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第三章 新たなる展開
3-19 帝国の産業革命と震災
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大正期に入り、私が期待する国内の基礎産業が次第に力をつけてまいりました。
ゴーレムたちの指導よろしきを得て、次第に熟練者が育ってきているのです。
鉱業、工業、農業、工芸その他さまざまな産業の基礎があって、社会の進展もあり、新規の産物も産み出せます。
同盟国である満州帝国にはそろそろ、韋駄天を含む最新技術の産物を輸出しても良いかもしれません。
但し、生産はあくまで国内でしか行いませんけれどね。
満州は寒冷な土地柄ですから、新型農場はいずれ必要とされます。
一応の計画では1930年頃から農場を建設し、十ヵ年計画ではありますけれど、その五年後くらいには一部稼働を始めさせようかと考えています。
帝国国内に目を転じると、幹線道路と幹線鉄道の整備は順調です。
所謂日本縦貫新幹線は1927年には開通しそうですし、地下に作られている高速道路網も1930年ごろには樺太から鹿児島までが何とかつながりそうな気配です。
既に東北及び北海道の新型農場からの物流が順調に流れ始めており、同時に在来農家への圧迫材料となっておりますが、農林省は盛んに農業従事者に対して新型農場への帰属を進めている段階です。
効率的な生産を行うためには、旧態然とした農業を止めなければならないのは誰が見ても明らかなのです。
そうした農業政策を私も精神操作で後押ししてやったので、雪崩のように農業改革が起きました。
農地改革ではなく農業改革です。
9割以上の農民が土地を捨て、新農場のサラリーマンとなったのです。
それでも約一割に当たる5百万ほどの人が意固地に先祖伝来の土地を受け継いで何とかしようとしていますが、持って20年、次世代には引き継がれないでしょう。
私は帝国国土の荒廃を願っているわけではありません。
より効率的な生産体制に移行し、余裕があれば従来型の農業も残したいと考えているだけなのです。
いずれにせよ改革の所為で農業生産指数は飛躍的に増大しました。
輸入しなければならなかった穀物等食料品は、逆に輸出ができるまでになっているのです。
鉱工業も、国内の鉱山の再開発で非常に盛況です。
従来の鉱山と異なり、無人採掘機械の採用で坑道を人が掘る鉱業では無くなりましたので、省力化しながら大量生産が可能なシステムとなりました。
もちろん鉱山周辺には厳重な警護体制が敷かれ、外国人は鉱山には近づけさせません。
いずれ開発途上国を中心に技術提供をする時期は来るでしょうが、欧米列強が植民地主義を捨てない限り、難しいでしょう。
一方で国内生産が増えると売り値も下がりますが、給与はむしろ微増しています。
就業人口は、第一次産業が多かったものが、次第に第三次産業が増える傾向を示しています。
国内の産業形態の転換は1920年代後半には始まっていたのです。
一方で急激な工業化に伴う環境破壊は、最初から抑制されています。
鉱毒などは、金属精製の過程で、元素の抽出と言う手法を取りますので、そもそもが発生しにくいのです。
有用成分はできるだけ採掘してしまいますので、不要成分が僅かに残るだけであり、それも無害化して、坑道の壁や支柱などに転換されていますので、殆ど産業廃棄物が出ないのです。
仮に出たにしてもしっかりと管理された状態で保管されます。
逆にそれができない鉱山には採掘の許可が与えらないし、取り上げられます。
1922年に勅令を発し、内務省の省令でそのような規制を作りました。
1920年に足尾銅山の鉱毒問題を訴訟にまで進展させて、銅山を閉鎖にまで追い込んだことが、勅令と省令成立に拍車を掛けました。
これがために、中小の鉱山は全て財閥か飛鳥鉱山に吸収され、大規模な環境対策がなされ始めたのです。
従って環境破壊の起きる要因が非常に少なくなっているのです。
これは他の産業についても同じです。
工業用水や農業用水などもきちんと管理され、排水に肥料などの害毒や廃棄物が流れ込まないように厳しく管理されています。
環境保護のための設備については、飛鳥環境企画が種々の装置を開発しており、当該装置を設置する企業には政府の補助が受けられることになっているので事業者への負担は少ないのです。
逆に違反した者は即操業停止に追い込まれ、多額の罰金を払わねばなりません。
そのために環境Gメンが目を光らせているのです。
家庭から生ずる廃棄物については、市町村が収集し、飛鳥廃棄物処理会社がほぼ無償で処理を請け負っています。
基本的には原子分解による元素収集で有用元素の再生を狙っているのです。
従って、所謂ごみには21世紀の日本にあったような燃えるゴミとか燃えないゴミとかの分別は必要ありませんが、収集の際に危険が予想される可燃物や毒素の混じった化合物などは特殊容器に入れられ、更に特別のコンテナに貯蔵されて収集されるようになっています。
放射性廃棄物は今のところありませんが、将来出てきた場合のために一応の区分はありますけれど、現時点では公表されていません。
実際のところ、廃棄物の原子分解の過程で微量の放射性元素が採集されますが、飛鳥廃棄物処理会社に特別部門を設け、亜空間で貯蔵させていますし、医療廃棄物は別枠で収集されるようになっています。
◇◇◇◇ 震災 ◇◇◇◇ 1923年
並行世界ではできれば起きて欲しくないと思っていたのですが、やはり史実の震災は避けられませんでした。
1923(大正12)年9月1日午前11時58分、関東一円に巨大な地震が発生しました。
この対策のために、二年前から地震対策のための訓練を徐々に拡大させており、大正12年には9月1日正午から特別訓練と称して全国一斉に国民の全員参加を促して大訓練を行う計画を立てました。(表向き政府が建てた訓練計画です。)
土曜日なのですが、訓練参加のために多くの企業に対して完全操業停止を依頼しました。
陸海軍は勿論、消防団、警察などもほぼ全員参加ですし、赤十字など病院関係者も多数の参加をしてもらいました。
一般の参加者は子供も老人もできるだけ参加とし、寝たきり老人などはその搬送要員を予め決めた上での訓練参加です。
勿論、当日の食事はできるだけ野外で食べられるようおにぎりなどを事前に準備するようにと隣組の回覧板で通知済みなのです。
そうして12時5分前にはそれぞれの自治体で決めた集合場所に集まった住民ですが、突如起きた地鳴りと激しい揺れに悲鳴が上がります。
訓練場所周辺の家や建築物の倒壊も多々見られましたが、幸いにして火の気のない家からは火事は余り発生しませんでした。(一部に電線のショートなどで火災が発生したところもあるようですが、幸いにして消防団の手ですぐに消火されました。)
決められた手順に従って住民の避難と救助作業が始まりましたが、予め準備されていた訓練要綱は非常に役立ちました。
それでもかなりの人的被害を生じましたが、少なくとも帝都及びその周辺における大火の発生は防ぐことができました。
残念ながら建造物の倒壊は防げませんでした。
因みに小田原にあった関院宮別邸なども全壊しましたが、一家も使用人も全員が震災訓練に参加していたので死傷者はありませんでした。(史実では閑院宮寛子女王が圧死しています。)
このほかにも藤沢にあった東久邇宮別荘、鎌倉にあった山階宮別邸なども倒壊しましたが、避暑で滞在していた皇族や使用人たちも全員が訓練に参加していて無事だったのは幸いなことです。
因みに富士野宮邸(本宅)は私の提言に沿って耐震補強が済んでおり倒壊は免れましたが、ひび割れや壁がはげ落ちるなどの被害のほか、大量の陶器、食器類が破損してしまいました。
私の住む別邸の方はともかく、流石に父たちが住む本宅の壊れ物の事前防護措置までは講じられませんでした。
尤も、私の別宅がほぼ無傷であったことと、陶器や食器類の破損が皆無であったことについて、震災の数日後に父からはしつこくその手法を聞かれましたが、私が震災を予期していたことまでは何とか感づかれずに済みました。
私が行ったのは船のように最初から揺れる場所での食器等の収納方法を別宅に導入したり、箪笥などの家具の倒壊防止手段を講じたりしただけなのです。
父も海軍軍人ですからすぐさま軍艦の厨房の収納棚を参考に新たな食器棚等を整備させたようです。
震災時、私も訓練場所である赤坂離宮の北東側にある広大な広場に居たのですが、地震の到来をしっかりと予想していたのにも関わらず、立っていられないほどの激しい揺れに正直なところビビりまくりました。
前世でも、その前の21世紀の日本でも、私は震度6以上の大きな地震には遭遇していなかったので、やはり大地の揺れと言うのは、心底脅える体験なのだと改めて認識したものです。
で、震災後の復興も大事な計画の一つですね。
火災で焼失したわけではないのですが、帝都の防災上、特に下町の密集度は脅威になりますので看過できません。
従って土地の高度利用のために政府がその大部分を買い上げて、区画整理を行い、高層建築物の建設を奨励するようにしたのです。
震災での物的被害が非常に大きかったので、民間でも中小の企業には余力がありませんでしたから、そのための財源の大部分は、第一次大戦で外貨を稼ぎまくっていた飛鳥石油や飛鳥製薬が請け負いました。
平屋か精々二階建てぐらいまでしか無かった下町に、震災後まもなく、10階建ての高層ビル群が次々と出現し始めました。
そのほとんどは政府に売った土地代金を質にして、新築家屋の地上権を入手できることになったのです。
帝都の再建には当然に時間がかかりますが、大量生産したプレハブ住宅が被災者や土地を売った人たちの一時的避難場所になりました。
プレハブ住宅とは言いながら3LDKの4軒長屋で4階建てですから、21世紀のマンションに近い近代的な建物になります。
実際にここに居ついた人たちは、その利便性に驚いていましたね。
一方で、区画整理に伴う道路幅拡張と整備のために、それまで所有した土地面積は無くなるか減ることになりましたが、垂直方向に延びた床面積のお陰で、震災前の二倍以上の面積を確保できるようになったのは言うまでもありません。
ある意味で土地を売却して地上権を購入したようなものですね。
中には、自分の家以外に数棟分の賃貸住宅を入手できるほどの地主さんも居ました。
この震災復興計画のおかげで上下水道、電気、ガスなど都市計画に伴うインフラ設備の整備がかなり捗ったことも事実なのです。
史実にあった海外からの支援もたくさんありました。
人的な被害は少なくても物的損害は非常に大きかったですから、報道写真による海外での反響も大きかったのです。
後にまとめたところによれば、震災による死者・行方不明者は1478名、震災後の避難所において病気等で死亡した者719名、負傷者は軽傷を含め2万4千名余と、史実の14万もの死者に比べると非常に少なかったと言えます。
死者の多くは房総と神奈川における津波被害によるものです。
事前に津波による危険性も周知はさせていたのですが、心構えが違っていたのか高所に避難しなかった者、若しくは一旦津波が引いたために、自宅等の様子を安易に見に行った者が被害に遭ったようです。
なお、デマによる朝鮮人への暴行・殺害などは起きませんでした。
震災による人的損失はかなり避けられましたが、帝国も経済的には大きな打撃を受けました。
しかしながら、これも大きな不況になるほどの打撃にはなっておりません。
飛鳥財閥による献金が政府を支え、経済を支えています。
次なる課題は、世界不況でしょうか?
ゴーレムたちの指導よろしきを得て、次第に熟練者が育ってきているのです。
鉱業、工業、農業、工芸その他さまざまな産業の基礎があって、社会の進展もあり、新規の産物も産み出せます。
同盟国である満州帝国にはそろそろ、韋駄天を含む最新技術の産物を輸出しても良いかもしれません。
但し、生産はあくまで国内でしか行いませんけれどね。
満州は寒冷な土地柄ですから、新型農場はいずれ必要とされます。
一応の計画では1930年頃から農場を建設し、十ヵ年計画ではありますけれど、その五年後くらいには一部稼働を始めさせようかと考えています。
帝国国内に目を転じると、幹線道路と幹線鉄道の整備は順調です。
所謂日本縦貫新幹線は1927年には開通しそうですし、地下に作られている高速道路網も1930年ごろには樺太から鹿児島までが何とかつながりそうな気配です。
既に東北及び北海道の新型農場からの物流が順調に流れ始めており、同時に在来農家への圧迫材料となっておりますが、農林省は盛んに農業従事者に対して新型農場への帰属を進めている段階です。
効率的な生産を行うためには、旧態然とした農業を止めなければならないのは誰が見ても明らかなのです。
そうした農業政策を私も精神操作で後押ししてやったので、雪崩のように農業改革が起きました。
農地改革ではなく農業改革です。
9割以上の農民が土地を捨て、新農場のサラリーマンとなったのです。
それでも約一割に当たる5百万ほどの人が意固地に先祖伝来の土地を受け継いで何とかしようとしていますが、持って20年、次世代には引き継がれないでしょう。
私は帝国国土の荒廃を願っているわけではありません。
より効率的な生産体制に移行し、余裕があれば従来型の農業も残したいと考えているだけなのです。
いずれにせよ改革の所為で農業生産指数は飛躍的に増大しました。
輸入しなければならなかった穀物等食料品は、逆に輸出ができるまでになっているのです。
鉱工業も、国内の鉱山の再開発で非常に盛況です。
従来の鉱山と異なり、無人採掘機械の採用で坑道を人が掘る鉱業では無くなりましたので、省力化しながら大量生産が可能なシステムとなりました。
もちろん鉱山周辺には厳重な警護体制が敷かれ、外国人は鉱山には近づけさせません。
いずれ開発途上国を中心に技術提供をする時期は来るでしょうが、欧米列強が植民地主義を捨てない限り、難しいでしょう。
一方で国内生産が増えると売り値も下がりますが、給与はむしろ微増しています。
就業人口は、第一次産業が多かったものが、次第に第三次産業が増える傾向を示しています。
国内の産業形態の転換は1920年代後半には始まっていたのです。
一方で急激な工業化に伴う環境破壊は、最初から抑制されています。
鉱毒などは、金属精製の過程で、元素の抽出と言う手法を取りますので、そもそもが発生しにくいのです。
有用成分はできるだけ採掘してしまいますので、不要成分が僅かに残るだけであり、それも無害化して、坑道の壁や支柱などに転換されていますので、殆ど産業廃棄物が出ないのです。
仮に出たにしてもしっかりと管理された状態で保管されます。
逆にそれができない鉱山には採掘の許可が与えらないし、取り上げられます。
1922年に勅令を発し、内務省の省令でそのような規制を作りました。
1920年に足尾銅山の鉱毒問題を訴訟にまで進展させて、銅山を閉鎖にまで追い込んだことが、勅令と省令成立に拍車を掛けました。
これがために、中小の鉱山は全て財閥か飛鳥鉱山に吸収され、大規模な環境対策がなされ始めたのです。
従って環境破壊の起きる要因が非常に少なくなっているのです。
これは他の産業についても同じです。
工業用水や農業用水などもきちんと管理され、排水に肥料などの害毒や廃棄物が流れ込まないように厳しく管理されています。
環境保護のための設備については、飛鳥環境企画が種々の装置を開発しており、当該装置を設置する企業には政府の補助が受けられることになっているので事業者への負担は少ないのです。
逆に違反した者は即操業停止に追い込まれ、多額の罰金を払わねばなりません。
そのために環境Gメンが目を光らせているのです。
家庭から生ずる廃棄物については、市町村が収集し、飛鳥廃棄物処理会社がほぼ無償で処理を請け負っています。
基本的には原子分解による元素収集で有用元素の再生を狙っているのです。
従って、所謂ごみには21世紀の日本にあったような燃えるゴミとか燃えないゴミとかの分別は必要ありませんが、収集の際に危険が予想される可燃物や毒素の混じった化合物などは特殊容器に入れられ、更に特別のコンテナに貯蔵されて収集されるようになっています。
放射性廃棄物は今のところありませんが、将来出てきた場合のために一応の区分はありますけれど、現時点では公表されていません。
実際のところ、廃棄物の原子分解の過程で微量の放射性元素が採集されますが、飛鳥廃棄物処理会社に特別部門を設け、亜空間で貯蔵させていますし、医療廃棄物は別枠で収集されるようになっています。
◇◇◇◇ 震災 ◇◇◇◇ 1923年
並行世界ではできれば起きて欲しくないと思っていたのですが、やはり史実の震災は避けられませんでした。
1923(大正12)年9月1日午前11時58分、関東一円に巨大な地震が発生しました。
この対策のために、二年前から地震対策のための訓練を徐々に拡大させており、大正12年には9月1日正午から特別訓練と称して全国一斉に国民の全員参加を促して大訓練を行う計画を立てました。(表向き政府が建てた訓練計画です。)
土曜日なのですが、訓練参加のために多くの企業に対して完全操業停止を依頼しました。
陸海軍は勿論、消防団、警察などもほぼ全員参加ですし、赤十字など病院関係者も多数の参加をしてもらいました。
一般の参加者は子供も老人もできるだけ参加とし、寝たきり老人などはその搬送要員を予め決めた上での訓練参加です。
勿論、当日の食事はできるだけ野外で食べられるようおにぎりなどを事前に準備するようにと隣組の回覧板で通知済みなのです。
そうして12時5分前にはそれぞれの自治体で決めた集合場所に集まった住民ですが、突如起きた地鳴りと激しい揺れに悲鳴が上がります。
訓練場所周辺の家や建築物の倒壊も多々見られましたが、幸いにして火の気のない家からは火事は余り発生しませんでした。(一部に電線のショートなどで火災が発生したところもあるようですが、幸いにして消防団の手ですぐに消火されました。)
決められた手順に従って住民の避難と救助作業が始まりましたが、予め準備されていた訓練要綱は非常に役立ちました。
それでもかなりの人的被害を生じましたが、少なくとも帝都及びその周辺における大火の発生は防ぐことができました。
残念ながら建造物の倒壊は防げませんでした。
因みに小田原にあった関院宮別邸なども全壊しましたが、一家も使用人も全員が震災訓練に参加していたので死傷者はありませんでした。(史実では閑院宮寛子女王が圧死しています。)
このほかにも藤沢にあった東久邇宮別荘、鎌倉にあった山階宮別邸なども倒壊しましたが、避暑で滞在していた皇族や使用人たちも全員が訓練に参加していて無事だったのは幸いなことです。
因みに富士野宮邸(本宅)は私の提言に沿って耐震補強が済んでおり倒壊は免れましたが、ひび割れや壁がはげ落ちるなどの被害のほか、大量の陶器、食器類が破損してしまいました。
私の住む別邸の方はともかく、流石に父たちが住む本宅の壊れ物の事前防護措置までは講じられませんでした。
尤も、私の別宅がほぼ無傷であったことと、陶器や食器類の破損が皆無であったことについて、震災の数日後に父からはしつこくその手法を聞かれましたが、私が震災を予期していたことまでは何とか感づかれずに済みました。
私が行ったのは船のように最初から揺れる場所での食器等の収納方法を別宅に導入したり、箪笥などの家具の倒壊防止手段を講じたりしただけなのです。
父も海軍軍人ですからすぐさま軍艦の厨房の収納棚を参考に新たな食器棚等を整備させたようです。
震災時、私も訓練場所である赤坂離宮の北東側にある広大な広場に居たのですが、地震の到来をしっかりと予想していたのにも関わらず、立っていられないほどの激しい揺れに正直なところビビりまくりました。
前世でも、その前の21世紀の日本でも、私は震度6以上の大きな地震には遭遇していなかったので、やはり大地の揺れと言うのは、心底脅える体験なのだと改めて認識したものです。
で、震災後の復興も大事な計画の一つですね。
火災で焼失したわけではないのですが、帝都の防災上、特に下町の密集度は脅威になりますので看過できません。
従って土地の高度利用のために政府がその大部分を買い上げて、区画整理を行い、高層建築物の建設を奨励するようにしたのです。
震災での物的被害が非常に大きかったので、民間でも中小の企業には余力がありませんでしたから、そのための財源の大部分は、第一次大戦で外貨を稼ぎまくっていた飛鳥石油や飛鳥製薬が請け負いました。
平屋か精々二階建てぐらいまでしか無かった下町に、震災後まもなく、10階建ての高層ビル群が次々と出現し始めました。
そのほとんどは政府に売った土地代金を質にして、新築家屋の地上権を入手できることになったのです。
帝都の再建には当然に時間がかかりますが、大量生産したプレハブ住宅が被災者や土地を売った人たちの一時的避難場所になりました。
プレハブ住宅とは言いながら3LDKの4軒長屋で4階建てですから、21世紀のマンションに近い近代的な建物になります。
実際にここに居ついた人たちは、その利便性に驚いていましたね。
一方で、区画整理に伴う道路幅拡張と整備のために、それまで所有した土地面積は無くなるか減ることになりましたが、垂直方向に延びた床面積のお陰で、震災前の二倍以上の面積を確保できるようになったのは言うまでもありません。
ある意味で土地を売却して地上権を購入したようなものですね。
中には、自分の家以外に数棟分の賃貸住宅を入手できるほどの地主さんも居ました。
この震災復興計画のおかげで上下水道、電気、ガスなど都市計画に伴うインフラ設備の整備がかなり捗ったことも事実なのです。
史実にあった海外からの支援もたくさんありました。
人的な被害は少なくても物的損害は非常に大きかったですから、報道写真による海外での反響も大きかったのです。
後にまとめたところによれば、震災による死者・行方不明者は1478名、震災後の避難所において病気等で死亡した者719名、負傷者は軽傷を含め2万4千名余と、史実の14万もの死者に比べると非常に少なかったと言えます。
死者の多くは房総と神奈川における津波被害によるものです。
事前に津波による危険性も周知はさせていたのですが、心構えが違っていたのか高所に避難しなかった者、若しくは一旦津波が引いたために、自宅等の様子を安易に見に行った者が被害に遭ったようです。
なお、デマによる朝鮮人への暴行・殺害などは起きませんでした。
震災による人的損失はかなり避けられましたが、帝国も経済的には大きな打撃を受けました。
しかしながら、これも大きな不況になるほどの打撃にはなっておりません。
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