魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ

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6 突然の告白タイム?

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    翌日の昼頃、勇者一行は、町に帰還した。
   俺たちは、町の人々に迎えられる彼らのことを遠く離れたところから見守っていた。
    「先頭を歩いている銀の鎧を身に纏っている奴が勇者らしい」
    イオルグが言ったので俺も目を凝らして勇者の姿を追った。
    あれは・・
    明るい肩までの茶髪に、男らしい精悍な横顔。
   間違いない。
  あれは、俺の知っている侑真だ。
  しかも、勇者の脇を固める女戦士や、魔法使いらしき人たちも俺のクラスメイトたちだった。
    どういうこと?
   そのとき、一際、俺たちの目をひく人物が現れた。
    それは、勇者一行の最後に付き従っている大きなリュックを背負った小柄な短い黒髪の眼鏡をかけた少年だった。
    「もしかして、あれが?」
    ヴィスコンティに問われて、俺は、頷いた。
   そう。
  あのチビで、地味な目立たない人物が、俺、竹内   ハジメの本体だった。
   「あの中に魔王様が?」
     「連中、魔王様を荷物運びにしてやがる」
    イオルグが腹立たしそうに、ギリギリと歯軋りした。
    「全員、抹殺しとくか?ヴィス」
     「いえ」
     ヴィスコンティが真剣な表情で応じた。
    「あれは、一応、ハジメの知り合いのようだし、今回だけは、見逃しておきましょう」
    なんか、こわっ!
   俺は、背筋を冷たいものが走るのを感じていた。
   この2人、マジ、こわっ!
  「とにかく、夜になるのを待って、魔王様のもとへ向かいましょう」
   ヴィスコンティの言葉に、俺とイオルグは、頷いた。

   その日の夜、ティルダー男爵邸では、勇者のためのパーティーが開かれていた。
   俺たちは、その騒ぎに乗じて男爵邸へと潜入した。
   広間では、音楽が奏でられ、着飾った人々が談笑していた。
   俺たちは、目立たないように屋敷の使用人風の衣装に身を包んでいたが、なんだか、すごく場違いで、人々の視線を感じる。
    一刻も早く、ここから去りたい。
   俺たちは、懸命に、俺の本体を探した。
   だが、まったく、見つからない。
   「変だな。魔王様、いや、ハジメがどこにもいねぇぞ」
    イオルグが言うと、ヴィスコンティも言った。
   「こっちも、いませんでした」
    「もしかして、疲れちゃって部屋に先に戻ってるんじゃないかな」
    俺は、2人に言った。
   「今なら、部屋の方には、人がいないしチャンスだよ」
    俺たちは、屋敷の奥へと侵入した。
    途中、警備の人たちがいたのをイオルグが皆殺そうとしたので、俺は、奴を止めた。
   「乱暴なことしないで。俺がやるよ」
     俺は、警備の人々にそっと近づくと彼等が眠ってくれるようにと念じた。すると、その屈強な男たちは、突然、ぐったりと倒れて、寝息をたて始めた。
     「さすが」
    イオルグが感心したように言うと、俺の頭をがしがしっと撫でた。
   「だけど、なんで、お前の体、荷物持ちだったんだ?」
   「知らないよ、そんなこと」
       俺たちは、屋敷の奥へと入っていった。
   が、たくさん部屋があって、どこが魔王様、つまり俺の本体の部屋かわからなかった。
  「なんか、ないのかよ?自分の体なんだし、びびっとこないのか?」
    イオルグに言われて、俺は、目を閉じて集中した。
   俺の体。
   どこだ?
   不意に、なんだか、背筋がぞくぞくするような妙な感覚が俺の体を襲った。
   あれ?
   俺は、腰が砕けて崩れ落ちそうになるのをヴィスコンティに支えられた。
    「どうしましたか?ハジメ」
     「う・・ん・・」
     俺は、体の奥が疼くような感覚に息をあらげていた。
    なんだ、この感覚?
   俺は、足ががくがく震えて立っていられなくなっていた。
   「あっ・・な、何、これ・・へん、だ・・」
    「大丈夫ですか?ハジメ」
     ヴィスコンティは、俺を抱き上げると近くの部屋のドアを開いて俺を中へと運び込んだ。
    その部屋は、明かりがついていたが、誰も人影はなかった。
    ヴィスコンティは、俺を豪華なソファに横たえると、服の胸元をくつろげた。
   そのとき、どこからか、低い声がきこえてきた。
   「・・ふっ・・あっ・・だ、だめぇっ!そんな・・」
    「こんなにして、本当に、かわいいな」
     あれ?
    この声、なんか、聞き覚えがあるような。
    俺は、熱い吐息を漏らした。
   「んぅっ・・」
    「大丈夫ですか?ハジメ」
     ヴィスコンティが俺を案じているとき、イオルグは、にやりと笑って声のする方へと足音を忍ばせて近づいていった。
    それは、隣の部屋から聞こえてきた。
   イオルグは、隣の部屋へと通じる扉をそっと開くと中を覗き見た。
   「はっ・・あぁっ!だめぇっ!」
     「あぁっ!んっ・・やぁっ!」
      俺は、堪らず体を反らせて声をあげていた。
    「あっ!バカ!」
     イオルグがちっと舌打ちしたと同時に、全裸の侑真がイオルグの背後に現れ、俺たちを冷たい目で見つめていた。
    「誰だ?お前たちは」
    侑真の手には、鈍く輝く聖剣が握られていた。
    「答えろ!」
    「どうする?ヴィス。こいつ、殺していいか?」
       イオルグは、ヴィスコンティの返事を待つことなく鬼に変化していく。
    俺は、叫んだ。
   「だめぇ!イオルグ、侑真も、やめてっ!」
    「えっ?」
     俺の言葉をきいた侑真がはっと息を飲んだ。
   「・・ハジメ?・・」
    「ふふっ・・やっときたか、遅いぞ、ヴィスコンティ」
    侑真の後ろから全裸にシャツを羽織っただけの俺の本体が現れた。
   「ルファス、知り合いか?」
     侑真が振り向いて彼のことを抱き寄せた。
    マジで?
    俺は、思わす顔が熱くなった。
   なんで?
    俺、侑真に抱かれてるの?
    「ご無事でしたか、我が主よ」
    イオルグとヴィスコンティが膝まづく。
    侑真は、鬼と美男子に歩み寄っていく俺の姿をした者に向かってきいた。
    「これは、どういうことだ?ルファス」
     「どうもこうも」
     ルファスと呼ばれた俺の体は、妖しい微笑みを浮かべた。
   「やっと、役者が揃ったっていうことだ、侑真」

    「落ち着きましたか?ハジメ」
    ヴィスコンティがソファに腰かけた俺に水の入ったコップを手渡しながらきいた。俺は、コップを受けとると一口飲んでから、頷いた。
    「たぶん、もう、大丈夫」
    「まったく、どうしようもないな、お前のお友だちとやらは」
    美少年の姿に戻ったイオルグがはぁっ、と溜め息をついた。
   「手が速いというか。魔王様も魔王様だ。あんなガキに。しかも、勇者だし」
    「私の悪口か?お前も偉くなったものだな、イオルグ」
   いつの間にかイオルグの背後に、俺の体と侑真が立っていた。
    2人とも風呂に入って、白いシャツと、黒いズボンに着替えていた。
   「ま、ま、魔王様っ!」
    イオルグがそっくり返っていたソファから飛び降りて床の上に膝をついてひれ伏した。
   俺、こと魔王ルファスは、ソファに腰かけると、イオルグに言った。
    「もういい。顔を上げろ、イオルグ」
    「はっ!」
     イオルグが膝まづいたまま、顔を上げた。
   ルファスは、俺の姿で魔王の姿をした俺をじっと見つめた。
   「お前が、この体の持ち主、ハジメ、か?」
    ルファスは、ふん、と鼻を鳴らした。
   「噂は、侑真から聞かされている。なんでも、侑真の幼馴染みだとか」
    「は、はい」
    俺は、思わず、頭を下げた。
    「すみません」
    「なぜ、お前が謝る?」
     ルファスは、俺の姿で、俺ならあり得ないぐらい自信に溢れた様子でバカにするように笑った。
   「おかしな奴だ」
    「・・っていうか・・その・・」
     俺は、ルファスに恐る恐るきいた。
   「あの、なんで、侑真と、その・・俺、いや、あなたがそういう関係に?」
     「ああ、我々のことか?」
    ルファスが背後に立っていた侑真のことを抱き寄せるとその手をとって口づけた。
   「侑真は、私の番、だ」
    「はい?」
     俺は、ハトマメできいた。
   「どういうこと?」
   「ハジメ・・すまない。俺は、お前に隠していたことがあるんだ」
    侑真が俺を見つめて話始めた。
   「俺は、昔からずっとお前のことが好きだったんだ」
    はい?
   マジですか?
   俺は、驚きのあまり言葉が出なかった。
   侑真の話は、こうだった。
   子供の頃から、俺のことが気になり、物心つく頃には、実は、俺を愛していたのだという侑真が、この世界にきて、ついに、俺にというか、俺の体に入った魔王ルファスに告白したらしい。
     「初めてだったよ。あんな風に、真摯に見つめられ、心から求められたのは」
    ルファスが俺に言った。
   「見知らぬお前に嫉妬してしまうほどに、な」
    男同士での婚姻も認められているというこの世界においてルファスが侑真のことを受け入れるようになったことは、自然な流れだったのだという。
     「私は、勇者である侑真を番とすることとした」
    「もう、俺たちは、離れられない。わかってくれ、ハジメ」
    がっしりと手を握り合う2人に、俺は、何も言えずに、ただ、口をぱくぱくさせていた。
    マジなんですか?
    ほんとに、それでいいの?
    俺は、心の中でシャウトしていた。
    誰か、なんとか、言ってくれ!
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