下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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学校

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面会は夜の十九時までとなってはいるが、会社帰りの人などもいるので、静かにしていれば消灯前の二十一時頃までは中に入れるらしい。

ガラッと戸が開き、那智が入ってくる。黒いスーツに着替えているが、どう見てもホストにしか見えない。

「これか……金は返しに行ってくる。来た時に豪華な車が止まっていたからもうすぐ来るんだろう」

「慌ただしくてすいません」

「今は俺が冬弥の代わりだ。気にすることは無い。それにしても、人間とは本当に愚かな生き物だな……」

「いい人もいますよ?」

「いるにはいる。紫狐から聞いたが、俺も長く生きてきているから、人間の仕組みはわかっている。お前は録音とやらをしっかりとしておけ」

「どうしてお狐様は携帯持たないんですか?」

「必要ないから……と思っていた。繋がりのある者とは連絡はとれるし、影を使えば何も支障がなかったからな。だが、今回の事で持っていないと困ることも分かった。明日にでも買いに行ってくる」

コンコンとノックの音がし、今度は那智が返事をする。

相手方が名前を名乗って、弁護士だと言う人が後は自分が引き継ぐと言って那智と話をする。

「……という訳で、子供の喧嘩ですし将来のことを考えて示談という事に。勿論入院費は支払いますし、その後は示談金でとなるのですが」

那智が黙って聞いていたので弁護士もすぐに話し合いは終わると思っていたのだろう。

「示談はしない」との言葉に「え?」と言う弁護士と親。

「ちょっと貴方、そんな夜のお仕事のような格好したチンピラに何がわかるの?うちの子の将来も掛かってるのよ?聞いてる?と言うか理解してる?お宅が警察に行ったせいでうちの子も精神的に落ち込んでるのよ。こっちが慰謝料欲しいくらいだわ!」

「と言ってますけど弁護士さん。この場合、こちらが取り下げなければ警察からの事情聴取、裁判となるんですよね?うちの子の精神的苦痛?お宅のお子さん壁に持たれて携帯いじってますけど、それ落ち込んでるんですか?将来がかかってると言いましたが、こちらも掛かってるんですよ。それなら雪翔も精神的苦痛で訴えないといけませんねぇ」

「君、脅すつもりかね?」

「そちらが言われたので、なら家も同じですねと言っただけですよ?」

「とにかく、見舞金は受け取ってちょうだい!それで足りるはずよ!」

「受け取るつもりはありません。先程もうひと方が置いていきましたが、私が不在でしたので今から返しに行くところです。明日にでもこちらも代理を立てますのでそちらで話し合って頂けますか?」

「分かりました。これ名刺ですのでいつでも連絡をください」

そう言って相手が帰っていってすぐ、今から金を返しに行ってくると窓から出ていってしまった。

「えっと、保存して……と。しーちゃんも疲れたでしょ?下宿屋に戻ってもいいけど」

「影に戻ります!」

痛み止めを飲んで、二十一時までなんとか起きていたが、もう誰も来ないだろうと電気を消して布団に潜る。

寝返りが打てないのが辛いが、仕方ないと言い聞かせ、うとうととそのまま眠ってしまう。


朝、やはりまだ熱は引かず、食事も吐いてしまったので、水分をこまめに取るようにし、ベッドを起こして本を読んで過ごす。
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