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本編
08.決戦ラブホテル
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若干俯き気味に建物へ入り、機械的に部屋を選んで料金を支払う。
これでもう入れちゃう。難しいことはない。
高校生は本当は、ラブホテルを使っちゃダメだ。
わかっちゃいるけど、恋人とイチャつくのにもお互いの実家じゃ限界がある。そういうときはこんな風に、変装とも言えないような着替えをしてラブホに来る。
俺は数回やったことがあるので慣れたものだったけど、颯真はラブホ初めてだったみたいで、物珍しげに辺りを見回していた。
「先にシャワー浴びる?」
たどり着いた部屋で、脱いだパーカーと鞄を一緒に放り出しながら聞くと、颯真の体があからさまに強張った。
「ほ、本当にやるんだ……」
「うん。あ……やっぱやめる?」
声まで固くなっている颯真の様子に俺は慌てた。
ここまで何も言わずについてきたから、てっきり大丈夫だと思ってた。ホテル入る前によく意思確認しておくべきだったか。
「もうお金払っちゃったからアレだけど、ここなら映画とか見られるし時間いっぱいまで」
「いや大丈夫。悪い、先にシャワー使うな」
「あ、うん」
どうやら俺のはやとちりだったらしい。颯真のヤる気はまだ持続中だ。
浴室から水音が聞こえてきたので、俺は部屋の中を物色した。
思い切ってラブホにしけこんだわけだが、部屋代は流れで俺が出したため、ふところが寂しくなってしまった。
その代わりこの場所なら、他人の目も自分たちの不慣れ加減も気にせず自由にヤることヤれるのが良い。時間だけは気にしなきゃいけないけど。
部屋の設備に珍しいものはなかった。自販機形式で売られているラブグッズなんかは颯真が希望しない限り買わない。ちなみに天井に鏡はないし、ベッドも回転しないタイプらしい。
「お先」
「おかえり。早くね?」
颯真はものの数分で、腰巻きタオル姿で出てきた。
早いとは言ったものの、男の準備なんて汗流して体が臭くないかチェックしてチンコ洗うくらいなもんだよな。
入念な準備が必要なのは俺の方だ。
「ごめん、俺のが先に入るべきだったかも。時間かかるから寒くないように待ってて」
「時間かかるのか?」
「うん。ケツ洗うから」
固まってしまった颯真を置いて浴室へ向かう。
事を行うにあたって色々調べた。
オメガは男女ともに「穴が濡れる」が、男オメガは女オメガと穴が違うため、洗浄した方がいいらしい。
この辺の事情は第二性とか関係なく男同士の作法だそうで、調べてる間は微妙な気持ちになったけど、今はなんだか吹っ切れてる。
美味しい料理が出てくる前に膨大な下ごしらえがあるのと同じだ。
気持ちいいことの前にも下準備が必要。そういうことだろう。
色々と揃っている浴室にこもって準備を行う。
ネット知識オンリーの作業ゆえ若干不安はあったものの、孤軍奮闘し、なんとか満足いく仕上がりになった。
まだなにも終わっていないが妙な達成感を胸に部屋へと戻ると、さっき見たのと同じ姿勢でベッドに座っている颯真がいた。
「待たせた」
「いや……」
「ずっとそのカッコだったの? 冷えてね?」
むきだしの肩にぺたりと手のひらを置くと、やはりというか、ちょっと冷たい。
「冷えないようにしろって言ったじゃん。これでチンコ勃つか?」
「うわ!」
腰に巻かれているタオルをめくると、颯真の颯真はかわいそうに縮こまってしまっていた。
すぐさまタオルを奪い返され隠されてしまう。
男同士だしアルファ同士だし、気にすることないのに。あ、今は俺オメガか。
この先は俺のケツの問題は元より、颯真が勃たせてくれなきゃ困る。
これは二人の共同作業なのだ。
「まーいいや。とりあえず俺は準備できてるから、できそうだったら言って。それとも手伝う?」
「いや……ユキが堂々としすぎてなんか……」
「オメガらしく振る舞うって言ったけど、今それっぽくしたら余計恥ずいだろ。俺は本物のオメガじゃないから失うものも減るものもないし、一発さくっとヤってみようぜ」
「アルファに戻れたって処女は失ったままだと思うんだけどな……」
どうやらかなり緊張していたらしい颯真も、軽口を叩けるくらいにメンタル復活してきたようだ。
気分を盛り上げるためにAVを見るかどうか聞いたが断られる。
「それよりユキの匂い嗅ぎたい」
「……いいけど。物好きだなぁ……」
ベッドにばふっと倒れ込むと、うつ伏せの俺に颯真が覆い被さってきた。
ボディソープで念入りに洗い上げてきたけど、フェロモンってものは別らしい。どんなに洗っても香る、オメガの証。
「いい匂いだ」
「ん……くすぐったい、恥ずかしい」
肩と首筋に鼻息が当たってこそばゆい。
ネット知識によると、オメガの首にはフェロモンが出る腺があるらしい。
生粋のオメガじゃない俺にもその腺があるのだろうか。謎だ。
「ここが一番匂いが濃い気がする。番になるとき噛むからかな」
「そーなんじゃね? 俺はまがい物だから番とかは無理だと思うけど」
試しに噛んでみるか、と聞けば背後で勢いよく首を振る気配があって笑った。
そりゃそうだ。俺は本物のオメガじゃないけど、万が一ということがないとは言い切れない。
その場のノリで噛んで番が成立しちゃったら、お互いに色々とヤバい。
颯真は相変わらず首筋に鼻を埋めてスンスン言ってる。
俺はひたすらくすぐったいのを耐えて、この先のことへ思いを馳せた。
さっきちらっと見た、あの颯真のものが、俺の尻に入るのか。
平常時でもけっこう大きかったように思える。たぶん俺よりデカい。膨張率が高ければ、予想よりご立派なブツを受け入れることになるだろう。
初心者はバックがいいらしいので、颯真がこのまま盛り上がってくれれば手順がラクでいいんだけど、どうかな。
首だけを巡らせて振り返ると、予想に反して背後の颯真は俺をじっと見ていた。
「────……」
何かが背筋をぞくぞくっと駆け上がる。
覆いかぶさり、いつでも俺を嬲れる立場の颯真は、獣じみた気配を隠していない。
目が合った瞬間に「捕食される」と思った。
俺は今からこいつに食われる。オメガとして、屈服させられる。
「ぁ……」
「ユキの匂い嗅いでたら勃ってきた。挿れていいか?」
「や、ちょっと待って。一回仕切り直そ」
「……ごめん。仕切り直しは無理だ」
慌てて体を捻り、颯真と颯真の股間を確かめる。
わお。これを途中で止めさせるのは同じ男としてつらい気持ちはわかる。
でも今この状態でヤったら、なんていうか────取り返しがつかなくなりそうで。
「ひゃ!」
「ここ、もう濡れてきてる」
「んっ……それは、準備したから……っ」
腰を掴まれ、またうつ伏せにされてしまった。
双丘を割り開かれ、準備万端のアナルが淡い蛍光灯の下に晒される。
急激に恥ずかしくなってきた。さっきまでは平気だったのに、なんで。
自分の心境の変化についていけてないうちに、後孔に何かが潜り込んできた。颯真の指だ。
「柔らかい……」
「そ、そういうの言わなくていい!」
「すぐ二本いけそう。いい?」
「そういうのも言わないで……俺の許可とか取らなくていいから!」
実況されるのも、行動にいちいち許可申請されるのもご勘弁いただきたい。
ホテルに入るときは抱えるほどあった余裕はどこへやら。
今は予想外のいっぱいいっぱい感で溺れそうになっている。
あらぬところに感じる異物感に耐えていると、耳元で颯真がくすりと笑った。
「そんなこと言っていいのか?」
「ひ、ぁあっ!」
指がいきなり引き抜かれ、太くなって再び押し込まれる。
浅く抜き差しされ、深く奥を探られる。
ネットでやり方を調べた方法で中を洗浄はしたものの、後ろに指を入れることはできなかった。やっぱり怖くて。
でも颯真はなんの躊躇いもなく、むしろちょっと楽しそうなほど、執拗に腸壁を探ってくる。
もう一度指が抜かれ、圧迫感が強くなって戻ってきた。
「そろそろ入りそうだ。挿れるから」
「……っ、う、うん」
かさついて手触りの良くないシーツをぎゅっと握りしめて、衝撃に耐える。
さっきちらっと見た臨戦態勢の颯真のブツは予想通りかなりデカかった。
指よりずっと太いあんなものが、俺のケツに入るというのだろうか。
あ、なんかもっと怖くなってきた。
オメガ化していると言っても俺はそもそも男で、受け入れる専用の穴がある女と違ってそれほど柔軟な体じゃない。あのデカブツを突っ込まれて、無事に生還できるだろうか。
「そう、ま、ぁ、あっ……!」
やっぱ一回止まって、と言おうとして、後孔に太くて熱いものが押し当てられたのを感じた。
それがそのまま入ってくる。俺の体の中に、ものすごい圧迫感を与えながら。
反射的に固く強張ろうとする体を意識して脱力させ、小刻みに呼吸する。
必死に協力しているおかげか、はたまた颯真の指テクが素晴らしかったのか、俺のアナルは従順に颯真を受け入れていった。
「はぁ、はぁ……は、はいった?」
「ん。半分くらい」
「半分!? これで!?」
思わず体を捻って颯真を見上げると、汗だらけのイケメンと目があった。
目元を赤く染め、情欲を隠さない友人の姿になぜか動揺する。
こいつ、俺の体で興奮してるんだ……。
その事実はなぜか優越感というより、達成感を覚えさせた。
「中途半端だとつらいだろ。全部……挿れていいよ」
「でもキツいだろ、ユキ」
「んん……圧迫感すごいけど、痛くはないし。どうせなら颯真にも気持ちよくなってほしいし……」
「ありがとな。じゃあ、もう少し我慢して」
「うん……っ、ぁ、はぁっ」
颯真の手が不意に俺の前に触れた。
ほとんど兆していない陰茎をいじられ、意識がそっちへ集中する。
その隙を狙っていたんだろう、後孔が食い締めていたものがさらに奥へと侵入を果たした。
「全部、はいった」
俺にもわかる。尻に颯真の体が当たってるし、中の異物感が極限に達してる。
今のところ気持ち良さは感じてないけど、これから良くなるんだろうか。
そういえば男の直腸内には快感を得られる場所があって、そこを刺激することで女性みたいに中イキもできるようになるってネット書いてあったっけ。
さっき指で中をいじられたときは触れられなかったんだろう。違和感しかなかったから。
「そろそろ動くぞ」
「ん……いいよ……」
荒かった呼吸が少し収まってきて、颯真がゆっくりと腰を使いはじめた。
ゆっくり抜かれて、またゆっくり押し込まれる。
(なんか、もどかしい)
体の中に異物を埋められている、だけじゃない感覚がある。
でもそれが形を持って何かを訴えてくることはない。ぼんやりとした未知の何かがすぐそこにあるのに、手が届かないといった疼き。
だから、腰を掴んでいる手に手を添えて、俺は懇願するしかなかった。
「もっと、強くして」
息を呑む音が聞こえて、次の瞬間。
太くて熱くて固いものが、俺の中を強引に切り開きながら侵入してきた。
「あ────!」
背筋がびりびり痺れて、体が勝手にぎゅっと縮こまる。
未だ見つかっていない俺の気持ちいいところも、そうじゃないところも、全部押しつぶされた。
圧倒的な物量に、俺の体はなすすべもなく陥落する。
「あ、ひ、やっ、ぁあっ」
「ユキ……っ」
「やば、なんか、やばいっ!」
普段からそれほど豊かではない語彙が消え去るほど、気持ち良さが止まらない。
抽挿のために抜かれるのが惜しいと感じるほど、中の肉壁が颯真のものに絡みついて引き止めているのが自分でもわかる。
腸壁を荒々しく削りながら最奥をノックされると、頭がおかしくなりそうなほどの快感が駆け抜ける。
おかしい。俺はれっきとした処女なのに。後ろは初めてなのに、こんなに感じてしまうものなのか。
これが、オメガの体。
オメガとしてアルファに屈服させられ、犯されることでしか得られない快楽。
「そぅま、そーまっ!」
「……っ」
「あ! あ、あっ、やあぁっ……」
いつの間にか颯真は体を倒していた。
背中が颯真の熱い胸に覆われていて火傷してしまいそうだ。
首筋に灼熱の吐息を感じる。匂いを嗅がれて、噴き出す汗を舐め取られ、その代わりと言わんばかりにアルファのフェロモンを叩きつけられる。
これが、オメガとしてのセックスなのか。
「だめ、なんかくる、やば、ぁあっ!」
絶頂に似ているが明らかに違う何かに戸惑い、咄嗟に前を握った。
触れた途端に暴発した俺のチンコと連動するように、腹の中がぎゅうっと閉じて颯真を締め付ける。
「う……」
めちゃくちゃ色っぽい颯真の声と同時に、中に入ったままのものがどくどくと波打つ感覚があった。うわー、そういうのわかるもんなんだ。
ゴムを装着しているとはいえ、中に出されているような錯覚にドキドキしてしまう。
しばしの間、四つん這いの俺に颯真がのしかかった状態で息を整えた。
やがて颯真が俺の中から出ていく。
「んっ……」
「大丈夫か?」
「うん、平気。痛いとかはないけど、疲れた……ちょっと休憩しよ」
汗だくのうつ伏せからごろりと横臥に変わった俺を、向かい合わせに寝そべる颯真が心配そうに見つめてくる。
へらりと笑顔を返すとホッとしたように笑みを浮かべてくれた。
「どーだった? オメガとのセックス」
「身も蓋もないな」
「甘ったるいピロートークなんて俺たちに必要ないでしょ。で、どうだったの?」
「……今までで一番気持ち良かった」
恥ずかしそうに告げる颯真に、俺はそうだろうそうだろうとなぜか偉そうに頷いた。我ながら搾り取ってやった感がある。
しかしそうでなければ困る。
これは最高に気持ちいい体験をするための集まりなのだ。
そのためにカツカツの小遣いからホテル代を捻出した。
「ユキは、どうだったんだ?」
「俺?」
「オメガとしてのセックス、気持ち良かったか?」
向こうからの問いかけには若干の不安が混ざっている。
俺が女の子の立場だったら「そんなこと聞くな」「たとえ下手くそだったとしても良かったと言うしかない」というあんまりなことを考えそうだったが、俺は女の子ではないし、何より颯真の親友であるので、しっかり返事をしてやらなければならない。
「すっげー気持ち良かった。でももっと気持ち良くなれる気がする」
「もっと?」
「うん。なんか男って、ケツん中に前立腺? とかいう気持ちいとこがあるらしいんだわ。そこをもっと攻めてみたらもっと違うかも」
「なるほど……」
今にもメモ取りだしそうだなこいつ。
でも俺の言い分を聞いてくれたのは良い態度だ。これなら。
「よし、もう1ラウンドいきますか」
「え?」
ぽかんとしている颯真に、今度は俺がのしかかる。
「あと3日しかオメガでいられないんだ。一回だけで終わるわけないだろ?」
付き合ってもらうよ。
そう言って舌なめずりをした俺を、颯真のまんまるの瞳が見上げていた。
これでもう入れちゃう。難しいことはない。
高校生は本当は、ラブホテルを使っちゃダメだ。
わかっちゃいるけど、恋人とイチャつくのにもお互いの実家じゃ限界がある。そういうときはこんな風に、変装とも言えないような着替えをしてラブホに来る。
俺は数回やったことがあるので慣れたものだったけど、颯真はラブホ初めてだったみたいで、物珍しげに辺りを見回していた。
「先にシャワー浴びる?」
たどり着いた部屋で、脱いだパーカーと鞄を一緒に放り出しながら聞くと、颯真の体があからさまに強張った。
「ほ、本当にやるんだ……」
「うん。あ……やっぱやめる?」
声まで固くなっている颯真の様子に俺は慌てた。
ここまで何も言わずについてきたから、てっきり大丈夫だと思ってた。ホテル入る前によく意思確認しておくべきだったか。
「もうお金払っちゃったからアレだけど、ここなら映画とか見られるし時間いっぱいまで」
「いや大丈夫。悪い、先にシャワー使うな」
「あ、うん」
どうやら俺のはやとちりだったらしい。颯真のヤる気はまだ持続中だ。
浴室から水音が聞こえてきたので、俺は部屋の中を物色した。
思い切ってラブホにしけこんだわけだが、部屋代は流れで俺が出したため、ふところが寂しくなってしまった。
その代わりこの場所なら、他人の目も自分たちの不慣れ加減も気にせず自由にヤることヤれるのが良い。時間だけは気にしなきゃいけないけど。
部屋の設備に珍しいものはなかった。自販機形式で売られているラブグッズなんかは颯真が希望しない限り買わない。ちなみに天井に鏡はないし、ベッドも回転しないタイプらしい。
「お先」
「おかえり。早くね?」
颯真はものの数分で、腰巻きタオル姿で出てきた。
早いとは言ったものの、男の準備なんて汗流して体が臭くないかチェックしてチンコ洗うくらいなもんだよな。
入念な準備が必要なのは俺の方だ。
「ごめん、俺のが先に入るべきだったかも。時間かかるから寒くないように待ってて」
「時間かかるのか?」
「うん。ケツ洗うから」
固まってしまった颯真を置いて浴室へ向かう。
事を行うにあたって色々調べた。
オメガは男女ともに「穴が濡れる」が、男オメガは女オメガと穴が違うため、洗浄した方がいいらしい。
この辺の事情は第二性とか関係なく男同士の作法だそうで、調べてる間は微妙な気持ちになったけど、今はなんだか吹っ切れてる。
美味しい料理が出てくる前に膨大な下ごしらえがあるのと同じだ。
気持ちいいことの前にも下準備が必要。そういうことだろう。
色々と揃っている浴室にこもって準備を行う。
ネット知識オンリーの作業ゆえ若干不安はあったものの、孤軍奮闘し、なんとか満足いく仕上がりになった。
まだなにも終わっていないが妙な達成感を胸に部屋へと戻ると、さっき見たのと同じ姿勢でベッドに座っている颯真がいた。
「待たせた」
「いや……」
「ずっとそのカッコだったの? 冷えてね?」
むきだしの肩にぺたりと手のひらを置くと、やはりというか、ちょっと冷たい。
「冷えないようにしろって言ったじゃん。これでチンコ勃つか?」
「うわ!」
腰に巻かれているタオルをめくると、颯真の颯真はかわいそうに縮こまってしまっていた。
すぐさまタオルを奪い返され隠されてしまう。
男同士だしアルファ同士だし、気にすることないのに。あ、今は俺オメガか。
この先は俺のケツの問題は元より、颯真が勃たせてくれなきゃ困る。
これは二人の共同作業なのだ。
「まーいいや。とりあえず俺は準備できてるから、できそうだったら言って。それとも手伝う?」
「いや……ユキが堂々としすぎてなんか……」
「オメガらしく振る舞うって言ったけど、今それっぽくしたら余計恥ずいだろ。俺は本物のオメガじゃないから失うものも減るものもないし、一発さくっとヤってみようぜ」
「アルファに戻れたって処女は失ったままだと思うんだけどな……」
どうやらかなり緊張していたらしい颯真も、軽口を叩けるくらいにメンタル復活してきたようだ。
気分を盛り上げるためにAVを見るかどうか聞いたが断られる。
「それよりユキの匂い嗅ぎたい」
「……いいけど。物好きだなぁ……」
ベッドにばふっと倒れ込むと、うつ伏せの俺に颯真が覆い被さってきた。
ボディソープで念入りに洗い上げてきたけど、フェロモンってものは別らしい。どんなに洗っても香る、オメガの証。
「いい匂いだ」
「ん……くすぐったい、恥ずかしい」
肩と首筋に鼻息が当たってこそばゆい。
ネット知識によると、オメガの首にはフェロモンが出る腺があるらしい。
生粋のオメガじゃない俺にもその腺があるのだろうか。謎だ。
「ここが一番匂いが濃い気がする。番になるとき噛むからかな」
「そーなんじゃね? 俺はまがい物だから番とかは無理だと思うけど」
試しに噛んでみるか、と聞けば背後で勢いよく首を振る気配があって笑った。
そりゃそうだ。俺は本物のオメガじゃないけど、万が一ということがないとは言い切れない。
その場のノリで噛んで番が成立しちゃったら、お互いに色々とヤバい。
颯真は相変わらず首筋に鼻を埋めてスンスン言ってる。
俺はひたすらくすぐったいのを耐えて、この先のことへ思いを馳せた。
さっきちらっと見た、あの颯真のものが、俺の尻に入るのか。
平常時でもけっこう大きかったように思える。たぶん俺よりデカい。膨張率が高ければ、予想よりご立派なブツを受け入れることになるだろう。
初心者はバックがいいらしいので、颯真がこのまま盛り上がってくれれば手順がラクでいいんだけど、どうかな。
首だけを巡らせて振り返ると、予想に反して背後の颯真は俺をじっと見ていた。
「────……」
何かが背筋をぞくぞくっと駆け上がる。
覆いかぶさり、いつでも俺を嬲れる立場の颯真は、獣じみた気配を隠していない。
目が合った瞬間に「捕食される」と思った。
俺は今からこいつに食われる。オメガとして、屈服させられる。
「ぁ……」
「ユキの匂い嗅いでたら勃ってきた。挿れていいか?」
「や、ちょっと待って。一回仕切り直そ」
「……ごめん。仕切り直しは無理だ」
慌てて体を捻り、颯真と颯真の股間を確かめる。
わお。これを途中で止めさせるのは同じ男としてつらい気持ちはわかる。
でも今この状態でヤったら、なんていうか────取り返しがつかなくなりそうで。
「ひゃ!」
「ここ、もう濡れてきてる」
「んっ……それは、準備したから……っ」
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急激に恥ずかしくなってきた。さっきまでは平気だったのに、なんで。
自分の心境の変化についていけてないうちに、後孔に何かが潜り込んできた。颯真の指だ。
「柔らかい……」
「そ、そういうの言わなくていい!」
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「そういうのも言わないで……俺の許可とか取らなくていいから!」
実況されるのも、行動にいちいち許可申請されるのもご勘弁いただきたい。
ホテルに入るときは抱えるほどあった余裕はどこへやら。
今は予想外のいっぱいいっぱい感で溺れそうになっている。
あらぬところに感じる異物感に耐えていると、耳元で颯真がくすりと笑った。
「そんなこと言っていいのか?」
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「そろそろ入りそうだ。挿れるから」
「……っ、う、うん」
かさついて手触りの良くないシーツをぎゅっと握りしめて、衝撃に耐える。
さっきちらっと見た臨戦態勢の颯真のブツは予想通りかなりデカかった。
指よりずっと太いあんなものが、俺のケツに入るというのだろうか。
あ、なんかもっと怖くなってきた。
オメガ化していると言っても俺はそもそも男で、受け入れる専用の穴がある女と違ってそれほど柔軟な体じゃない。あのデカブツを突っ込まれて、無事に生還できるだろうか。
「そう、ま、ぁ、あっ……!」
やっぱ一回止まって、と言おうとして、後孔に太くて熱いものが押し当てられたのを感じた。
それがそのまま入ってくる。俺の体の中に、ものすごい圧迫感を与えながら。
反射的に固く強張ろうとする体を意識して脱力させ、小刻みに呼吸する。
必死に協力しているおかげか、はたまた颯真の指テクが素晴らしかったのか、俺のアナルは従順に颯真を受け入れていった。
「はぁ、はぁ……は、はいった?」
「ん。半分くらい」
「半分!? これで!?」
思わず体を捻って颯真を見上げると、汗だらけのイケメンと目があった。
目元を赤く染め、情欲を隠さない友人の姿になぜか動揺する。
こいつ、俺の体で興奮してるんだ……。
その事実はなぜか優越感というより、達成感を覚えさせた。
「中途半端だとつらいだろ。全部……挿れていいよ」
「でもキツいだろ、ユキ」
「んん……圧迫感すごいけど、痛くはないし。どうせなら颯真にも気持ちよくなってほしいし……」
「ありがとな。じゃあ、もう少し我慢して」
「うん……っ、ぁ、はぁっ」
颯真の手が不意に俺の前に触れた。
ほとんど兆していない陰茎をいじられ、意識がそっちへ集中する。
その隙を狙っていたんだろう、後孔が食い締めていたものがさらに奥へと侵入を果たした。
「全部、はいった」
俺にもわかる。尻に颯真の体が当たってるし、中の異物感が極限に達してる。
今のところ気持ち良さは感じてないけど、これから良くなるんだろうか。
そういえば男の直腸内には快感を得られる場所があって、そこを刺激することで女性みたいに中イキもできるようになるってネット書いてあったっけ。
さっき指で中をいじられたときは触れられなかったんだろう。違和感しかなかったから。
「そろそろ動くぞ」
「ん……いいよ……」
荒かった呼吸が少し収まってきて、颯真がゆっくりと腰を使いはじめた。
ゆっくり抜かれて、またゆっくり押し込まれる。
(なんか、もどかしい)
体の中に異物を埋められている、だけじゃない感覚がある。
でもそれが形を持って何かを訴えてくることはない。ぼんやりとした未知の何かがすぐそこにあるのに、手が届かないといった疼き。
だから、腰を掴んでいる手に手を添えて、俺は懇願するしかなかった。
「もっと、強くして」
息を呑む音が聞こえて、次の瞬間。
太くて熱くて固いものが、俺の中を強引に切り開きながら侵入してきた。
「あ────!」
背筋がびりびり痺れて、体が勝手にぎゅっと縮こまる。
未だ見つかっていない俺の気持ちいいところも、そうじゃないところも、全部押しつぶされた。
圧倒的な物量に、俺の体はなすすべもなく陥落する。
「あ、ひ、やっ、ぁあっ」
「ユキ……っ」
「やば、なんか、やばいっ!」
普段からそれほど豊かではない語彙が消え去るほど、気持ち良さが止まらない。
抽挿のために抜かれるのが惜しいと感じるほど、中の肉壁が颯真のものに絡みついて引き止めているのが自分でもわかる。
腸壁を荒々しく削りながら最奥をノックされると、頭がおかしくなりそうなほどの快感が駆け抜ける。
おかしい。俺はれっきとした処女なのに。後ろは初めてなのに、こんなに感じてしまうものなのか。
これが、オメガの体。
オメガとしてアルファに屈服させられ、犯されることでしか得られない快楽。
「そぅま、そーまっ!」
「……っ」
「あ! あ、あっ、やあぁっ……」
いつの間にか颯真は体を倒していた。
背中が颯真の熱い胸に覆われていて火傷してしまいそうだ。
首筋に灼熱の吐息を感じる。匂いを嗅がれて、噴き出す汗を舐め取られ、その代わりと言わんばかりにアルファのフェロモンを叩きつけられる。
これが、オメガとしてのセックスなのか。
「だめ、なんかくる、やば、ぁあっ!」
絶頂に似ているが明らかに違う何かに戸惑い、咄嗟に前を握った。
触れた途端に暴発した俺のチンコと連動するように、腹の中がぎゅうっと閉じて颯真を締め付ける。
「う……」
めちゃくちゃ色っぽい颯真の声と同時に、中に入ったままのものがどくどくと波打つ感覚があった。うわー、そういうのわかるもんなんだ。
ゴムを装着しているとはいえ、中に出されているような錯覚にドキドキしてしまう。
しばしの間、四つん這いの俺に颯真がのしかかった状態で息を整えた。
やがて颯真が俺の中から出ていく。
「んっ……」
「大丈夫か?」
「うん、平気。痛いとかはないけど、疲れた……ちょっと休憩しよ」
汗だくのうつ伏せからごろりと横臥に変わった俺を、向かい合わせに寝そべる颯真が心配そうに見つめてくる。
へらりと笑顔を返すとホッとしたように笑みを浮かべてくれた。
「どーだった? オメガとのセックス」
「身も蓋もないな」
「甘ったるいピロートークなんて俺たちに必要ないでしょ。で、どうだったの?」
「……今までで一番気持ち良かった」
恥ずかしそうに告げる颯真に、俺はそうだろうそうだろうとなぜか偉そうに頷いた。我ながら搾り取ってやった感がある。
しかしそうでなければ困る。
これは最高に気持ちいい体験をするための集まりなのだ。
そのためにカツカツの小遣いからホテル代を捻出した。
「ユキは、どうだったんだ?」
「俺?」
「オメガとしてのセックス、気持ち良かったか?」
向こうからの問いかけには若干の不安が混ざっている。
俺が女の子の立場だったら「そんなこと聞くな」「たとえ下手くそだったとしても良かったと言うしかない」というあんまりなことを考えそうだったが、俺は女の子ではないし、何より颯真の親友であるので、しっかり返事をしてやらなければならない。
「すっげー気持ち良かった。でももっと気持ち良くなれる気がする」
「もっと?」
「うん。なんか男って、ケツん中に前立腺? とかいう気持ちいとこがあるらしいんだわ。そこをもっと攻めてみたらもっと違うかも」
「なるほど……」
今にもメモ取りだしそうだなこいつ。
でも俺の言い分を聞いてくれたのは良い態度だ。これなら。
「よし、もう1ラウンドいきますか」
「え?」
ぽかんとしている颯真に、今度は俺がのしかかる。
「あと3日しかオメガでいられないんだ。一回だけで終わるわけないだろ?」
付き合ってもらうよ。
そう言って舌なめずりをした俺を、颯真のまんまるの瞳が見上げていた。
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今度の人生では猫井に振り回されるのをやめようと決心するが……。
本編「理想の結婚 俺、犬とお見合いします」のスピンオフです。
全く話が繋がっていないので、単体で問題なく読めます。
(本編のコミカライズにつきましては、日頃より有難うございます)
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する
竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。
幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。
白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。
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