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サクラ近衛将監

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第三章 学院生活編

3ー30 冬休みの帰省 その二

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 帰省中のヴィオラですよぉ。
 学院の冬休みで、お兄様、お姉さまとともに馬車でロデアルに戻りました。

 途中、巨大熊に鉢合わせしたりしましたけれど、謎の冒険者(私(ヴィオラ)でございますが内緒です。)の活躍により、私達一行には何の支障もありませんでした。
 但し、トレインで貴族の車列に巨大熊を擦り付けようとした(ただ、逃げただけかもしれませんが方向が悪かった。)冒険者たちを捕縛してネルミスの衛士に引き渡し、冒険者ギルドにも通報しています。

 彼らには相応の処罰がなされるでしょう。
 この際、当該冒険者達に故意が有ったかどうかは問題にされません。

 相手が貴族であれば、外見上そのように見えるだけで罰せられます。
 では、彼らはどうすればよかったか?

 人気のいない方向に逃げればよかったのです。
 街中などの様に四方八方がヒトで埋め尽くされている場合は。どちらへ逃げてもダメなのですけれど、逆に冒険者は一般人を守るという義務も厳然と存在するのです。

 冒険者ギルドはその役目があればこそ、国境を越えて各国に拠点を設けて活動することが許され、場合によっては貴族等の横暴から冒険者を守る権利を有しているのです。
 ですから一般人や貴族に迷惑をかける冒険者などは害悪にしかなりませんものね。

 いずれにしろ王都を発って6日目には、我が家に到着いたしました。
 我が家の玄関の前には、使用人の半分以上がお出迎えをしてくれています。

 この歓迎は嫡男であるお兄様の為で、私たちはそのおまけに過ぎません。
 でも、私(ヴィオラ)だけが戻ってきた場合にも、人数はかなり少ないですけれどお出迎えはあるんですよ。

 その辺は、貴族の慣習というものですね。
 嫡男は何事につけ優先され、敬われる対象として扱われるのです。

 ところで私達二台の馬車の後についてきた工房見習いの職人が乗っている馬車も、一緒に到着しています。
 見習い三人組は取り敢えず、懐かしの工房兼仮宿舎(旧メイド用宿舎)に宿泊します。

 彼らは一介の職人見習い過ぎませんからメイド等はつきませんが、食事等の準備だけは母屋で行ってもらうようにしてあります。
 そうして、彼らの処遇については、お父様に色々お願いしなければなりません。

 まず第一には土地の問題です。
 農業改革のためには農地を確保しなければなりませんが、単純に言えば、開墾できる農地はほとんどありません。

 これまで何世代も開墾を続けてきているので、平地部分に左程の余裕があるわけでは無いのです。
 あるのは山間部と魔物が出没する危険な原野です。

 私(ヴィオラ)としては、三人の年端の行かない大事な職人をそんな危険なところに向かわせるわけにはまいりません。
 そこで思案の末に、お父様には、私(ヴィオラ)の能力の一部を開示することにしました。

 もう既にお父様やお母様には分かっていることもありますから、今更なのですけれどね。
 農地はこの際ですから地下に造ることにしたいのです。

 地下では人工の照明とかいろいろな設備が必要になりますが、私(ヴィオラ)は錬金術で色々な物を生み出せますので、大丈夫ですし、すでに王都の工房で実績があります。
 いずれそうした魔道具を造れる職人も育てるつもりではいますけれど、今はまだ育っていませんから、私(ヴィオラ)がやるしかありません。

 農業スキルを持つ見習いは二人だけですので、管理できる範囲におのずと限りがあります。
 それで一応の計画としては、200尋四方の農地を16階層造り、最上階は管理区域とすることにしました。

 因みに農場への出入り口は、我が家の敷地を囲う柵の外に新たに作る工房になります。
 当然のことながら、この工房にはこの三人が住まうための居住設備も作ります。

 将来を見据えて、メイド用の旧寮よりもかなり大き目なものを作ることを考えています。
 ですからこの夏休み中に、我が家の敷地のすぐそばに工房を造り、更にその地下に農場を造ることが私(ヴィオラ)の仕事なのです。

 お屋敷の世話にばかりなってはいけませんから、工房には新たに雑用のできる男女とコックを雇います。
 通いでも住み込みでも構いませんが、信用のできる人物に限ります。

 何しろ工房の地下には、大規模な農地があるわけですので、対外的にその秘密を漏らすわけにはまいりません。
 念のため、雇う者達には契約魔法を使って秘密を守らせます。

 到着したその夜にお父様には企画書をお渡しして了承を求めました。
 お父様が問題とすべきは貴族の家のすぐそばに比較的大きな工房が建つこと。

 そうしてその下に大規模な地下農場が建設されることです。
 これが他の貴族に漏れたりすると、場合によって秘密の地下施設を造ったとして王家に対する反乱独立を疑われる元になりかねませんからね。

 実際に中身を見れば、武器の製造や兵士の訓練をしているわけでは無いことがすぐに分かりますし、農地の総面積からして左程の規模の施設ではないことがすぐにわかります。
 尤も、この世界において地下の施設というモノは左程あるわけでは無いのです。

 いわゆる地下牢や、地下の倉庫などは大きな建物に付随して建設されることもあるのですけれど、地下水の漏出等もあって、非常に建設費が高く付き、維持費もかかるものなのです。
 カタコンベの様に人が通常入ることの無い場所で有ればさほど問題にはならないのでしょうけれど、灯りの無いところや換気の悪いところでの居住は、生活程度が上がるにつれ難しくなるものなのです。

 但し、もっと掘り進めて考えれば、そうした建設技術はすぐにも軍用に転嫁できるものではあるのです。
 この企画がお父様に承認されなければ地下農場は諦めて、余り好ましくはありませんけれど山間部に高塀を造って千尋四方の土地を囲い、その中に実験農場を作るしかありません。

 一応そのための土地もロデアルの北方にあるタウロボルという地名のついた湿地帯の原野を選定し、高塀で囲う第二プランも企画書にしてあります。
 でもできれば地下農場の方が秘密を守りやすいのは言うまでもありませんよね。

 結局、二つのプランも同時にお父様にお渡しし、プレゼンもしましたけれど、二日後にお父様から了承を得たのは第一の計画でした。
 お父様曰く、高い塀に囲まれた広い敷地の方が、周囲の者に何かと疑惑を招きやすいのだとか。

 それよりは地下に造って、施設への入域管理を厳格にした方が良いと判断されたようです。
 勿論施設の安全管理は厳格に致します。

 地下施設に入ることのできる者は、生体認証で許可される限られた人物のみになります。
 その入り口は、鍵のかかった三つの小部屋なのですけれど、生体認証のない人物は、そもそも入り口に達することができません。

 仮に外部の者が生体認証のある人物に同行しても扉は開かないようになっています。
 破壊行為等を行なって無理に内部に押し入れば、催眠ガスに寄り無力化されて独房に放り込まれ、そのまま斬首の刑か、終身刑になります。

 いずれにしても、二度と陽の目は見られないことになるでしょう。 
 私(ヴィオラ)は、大事な工房職人を守り、施設の秘密を守るためならば鬼にでもなるのです。

 お父様から許しをいただいたので、ロデアルに戻った四日目から、早速、工房と地下施設の建設開始です。
 工房の建設に際しては、その外側にシートを張って建設途中の内部が視えないよう遮っています。

 農場用の入り口になる比較的大きな地下室を造る必要があるので、そもそも建設段階を外部からは見られたくないのです。
 その地下室の入り口を半日で造り上げ、三日目には工房の外見が完成していましたけれど、お披露目はまだまだ先ですね。

 本来であれば、一軒の家を造るには腕の良い大工等が十数人集まっても二月ほどはかかるものなのです。
 それを数日で造ってしまえば、否が応にも目立ってしまいますから、この覆いを外す時期は、私(ヴィオラ)がロデアルを去る前日にします。

 まぁ、それでも早すぎるのですけれど、実はシートや足場も私(ヴィオラ)が新たに生み出したもので、この世界には未だ無い物ですからそのまま放置しておくわけにはまいりません。
 そうした物が作れる職人が育つまでは、それらの製法は秘密にしておきます。

 地下の農場の方は、お父様から了承をいただいてから十日目には何とか出来上がりました。
 設備はそのためにあらかじめ準備していたものですし、地下施設については、掘り下げながら壁、天井、床を順次作って行きますのでさほどはかからないのです。

 むしろ、空調設備や照明設備、水回り等々の設置・調整に時間がかかりました。
 農業機械の導入についても検討はしましたが、今のところは見合わせています。

 私(ヴィオラ)の職人には農業の基本をまず覚えてもらい、それができてから便利な道具を追々導入して行きたいと思っているのです。
 このためにロデアル到着後十三日目には、私(ヴィオラ)の見習いたち三人が、工房に移り住み、栽培実験を始めるようになりました。

 工房での生活を守るために二人の女性、二人の男性、そうしてコック一名を雇っています。
 ヴァニスヒルの領主邸のすぐ脇に立っている工房ですので、野盗が狙うとは思われないのですけれど一応の防犯設備は施しています。

 許可の無い者は、工房の敷地の中にさえ入れません。
 さほど高い柵ではないですけれど、無理に乗り越えると警報が鳴り、同時に電撃を浴びて、しばらくは動けなくなります。

 そのような不届き者が居る場合は、私(ヴィオラ)の工房なのですから、我が家の警備に当たっている騎士たちが最終的に対応することになるでしょう。
 因みにお米の方は品種改良が進み、今では数千世代を超えています。

 試食では、前世のお米に匹敵すると私(ヴィオラ)は自負しているのですけれど、生憎と前世の私と今の私では味覚が違うかもしれません。
 その辺は、料理のスキルを持ち、味覚に優れた私(ヴィオラ)の見習い職人アマリスに託します。

 当然のことながら、味噌と醤油の製造にも携わってもらいます。
 米も麹からの製品も職人が作れるようになって、初めてロデアルの特産品になりますからね。

 農夫スキルのアルノルドとフルヴィア、それに料理スキルのアマリスには、その活躍を大いに期待しています。

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 8月25日、一部の字句修正を行いました。
 8月31日、「ゲルメド」を「アルノルド」へ、「サファロ」を「フルヴィア」へ修正しました。

  By サクラ近衛将監
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