下宿屋 東風荘 2

記憶

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『えー、現場からお伝えします。昨日、逮捕されました高校一年生の男子生徒は同級生に対し暴行を働き、全治半年と言う大怪我をさせ傷害罪で捜査が行われていましたが、昨日被害者男子生徒の入院先の病室にて首を絞めるなど動けない被害者に対して暴行を働き、殺人未遂として駆けつけた警察官により現行犯逮捕されました。学校側は、記者会見を明日開く予定で、捜査に警視庁からTHSが派遣されるとのことです。学校は進学校で＿＿』プチッ

「雪翔？」

「おい？雪翔？」祖父が肩をゆするが、何の反応も示さず、目の焦点が合っていない。

「雪翔君？」

「ぼ、ぼく……」

「変なニュースだったわねぇ。雪翔？少し眠りなさい」そう言って額に手を置いたと思ったら、すぐに雪翔は眠ってしまった。

「仙狐様の力……？」

「嫌だわ。大袈裟よ？さて、今日はもう起きないと思うから、冬弥の家に行きましょう。お爺さんも早く！」

「ああ。花よ、みんなと仲良くな？」

「はい」

「起きそうになったら分かっておるな？」

「えーと、春？」

「そうじゃ。頼んだぞ」


「ほう？ここが下宿屋か……またボロいな……」

「まぁ、年数がたっていますから。こちらが母屋です」
と中に入り案内する。

「私は夜は下宿の方で休みますので。ここの台所を使ってください」

「他の子達のご飯は向こうで食べるの？」

「はい、土間があるので、そこで作って板の間でみんなで食べます。たまに朝早くて一緒に食べられない子もいますけど」

「お爺さん、挨拶に行きましょう」

「そうじゃな、儂が記憶の上書きでもしておくとするか」

板の間に海都と堀内がおり、海都の勉強を見ているところだった。

「お帰りなさい。あれ？」

「今晩は」と言うと同時に記憶の上書きをしたのだろう「儂は冬弥の父じゃ。婆さんと暫く厄介になるから挨拶をと思ってな」

何事も無かったかのように「よろしくお願いします」と二人が返事をし、また問題を解けと堀内にせっつかれている。

「あら？お膳があるのね。私達も若い人と一緒にいただくのはどうかしら？」

「そうじゃな、久方ぶりに来たしこちらのことも聞きたい。何より雪翔のことが知りたいのぅ」

「でも、畳ではないので座布団だけですが……」

「構わんよ」

次々にみんなが銭湯から帰ってきて挨拶をする。

「栞さん、今日の買い物当番なんだけど海都だったんだ。あいつ、魚屋で間違えて鯖買ってきてさ、今夜それでもいい？」
隆弘の暴露にごめんと言う海都。

「ええ、すぐ支度するわね」

「あら、だったら手伝いますよ？明日の肉じゃがも作りたいしねぇ」

「儂は雪翔の部屋でも見てこようかの」

「案内しましょうか？」と隆弘が言うのを頼むと言って付いていく。

「御母様、良いのでしょうか？」

「あの人なら大丈夫よ？仮にも天狐だったんですからね。さ、お芋はどこかしら？」

材料を出し、作っている横でお米と味噌汁の用意をし、肉じゃがは夜も食べればいいと作ってくれるので、裏のビニールハウスに行き必要な野菜を取って、サラダの用意をしてから鯖を焼く。

「御父様はお酒は召し上がります？」

「毎日飲むのよ？もう止めても聞かなくって。冬弥も良く飲むでしょう？」

「たまにお止めするんです。飲みすぎはダメだからと。まだお嫁にもいってないのに差し出がましいとは思うんですけど……」

「家はみんなお酒が好きなのよねぇ。上の子はたまにしか飲まないけど」

「そうなんですか？お強そうに見えましたけど」

「仕事が忙しいんですって。朝も早くに出かけるから、最近はみんな揃わないわぇ。そうだ、お揚げあるかしら？」

「はい、なにか作りましょうか？」

「焼くだけでいいのよ。刻みネギとみょうががあればいいんだけど」

ありますと、冷蔵庫から取り出して刻み、焼いた揚げの上に乗せる。

「堀内さん、海都君の勉強終わりそうです？」

「あ、片付けますね。じゃあ、ここまでは今日やっておくように！」

「はーい」

「すぐご飯だからね！」

夕食をみんなで摂り、下宿のみんなに雪翔はどんな子かとみんなに聞いている。