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第8章
ストラディゴス、ショックを受ける
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ネヴェルから少し離れた山間の滝。
フィリシスに助けられた彩芽とストラディゴスは、ひと気のない場所におろされる。
「お前の事、俺の好きにさせてくれるんだよな」
「何でもする。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「ストラディゴスさん……」
ストラディゴスが、彩芽がオルデンと付き合うと勝手に思い込んで、身を引く覚悟だった事は、先ほどの告白までの会話から察しがついていた。
だからこそ、フィリシス達に最初から殺されても良いから償おうと、彩芽を助ける覚悟のもと城に乗り込んできたのは明らかだ。
それなのに、告白をして尚、フィリシスに対して罪を償おうと本気でぶつかっていくストラディゴスは、ただ彩芽の事が好きなだけでは無い事が彩芽にもわかった。
愛する人に対して相応しい人間になりたいと言う、覚悟がそこにはある。
ストラディゴスは、相応しい人間に近づくには、命を懸けても足りないと思っている。
ブルローネでルイシーが彩芽に言っていた通り、巨人の望む自分へ変わる為に必要な事が、この贖罪なのだろう。
フィリシスは、許しを乞うのではなく、償いたいと願うストラディゴスを見て、悔しいと思った。
自分と仲間達を蔑ろにした愛する男が、別の女の為に、誠実で前よりも魅力的に変わろうとしているのだ。
なぜそれが自分の為では無かったのか、未練があればこそ思ってしまう。
だからこそ、試したくもなる。
「アヤメ、ディーに計画の事を全部話してやってくれ。俺は城に戻る」
「待ってくれフィリシス!」
「それとアヤメ、お前も聞いてたよな。俺の好きにさせるって言ってたのをよ。ディー、お前が俺達にした事を全部アヤメに話しな、それでチャラだ」
フィリシスは、悪戯に悪い笑顔をストラディゴスに向け、それだけ言うと、二人を置いて城へと飛び去って行ってしまった。
* * *
滝のほとり、岩場に座る二人。
彩芽に計画の全貌を説明され、ストラディゴスはショックを受けていた。
ルイシーがオルデンに自分よりも遥かに信用されていた事。
オルデンやエルム達、計画に関わるメンバーの一連の行動が演技であった事。
元カノ四人組が、自分の事を既に許し、今でも好意を持っていた事。
そして自分が騎士団の副長の地位にありながら、信頼されずに計画の外側に置かれていた事にである。
自分の行動が全てにおいて空回っていた事実に、愕然とするしかない。
「大丈夫?」
彩芽の言葉に我に返る。
彩芽に出会う前の自分が、どんな風に周囲に見られ評価されていたのかを知り、わかっていても吐き気がした。
しかし、周囲からその様に見られていた事が、今なら十分に理解も納得も出来た。
自業自得。
フォローのしようのない自業自得である。
騎士団副長、元傭兵団団長、金も地位も部下もあり、酒も女も選び放題。
その全ての上に胡坐をかいて、快楽にふけっていたのが、ほんの少し前の自分なのだ。
あの夜、彩芽に聞かされた肩書の話を思い出す。
目の前の女性に出会うまでは、いや、出会ってからも、肩書に踊らされ続けて来たのかもしれない。
「大丈夫だ……」
全然大丈夫では無いが、受け入れるしかない。
アイデンティティだった騎士の肩書を捨て、目の前の女性以外に心の拠り所が残されていないストラディゴス。
それでも、約束を果たさなければならない。
それが、彩芽に相応しい自分になる為の乗り越えなければならない試練と言うならば。
「アヤメ、フィリシスの言っていた……話なんだが」
「酒場でも言ってたよね……」
「聞いていて気分のいい話じゃ無いんだが、聞いてくれるか?」
「もっと、落ち着いてから聞こうか?」
「いや、アヤメさえ良ければ、今話したい。話して、さっきの」
「さっき?」
「話を聞いた上で、告白の返事が欲しい」
フィリシスに助けられた彩芽とストラディゴスは、ひと気のない場所におろされる。
「お前の事、俺の好きにさせてくれるんだよな」
「何でもする。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「ストラディゴスさん……」
ストラディゴスが、彩芽がオルデンと付き合うと勝手に思い込んで、身を引く覚悟だった事は、先ほどの告白までの会話から察しがついていた。
だからこそ、フィリシス達に最初から殺されても良いから償おうと、彩芽を助ける覚悟のもと城に乗り込んできたのは明らかだ。
それなのに、告白をして尚、フィリシスに対して罪を償おうと本気でぶつかっていくストラディゴスは、ただ彩芽の事が好きなだけでは無い事が彩芽にもわかった。
愛する人に対して相応しい人間になりたいと言う、覚悟がそこにはある。
ストラディゴスは、相応しい人間に近づくには、命を懸けても足りないと思っている。
ブルローネでルイシーが彩芽に言っていた通り、巨人の望む自分へ変わる為に必要な事が、この贖罪なのだろう。
フィリシスは、許しを乞うのではなく、償いたいと願うストラディゴスを見て、悔しいと思った。
自分と仲間達を蔑ろにした愛する男が、別の女の為に、誠実で前よりも魅力的に変わろうとしているのだ。
なぜそれが自分の為では無かったのか、未練があればこそ思ってしまう。
だからこそ、試したくもなる。
「アヤメ、ディーに計画の事を全部話してやってくれ。俺は城に戻る」
「待ってくれフィリシス!」
「それとアヤメ、お前も聞いてたよな。俺の好きにさせるって言ってたのをよ。ディー、お前が俺達にした事を全部アヤメに話しな、それでチャラだ」
フィリシスは、悪戯に悪い笑顔をストラディゴスに向け、それだけ言うと、二人を置いて城へと飛び去って行ってしまった。
* * *
滝のほとり、岩場に座る二人。
彩芽に計画の全貌を説明され、ストラディゴスはショックを受けていた。
ルイシーがオルデンに自分よりも遥かに信用されていた事。
オルデンやエルム達、計画に関わるメンバーの一連の行動が演技であった事。
元カノ四人組が、自分の事を既に許し、今でも好意を持っていた事。
そして自分が騎士団の副長の地位にありながら、信頼されずに計画の外側に置かれていた事にである。
自分の行動が全てにおいて空回っていた事実に、愕然とするしかない。
「大丈夫?」
彩芽の言葉に我に返る。
彩芽に出会う前の自分が、どんな風に周囲に見られ評価されていたのかを知り、わかっていても吐き気がした。
しかし、周囲からその様に見られていた事が、今なら十分に理解も納得も出来た。
自業自得。
フォローのしようのない自業自得である。
騎士団副長、元傭兵団団長、金も地位も部下もあり、酒も女も選び放題。
その全ての上に胡坐をかいて、快楽にふけっていたのが、ほんの少し前の自分なのだ。
あの夜、彩芽に聞かされた肩書の話を思い出す。
目の前の女性に出会うまでは、いや、出会ってからも、肩書に踊らされ続けて来たのかもしれない。
「大丈夫だ……」
全然大丈夫では無いが、受け入れるしかない。
アイデンティティだった騎士の肩書を捨て、目の前の女性以外に心の拠り所が残されていないストラディゴス。
それでも、約束を果たさなければならない。
それが、彩芽に相応しい自分になる為の乗り越えなければならない試練と言うならば。
「アヤメ、フィリシスの言っていた……話なんだが」
「酒場でも言ってたよね……」
「聞いていて気分のいい話じゃ無いんだが、聞いてくれるか?」
「もっと、落ち着いてから聞こうか?」
「いや、アヤメさえ良ければ、今話したい。話して、さっきの」
「さっき?」
「話を聞いた上で、告白の返事が欲しい」
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