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9.仲間からのお願い
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俺たちが街へ行こうと城の中を歩いていると、前方から「兄上!」と駆け寄ってくる人物が。
「え、ソウタ様!? 一瞬誰かわかりませんでした。気付くのが遅れて申し訳ございません。お久しぶりでございます」
「スウェイン、久しぶり。元気だったか?」
「はい。お気遣いいただきありがとうございます」
髪と目の色を変えていたことで俺とはすぐに気が付かなかったようだ。俺の顔をよく知っているスウェインすらこうなのだから、このまま街へ行っても俺だとバレることはないだろう。
スウェインはしゃきっと背筋を伸ばしたあと、俺に深々と頭を下げてくれる。
彼は第二王子であるスウェイン。フェリクスの三つ下の弟王子だ。フェリクスは三人兄弟で、下にスウェインと王女様のヘルミーナがいる。みんなびっくりする程の美男美女で、兄弟だとわかるほどによく似ている。
フェリクスは俺に砕けて話してくれるが、他の兄弟は頑として敬った話し方を変えなかった。「異世界から無理やり召喚して魔王討伐をお願いしている身でありながら、そのような不義理はできません」とはっきり言われてしまったのだ。
フェリクスは『勇者』として同行するが、スウェインもヘルミーナも城に残る。何も手伝えないのに馴れ馴れしくすることはできないと言われれば、俺も了承するしかなかった。
「ソウタ様、申し訳ございません。兄上をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ん? 俺は大丈夫だけど、何かあったのか?」
「はい。実は他国から第一お――」
「スウェイン、その話はお前に任せると言ったはずだ」
スウェインが詳細を話そうとするのを被せるようにフェリクスが割って入った。しかもフェリクスの表情は硬くスウェインを睨みつけている。
なんだ? 兄弟喧嘩か?
「……兄上、僕では力不足だと言ったはずです。兄上はもうただの『王太子』ではないのですよ」
「だが私は最初から断っている。そのように陛下にも奏上したはずだ」
「ですが、陛下はそれを承知しておりません」
んー……よくわからないが、フェリクスには大事な仕事があるのに、こいつはそれを拒否しているってとこだろうか。
フェリクスは魔王討伐のメンバーで『勇者』の称号を持っている。祝勝パーティーの時だってフェリクスの周りには多くの人が集まっていた。
今回も他の国から誰かが訪ねてきたっぽいし、おそらく『勇者』としてのフェリクスに会いに来たかなんかだろう。王太子として、『勇者』としてちゃんと対応しないとまずいだろうな。
「フェリクス、仕事はちゃんとやれよ」
「ソウタっ……でもっ」
フェリクスは苦しそうな表情を浮かべ、唇を噛み締めている。こいつは本来とても真面目なやつだ。自分が今とっている行動が決して褒められたものじゃないこともわかってるんだろう。
自分が置かれている状況も他の誰かに言われなくてもちゃんとわかっている。そんなフェリクスがここまで我儘な行動を取る理由は、おそらく俺なんだろうな。
「フェリクス、俺も仕事をしている社会人だからわかるけどさ、与えられたことはきっちりとやるべきだ。もちろん理不尽なことであればその限りじゃないけど……でもフェリクスはこの国の王太子なんだろ? その大変さは俺にはわからないけど、責任のある役職だってことはわかる。ちゃんと自分の仕事を全うしてこい」
「……」
俺がそう言うと、悔しそうに俯いてしまった。こいつのことだから俺の言ってることもちゃんとわかってるだろうし、それでも俺のことを心配して一緒にでかけたいという気持ちがせめぎ合っているんだろう。
「ちゃんと仕事をしてきたらあとでいっぱい褒めてやるから! だから頑張ってこい!」
「……本当に褒めてくれる?」
「ああ、もちろん! それくらいしかしてやれないけど、頑張ったらいっぱい褒めてやるよ!」
しょぼんと落ち込んだフェリクスがなんだか可愛くて、俺よりもずっと高い位置にある頭をよしよしと撫でてやる。するとフェリクスの表情も段々と緩んできた。
「……わかった。ソウタに言われたら頑張るしかないね。シャノン、くれぐれもソウタを危険な目に遭わせないように」
「了解っす! 絶対にソウタさんを傷つけさせないっす!」
シャノンの元気な返答に頷くと、フェリクスはスウェインと共に仕事へと向かって行った。それを見送ったら俺たちも街へ向かうことに。
城の馬車に乗って街の入り口付近まで乗せて行ってもらうことに。馬車乗り場から城を出るまでも結構な距離があるのと、このまま街に入ってしまうと城の関係者だといろんな人にバレてしまうから。
「……あの、ソウタさん。一つソウタさんにお願いがあるんすけど……」
「ん? なんだ?」
馬車に乗ってすぐ、言いにくそうにシャノンが口を開いた。いつも元気ではきはきと喋るシャノンにしては珍しい。よっぽど言いづらいことなんだろうか。
「あのっ、会ってほしい人が、いるんすけど……」
「会ってほしい人? シャノンの友達か?」
「まぁ、そうっすね……友達というか、幼馴染というか、恋人というか……」
「え!? 恋人!? シャノンに恋人がいたのか!?」
今までそんな話をしたことがなかったからシャノンに恋人がいると知って驚いてしまった。でもこいつも十九歳だし恋人のひとりやふたりいたっておかしくはない。
しかもシャノンの恋人だったら俺も一度会ってみたい。それに快く返事を返すとぱぁっと表情が一気に明るくなった。
シャノンの話では元々は幼馴染だったそうだ。シャノンとは違い魔力量も多いらしく、一緒に討伐士として仕事をしていたとのこと。だがシャノンの恋人はあまり上手く魔法を使えないらしく、最近ではシャノンとあまり一緒に仕事をすることもなくなったそう。
シャノンはSランクの討伐士だ。本当はシャノンとしては一緒に仕事をしたいと思っているが、恋人の方が遠慮してしまっているんだって。
シャノンは恋人があまり上手く魔法を使えなくても気にしていないそうだが、恋人の方はそうでもないらしく、討伐士の仕事を辞めようと他の仕事を探しているらしい。
「それに最近あいつに嫌がらせをしてくる奴もいて、段々と塞ぎがちになっているんす……」
シャノンは魔王討伐のメンバーだったし、このことは討伐士の中だけじゃなく一般の人にだって知られている。
シャノンに会いに各国から訪ねて来る討伐士も多いらしく、シャノンを崇拝している討伐士も多いんだそうだ。なのにそんなシャノンの恋人が討伐士として弱いとなれば、「シャノンに相応しくない!」と行き過ぎた行動を取る人が出てきたらしい。
「うわぁ……嫉妬だよな、それって。シャノンの恋人にはなんの落ち度もないのに、勝手なことを言う奴ってどこの世界にでもいるんだな……」
シャノンはもちろん恋人のことが好きで、いずれは結婚したいと考えているんだそう。でも恋人の方が周りの尖った意見に呑まれていって「別れた方がいい」なんて言い始めたらしい。
お互いがお互い好き合っているのに周りの勝手な意見に潰されるなんて酷すぎる。
「それでソウタさんに会ったら元気が出るんじゃないかって、思ったんすけど……」
「俺でどれだけ力になれるかわからないけど、ぜひ会わせてよ! シャノンの恋人だったら絶対いい人に違いないし!」
「ソウタさん……ありがとうっす!」
さて、シャノンの恋人はどんな人なんだろうか。ちょっとわくわくしてきた!
「え、ソウタ様!? 一瞬誰かわかりませんでした。気付くのが遅れて申し訳ございません。お久しぶりでございます」
「スウェイン、久しぶり。元気だったか?」
「はい。お気遣いいただきありがとうございます」
髪と目の色を変えていたことで俺とはすぐに気が付かなかったようだ。俺の顔をよく知っているスウェインすらこうなのだから、このまま街へ行っても俺だとバレることはないだろう。
スウェインはしゃきっと背筋を伸ばしたあと、俺に深々と頭を下げてくれる。
彼は第二王子であるスウェイン。フェリクスの三つ下の弟王子だ。フェリクスは三人兄弟で、下にスウェインと王女様のヘルミーナがいる。みんなびっくりする程の美男美女で、兄弟だとわかるほどによく似ている。
フェリクスは俺に砕けて話してくれるが、他の兄弟は頑として敬った話し方を変えなかった。「異世界から無理やり召喚して魔王討伐をお願いしている身でありながら、そのような不義理はできません」とはっきり言われてしまったのだ。
フェリクスは『勇者』として同行するが、スウェインもヘルミーナも城に残る。何も手伝えないのに馴れ馴れしくすることはできないと言われれば、俺も了承するしかなかった。
「ソウタ様、申し訳ございません。兄上をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ん? 俺は大丈夫だけど、何かあったのか?」
「はい。実は他国から第一お――」
「スウェイン、その話はお前に任せると言ったはずだ」
スウェインが詳細を話そうとするのを被せるようにフェリクスが割って入った。しかもフェリクスの表情は硬くスウェインを睨みつけている。
なんだ? 兄弟喧嘩か?
「……兄上、僕では力不足だと言ったはずです。兄上はもうただの『王太子』ではないのですよ」
「だが私は最初から断っている。そのように陛下にも奏上したはずだ」
「ですが、陛下はそれを承知しておりません」
んー……よくわからないが、フェリクスには大事な仕事があるのに、こいつはそれを拒否しているってとこだろうか。
フェリクスは魔王討伐のメンバーで『勇者』の称号を持っている。祝勝パーティーの時だってフェリクスの周りには多くの人が集まっていた。
今回も他の国から誰かが訪ねてきたっぽいし、おそらく『勇者』としてのフェリクスに会いに来たかなんかだろう。王太子として、『勇者』としてちゃんと対応しないとまずいだろうな。
「フェリクス、仕事はちゃんとやれよ」
「ソウタっ……でもっ」
フェリクスは苦しそうな表情を浮かべ、唇を噛み締めている。こいつは本来とても真面目なやつだ。自分が今とっている行動が決して褒められたものじゃないこともわかってるんだろう。
自分が置かれている状況も他の誰かに言われなくてもちゃんとわかっている。そんなフェリクスがここまで我儘な行動を取る理由は、おそらく俺なんだろうな。
「フェリクス、俺も仕事をしている社会人だからわかるけどさ、与えられたことはきっちりとやるべきだ。もちろん理不尽なことであればその限りじゃないけど……でもフェリクスはこの国の王太子なんだろ? その大変さは俺にはわからないけど、責任のある役職だってことはわかる。ちゃんと自分の仕事を全うしてこい」
「……」
俺がそう言うと、悔しそうに俯いてしまった。こいつのことだから俺の言ってることもちゃんとわかってるだろうし、それでも俺のことを心配して一緒にでかけたいという気持ちがせめぎ合っているんだろう。
「ちゃんと仕事をしてきたらあとでいっぱい褒めてやるから! だから頑張ってこい!」
「……本当に褒めてくれる?」
「ああ、もちろん! それくらいしかしてやれないけど、頑張ったらいっぱい褒めてやるよ!」
しょぼんと落ち込んだフェリクスがなんだか可愛くて、俺よりもずっと高い位置にある頭をよしよしと撫でてやる。するとフェリクスの表情も段々と緩んできた。
「……わかった。ソウタに言われたら頑張るしかないね。シャノン、くれぐれもソウタを危険な目に遭わせないように」
「了解っす! 絶対にソウタさんを傷つけさせないっす!」
シャノンの元気な返答に頷くと、フェリクスはスウェインと共に仕事へと向かって行った。それを見送ったら俺たちも街へ向かうことに。
城の馬車に乗って街の入り口付近まで乗せて行ってもらうことに。馬車乗り場から城を出るまでも結構な距離があるのと、このまま街に入ってしまうと城の関係者だといろんな人にバレてしまうから。
「……あの、ソウタさん。一つソウタさんにお願いがあるんすけど……」
「ん? なんだ?」
馬車に乗ってすぐ、言いにくそうにシャノンが口を開いた。いつも元気ではきはきと喋るシャノンにしては珍しい。よっぽど言いづらいことなんだろうか。
「あのっ、会ってほしい人が、いるんすけど……」
「会ってほしい人? シャノンの友達か?」
「まぁ、そうっすね……友達というか、幼馴染というか、恋人というか……」
「え!? 恋人!? シャノンに恋人がいたのか!?」
今までそんな話をしたことがなかったからシャノンに恋人がいると知って驚いてしまった。でもこいつも十九歳だし恋人のひとりやふたりいたっておかしくはない。
しかもシャノンの恋人だったら俺も一度会ってみたい。それに快く返事を返すとぱぁっと表情が一気に明るくなった。
シャノンの話では元々は幼馴染だったそうだ。シャノンとは違い魔力量も多いらしく、一緒に討伐士として仕事をしていたとのこと。だがシャノンの恋人はあまり上手く魔法を使えないらしく、最近ではシャノンとあまり一緒に仕事をすることもなくなったそう。
シャノンはSランクの討伐士だ。本当はシャノンとしては一緒に仕事をしたいと思っているが、恋人の方が遠慮してしまっているんだって。
シャノンは恋人があまり上手く魔法を使えなくても気にしていないそうだが、恋人の方はそうでもないらしく、討伐士の仕事を辞めようと他の仕事を探しているらしい。
「それに最近あいつに嫌がらせをしてくる奴もいて、段々と塞ぎがちになっているんす……」
シャノンは魔王討伐のメンバーだったし、このことは討伐士の中だけじゃなく一般の人にだって知られている。
シャノンに会いに各国から訪ねて来る討伐士も多いらしく、シャノンを崇拝している討伐士も多いんだそうだ。なのにそんなシャノンの恋人が討伐士として弱いとなれば、「シャノンに相応しくない!」と行き過ぎた行動を取る人が出てきたらしい。
「うわぁ……嫉妬だよな、それって。シャノンの恋人にはなんの落ち度もないのに、勝手なことを言う奴ってどこの世界にでもいるんだな……」
シャノンはもちろん恋人のことが好きで、いずれは結婚したいと考えているんだそう。でも恋人の方が周りの尖った意見に呑まれていって「別れた方がいい」なんて言い始めたらしい。
お互いがお互い好き合っているのに周りの勝手な意見に潰されるなんて酷すぎる。
「それでソウタさんに会ったら元気が出るんじゃないかって、思ったんすけど……」
「俺でどれだけ力になれるかわからないけど、ぜひ会わせてよ! シャノンの恋人だったら絶対いい人に違いないし!」
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さて、シャノンの恋人はどんな人なんだろうか。ちょっとわくわくしてきた!
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