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第三章 新たなる展開
3-20 世界不況とその対策
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史実における恐慌の兆候は至る所にありましたが、主たる原因は第一次大戦における特需で米国に富が集中したことでしょう。
そうして、第一次大戦の敗戦国ドイツに対して過大な賠償金を掛けたことがより大きな負のスパイラルを招きました。
ドイツには賠償金の支払い能力がありませんでしたから、金持ち国の米国から借金をします。
その金は勝者である連合国の英国や仏国などに流れ、戦後復興に役立ちはしましたが、利権に絡む経済マフィアはどこにでもいます。
ある意味であぶく銭でもあった余剰資金は、金利の低い欧州よりも大量生産の導入で経済が活発な米国に資本と言う形で流れ込み、それが投機を生みました。
しかも小豆相場のような将来利益を当て込んだ投資であって、欧州からの投資だけではなく、困ったことに米国で比較的に余裕の生まれた中流層のサラリーマン家庭にもその風潮が広まったのです。
中流層家庭の奥様がへそくりを投資に使いだしたのです。
女性の地位向上は未だできていなくても賢い女性は機を見るに敏であり、儲かるとわかっている投資には手を出すものです。
一時期女性の投資家が米国で4割を占めたという話もあります。
また不況を招く一因の一つには20世紀の日本でもあった土地の投機によるバブル崩壊があります。
舞台はフロリダ半島のマイアミです。
リゾート地として売られ始めた宅地があれよあれよという間に値上がりしたので、投資家のみならず銀行までもがそのブームの尻馬に乗ったのです。
住むための宅地であるのにも関わらず、転売目的で土地が買われ、そして売られるのです。
一時期には1日に7度も転売されその都度高値になったそうです。
実質的な生産価値の無い土地にそれほどの高値を付けていては、いずれ破綻が来ます。
また株価指数先物取引というものが流行りました。
これが前述した『小豆相場のような将来利益を当て込んだ投資』なのです。
株の現物売買ではなく先物株の投機で決済を行うため、現実にはほとんど現物の売買を行いません。
その代わりに、決済時の利益も大きくなるのですが、損失も大きくなり易いのです。
いわゆるハイリスク・ハイリターンなのですが、当時の株価上昇機運がハイリターンの実を示していたのです。
この「株価指数先物取引」では、一般的に株の10%から25%の保証金で先物買いができるのですが、決済日に株価指数が下がっていれば損失額を納入しなければならず、仮に30%の下落の場合、保証金を取られた上に更に差額(5%から20%)の現金を支払わねばなりません。
単純に言えば、1万円の株を千円の保証金で先物買いした場合、決済日に株価が1万2千円相当であれば、保証金プラス2千円の差額が手に入ることになります。
逆に株価が8千円相当であれば、株は勿論手に入らず、千円の保証金を取り上げられた上に千円の差額を請求されることになり、現金が用意できなければ私財が差し押さえられることになるのです。
1920年代の米国の投機熱が盛んになった頃には、それまでの株価上昇が異常であったにもかかわらず、今後も続くものと臆断して皆、投機に走ったのです。
そのことが更に株価を押し上げ、実態のない好景気のまま、1929年10月24日のブラックマンディーが起きてしまったのです。
その前には投機が余りに加熱していることから、FRA(連邦準備銀行)が再三に渡り注意喚起を行ったものの、目の前に金儲けがあると信じている者は、そんな注意喚起には見向きもしなかったのです。
それに輪をかけて個人の少額投資家が増え、銀行もそれらの投資家に低利で資金を貸し与えたのです。
ある意味で仕方がない部分もあります。
確かにこの時期景気が好調で投資をすれば必ず儲かる状況でもあったので、歯止めがきかない状態だったのです。
折から自動車等の大量生産による値段の低下とローン金融が始まったことにより、高根の花だった自動車が買え、家なども購入できるようになったのです。
このため中産階級がこぞって自動車を買い、家を買うことにより、消費ブームが起きたのです。
第一次大戦の影響で米国は未曽有の景気に沸き立っており、労働者も相応の賃金を得ることができて中産階級が裕福になったと云うイリュージョンにたぶらかされていたのです。
但し、いつまでも好景気は続きません。
好景気の後には不景気がやって来ます。
それを予測しながら金融政策を立てなければならない各国政府でしたが、生憎とこれまでにない世界規模の経済の流動性は一国だけの経済規制では対応しきれなかったのです。
米国は未曽有の好景気であった反面、欧州地域は労働者の減少(第一次大戦による男性兵士の死亡)と職場破壊による就労先の減少等により不景気を迎えていました。
当然ことながら投資家は不景気な欧州市場を見限って米国への投資へと切り替えます。
そのことも欧州経済の疲弊を招きます。
しかしながら、一方で土地に対する投機熱はマイアミを襲ったハリケーンにより、一瞬にして崩壊することになります。
ハリケーンで水没し、荒廃した土地を購入する者など居ません。
この段階で数千の投資家が財産を失っていると言われています。
米国版バブルの端緒であり、バブルの崩壊で体力を失った銀行がその損失補填をするためにマネーゲームに手を出した結果が、数千の銀行倒産であり、不況により生まれた失業者の群れなのです。
小さな小石が崖の上から零れ落ちた瞬間に元々不安定だった崖の大規模崩壊が始まり、米国のみならず欧州を含む全世界に恐慌が広がっていったのです。
世界不況の原因について後付けながら種々の分析がなされています。
その一説によれば、①米国においては1920年代末に内需が限界を迎えつつあったこと、②米国国内の資金循環が実体経済とかけ離れて動いていたこと、③世界中で農業問題が深刻になっていたこと、④連邦準備銀行の金融引き締め策が逆効果を生んでしまったこと等々が上げられています。
残念ながら経済学者が豊富な資料を基に後付けで解析するような真似は、事前にはなかなかできません。
当時の学者も経済界をリードする者達も漠然とした不安を感じながらも滔々とした流れに押し流されていたのが真実でしょう。
いわんや一夜漬けの見本のような少額投資家に不況を避ける能力はありませんでした。
一方で帝国はというと、①の内需は計画経済の如く制限を受けていました。
主として飛鳥グループの生産物が需要よりも少なく供給されながら、価格は上がらない状況に置かれていました。
無論プレミア感を追い求める人も少なからずいましたが、私が心理的に抑え込んでいました。
闇魔法のヒュプノではなく、ありきたりの広告の中に潜在意識に作用する語句が用意周到に入れられていたのです。
これにより、消費者には待てばいずれ入手できると確信させることができました。
②の資金循環については外資の導入について予め規制がなされたために欧州や米国の資本が帝国内に大量に流入することが防がれました。
また、国内投資については純然たる投資家の会社利益の還元のみを重視させ、株の転売をできるだけ少なくさせる税制を取らせました。
このために株を転売することにより利益を得ようとする輩が減りました。
転売することにより得た利益よりも、転売にかかる手数料や税金が増えるのであれば転売は減ります。
このために資本投下よりも銀行に預けて利子を稼ぐ風潮が強まりました。
銀行は預けられた金銭を優良企業に貸し与えることによる利ザヤで勝負するようになり、危険な投機は減少したのです。
一方で大手銀行から金の貸し付けを断られがちな中小企業には飛鳥銀行が厳密な査定を行って資金投入をしましたし、20世紀末から始まった、余力のある金満家によるベンチャー企業へのボランタリーベースでの投資が大正初期には流行り出しました。
その火付け役はひょっとすると私でしょうか?
ノブレスオブリージュの一環として、華族からの少額投資を奨励したのです。
大規模な額でなくとも、始めたばかりの中小企業は随分と助かります。
実際、町工場と言われる多くの小規模新興企業が増えたのもこの時期です。
その多くは飛鳥グループの下請け企業になって、帝国の産業基盤を支えています。
③の農業問題については、私の推し進める新型農場が皮肉にも世界的な農産物の過剰生産を後押ししてしまいました。
この当時の米国は大量生産の走りとあって、工業人口がかなり増えていましたが、主要産業は依然として農業でした。
で、この農産物の輸出によりかなり潤っていたわけですが、戦争特需が終わって、欧州が農業生産に力を入れ、なおかつ欧州各国の支配する発展途上の植民地での生産量が上がると農産物の輸出ができなくなっていったのです。
それに輪をかけたのが帝国の良質な農産物です。
輸送手段の近代化もあって、遠隔地に鮮度を保ったまま生産物を輸出できるようになると、諸外国も良質な食糧を望むようになり、特に経済的に余裕のある者は帝国産の食糧を好むようになっていたのです。
こうした嗜好品はわずかな量にしか過ぎないのですが、国内市場に与える評価は大きく、米国産農産物の売価に跳ね返っていました。
また、帝国のみならず、帝国の半植民地である朝鮮半島や台湾への米国からの輸出額は壊滅的でしたし、満州帝国への輸出もルートが帝国に独占されて難しい状態になっています。
東南アジアで唯一の独立国であったタイへの輸出も帝国の経済援助政策の所為で食糧輸出量は極端に減っていました。
東南アジアにおけるオランダ、フランス、英国の植民地については、それぞれの本国政府が米国農産物の輸入を制限していましたし、制限されていない品目は地理的に有利な帝国産農産物で寡占されている状況だったのです。
この辺は、国際的な競争として我慢してもらうしかないでしょうね。
但し、帝国としては世界経済に与える影響を少なくするために、発展途上地域の住民への緊急援助等以外ではできるだけ輸出量を減らすように努力していました。
例えば欧米人の食料となる小麦などの輸出はせずとも、欧米人が食べないようなヒエ、アワ、モロコシなどの産品を援助として発展途上地域へ送ったのです。
④の米国連邦準備銀行の施策について帝国から干渉できることはありませんでしたが、ハーバードで知己となった親しい友人にはアドバイスだけはしておきました。
滅多に手紙など出さない者から手紙が届いて、きっと受取人は驚いたでしょうね。
でも私の親しい友人でFRBで働いている人はいませんでしたから、彼らが米国内でどのような影響を及ぼせるのかはわかりませんでした。
いずれにせよ、1929年10月24日のブラックマンディーは史実通りに起きてしまいました。
私は帝国を守ることはしますが、欧米諸国を率先して守ろうとは思いません。
もしかすると私が積極的に介入すれば世界恐慌は防げたかもしれませんが、それは歴史のイフであって、実際に私がそのイフの渦中にいるのですから、帝国以外の懸案を拾い上げてまでわざわざ救うことはしません。
まぁ、何らかの関連でモノ好きにも手を出した場合はあるでしょうが、ある意味でそれは気まぐれであり、恒常的なものではありません。
何となく神にでもなったような風に見えるかもしれませんが、そこまで驕り高ぶってはいませんよ。
私も人間です。
死にもするし、過ちも犯します。
私の生きる目標は、来たるべき二度目の世界戦争で帝国を守り抜くことなのです。
1929年から1932年にかけて発生した大恐慌は、大きな爪痕を遺しながら収束して行きましたが、帝国ではさしたる影響を受けずに社会の進展が進んでいました。
そうして、第一次大戦の敗戦国ドイツに対して過大な賠償金を掛けたことがより大きな負のスパイラルを招きました。
ドイツには賠償金の支払い能力がありませんでしたから、金持ち国の米国から借金をします。
その金は勝者である連合国の英国や仏国などに流れ、戦後復興に役立ちはしましたが、利権に絡む経済マフィアはどこにでもいます。
ある意味であぶく銭でもあった余剰資金は、金利の低い欧州よりも大量生産の導入で経済が活発な米国に資本と言う形で流れ込み、それが投機を生みました。
しかも小豆相場のような将来利益を当て込んだ投資であって、欧州からの投資だけではなく、困ったことに米国で比較的に余裕の生まれた中流層のサラリーマン家庭にもその風潮が広まったのです。
中流層家庭の奥様がへそくりを投資に使いだしたのです。
女性の地位向上は未だできていなくても賢い女性は機を見るに敏であり、儲かるとわかっている投資には手を出すものです。
一時期女性の投資家が米国で4割を占めたという話もあります。
また不況を招く一因の一つには20世紀の日本でもあった土地の投機によるバブル崩壊があります。
舞台はフロリダ半島のマイアミです。
リゾート地として売られ始めた宅地があれよあれよという間に値上がりしたので、投資家のみならず銀行までもがそのブームの尻馬に乗ったのです。
住むための宅地であるのにも関わらず、転売目的で土地が買われ、そして売られるのです。
一時期には1日に7度も転売されその都度高値になったそうです。
実質的な生産価値の無い土地にそれほどの高値を付けていては、いずれ破綻が来ます。
また株価指数先物取引というものが流行りました。
これが前述した『小豆相場のような将来利益を当て込んだ投資』なのです。
株の現物売買ではなく先物株の投機で決済を行うため、現実にはほとんど現物の売買を行いません。
その代わりに、決済時の利益も大きくなるのですが、損失も大きくなり易いのです。
いわゆるハイリスク・ハイリターンなのですが、当時の株価上昇機運がハイリターンの実を示していたのです。
この「株価指数先物取引」では、一般的に株の10%から25%の保証金で先物買いができるのですが、決済日に株価指数が下がっていれば損失額を納入しなければならず、仮に30%の下落の場合、保証金を取られた上に更に差額(5%から20%)の現金を支払わねばなりません。
単純に言えば、1万円の株を千円の保証金で先物買いした場合、決済日に株価が1万2千円相当であれば、保証金プラス2千円の差額が手に入ることになります。
逆に株価が8千円相当であれば、株は勿論手に入らず、千円の保証金を取り上げられた上に千円の差額を請求されることになり、現金が用意できなければ私財が差し押さえられることになるのです。
1920年代の米国の投機熱が盛んになった頃には、それまでの株価上昇が異常であったにもかかわらず、今後も続くものと臆断して皆、投機に走ったのです。
そのことが更に株価を押し上げ、実態のない好景気のまま、1929年10月24日のブラックマンディーが起きてしまったのです。
その前には投機が余りに加熱していることから、FRA(連邦準備銀行)が再三に渡り注意喚起を行ったものの、目の前に金儲けがあると信じている者は、そんな注意喚起には見向きもしなかったのです。
それに輪をかけて個人の少額投資家が増え、銀行もそれらの投資家に低利で資金を貸し与えたのです。
ある意味で仕方がない部分もあります。
確かにこの時期景気が好調で投資をすれば必ず儲かる状況でもあったので、歯止めがきかない状態だったのです。
折から自動車等の大量生産による値段の低下とローン金融が始まったことにより、高根の花だった自動車が買え、家なども購入できるようになったのです。
このため中産階級がこぞって自動車を買い、家を買うことにより、消費ブームが起きたのです。
第一次大戦の影響で米国は未曽有の景気に沸き立っており、労働者も相応の賃金を得ることができて中産階級が裕福になったと云うイリュージョンにたぶらかされていたのです。
但し、いつまでも好景気は続きません。
好景気の後には不景気がやって来ます。
それを予測しながら金融政策を立てなければならない各国政府でしたが、生憎とこれまでにない世界規模の経済の流動性は一国だけの経済規制では対応しきれなかったのです。
米国は未曽有の好景気であった反面、欧州地域は労働者の減少(第一次大戦による男性兵士の死亡)と職場破壊による就労先の減少等により不景気を迎えていました。
当然ことながら投資家は不景気な欧州市場を見限って米国への投資へと切り替えます。
そのことも欧州経済の疲弊を招きます。
しかしながら、一方で土地に対する投機熱はマイアミを襲ったハリケーンにより、一瞬にして崩壊することになります。
ハリケーンで水没し、荒廃した土地を購入する者など居ません。
この段階で数千の投資家が財産を失っていると言われています。
米国版バブルの端緒であり、バブルの崩壊で体力を失った銀行がその損失補填をするためにマネーゲームに手を出した結果が、数千の銀行倒産であり、不況により生まれた失業者の群れなのです。
小さな小石が崖の上から零れ落ちた瞬間に元々不安定だった崖の大規模崩壊が始まり、米国のみならず欧州を含む全世界に恐慌が広がっていったのです。
世界不況の原因について後付けながら種々の分析がなされています。
その一説によれば、①米国においては1920年代末に内需が限界を迎えつつあったこと、②米国国内の資金循環が実体経済とかけ離れて動いていたこと、③世界中で農業問題が深刻になっていたこと、④連邦準備銀行の金融引き締め策が逆効果を生んでしまったこと等々が上げられています。
残念ながら経済学者が豊富な資料を基に後付けで解析するような真似は、事前にはなかなかできません。
当時の学者も経済界をリードする者達も漠然とした不安を感じながらも滔々とした流れに押し流されていたのが真実でしょう。
いわんや一夜漬けの見本のような少額投資家に不況を避ける能力はありませんでした。
一方で帝国はというと、①の内需は計画経済の如く制限を受けていました。
主として飛鳥グループの生産物が需要よりも少なく供給されながら、価格は上がらない状況に置かれていました。
無論プレミア感を追い求める人も少なからずいましたが、私が心理的に抑え込んでいました。
闇魔法のヒュプノではなく、ありきたりの広告の中に潜在意識に作用する語句が用意周到に入れられていたのです。
これにより、消費者には待てばいずれ入手できると確信させることができました。
②の資金循環については外資の導入について予め規制がなされたために欧州や米国の資本が帝国内に大量に流入することが防がれました。
また、国内投資については純然たる投資家の会社利益の還元のみを重視させ、株の転売をできるだけ少なくさせる税制を取らせました。
このために株を転売することにより利益を得ようとする輩が減りました。
転売することにより得た利益よりも、転売にかかる手数料や税金が増えるのであれば転売は減ります。
このために資本投下よりも銀行に預けて利子を稼ぐ風潮が強まりました。
銀行は預けられた金銭を優良企業に貸し与えることによる利ザヤで勝負するようになり、危険な投機は減少したのです。
一方で大手銀行から金の貸し付けを断られがちな中小企業には飛鳥銀行が厳密な査定を行って資金投入をしましたし、20世紀末から始まった、余力のある金満家によるベンチャー企業へのボランタリーベースでの投資が大正初期には流行り出しました。
その火付け役はひょっとすると私でしょうか?
ノブレスオブリージュの一環として、華族からの少額投資を奨励したのです。
大規模な額でなくとも、始めたばかりの中小企業は随分と助かります。
実際、町工場と言われる多くの小規模新興企業が増えたのもこの時期です。
その多くは飛鳥グループの下請け企業になって、帝国の産業基盤を支えています。
③の農業問題については、私の推し進める新型農場が皮肉にも世界的な農産物の過剰生産を後押ししてしまいました。
この当時の米国は大量生産の走りとあって、工業人口がかなり増えていましたが、主要産業は依然として農業でした。
で、この農産物の輸出によりかなり潤っていたわけですが、戦争特需が終わって、欧州が農業生産に力を入れ、なおかつ欧州各国の支配する発展途上の植民地での生産量が上がると農産物の輸出ができなくなっていったのです。
それに輪をかけたのが帝国の良質な農産物です。
輸送手段の近代化もあって、遠隔地に鮮度を保ったまま生産物を輸出できるようになると、諸外国も良質な食糧を望むようになり、特に経済的に余裕のある者は帝国産の食糧を好むようになっていたのです。
こうした嗜好品はわずかな量にしか過ぎないのですが、国内市場に与える評価は大きく、米国産農産物の売価に跳ね返っていました。
また、帝国のみならず、帝国の半植民地である朝鮮半島や台湾への米国からの輸出額は壊滅的でしたし、満州帝国への輸出もルートが帝国に独占されて難しい状態になっています。
東南アジアで唯一の独立国であったタイへの輸出も帝国の経済援助政策の所為で食糧輸出量は極端に減っていました。
東南アジアにおけるオランダ、フランス、英国の植民地については、それぞれの本国政府が米国農産物の輸入を制限していましたし、制限されていない品目は地理的に有利な帝国産農産物で寡占されている状況だったのです。
この辺は、国際的な競争として我慢してもらうしかないでしょうね。
但し、帝国としては世界経済に与える影響を少なくするために、発展途上地域の住民への緊急援助等以外ではできるだけ輸出量を減らすように努力していました。
例えば欧米人の食料となる小麦などの輸出はせずとも、欧米人が食べないようなヒエ、アワ、モロコシなどの産品を援助として発展途上地域へ送ったのです。
④の米国連邦準備銀行の施策について帝国から干渉できることはありませんでしたが、ハーバードで知己となった親しい友人にはアドバイスだけはしておきました。
滅多に手紙など出さない者から手紙が届いて、きっと受取人は驚いたでしょうね。
でも私の親しい友人でFRBで働いている人はいませんでしたから、彼らが米国内でどのような影響を及ぼせるのかはわかりませんでした。
いずれにせよ、1929年10月24日のブラックマンディーは史実通りに起きてしまいました。
私は帝国を守ることはしますが、欧米諸国を率先して守ろうとは思いません。
もしかすると私が積極的に介入すれば世界恐慌は防げたかもしれませんが、それは歴史のイフであって、実際に私がそのイフの渦中にいるのですから、帝国以外の懸案を拾い上げてまでわざわざ救うことはしません。
まぁ、何らかの関連でモノ好きにも手を出した場合はあるでしょうが、ある意味でそれは気まぐれであり、恒常的なものではありません。
何となく神にでもなったような風に見えるかもしれませんが、そこまで驕り高ぶってはいませんよ。
私も人間です。
死にもするし、過ちも犯します。
私の生きる目標は、来たるべき二度目の世界戦争で帝国を守り抜くことなのです。
1929年から1932年にかけて発生した大恐慌は、大きな爪痕を遺しながら収束して行きましたが、帝国ではさしたる影響を受けずに社会の進展が進んでいました。
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