魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第十章

『結婚披露宴』

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 手でOKマークを作ったようなゴルビー地方。
手の平部分は荒野が山を為している場所だが、そこを数台の馬車が降りて来た。言わずと知れたユーリ姫と護衛の一団である。

百足列車ではなく旧式の馬車なのは、古くからの流れだろう。王家の旗の脇にひっそりとアンドラの旗も見えるのは、彼女のルーツを示す物だからだ。

「あれがお姫様か……」
「なんとお美しい……」
 お転婆なユーリ姫も黙って居れば褒め称えられる。
馬子にも衣裳とはそういう物であり、一世一代の晴れ舞台と有ってジャジャ馬ぶりは鳴りを潜めている。

だが、それも此処までだ。もう無理だし、行儀を崩しても問題ないイベントを用意していた。

「姫をお出迎えせよ!」
「「はっ!」」
「回せ―!」
 俺が指示を出すと、部下たちがそのまま駆け出していく。
今日に合わせて着飾ったゴーレムが、白いローブと黒いローブ姿で出迎える。片手に大盾を持ち、もう片方の手に長槍を持つ。そんな装備どこで使ったの? と知っている者なら突っ込みを受ける様な有様で二列を築いた。

もちろん、槍を交差させての出迎えをする為である。

「姫様、あちらより何者かが!?」
「多分、ソブレメンヌイと同じ奴じゃないかな。……やっぱり」
「並びましたぞ! 並走するようです!」
 馬車が平地に居りた段階で、二騎の四つ足ゴーレムが馬車に並走する。
もちろん護衛するためであり、こちらも映える様にローブは白と黒に分けていた。様式美的にその方が格好良いし、王家の儀式は済んでおり、こちらのネタでやって良いというならこれがもっとも恰好良いだろう。

そして、真骨頂はこれからだ!

「なんやアレ!? あんなん作っとたんか!」
「……わあっ。空飛ぶゴーレムだぁ!」
「「おおお……」」
 最後に高原から、赤いサッシュを纏ったゴーレムが降下する。
翼があるのでローブは着る事が出来ないが、それでも赤い色彩が生える程度には用意している。最初は高速に、最後にはゆったりと……馬車の上を守る様に降下していた。

そして最後にはケンタウルス型は列の先頭へ。飛行型ゴーレムは馬車の後ろを守る様に着地して、翼を折り畳んだのである。

「ようこそユーリ姫。この地を守る者として貴女を歓迎いたします」
「来たよミハイル! あのねあのね! アレボクが貰っちゃっても!?」
「どうぞ。貴女を守るための翼だ。名前をUn-15ソヴィエトと言う」
「変なの! でもボクが格好良い名前を付けたげるからね!」
 俺の挨拶もそこそこに、ユーリ姫はドレス姿で飛び込んで来た。
先ほどまでの御しとやかな姿はどこへやら。化けの皮が剥がれるというか、借りて来た猫の限界が来たのだろう。

そして、ソレは彼女だけの事ではない。

「やってくれたのう。あんなん作っとるとは聞いてへんかったで」
「そりゃ未完成の機体を見せびらかす訳ないだろ。直ぐ堕ちない様に時間制限延ばすのに苦労したんだぞ。それでも今の儀式の間くらいが関の山だけどな」
 ユーリ姫に便乗してやって来たエリーに軽い挨拶を入れた。
飛行型ゴーレムはようやく簡略化の補助呪文を見つけ出し、幾つか暴走先の封鎖を行ってようやく飛行時間が妥協ラインに伸びたくらいである。これまでは出すに出せない時間しか飛べなかったし、高速飛行の呪文があるかどうなのかも判らないので出さなかったのだ。

だが継続飛行時間が伸びた事、そして『後でバレた時』が怖かったので、今のうちに欠点込みで公開することにしたのだ。今ならまだ、『脅威と言う程ではない』で済むからな。

「何したんや? 時間もやけどあんな風に優雅に飛ぶの無理やろ」
「秘密……と言いたいところだが、こっちも研究して欲しいから構わねえか。簡略化の補助呪文を見つけたんだよ。暴走先を封じて、出来る限り継続時間に当ててる。当面は完全制御は無理だから、お互いに補助呪文を交換して行こうぜ。優雅さに関しては高速飛行じゃねえだけだ」
 奇しくもエリーの言葉で高速飛行が存在すると推測できた。
彼女の知識では優雅に飛べないという事は、暴走状態な事もあるが、飛行呪文の強化・暴走傾向が移動速度にあるからだろう。それを考えたら適度に情報共有をして、相手からも情報を抜いたほうが良い。

というか、今なら『教えてやってるぜ、代価をよろしく!』という姿勢を貫けるが、バレたら台無しだもんな。

「……なーる。暴走を抑えるんじゃなくて、暴走しても問題ない部分だけか」
「そういうこった。こっちに来て判ったんだが、地方の連中の馬鹿に出来ねえぞ。妙な呪文を作ったり、古代の呪文の中から抜き出してやがる。簡略化は学院でも失われてるからなあ」
 と言う訳で他愛ない会話の中で今後の話をしておいた。
とはいえそれも此処までだ。主賓は彼女ではないし、空飛ぶゴーレムに関する関心も薄れていくだろう。というか真っ先に話を出したはずのユーリ姫がむくれてるからな。

こういうところを見ると、やはり年相応の女の子なのだろう(もう十五か十六の筈だが)。

「ミハイル~! エリー先生も! ボクを置いてお話ししないで!」
「判った判った。操縦方法は後で教えるから勘弁してくれな」
「ちゃんと聞いとったら判るやろけど、飛ぶ時間には注意するんやで」
 天真爛漫なユーリ姫には叶わない。人は悪意には耐えられるが行為は無理だ。
俺だけではなくエリーもそうなのだろう。苦笑しながら撫でまわしつつ、お互いに髪の毛やら服装を整えて周囲に向き直った。

一連の流れで驚いていた参加者も自分を取り戻し、元の流れに戻ることになったのだ。

「それでは諸君。続きと行こう。まずは空中庭園にご案内しよう」
「建物の上に庭園が……」
「見ろよ。噴水だけじゃなくて滝まであるぞ」
 出来るだけ優雅に歩きつつ、人々を空中庭園の中に誘っていく。
攻撃辺りから見ると上にある花畑が見えるだけだが、下から見ると建物から張り出した二階部分に庭園やら流れ落ちる水が見える。そして一般客を案内するのはその下、駐機場でありパーティ用のスペースだった。

そこには大工たちの打ち上げで行ったのを盛大にしたような宴会場になっている。

「ここにも水が流れ……なんと涼し気な」
「魔法の品を拝見する機会はありましたが、これならば我々でもできそうですな」
「この程度の知識は昔からありましたぞ。効率的ではなかっただけで」
「いかにも、注目すべきはソレをこの規模で実現した伯の手腕でしょうな」
 当たり前だが一階部分は既存技術の応用なので推測できる者は多い。
重要なのはゴーレムを使う事で、大規模工事を実行した事だ。二重三重に遮断されれば外の暑さは届かなくなるし、そこに水が落下し流れて行けば気化熱で涼しくなるのは当然だ。現代のエアコンに慣れていると話は別だが、暑さには耐えるのが当然であるオロシャの人々にはこちらの方が理解し易いだろう。

その上で招待客はいずれ、冷却システムで補強した上層へと誘っていく予定だ。

「では諸卿にはここで寛いででいただきたい。食事に関して必要ならば土産に持たせよう。そして、量は用意できなかったが、姫の為に用意した菓子を一つ」
「おっきなケーキ? でも変な色……!? もしかして……」
「そうだ。この空中庭園の形を模したケーキになる。諸卿には別の物を」
「お菓子の家!?」
 それは様々なお菓子を使って造形したお菓子の家……屋敷だ。
ユーリ姫に対する歓迎の証しであり、同時に周囲に対するアピールである。ド派手な演出と言う意味ではウェディングケーキも悪くないが、そんな物を作る余裕などない。ちょっとした大きさの生クリームのケーキと、上にチョコを混ぜたトッピングをするので精々だった。

こうして結婚披露宴が始まったのである。
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