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記憶
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「あらやだ!冬弥まで物騒なことを……」
「押し付けていいとこ取りか!全く……」
「そうですね、ですがあの母親。傷害で出すと精神鑑定に持っていかれそうなので、接近禁止と罰金になると思います」
「おお、警察が前で見張ってくれるそうじゃ。儂も狐を置いていくから、中はなんとかなるじゃろ?」
「でも、雪翔は怖がってますが……?」
まあ見ておけと病室で狐を出す。
「へえ、きみ、小太郎、って言うの?ぼく、ゆき、と。みんなけんか、しないで、ね?」
「紫狐は仲良く出来ます!」
あっ!と口元を抑えるが、雪翔が大丈夫と言ったので、すぐに口から手をどける。
「はな、ちゃん。しー、ちゃん。こうき、くん、り、んちゃ、ん。小太、くん。たくさん増えた」
「よく覚えたな 」
「おぼえる、の、は、とくい、みたい、です」
「そうじゃ、小太郎はな、唯一儂と将棋ができるんじゃよ。ひまになったらあそんでやってくれんか?」
「する?」
コクンと頷いたので、テーブルを戻して将棋盤を上に置く。
「のっ、ていい、よ?」
「痛いと思って……御館様?」
「雪翔に従いなさい」
「はい」
ちょこんとうまく足の間に座ってくれたので、将棋がしやすいようにと雪翔が届きやすい位置にテーブルを動かす。
「雪翔よ……爺たちは用事を済ませてくるが、それ迄、狐たちを頼むぞ?」
「うん……仲良く、する」
病室を出てどこに行くのかと聞くと、姿を消すように言われたのでそのようにし、ついた場所は自分の社。
「ここか……」
「ここは、私の社で……」
「うむ、良い気で出来ておる。しばらく不在でも良いように、儂がここに力を置いていこう。一年ほどしか持たんがの」
「そんな力を使ったら!」
「元天狐ですもの、美味しいご飯ですぐに回復するわ」
「そんなに力の差が……」
「私でもまだまだ底を知らないのよ?」
しばらく待つと、「ここには変な輩は入れんようにした。鳥居からは良い気のものしか通れんようになっておるから安心するといい」
お礼を言って、お昼はどうするかと聞く。
「冬弥の行きつけの店はあるのかね?」
「お蕎麦のお店が気に入ってましたけど」
「ならばそこに行こうか」
商店街の近くの蕎麦屋に行き、メニューを見てとろろ蕎麦と頼んだのを聞いて驚く。
「冬弥様のオススメもそれでした」
「たまたまじゃよ?」
「私はこの変わり蕎麦にしようかしら」
「私は暖かいのが好きなので、山菜そばを」
それぞれ堪能してから、お爺様の力で病院へと飛び部屋に入ると、丁度お昼のご飯が来ていた。
「こっちもお昼来てたのね。肉じゃが温める?」
「うん」
それでも音が嫌なのか、ゆっくりと食べ進め、肉じゃがは美味しいと全部食べていた。
ついてきた果物までは食べられなかったようで、狐たちみんなに分けて上げている。
「御館様、りんご貰いました」
「良かったの、他の狐とも仲良く食べなさい」
狐同士少しずつ半分こなどしながら食べ、お腹いっぱいとみんなでソファで寝てしまった。それも煌輝まで。
これを那智が見たらどんな顔をするのだろうと思いながら、お爺様の顔を見ると、なにか考えているようにも見えるので、干してある洗濯物を取り入れて畳んで引き出しにしまう。
「かんごふ、さん。お風呂、まだ、だめ、って」
「足のギプス取れるまでは仕方ないかも。それでも、みんな治してくれてるから、普通の人より早く取れると思うけど」
「みて……」
布団をめくったので足を見ると、出ている指先の指が動いていて、膝の腫れも引いてきている。
「みんな頑張ったんじゃな」
「うん、あと、那智さん、が、これを、わたすよう、にって」
封筒には封がしてあり、お爺様宛となっていた。
「帰ってから読もうとしようかのぅ。さ、雪翔は少し寝なさい」
「押し付けていいとこ取りか!全く……」
「そうですね、ですがあの母親。傷害で出すと精神鑑定に持っていかれそうなので、接近禁止と罰金になると思います」
「おお、警察が前で見張ってくれるそうじゃ。儂も狐を置いていくから、中はなんとかなるじゃろ?」
「でも、雪翔は怖がってますが……?」
まあ見ておけと病室で狐を出す。
「へえ、きみ、小太郎、って言うの?ぼく、ゆき、と。みんなけんか、しないで、ね?」
「紫狐は仲良く出来ます!」
あっ!と口元を抑えるが、雪翔が大丈夫と言ったので、すぐに口から手をどける。
「はな、ちゃん。しー、ちゃん。こうき、くん、り、んちゃ、ん。小太、くん。たくさん増えた」
「よく覚えたな 」
「おぼえる、の、は、とくい、みたい、です」
「そうじゃ、小太郎はな、唯一儂と将棋ができるんじゃよ。ひまになったらあそんでやってくれんか?」
「する?」
コクンと頷いたので、テーブルを戻して将棋盤を上に置く。
「のっ、ていい、よ?」
「痛いと思って……御館様?」
「雪翔に従いなさい」
「はい」
ちょこんとうまく足の間に座ってくれたので、将棋がしやすいようにと雪翔が届きやすい位置にテーブルを動かす。
「雪翔よ……爺たちは用事を済ませてくるが、それ迄、狐たちを頼むぞ?」
「うん……仲良く、する」
病室を出てどこに行くのかと聞くと、姿を消すように言われたのでそのようにし、ついた場所は自分の社。
「ここか……」
「ここは、私の社で……」
「うむ、良い気で出来ておる。しばらく不在でも良いように、儂がここに力を置いていこう。一年ほどしか持たんがの」
「そんな力を使ったら!」
「元天狐ですもの、美味しいご飯ですぐに回復するわ」
「そんなに力の差が……」
「私でもまだまだ底を知らないのよ?」
しばらく待つと、「ここには変な輩は入れんようにした。鳥居からは良い気のものしか通れんようになっておるから安心するといい」
お礼を言って、お昼はどうするかと聞く。
「冬弥の行きつけの店はあるのかね?」
「お蕎麦のお店が気に入ってましたけど」
「ならばそこに行こうか」
商店街の近くの蕎麦屋に行き、メニューを見てとろろ蕎麦と頼んだのを聞いて驚く。
「冬弥様のオススメもそれでした」
「たまたまじゃよ?」
「私はこの変わり蕎麦にしようかしら」
「私は暖かいのが好きなので、山菜そばを」
それぞれ堪能してから、お爺様の力で病院へと飛び部屋に入ると、丁度お昼のご飯が来ていた。
「こっちもお昼来てたのね。肉じゃが温める?」
「うん」
それでも音が嫌なのか、ゆっくりと食べ進め、肉じゃがは美味しいと全部食べていた。
ついてきた果物までは食べられなかったようで、狐たちみんなに分けて上げている。
「御館様、りんご貰いました」
「良かったの、他の狐とも仲良く食べなさい」
狐同士少しずつ半分こなどしながら食べ、お腹いっぱいとみんなでソファで寝てしまった。それも煌輝まで。
これを那智が見たらどんな顔をするのだろうと思いながら、お爺様の顔を見ると、なにか考えているようにも見えるので、干してある洗濯物を取り入れて畳んで引き出しにしまう。
「かんごふ、さん。お風呂、まだ、だめ、って」
「足のギプス取れるまでは仕方ないかも。それでも、みんな治してくれてるから、普通の人より早く取れると思うけど」
「みて……」
布団をめくったので足を見ると、出ている指先の指が動いていて、膝の腫れも引いてきている。
「みんな頑張ったんじゃな」
「うん、あと、那智さん、が、これを、わたすよう、にって」
封筒には封がしてあり、お爺様宛となっていた。
「帰ってから読もうとしようかのぅ。さ、雪翔は少し寝なさい」
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