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7 ちょっと、待ってください
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「しかし、ハジメのことが好きなくせにいいのかよ。中身は、ハジメじゃねぇのに」
イオルグに言われて侑真は、口を閉じた。ルファスが何やら面白くなさげな顔をして言った。
「ユウマは、私をハジメだと思って番になった。中身が私だと知ったのは番になってからだ」
マジで?
俺は、複雑な気持ちだった。
侑真は、俺のこと、中身が俺だと思って抱いたんだ。
つまり、侑真にとっては、番になったのは、俺だったわけだった。
うん。
俺は、どうすればいいんだ?
「例え、中身がルファスだと知らずに抱いたとしても、番になったのは、事実だ。俺は、ルファスだけを愛する」
侑真が言い切ったのをきいて、ルファスは、ちらっと俺の方を見た。
「本当に、それでいいのか?ユウマ」
「当たり前だ!」
侑真が言った。
「お前は、番の約束を解消したいのか?」
「ふん」
ルファスがにやっと笑った。
「その言葉、忘れるなよ、ユウマ」
「ああ」
侑真が頷いてから、ちらっと俺のことを見た。目があって、俺は、すっと視線をそらせた。
今は、侑真を直視できない。
「ルファス様、そろそろダンジョンへ、お戻りいただかなくてはなりません」
ヴィスコンティがルファスに言うと、ルファスは、大きな溜め息をついた。
「あーあ、やっぱ、帰らなきゃダメか?ヴィス」
「当然です」
「めんどくさいなぁ」
ルファスは、心底嫌そうな様子で俺のことを見た。
「もう、ハジメでいいんじゃないか?魔王様は」
「そういうわけにはいきません」
ヴィスコンティは、即答した。
「ハジメは、聖女ですからね。速く、もとの体に戻っていただかなくてはなりません」
「聖女?マジでか?」
侑真が驚いて言った。
「俺は、てっきり、お前は、身体能力が強化されただけだと思っていた」
「ハジメは、すごいぞ」
イオルグが俺の肩を抱いた。
「聖女だけでも、ちょっと考えられないけど、その他にもすげぇ力を持ってるしな」
「聖女以外にも?」
ルファスが言った。
「どんな力だ?」
「まず、想像の力、だろ。それから、テイマーだし」
「へぇ」
ルファスが少し意地悪な笑みを浮かべた。
「ただのだめっ子じゃなかったって訳か」
「誰が、だめっ子だよ!」
俺は、ルファスを睨み付けた。ルファスは、にっと笑った。
「違うのか?昔からユウマがいなくちゃ、何もできないだめっ子だったんだろう?」
「そんなこと」
俺は、かぁっと頭に血が上って、言いかけた言葉を切った。侑真が何か言いたそうな顔をしていたけど、俺は、何もきかずに部屋を飛び出した。
俺は、ティルダー男爵の屋敷から駆け出した。
もう、夜遅い時刻だったけど、ルーダの町は、まだ賑わっていた。俺は、人の流れに逆らうように歩き続けた。
『昔からユウマがいなくちゃ、何もできなかったんだろう?』
ルファスの言葉が頭の中でぐるぐると回り続けていた。
「そんなこと、あるもんか」
俺は、呟いた。
確かに、子供の頃は、いつも侑真に助けられていた。けど、今は。
中学に入ると、侑真は、俺とあまり話さなくなった。
だんだんと、俺は、一人になっていった。
そんな俺とは違って、侑真は、いつも友達に囲まれていた。
侑真は。
あいつは、いつも、みんなの輪の中心にいた。
勇者になるべくしてなったとしか思えないような奴だ。
俺なんて。
たぶん、中身が魔王じゃなくても荷物持ちぐらいにしかなれない。
俺は。
俺だって、勇者になりたかった。
侑真みたいに、かっこよくって、自信満々になりたかった。
だけど。
いつも一人で、俺は、みんなに囲まれてる侑真のことを見ていた。
俺は。
俺は、一人で、いつも、侑真のこと羨んでいたのかもしれない。
だから、魔王になんてなっちゃったのかも。
俺は、苦笑した。
こんなに真っ黒な感情が渦巻いている俺だから、魔王になっちゃったのかもしれない。
気がつくと、俺は、人通りが少ない裏通りへと入り込んでいた。
町のメインストリートに比べると薄暗くて、なんか、怪しげな人たちがうろついている。
俺は、もとの道へと戻ろうとして踵を返した。
「おっと、どこに行くつもりだ?お嬢ちゃん」
知らない男たちが、いつの間にか俺のことを取り囲んでいた。俺は、慌てて逃げようとしたが、男たちの内の一人に腕を掴まれて引き戻された。
「あれ?女の子じゃないのか?」
「いや、これだけ美人なら、もう、男だってかまわないじゃねぇか」
男たちが下卑た笑いを浮かべて、俺を見た。
「楽しませてもらってから、売り飛ばしちまおうぜ」
こいつら、何、言ってるんだ?
俺は、男の手を振りきろうとしたが、ダメだった。
離して!
俺は、目を閉じて念じた。
俺を離してくれ!
俺は、目を開いた。だけど、目の前の男たちには、何の変化もなかった。
なんで?
俺は、男たちに引きずられて近くの廃屋へと連れ込まれながら思っていた。
何も、起きない。
俺は、部屋の床へと突き飛ばされて這いつくばっていた。
俺の力は?
なんで、何も起きないんだ?
俺は、笑いながら俺に近づいてくる男たちに向かって手をかざして叫んだ。
「何でもいいから、どっかに行ってしまえ!」
だけど。
何も起こらなかった。
男たちは、俺を押さえ込みながら言った。
「暴れるんじゃねぇぞ」
「い、いや、だ!誰か!」
俺は、無我夢中で逃れようと手足をばたつかせたが、すぐに男たちに押さえつけられて、動きを封じられた。
「大人しくしろ!怪我したいのか?」
「いや、だ!」
誰か!
俺は、泣きながら叫び続けた。だけど、誰も助けに来る気配はなかった。
服を引き裂かれ、男たちの手で、俺は、暴かれていった。
「いやっ!誰か!イオルグ、ヴィスコンティ!誰か!」
俺が絶望して、目を閉じたその時。
男たちが急に悲鳴をあげて倒れ込んできた。
「いや、だ!・・えっ?」
動かなくなった男の体の下から、俺は、逃れようと暴れた。
男の体に触れた俺の両手が血に染まった。
「・・えっ?」
男たちは、全員、事切れていた。
「なん、で?」
「だらしないな、ルファス」
暗闇の中から、男の声がきこえた。
俺は、顔をあげてその男を見た。
「だ、誰?」
「この私を忘れたか?ルファス。相変わらずつれない奴だな」
闇の中から一人の男が現れた。
火のように赤い髪を腰まで伸ばした、赤い瞳の褐色の肌をした美しい男だった。
「この兄、イグドールを、まさか、忘れたとは言わさんぞ」
えっ?
兄?
俺は、窓から差し込んだ月の光に照らされて浮かび上がったその男から目を離すことができなかった。
美しくて、そして、恐い男。
男は、俺の方へと歩み寄ってくると、男たちの一人のポケットの中から黒い珠を取り出して俺に見せた。
「これは、魔力を封じる魔道具だ。この連中は、ミハイル兄の手の者たちだ。お前の力を封じて闇へと葬ろうとしてのことだ」
えっと・・
俺は、戸惑っていた。
ミハイル兄?
「俺は・・その、ルファス、さんじゃ、ないです」
俺は、小声で言った。
「あの、何かの手違いでルファスさんの体と、俺の体が入れ替わってしまって・・」
「何を言ってるんだ?」
イグドールがバカにするように笑った。
「まったく、相も変わらずふざけた奴だ。いつも隙だらけで、貧乏暮らしをして。今度だってそうだ。部下に魔導車を借りに来させたりして、情けない」
えっ?
俺は、驚いていた。
あの魔導車って、この人に借りてきてたの?
「おそらく、勇者を倒すか、籠絡しようとしたのだろうが、愚かな」
イグドールが羽織っていたマントをとり、俺の体を包んだ。
「こんなことになりおって、バカが」
「えっ?」
イグドールは、俺を抱き上げた。
「もう、放ってはおけん」
「はい?」
「お前を私のダンジョンへ連れ帰る」
ええっ?
俺は、呆気にとられていた。
ちょっと、待ってください。
イオルグに言われて侑真は、口を閉じた。ルファスが何やら面白くなさげな顔をして言った。
「ユウマは、私をハジメだと思って番になった。中身が私だと知ったのは番になってからだ」
マジで?
俺は、複雑な気持ちだった。
侑真は、俺のこと、中身が俺だと思って抱いたんだ。
つまり、侑真にとっては、番になったのは、俺だったわけだった。
うん。
俺は、どうすればいいんだ?
「例え、中身がルファスだと知らずに抱いたとしても、番になったのは、事実だ。俺は、ルファスだけを愛する」
侑真が言い切ったのをきいて、ルファスは、ちらっと俺の方を見た。
「本当に、それでいいのか?ユウマ」
「当たり前だ!」
侑真が言った。
「お前は、番の約束を解消したいのか?」
「ふん」
ルファスがにやっと笑った。
「その言葉、忘れるなよ、ユウマ」
「ああ」
侑真が頷いてから、ちらっと俺のことを見た。目があって、俺は、すっと視線をそらせた。
今は、侑真を直視できない。
「ルファス様、そろそろダンジョンへ、お戻りいただかなくてはなりません」
ヴィスコンティがルファスに言うと、ルファスは、大きな溜め息をついた。
「あーあ、やっぱ、帰らなきゃダメか?ヴィス」
「当然です」
「めんどくさいなぁ」
ルファスは、心底嫌そうな様子で俺のことを見た。
「もう、ハジメでいいんじゃないか?魔王様は」
「そういうわけにはいきません」
ヴィスコンティは、即答した。
「ハジメは、聖女ですからね。速く、もとの体に戻っていただかなくてはなりません」
「聖女?マジでか?」
侑真が驚いて言った。
「俺は、てっきり、お前は、身体能力が強化されただけだと思っていた」
「ハジメは、すごいぞ」
イオルグが俺の肩を抱いた。
「聖女だけでも、ちょっと考えられないけど、その他にもすげぇ力を持ってるしな」
「聖女以外にも?」
ルファスが言った。
「どんな力だ?」
「まず、想像の力、だろ。それから、テイマーだし」
「へぇ」
ルファスが少し意地悪な笑みを浮かべた。
「ただのだめっ子じゃなかったって訳か」
「誰が、だめっ子だよ!」
俺は、ルファスを睨み付けた。ルファスは、にっと笑った。
「違うのか?昔からユウマがいなくちゃ、何もできないだめっ子だったんだろう?」
「そんなこと」
俺は、かぁっと頭に血が上って、言いかけた言葉を切った。侑真が何か言いたそうな顔をしていたけど、俺は、何もきかずに部屋を飛び出した。
俺は、ティルダー男爵の屋敷から駆け出した。
もう、夜遅い時刻だったけど、ルーダの町は、まだ賑わっていた。俺は、人の流れに逆らうように歩き続けた。
『昔からユウマがいなくちゃ、何もできなかったんだろう?』
ルファスの言葉が頭の中でぐるぐると回り続けていた。
「そんなこと、あるもんか」
俺は、呟いた。
確かに、子供の頃は、いつも侑真に助けられていた。けど、今は。
中学に入ると、侑真は、俺とあまり話さなくなった。
だんだんと、俺は、一人になっていった。
そんな俺とは違って、侑真は、いつも友達に囲まれていた。
侑真は。
あいつは、いつも、みんなの輪の中心にいた。
勇者になるべくしてなったとしか思えないような奴だ。
俺なんて。
たぶん、中身が魔王じゃなくても荷物持ちぐらいにしかなれない。
俺は。
俺だって、勇者になりたかった。
侑真みたいに、かっこよくって、自信満々になりたかった。
だけど。
いつも一人で、俺は、みんなに囲まれてる侑真のことを見ていた。
俺は。
俺は、一人で、いつも、侑真のこと羨んでいたのかもしれない。
だから、魔王になんてなっちゃったのかも。
俺は、苦笑した。
こんなに真っ黒な感情が渦巻いている俺だから、魔王になっちゃったのかもしれない。
気がつくと、俺は、人通りが少ない裏通りへと入り込んでいた。
町のメインストリートに比べると薄暗くて、なんか、怪しげな人たちがうろついている。
俺は、もとの道へと戻ろうとして踵を返した。
「おっと、どこに行くつもりだ?お嬢ちゃん」
知らない男たちが、いつの間にか俺のことを取り囲んでいた。俺は、慌てて逃げようとしたが、男たちの内の一人に腕を掴まれて引き戻された。
「あれ?女の子じゃないのか?」
「いや、これだけ美人なら、もう、男だってかまわないじゃねぇか」
男たちが下卑た笑いを浮かべて、俺を見た。
「楽しませてもらってから、売り飛ばしちまおうぜ」
こいつら、何、言ってるんだ?
俺は、男の手を振りきろうとしたが、ダメだった。
離して!
俺は、目を閉じて念じた。
俺を離してくれ!
俺は、目を開いた。だけど、目の前の男たちには、何の変化もなかった。
なんで?
俺は、男たちに引きずられて近くの廃屋へと連れ込まれながら思っていた。
何も、起きない。
俺は、部屋の床へと突き飛ばされて這いつくばっていた。
俺の力は?
なんで、何も起きないんだ?
俺は、笑いながら俺に近づいてくる男たちに向かって手をかざして叫んだ。
「何でもいいから、どっかに行ってしまえ!」
だけど。
何も起こらなかった。
男たちは、俺を押さえ込みながら言った。
「暴れるんじゃねぇぞ」
「い、いや、だ!誰か!」
俺は、無我夢中で逃れようと手足をばたつかせたが、すぐに男たちに押さえつけられて、動きを封じられた。
「大人しくしろ!怪我したいのか?」
「いや、だ!」
誰か!
俺は、泣きながら叫び続けた。だけど、誰も助けに来る気配はなかった。
服を引き裂かれ、男たちの手で、俺は、暴かれていった。
「いやっ!誰か!イオルグ、ヴィスコンティ!誰か!」
俺が絶望して、目を閉じたその時。
男たちが急に悲鳴をあげて倒れ込んできた。
「いや、だ!・・えっ?」
動かなくなった男の体の下から、俺は、逃れようと暴れた。
男の体に触れた俺の両手が血に染まった。
「・・えっ?」
男たちは、全員、事切れていた。
「なん、で?」
「だらしないな、ルファス」
暗闇の中から、男の声がきこえた。
俺は、顔をあげてその男を見た。
「だ、誰?」
「この私を忘れたか?ルファス。相変わらずつれない奴だな」
闇の中から一人の男が現れた。
火のように赤い髪を腰まで伸ばした、赤い瞳の褐色の肌をした美しい男だった。
「この兄、イグドールを、まさか、忘れたとは言わさんぞ」
えっ?
兄?
俺は、窓から差し込んだ月の光に照らされて浮かび上がったその男から目を離すことができなかった。
美しくて、そして、恐い男。
男は、俺の方へと歩み寄ってくると、男たちの一人のポケットの中から黒い珠を取り出して俺に見せた。
「これは、魔力を封じる魔道具だ。この連中は、ミハイル兄の手の者たちだ。お前の力を封じて闇へと葬ろうとしてのことだ」
えっと・・
俺は、戸惑っていた。
ミハイル兄?
「俺は・・その、ルファス、さんじゃ、ないです」
俺は、小声で言った。
「あの、何かの手違いでルファスさんの体と、俺の体が入れ替わってしまって・・」
「何を言ってるんだ?」
イグドールがバカにするように笑った。
「まったく、相も変わらずふざけた奴だ。いつも隙だらけで、貧乏暮らしをして。今度だってそうだ。部下に魔導車を借りに来させたりして、情けない」
えっ?
俺は、驚いていた。
あの魔導車って、この人に借りてきてたの?
「おそらく、勇者を倒すか、籠絡しようとしたのだろうが、愚かな」
イグドールが羽織っていたマントをとり、俺の体を包んだ。
「こんなことになりおって、バカが」
「えっ?」
イグドールは、俺を抱き上げた。
「もう、放ってはおけん」
「はい?」
「お前を私のダンジョンへ連れ帰る」
ええっ?
俺は、呆気にとられていた。
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