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探し物
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「どうじゃ?何か変わったかね?」
「力が漲ってます。それに……」と指を鳴らすと太い木が音もなく折れた。
「見るだけでもできる気がしますが。この珠は一体?」
「これは、千年鳥居を飛んで、更なる試練に行くと言った者に合わせ出来るもの。儂が作ったのではない。自然にできるのじゃ。力の制御はそのうち出来るようになると思うが、次の試練に行くかね?」
「ええ。ゆっくりとさせてもらいましたから」
じっと見ていると、「……良い目だ。合格!」と言われ、つい「え?」と変な声を出してしまう。
「大体は少し休ませてくれというものじゃ。それをゆっくりしたと言ったのはお主が初めて。みんなボロボロで戻ってくるのじゃが、本当にゆっくりしたようじゃの?」
「ボロボロでしたよ?なので、街に降りて身なりを整えてきました。こちらの魚はやはり美味しかったです」
「その中に入った珠が濁ると地に落ちる。濁らぬよう精進せよ。これより天狐を名乗るが良い」
「これだけ……ですか?」
「今は。この先、天狐には天狐の仕事が回ってくる事がある。お勤めをしっかりとな。それと、これより、城へと行ってもらうのじゃが、この試練については他言無用じゃ」
「はい」
試練とは言っても珠を探しただけだ。恐らく精神力など色々と試されたのだろうが、個々によって試練は違うのかもしれない。
「よいか?呉々も話してはならんぞ?試練はそのものによって異なる。儂が手抜きをしたと思われたくはない」
「分かりました」
その後また不思議な感覚に包まれたと思ったら、妖街からいつも見えている城の入口に立っていた。
「お待ちしておりました」と門番に案内されて中に入り、入ってからは侍女だろうか?綺麗な着物を着た狐に案内される。
「こちらにてお待ちを」
畳の上に寝そべるわけにも行かず、正座をして待っていると、お茶と茶菓子が出され、呼ばれるまで待つようにと言われた。
何となく数日待たされるのだろうと思っていたら、すぐに呼ばれ、御簾の前に座り声が掛かるのを待つ。
「新たな天狐の誕生心よりお祝い申し上げる」その言葉と同時に御簾が上げられ、前には5匹の天狐が座っていた。
「そう堅くならずとも良い。街では何人の天狐に何人の仙と言われておるが、その内自然とわかる時が来る。それが全てを統べる天狐。もう仲間じゃから気軽に話そうぞ」
「ありがとうございます。いくつかお聞きしたいことがあります」
「なんじゃ?」
「私は社に帰れるのでしょうか?」
「望むのなら。今までは次の狐に社を任せ、ここに留まるようにとあったのじゃが、全ての社に配置出来ぬほど狐不足じゃ」
「それに、冬弥と申したな。今、我々は日本の各地をいくつかのエリアに分け、そのエリアもさらに細かく分けている所でな、冬弥は天狐と隠す必要は無いが、複数のエリアの面倒を見てもらいたい」
「今までそのようなことはありませんでしたが」
「最近は海外からも妖が来ているから大変なのよ」
複数の天狐に言われると断るに断りきれない。
「冬弥の管轄は今の社を中心に三県見てもらう。指揮を執りなさい」
「畏まりました」
「細かいことは追って使者を出す。最後に……天狐だけは名だけではなく、名字もつくがどうする?」
「冬弥は最近子をもらったばかりじゃ。陰に隠れている小狐にも興味がある。その狐をつけるのか?」
「いいといえば付けます」
「そのこの名は、『早乙女』じゃったか?」
「はい」
「昔にもおったの?」
「おったが、同じ名でいかんという事はあるまい?」
「よし、ならば早乙女と名乗るが良い。そなたは春の社、ちょうど良い名だと思うが」
「有難く」
やっと終わったから帰れると門を出て階段を降りながら妖街に向かっていると、城の使いだという小狐に手紙を渡される。
「もう仕事なんでしょうか……」
『封筒に札が入れてある。門から来る時はそれを門番へ見せれば良い。一々門から来なくとも飛んで直接来ても良い。専用の部屋を用意しておくので、来た時は城のおつきの狐に用事を言い渡せば良い。最後に、東の地に新たな地を用意してある。城を建てるのに時間がかかるので、時折使者を送る』
待っているということは、返事を待っているのだろう。
「分かりましたと伝えておいてもらえますか?」
「はい、分かりました。お気を付けて」
「力が漲ってます。それに……」と指を鳴らすと太い木が音もなく折れた。
「見るだけでもできる気がしますが。この珠は一体?」
「これは、千年鳥居を飛んで、更なる試練に行くと言った者に合わせ出来るもの。儂が作ったのではない。自然にできるのじゃ。力の制御はそのうち出来るようになると思うが、次の試練に行くかね?」
「ええ。ゆっくりとさせてもらいましたから」
じっと見ていると、「……良い目だ。合格!」と言われ、つい「え?」と変な声を出してしまう。
「大体は少し休ませてくれというものじゃ。それをゆっくりしたと言ったのはお主が初めて。みんなボロボロで戻ってくるのじゃが、本当にゆっくりしたようじゃの?」
「ボロボロでしたよ?なので、街に降りて身なりを整えてきました。こちらの魚はやはり美味しかったです」
「その中に入った珠が濁ると地に落ちる。濁らぬよう精進せよ。これより天狐を名乗るが良い」
「これだけ……ですか?」
「今は。この先、天狐には天狐の仕事が回ってくる事がある。お勤めをしっかりとな。それと、これより、城へと行ってもらうのじゃが、この試練については他言無用じゃ」
「はい」
試練とは言っても珠を探しただけだ。恐らく精神力など色々と試されたのだろうが、個々によって試練は違うのかもしれない。
「よいか?呉々も話してはならんぞ?試練はそのものによって異なる。儂が手抜きをしたと思われたくはない」
「分かりました」
その後また不思議な感覚に包まれたと思ったら、妖街からいつも見えている城の入口に立っていた。
「お待ちしておりました」と門番に案内されて中に入り、入ってからは侍女だろうか?綺麗な着物を着た狐に案内される。
「こちらにてお待ちを」
畳の上に寝そべるわけにも行かず、正座をして待っていると、お茶と茶菓子が出され、呼ばれるまで待つようにと言われた。
何となく数日待たされるのだろうと思っていたら、すぐに呼ばれ、御簾の前に座り声が掛かるのを待つ。
「新たな天狐の誕生心よりお祝い申し上げる」その言葉と同時に御簾が上げられ、前には5匹の天狐が座っていた。
「そう堅くならずとも良い。街では何人の天狐に何人の仙と言われておるが、その内自然とわかる時が来る。それが全てを統べる天狐。もう仲間じゃから気軽に話そうぞ」
「ありがとうございます。いくつかお聞きしたいことがあります」
「なんじゃ?」
「私は社に帰れるのでしょうか?」
「望むのなら。今までは次の狐に社を任せ、ここに留まるようにとあったのじゃが、全ての社に配置出来ぬほど狐不足じゃ」
「それに、冬弥と申したな。今、我々は日本の各地をいくつかのエリアに分け、そのエリアもさらに細かく分けている所でな、冬弥は天狐と隠す必要は無いが、複数のエリアの面倒を見てもらいたい」
「今までそのようなことはありませんでしたが」
「最近は海外からも妖が来ているから大変なのよ」
複数の天狐に言われると断るに断りきれない。
「冬弥の管轄は今の社を中心に三県見てもらう。指揮を執りなさい」
「畏まりました」
「細かいことは追って使者を出す。最後に……天狐だけは名だけではなく、名字もつくがどうする?」
「冬弥は最近子をもらったばかりじゃ。陰に隠れている小狐にも興味がある。その狐をつけるのか?」
「いいといえば付けます」
「そのこの名は、『早乙女』じゃったか?」
「はい」
「昔にもおったの?」
「おったが、同じ名でいかんという事はあるまい?」
「よし、ならば早乙女と名乗るが良い。そなたは春の社、ちょうど良い名だと思うが」
「有難く」
やっと終わったから帰れると門を出て階段を降りながら妖街に向かっていると、城の使いだという小狐に手紙を渡される。
「もう仕事なんでしょうか……」
『封筒に札が入れてある。門から来る時はそれを門番へ見せれば良い。一々門から来なくとも飛んで直接来ても良い。専用の部屋を用意しておくので、来た時は城のおつきの狐に用事を言い渡せば良い。最後に、東の地に新たな地を用意してある。城を建てるのに時間がかかるので、時折使者を送る』
待っているということは、返事を待っているのだろう。
「分かりましたと伝えておいてもらえますか?」
「はい、分かりました。お気を付けて」
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