同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優

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翌日の昼休み。

俺は昼食を食べる前からすでに欠伸を噛み殺していた。

完全に寝不足だ。昨日結局なかなか寝付けなかった。今夜はちゃんと布団を出すようにしよう。

「昂輝」

さっさと食べて昼寝でもしようかと思っていたら、立夏が俺のところへやって来た。

「おう」
「なんか眠そうだね。昨日あんまり眠れなかった?」
「⋯まあ」

誰かさんのせいでな。

俺は周りを気にして声のボリュームを落とす。

「な、だから今日はちゃんと布団出そう」
「え? 何? 聞こえない」
「ちょ、近いって」

立夏は耳に手をあてて、俺の口元に顔を寄せてきた。

「だって聞こえないんだもん。もっと大きい声で話してよ」
「ああもう。後で話すから。で、なに? なんか用?」

周りの数人、特に女子社員がチラチラとこっちの様子を窺っている。何かあらぬ誤解をされていそうで怖い。

「そうそう。これ、渡しとこうと思って」
「なに?」
「合鍵」

チャリ、という音と共に、様子を窺っていた女子社員が明らかにこっちを振り向いた。

あー終わった! 終わったよもう!

「なんで今!?」
「朝渡すの忘れちゃって」
「帰る時でいいだろ!」

なんなら家に帰ってからでもいい。

「でもほら、急に早退したくなったりするかもしれないでしょ。急にお腹痛くなったりとか」
「ああうん、そうだね、ありがとう」

これ以上話していると状況が悪くなる一方な気がしたので、適当に相槌を打ってさっさと話を終わらせよう。

「よし。じゃあ用事も済んだし、ランチ食べに行こうよ」

それ先に言って!

俺は頭が痛くなり、せっかく合鍵貰ったし早退しようかなと、一瞬本気で考えた。


   ✦✦✦

結局、立夏と外に食べに行ったせいで昼寝も出来なかった。いやまあ、断ればよかったんだろうけど。

ほんと外行ってから鍵を渡してくれれば注目を浴びることもなかったのに。

そう思って立夏に文句を言ったら、自意識過剰だと笑われた。くそぅ!

仕事を終え、珍しく定時で会社を出た俺は、立夏と一緒に帰路につく。

「夕飯どうする?」
「うーん、最近外食ばっかだったし、なんか作るか」
「え、昂輝が作ってくれるの?」
「まあ、居候の身だし」
「やったぁ!」

子どもみたいに喜ぶ立夏とスーパーへ向かった。

「立夏は料理しないの?」
「食べてくれる人がいれば作るよ」
「ああ、一人分だけ作るのは確かに面倒だよな」
「そうじゃなくて、自分で作ると不味いから」
「は?」
「だから、食べてくれるなら作るよ」

つまり、不味いから自分では食べたくないけど、不味くても食べてくれるんなら作ると。

「それはいいこと聞いたな」

立夏には絶対料理は頼まないと、俺は固く心に誓った。

「何食いたい?」

そういう感じなら家に何も材料なんてないだろうから、好きにメニューを決められる。

「んー、ハンバーグかオムライスかエビフライ」

なんか可愛いリクエストが来た。

「お子様メニューみたいだな」
「む! じゃあラーメンかカツ丼かもつ鍋!」
「じゃあってなんだよ。いいよハンバーグで」

もつ鍋って! 大人っぽいメニューを言ったつもりなのか?

「ビールも買ってこ。昨日飲んでなくなっちゃったから」
「あ、そうだったんだ」

そうか、だから飲んでるやつを渡されたのか。間接キスがデフォなわけじゃなかったんだな。安心した。

立夏は俺の作ったハンバーグをすごく美味しいと言ってくれて、それはまあ、悪い気はしなかった。
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