入れ替わり、馬車の上空に姿を消したまま転移しました。
 今日は、緑の衣装にコーディネイトした男性冒険者に変身です。

 ウチの警護の騎士さんも結構強いはずですけれど、流石に目の前に迫ってきている巨大熊には太刀打ちできません。
 おそらくは剣や槍では傷もつけられないと思います。

 熊さんを鑑定しましたら、何とAクラスでも上位のランクになるモンスターで、物理耐性と魔法耐性が物凄く大きいのです。
 警護の騎士の中に魔法師が二人居ますけれど、彼らが発動できるのは中級でも下位の魔法だけのようですから、護衛の10人ではどんなにあがいてもこの熊には対応できそうにありません。

 私の乗っている馬車の後ろについている見習い職人が乗った馬車を護衛している冒険者も精々Cクラスの魔物に対応できるだけのはずなので戦力外になりますよね。
 みんなで寄ってたかってタコ殴りというのは、場合によっては有効なのかもしれませんが、この特異体の巨大熊には通用しそうにありません。

 ウチの馬車とお兄様、お姉さま、それに警護の騎士や私の職人見習い達を守るには私が出るしかありませんでした。
 姿を見せないでやっつけるという選択肢も無くはありませんが、今回は部外者も居ますから秘密を守るために敢えてあえて姿を現します。

 迫る巨大熊の二十尋手前で姿を現し、一気にアースブロックで岩を路上に繰り出し、クマさんの勢いをいだ上で、太い鋼線でバインドをかけます。
 植物の蔦によるバインドも結構強力なはずなのですけれど、この熊さんを拘束するには強度不足なのです。

 拘束したのには理由があります。
 この巨大熊がいきなりこの街道に出現するなんて少し異常ですからね。

 すぐに討伐はできたんですけれど、調査をするために取り敢えず拘束したのです。
 詳細鑑定をかけたら、この熊さん人造魔物であることが判明しました。

 ルテナの調べでは、既に十二人以上の旅人や冒険者を殺戮していますので、生かすことはできませんが、背後にある組織若しくはこの人造魔物を手掛けた人物を特定しなければなりません。
 闇魔法でこの熊さんの混濁した意識を探り、マッド・サイエンティスト?若しくはマッド・アルケミスト(?)の存在を察知しました。

 男の名はわかりませんが、バイデル男爵領の西南西にある集落のはずれに居たらしく、クマさんはそこまでの道筋を覚えていました。
 熊さんは幼少の頃に捕らえられて地下施設に棲み、そこでいろんな生体実験を繰り返されたようです。

 そうして大きな魔石を加工したものを額に植え付けられてから狂暴化し、同時に身体が急激に成長したようです。
 マッドサイエンティストの誰かさんは、その成果に満足したようですけれど、クマさんの方は飢餓意識に囚われ、頑丈なおりを破って、同じ地下階層に居た動物や魔物の類を食ってここまで成長したようです。

 ついでにマッドサイエンティストの誰かさんもクマさんの胃袋に入っていますね。
 そんなわけでバカな男の所業で、多くの人命が失われたことになります。

 ある意味で私たちの馬車がここへ通りかかったのは僥倖ですよね。
 さもなければ近隣の町や村が次々に襲われていたかもしれません。

 この熊さん、魔石を植え付けられたことで『暴食』というユニークスキルを持ったために、いつでも飢餓状態なんです。
 そのくせ、この暴食は、獲物の命を奪って一齧ひとかじりすることで一旦は満足し、次の獲物を追うのことになるので性質たちが悪いですよね。

 ここまでわかって、この熊さんの首をねました。
 熊さんを残しても良いことはありません。

 私が暴食のユニークスキルを消してあげれればよかったかもしれませんが、流石に強奪のようなスキルは私にはありません。
 コピーならできるかもしれませんが、私には絶対不要なスキルですものね。

 首を撥ねた巨大熊さん、このまま放置すると他の生態系に災いをもたらすかもしれませんので、取り敢えず私の保管庫に入れました。
 後で焼却処分をする予定です。

 ある意味でささっと巨大熊さんを片付けて、私もその場を立ち去りました。
 貴族に対する不敬に当たろうがこの際構いません。

 エルグンド家と関りある人物みなされれば色々と面相になりますから、そのためにも馬車から離れなければならないんです。
 そんなことで、現場から姿を消してから馬車に戻ってお姉さまとご一緒に事後の片づけを待っています。

 何せ隊商の護衛やら商人やらの死体だけで9体もありますから、片付けるのが結構手間なんです。
 他の三体の遺体は別の場所にありますし、ウチの騎士さんたちはそれを知りませんから、そちらは放置です。

 それに道路を塞いでいる大破した馬車も邪魔ですよね。
 あ、逃げてきた冒険者はウチの騎士達によって捕縛されています。

 事情は理解できますけれど、トレインによる擦り付けは駄目です。
 後片付けは騎士さんたちと後方に控えていた冒険者さんたちで実施されました。

 結局私たちの車列は半時ほど遅れてその場を離れ、夕刻には何とかネルミスの宿場町に到着しました。

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 8月15日、一部の字句修正をしました・
  
  By サクラ近衛将監
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