下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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全ての始まりと終わり

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「雪翔君!良かった……」

「あれ?ここって病院?」

「保健室よ?いきなり倒れちゃって、事情説明して休ませてもらったの。保健の先生覚えてる?」

「うん」

「呼んでくるわね」

すぐにカーテンが開いて、保健の先生が顔を覗かせる。

「気分はどう?発作の薬があって良かったわ。薬の種類を見る限り、一時的な興奮状態、パニックになったみたいね。あと過呼吸。過呼吸の処置についてはお姉さんに教えておいたから。お父さん達は職員室に行ってるからもう少し休んでていいわよ?」

「お父さん達……あ!いいです。もう平気、有難う御座いました」

「雪翔君?」

「栞さん早く!」そう言って車椅子に乗って、急いで職員室に行く。

「__ですから、あなたが担任の先生なんでしょう?親が来ても知らぬ存ぜぬですか!雪翔の見舞いにあなた来ました?仮にも担当クラスの生徒が大怪我で入院、記憶まで一部失ってたんですよ?見て見ぬふりですか!」

「冬弥……おとうさん!」

お父さんと言われたのがとても嬉しかったのか、ニコニコしながら頭を撫で撫でとしてくる。

「あ、あのさ、面会謝絶だったし……」

「雪翔はまだ起きたばかりでしょう?そこのソファにでも座ってなさい」

「そこ来客用だと思うんだけど」

「構いませんよね?」冬弥が担任を睨み、全員で椅子に座ることになったが、何故か那智と冬弥は立っているので、自然と担任が気をつけをしている。

ほかの先生も見て見ぬふりをしており、教頭先生は横目で見ながらも新聞を読んで顔を隠していた。

黒のスーツ姿の那智が、「失礼」と新聞を取り上げ、教頭に校長を連れてくるようにと言っている姿は、もう一般人には見えない。

「と、取り敢えずみんな座ろうよ……」

「そうですねぇ。全員なら校長室のが広そうです。栞さん車椅子をお願いしますね」

そう言うので、僕はここにいるのかなぁ?と考えていると、ヒョイっと今度はお姫様抱っこをされて連れていかれる。肩に担がれた方がましだと思いながらも動けないので職員室を見ると、ほかの先生達も驚いた顔をしている。

校長室で栞の横に座らされた時はホットし、校長は机に座ったまま、校長を挟んで担任と教頭が並んでいる。

「聞こえていたと思いますけど、この学校では生徒がイジメによって死にかけていても見舞いの一つにも、家に謝罪の一つにも来ないんですか?私が不在でも隣の叔父がいたはずで、ずっと交渉を続けてきたと思いますが?それに弁護士も何度か足を運んだようですけど、毎回居ないとはおかしな学校ですねぇ」

「それに関しましては会見も開き、保護者の方々も呼んで事情説明してますし……」

「それで終わりではないでしょう?雪翔はまだこの学校の生徒です」

口ごもる先生を相手に着流しの親分とスーツ姿の親分付きのような二人が迫力がありすぎて、何も言えずにただ聞いているしかなかった。

「復学の件も弁護士が交渉に来たはずですが、学校からの返事が無いようです。こちらの学校には障害者や、怪我などの子の為のエレベーターがあると聞いてますが、それの許可も降りていない。もうすぐ二学期ですが、校長のお考えは?」

「まだ会議でも決まっておらず……一学期もテストも受けてませんし」

「受けれていられる状況と思っていたとでも?」

「いえ、それは……その……」

「那智、弁護士を呼んでください」

分かったと隅に移動して電話をかける。すぐに来るとの事で、「丁度いいです、弁護士を入れて話をしましょうか。車で15分ほどと言ってましたからねぇ、三年の数学、進学コースがいいですねぇ。その先生に三年の一学期の数学問題を持ってきてもらってください」

「はい!」と担任が出ていってすぐに戻ってくる。

「三年生の進学コースの数学は一年の子には無理かと……」
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