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番外四十二(抜け番外は非公開ですが読むのに問題なし)悪魔メイドダリオと赤い靴の少女焼殺事件
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イーストシティも次第に過ごしやすい気候になって来ていた。
その前に、テオドールの悪夢騒動や異世界転移騒動、テオドールの父親がまたちょっかいをかけてきたりと色々はあったが、まあ通常運転だろう。
ダリオは喉元を過ぎれば、そんなこともあったよな、とスルーしがちな性格である。ただ、テオドールの父親が息子に危害を加えてくるたびに、ダリオにしてはかなりの警戒心を発揮するところはあった。
とにかく、色々あったが、もう季節は秋。
そして、ダリオの開いた怪異関連解決の事務所は、ぜんぜん繁盛していなかった。事務所が暇すぎて、《クラブ・ラビット・ホール》や、《マジック・アイテム・ショップ・トリックスタ―》で相変わらずアルバイトに入っているダリオだ。
やっぱり、先に立つものは金……マネー・イズ・パワーである。
テオドールのおかげで、金がなさ過ぎてパン一枚と卵で食事を済ませるといったことはなくなっていたが、事務所の立ち上げや高性能なワークステーション購入をしてしまい、ダリオはまたもや貧乏になっていた。
それに、大学では書籍代が馬鹿にならない。
テオドールは僕が出しますとも言うのだが、う、うーん……もうちょっと頑張ってみる、と言って、ダリオは結局それを断っていた。
支援してもらうのが情けない、ということではない。ダリオは実際に奨学金をもらっているし、ハイスクール時代は何かと周りの人に助けてもらっていた。
あまりテオドールから支援を受けたくないのは、自分はそこまで追い詰まっていないなという感覚が働くからだ。
ダリオは体格身長ともに平均より高い。それに健康な男性だ。なので、学業に加えて、アルバイトをしていても特に問題ない。体力がまあまあ余裕を持って保つのである。
これで自分が病気がちだったり、筋力もなく、アルバイト先も選ぶような女性だったりしたら、出世払いでテオドールにお金を出してもらったかもしれない。でも、自分の肉体と相談してみて、まあそこまでじゃねーな、となった。
そもそも、テオドールが家も、食事も用意してくれて、前よりお金かかってないしなあと思う。一応食費や家賃光熱費を入れようとしているが、断固として断られてしまった。なので、本当に以前より生活費がかからない。だからワークステーションを購入してしまい、貧乏に逆戻りしたとも言う。
もしかして頼ってもいいのかもしれねえよな、とも思う時もあるにはあるのだが、うーん、まだ大丈夫、とあまり頼るのが得意でない方の自分に軍配があがってしまう。
テオドールも、不明のことがあると、顔をぐいぐい近づけてきて納得するまで追求することもあるが、それ以外ではそう境界を超えてくることをしない。
よって、この件については、とりあえずダリオがアルバイトで自分のことは自分で賄っている。
そんなこんなで、あまり事務所の方は忙しくなく、アルバイトによる学業生計を立てて、秋になったころ。
《クラブ・ラビット・ホール》では、ハロウィンイベントに合わせ、ダリオたちも普段着用のクラシカル・メイド衣装を少し変えている。
なお、ダリオは安定のミニスカメイド服から、ちょっと魔女や悪魔要素を加えたものに変更された。
よくダリオ目当てに通ってくるカーター氏は、両手を胸の前で握り込んで、
「悪魔っこで魔女っ娘なダリオきゅん♡ キュートでセクシー過ぎるよ♡」
などと気の狂ったことを言いながら、また過大なチップを胸筋に突っ込もうとしてきた。
ダリオは「はあ」と言いつつ内心引いていたが、ある種の慣れや恩義もあり、言われるがままに一回転して衣装を披露するなどサービスしてやった。
ダリオはこのクラブでは、一人だけムチムチ筋肉メイドで異様な姿なのに、何故か一定数の狂信的通いのファンがいるのである。
まあ……人の嗜好は色々だよな……実害がなければそれでよし、とダリオはさほど気にしていない。時々引くが。
そういえば、クリスに、会員さんたちの中で、ダリオきゅんに迷惑かけない同盟があるらしいよと言われたことがある。俺に迷惑かけない同盟とはなんだ。俺の知らんところで変なものが結成されている。いや、集会は権利なのだが⋯⋯非公式だから、そんなに気にしなくていいよとクリスは言っていた。
そうか、とダリオは考えるのを止めた。ダリオにはこういうところが多々ある。
迷惑をかけないそうなので、まあいいかと思ったのだ。今思い出したのもなんとなくである。
「ダリオ君、指名です」
店長から声がかかった。カーターは残念そうな顔をしたが、
「人気者のダリオきゅんを応援する⋯⋯俺は良い客になるよ! ダリオきゅん!」
とたぶん快く送り出してくれた。
しかし、移動した先の半個室テーブルでは、イーストシティ大学・国際関係学部の准教授、エドワード・バーンズが座っており、思わずダリオは二度見してしまった。
場違いにもほどがある。
ダリオは、ミニ丈のメイド服に悪魔の羽と魔女の帽子を足したような格好で、ムチムチの脚を惜しげもなく晒していた。相対するのは、よりによって自分の所属大学の准教授である。
「お帰りなさいませ、ご主人様♡」
しかし、ダリオはふつうに挨拶した。ふつうとは、このクラブのふつうである。
「ご指名ありがとうございます♡」
ダリオの心は、金の前に無だった。
ツイードジャケットにチノパンという無難な装いのバーンズ准教授は、眼鏡を押し上げながら、複雑そうな顔をする。
「ずいぶん刺激的な場所だね⋯⋯」
そうして、毒にも薬にもならない感想を吐いたのだった。
その前に、テオドールの悪夢騒動や異世界転移騒動、テオドールの父親がまたちょっかいをかけてきたりと色々はあったが、まあ通常運転だろう。
ダリオは喉元を過ぎれば、そんなこともあったよな、とスルーしがちな性格である。ただ、テオドールの父親が息子に危害を加えてくるたびに、ダリオにしてはかなりの警戒心を発揮するところはあった。
とにかく、色々あったが、もう季節は秋。
そして、ダリオの開いた怪異関連解決の事務所は、ぜんぜん繁盛していなかった。事務所が暇すぎて、《クラブ・ラビット・ホール》や、《マジック・アイテム・ショップ・トリックスタ―》で相変わらずアルバイトに入っているダリオだ。
やっぱり、先に立つものは金……マネー・イズ・パワーである。
テオドールのおかげで、金がなさ過ぎてパン一枚と卵で食事を済ませるといったことはなくなっていたが、事務所の立ち上げや高性能なワークステーション購入をしてしまい、ダリオはまたもや貧乏になっていた。
それに、大学では書籍代が馬鹿にならない。
テオドールは僕が出しますとも言うのだが、う、うーん……もうちょっと頑張ってみる、と言って、ダリオは結局それを断っていた。
支援してもらうのが情けない、ということではない。ダリオは実際に奨学金をもらっているし、ハイスクール時代は何かと周りの人に助けてもらっていた。
あまりテオドールから支援を受けたくないのは、自分はそこまで追い詰まっていないなという感覚が働くからだ。
ダリオは体格身長ともに平均より高い。それに健康な男性だ。なので、学業に加えて、アルバイトをしていても特に問題ない。体力がまあまあ余裕を持って保つのである。
これで自分が病気がちだったり、筋力もなく、アルバイト先も選ぶような女性だったりしたら、出世払いでテオドールにお金を出してもらったかもしれない。でも、自分の肉体と相談してみて、まあそこまでじゃねーな、となった。
そもそも、テオドールが家も、食事も用意してくれて、前よりお金かかってないしなあと思う。一応食費や家賃光熱費を入れようとしているが、断固として断られてしまった。なので、本当に以前より生活費がかからない。だからワークステーションを購入してしまい、貧乏に逆戻りしたとも言う。
もしかして頼ってもいいのかもしれねえよな、とも思う時もあるにはあるのだが、うーん、まだ大丈夫、とあまり頼るのが得意でない方の自分に軍配があがってしまう。
テオドールも、不明のことがあると、顔をぐいぐい近づけてきて納得するまで追求することもあるが、それ以外ではそう境界を超えてくることをしない。
よって、この件については、とりあえずダリオがアルバイトで自分のことは自分で賄っている。
そんなこんなで、あまり事務所の方は忙しくなく、アルバイトによる学業生計を立てて、秋になったころ。
《クラブ・ラビット・ホール》では、ハロウィンイベントに合わせ、ダリオたちも普段着用のクラシカル・メイド衣装を少し変えている。
なお、ダリオは安定のミニスカメイド服から、ちょっと魔女や悪魔要素を加えたものに変更された。
よくダリオ目当てに通ってくるカーター氏は、両手を胸の前で握り込んで、
「悪魔っこで魔女っ娘なダリオきゅん♡ キュートでセクシー過ぎるよ♡」
などと気の狂ったことを言いながら、また過大なチップを胸筋に突っ込もうとしてきた。
ダリオは「はあ」と言いつつ内心引いていたが、ある種の慣れや恩義もあり、言われるがままに一回転して衣装を披露するなどサービスしてやった。
ダリオはこのクラブでは、一人だけムチムチ筋肉メイドで異様な姿なのに、何故か一定数の狂信的通いのファンがいるのである。
まあ……人の嗜好は色々だよな……実害がなければそれでよし、とダリオはさほど気にしていない。時々引くが。
そういえば、クリスに、会員さんたちの中で、ダリオきゅんに迷惑かけない同盟があるらしいよと言われたことがある。俺に迷惑かけない同盟とはなんだ。俺の知らんところで変なものが結成されている。いや、集会は権利なのだが⋯⋯非公式だから、そんなに気にしなくていいよとクリスは言っていた。
そうか、とダリオは考えるのを止めた。ダリオにはこういうところが多々ある。
迷惑をかけないそうなので、まあいいかと思ったのだ。今思い出したのもなんとなくである。
「ダリオ君、指名です」
店長から声がかかった。カーターは残念そうな顔をしたが、
「人気者のダリオきゅんを応援する⋯⋯俺は良い客になるよ! ダリオきゅん!」
とたぶん快く送り出してくれた。
しかし、移動した先の半個室テーブルでは、イーストシティ大学・国際関係学部の准教授、エドワード・バーンズが座っており、思わずダリオは二度見してしまった。
場違いにもほどがある。
ダリオは、ミニ丈のメイド服に悪魔の羽と魔女の帽子を足したような格好で、ムチムチの脚を惜しげもなく晒していた。相対するのは、よりによって自分の所属大学の准教授である。
「お帰りなさいませ、ご主人様♡」
しかし、ダリオはふつうに挨拶した。ふつうとは、このクラブのふつうである。
「ご指名ありがとうございます♡」
ダリオの心は、金の前に無だった。
ツイードジャケットにチノパンという無難な装いのバーンズ准教授は、眼鏡を押し上げながら、複雑そうな顔をする。
「ずいぶん刺激的な場所だね⋯⋯」
そうして、毒にも薬にもならない感想を吐いたのだった。
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