魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第十章

『披露宴は古き慣習と共に終わりぬ』

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 披露宴は仰々しい物ではないので、一般客は自由に駐機場で飲み食いしてる。
俺とユーリ姫はダンスなんて得意ではないので、最初からその選択肢が入ってはいない。ではゴーレムでの模擬戦を……なんていうロボットマニアは早々居ないだろう。

強いて言うならユーリ姫とエリーだが、二人とも空飛ぶゴーレムの方に関心が移っていた。

「ねえねえミハイル。あのゴーレムってどのくらい強いの?」
「今はまだ弱いな。だけれど弱くとも強い相手を倒せるようにするのが領主の役目というところか。俺なら最初から地上では使おうとは思わない」
 二階は懇意の客ばかりなのでフランクな言い回しを許可している。
仲の良い者が殆どなので、堅苦しい言い方は面倒なのだ。もちろん近隣の領主などが登ってきた場合は、流石にもう少し堅苦しい言い回しなるだろう。ただ、あけっぴろげな言い方をするのは一番身分の高いユーリ姫であり、合わせて俺が口調を崩している程度なので困るような事はあまりない。

もっとも、話の関心度の問題で誰も文句を着けようとは思わず、むしろズケズケと危機に行けるユーリ姫にもっと質問して欲しいとすら思っているだろう。彼女が主賓なのだから猶更だ。

「地上では使わないの? なら何と戦うの? ドラゴン?」
「それはいずれ行いたい夢としての目標だな。現実的には別の相手を探した方が戦果を挙げられる。そうだな……」
 パラダイムシフトというわけではないが、現状ではとても弱い。
空を飛ぶための呪文に保存している魔力を吸い取られるし、変形機構で無理やり制御している為、総合能力がかなり下がっているのだ。ゴーレム魔術が成立して個別能力を設定できるようになって漸くというところだろう。もっとも、その時は強くなった普通のゴーレムに勝てなくなるのだが。

ここで俺は視線を巡らせて、新しい友人に視線を移す。もちろんラファエロではない(そもそも此処には居ない)。

「ヴィクトール伯なら何と戦わせますか? 貴方ならばお分かりに成る筈だ」
「わ、私がですか? ええと……そうですね……もしかして船でしょうか?」
 俺が名指ししたのはキーエル伯爵家の若き当主ヴィクトールだ。
リュドミラ伯爵夫人よりも若いとは聞いていたが、ようやく少年から抜け出した様な要望で、俺よりもずっとユーリ姫とお似合いの年齢である。もっとも浮ついていて落ち着きがないのが貴族らしくないという意味であり、貴族としての礼法だけならば彼は十分に身に着けている。彼が家中で問題なのは、その若さからであり、経験不足で自信がないからだろう。

俺が自分を指名したこともあるが、『キーエル伯爵家の者ならば重要視する物』を即座に気が付けた事を考えれば愚鈍ではない筈だ。

「その通りです。風上から風下に居る船を狙う方がずっと簡単で効率が良い。風を使って移動力を補強する意味でも両者は似ていますので、操り手から見てもどういう動きをするかは予想し易いでしょうね。そして大量の物資を運んでいるのも大きい」
「船乗りたちは『上手を取られるな』と言ってます。相性が良いでしょうね」
 現状で飛行型ゴーレムは航空機の雷撃機と見るべきだろう。
ノロノロと上空へ上がって、急降下して相手の船を叩く。そんな使い道が一番有効であると思われた。何しろ偵察に使おうにも魔力を馬鹿食いするので、長距離移動なんかさせたらその時点で未帰還とゴーレムではなくなる未来しかありえない。戦闘力も微妙とあれば、これがもっとも友好的な使い道だろう。

もっとも残念な事にというか、幸いな事にそんな事にはならないだろうが。

「では今後は水上での戦いを見据えて増やされるのでしょうか?」
「さて? 現在のオロシャ国は何処とも戦って居ませんし、特にイル・カナン国は古くからの友好国ですからまず戦う事はないでしょう。かといってゴルビーの東から南下するとしても、そこにあるのはやはり友好国なのですよね」
 国家に永遠の友情などあり得ないが、水上戦は相手が限られ過ぎている。
イル・カナンは魔族との間の緩衝地帯でもあるので、戦う相手には成りえない。西も南も陸続きなので基本的にはオロシャ国というものは水上戦というものを想定していないのだ。私兵として水軍を有しているキーエル家も、河賊退治や護衛用なので大型船との戦いなんか考慮外だろう。

唯一の例外はゴルビーの南東だが、そこは無主の地を挟んで友好国というなの属国集団である。あそこはオロシャかイル・カナンに従属しているので、戦う相手には入って居ない(そもそも大型船を有しているのかすら怪しい)。

「じゃあ、やっぱりドラゴンとかが相手なんじゃない」
「確かに戦うとしたら魔族相手かな? 現時点では空飛ぶ魔物には叶わないけれど、野生のままなら、空を飛べると相手が警戒すれば話は変わって来る。おそらく魔王軍が再編されない限り、一度戦えば無理には襲ってこなくなるだろうね。だからこそ、ドラゴンと戦うのは最後の最後に行う『夢』なのさ」
 ドラゴンと戦うのは最終目標でありロマンである。
その手前で魔物を狩ってボーンゴーレムを試し、その素材でフレッシュゴーレムを作る。軽快に動き回っても弱くならない状態で戦う感じだな。とはいえ俺が技術者でもあるが領主でもあるので、無駄に性能だけで戦おうとは思わないけどな。最終的には罠に掛けるなり魔術師を揃えるなりして、数の暴力で押しつつ、相手の反応を見て能力を確かめるくらいになるだろう。

そんな会話をしながら披露宴を終えた。途中で近隣の貴族たちも来たが、基本的には挨拶を受けて終わりだ。親しい者たちも少しずつ去って、ゴルベリアスの屋敷へと向かっていった。

「さて、そろそろお開きにって……お前らもう遅いぞ?」
「アホやなあ。うちら『だけ』が残ってるのは有情やぞ」
「私達も聞かされたのだがな……! 少し恥ずかしいが!」
「師匠。今残っているのは基本的には関係者ばかりです。エリーさんは、まあ少し違いますが、他の貴族の代理人の代表者で」
 エリーや老齢の王家の者に、マーゴットやセシリアたち身内だけが居る。
よく見れば使用人や護衛などの者も年配で枯れた者たちが多い。先ほどまで飛行型ゴーレムとか三胴船での話で最後の方まで居た筈のキーエル家の者も下がっており、メンツが少し内向きばかりというのが異様だった。王家から派遣されてきた者もアンドラ領に仕えていた者たちだったというし、まるで数日後に皆が帰還した後に残るメンバーばかりだったともいう。

まあ、この時点で気が付かない俺の方がおかしかったというか、他と比較し過ぎた結果だったとも言える。

「えっとねえー。見届け人なんだって。ボクも恥ずかしいんだけど……」
「見届けって何を?」
「だからナニをや」
「王族に属した方の初夜の見届け人でございます」
 俺は知らなかったのだが……王族(王弟である公爵家も含む)は特別である。
よってちゃんと『最後まで出来たか』とか『他の者と入れ替わって大変なことにならなかったか』を確認するために、初夜を見届ける者がいるとのころだ。非常に馬鹿馬鹿しい話だが、そこのところが違ったら大変なので、馬鹿馬鹿しくても慣習として存在するらしい。まあ留守を預かるアレクセイとか、懇意とはいえヴィクトール伯とかが入れ替わっても困るからな。気分は良くないが、理解はできる。頭は理解できても、心は納得できないのだが。

という訳で披露宴も終わり、俺達はゾロゾロと三階へと移動。その後は見届け人も無事に業務を終え、この宴もしめやかに終わったというわけだ。お跡がよろしい様で。
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