10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

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2章 家族との別離(今世)

17話 猫カフェ建築予定の土地を見学します

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お父さん、お母さん、悠太、光希。

猫又のフリードが、私の新たな従魔になってくれました。普段は少し怖い口調だけど、食事の時に限り、食レポのうまい芸人さんのような喋り方になります。見ていて、愉快で面白い猫…又さんです。おまけにルウリと同じくらい強いらしく、その事を家に帰ってベイツさんに報告したら、彼は驚き固まりました。

何故なら、フェアリーバード自体が精霊の中でも上位種に入るらしく、怒らせたら1つの街を簡単に消し去る力を有しているからです。そのルウリと同格なのだから、フリードもかなり凄い魔物なのだと思ったけど、私はその実感が全然ありません。

そして現在、ベイツさんは私、ルウリ、フリードを連れて、彼いきつけの定食屋さんへ向かっています。

「ベイツさん、お昼を作れなくてごめんなさい」

今日のお昼当番は私なんだけど、フリードと話し込んでいたせいで、お昼の準備のことをすっかり忘れていたわ。

「そんな深い事情があったのなら仕方ないさ。あの定食屋にも4日ぶりに顔を出せるし、咲耶も友達のリットに会える。フリードには感謝しないとな」

私と同い年で人間族のリット、4日前初めてあの定食へ行った時、お互い意気投合し、すぐにお友達になれた。私はどちらかというと少し人見知りだけど、リットは明るく、何事も前向きな女の子だ。

そんな彼女の両親、ミントさんとアルドさんが経営する定食屋《ガブリ》、安くて美味い料理を提供し、冒険者たちにかなりの人気があるって言ってたわ。冒険者たちが肉汁たっぷり肉厚のあるステーキを笑い声を上げながら豪快にガブリガブリと食べていくようなお店にしたいから、店の名前を《ガブリ》にしたってリットから聞いている。

「お、見えてきたぞ」

定食屋の入口の屋根付近に、デカデカと《定食屋ガブリ》という看板が掲げられている。私たちが店内へ入ると、お昼時を過ぎているせいか、客はまばらだった。ある意味、この時間帯に来て良かったわ。お昼時なら満員で、リットとも全然お話しできないもの。

「ベイツさん、咲耶、いらっしゃい!! 空いている席にどうぞ~~って、尻尾3本の黒猫がいる~~~」

リットは猫好きだから、黒猫のフリードに惹かれちゃったか。ここに来る道中、普段見かけない黒猫が歩いているせいか、フリードを見る人も結構多かったわ。

「こらリット‼︎ お客様なんだから、ちゃんと接客しなさい‼︎」

リットがフリードを触ろうとする直前で、ミントさんが店の奥から出てきて注意してくれた。定食屋の従業員なんだから、鳥や猫に触っちゃダメだよ。そもそも、お客が従魔を店内に入れる行為もダメな気もするけど、この世界ではOKみたい。

「は~い、2人とも何にする?」

私たちがテーブル席に座ると、お店のカラフルなエプロンを身につけたリットが来てくれた。私たちが日替わり定食を注文すると、ルウリとフリードが人語で喋り出す。

「僕には、煮豆を頼むよ。ああ、薄味でね」
「ルウリは、以前と同じ物だね」

4日前にルウリを見ているから、リットの対応も手慣れているわ。

「私は、咲耶の従魔となった猫又のフリードと言います。私には、小魚の焼いた物をお願いします」
「へ、猫又? フリードも、この国の言葉を話せるの!?」
「当然です、猫又という種は自分達の住む国の言語なら話せるのです」

フリードは世界中を渡り歩いているから、全ての言語を使いこなせると言っていたわ。実際、ルウリの鳥語をスキルなしで完璧に理解していたもの。

「ほえ~最近の鳥と猫って凄いな~」

あはは、4日前と同じリアクションだ。リットが離れていき、お父さんのアルドさんにさっき注文したメニューを伝えている。

「咲耶、今のうちにこれを渡しておくよ。朝描いてくれたレーザーポインターのイラストと、各商品の使用説明書の改良案に関する明細書だ。ちなみに、報酬は君の口座に振り込み済みだ」

ベイツさんから明細書を貰い、中身を確認すると、私は声をあげそうになった。改良案の報酬額が10万ゴルド(約10万円)となっていたからだ。これで、私の貯金は約60万ゴルドになってしまった。

「ほう、これこれは。咲耶、あなたもその年齢で中々やるじゃないですか」
「うう、日本で見聞きしたことをイラストにしたり、軽く説明しているだけなのに」

ルウリから言われているけど、あまり人前で前世の知識を言わない方がいい。アマンガムさんに話すにしても、事前にベイツさんやルウリ、フリードに相談しよう。そうしないと、私の貯金額がどんどん増えていく気がする。何の苦労もなく、大金を入手していくから怖いよ。

「その猫カフェなんだが、アマンガムさんによると、既に土地を押さえているし、外観や内装の設計もかなり進んでいるようだ。完成次第、着工に取り掛かるから、早くて2ヶ月後にオープンだな」

2ヶ月後!?

以前、最短で2ヶ月と聞いてはいたけど、アマンガムさんの冗談だと思っていたわ。まだ設計図の段階なのに、本当に実現できるのかな? 

「咲耶、君の知る建築の知識は、地球の日本のものだ。あの世界では科学が発展しているけど、ここでは魔法が科学より発展している。魔法を利用すれば、建築速度も格段に速いのさ。しかも、スキルを使えば、建物の耐久性能なんかも1発でわかる。科学と違って、小難しい計算なんていらないのさ」

あはは、スキルと魔法……反則だよ。
ルウリは神の御使い樣でもあるから、地球のことを知っているんだね。

「咲耶、ルウリ、フリード、その土地なんだが、この後みんなで見に行かないか?」
「はいはいはい、見たい、見たい‼︎ 店ももう終わるので、私も行きます‼︎」

ベイツさんに返事をしたのは、リットだ。他のお客さんの注文を聞きながら、こっちの話を聞いていたのね。器用な女の子だな~。結局、アルドさんとミントさんに怒られながらも、リットは私たちと同行することになった。


○○○


私たち3人と2体は、猫カフェの建築予定地となる場所へとやって来ました。周辺には、喫茶店や定食屋などの飲食店がなく、洋服や宝石類を販売する服飾系のお店や、武具防具魔道具などを販売する店があり、人通りもかなり多い。その一画に、60坪ほどの広さの平地があり、そこに【猫カフェ建設予定地】と記載された立て札が掲げられている。

「広い」

その一言に尽きる。
建物がないせいもあって、異様に広く感じる。

「ああ、それは俺も思ったが、アマンガムさんは1階にお土産コーナーを設置して、2階を猫カフェにするそうだ。咲耶の提案した玩具や、猫専用の散歩道や住まいを十分に設置できる広々としたスペースもある。彼は、人も猫も気軽に落ち着いて楽しめる場所にしたいと言っていた」

アマンガムさんは、人と猫が共存できる世界を真剣に考えている。まだ、猫カフェ全体の設計図やイラストがないからイメージできないけど、完成が楽しみになってきた。

「この一画に猫たちの楽園を建設するんだ~。既に、8匹の猫たちが集まってるよ」

もう、いるの!? 
ミケーネがいるから、先導してもらったのかな? 

もしくは、私が猫たちにこの国の言語を読めるよう教育しているし、猫の溜まり場には会話用の[小型キャットボード]を複数置いているから、それらを利用してここの場所を誰かに教えてもらったのかもしれない。

猫たちの方は下見を終えているのか、みんなが猫カフェのことを話題にして話し合い、互いに寛いでいるわ。今は土地内に誰も立ち入らないから、猫たちも過ごしやすいんだ。

「ほほほほ、周囲には上品な店も多いようですし、治安も良さそうです。まさに、猫たちにとって理想的な土地でしょうね」

フリードも、気に入っているようで安心した。猫カフェが完成したら、この一体が彼の縄張りになるのだから気にして当然だよね。

「地脈の流れもいいね。これなら瘴気も発生しないだろうし、猫たちが病気になることもない。よく、こんな一級品の土地を見つけられたもんだ」

ルウリも褒めてくれている。いくつかわからない言葉があったけど、褒めていることだけはわかる。

「ねえ咲耶、店が完成したら、あなたはそこで働くの?」
「え…まだ決まったわけじゃないけど、私はアルバイトで働きたいと思ってるわ、。成人したら、従業員になるのもアリかもね」

リットからの質問に、少しだけ戸惑ってしまった。この店の責任者にはなれないけど、働くことはできるはずよ。でも、まだアマンガムさんに相談していないから、どうなるのかわからない。今後、そう言った話し合いもしていかないとね。

「猫に囲まれた生活か~いいな~」
「リットも、私と同じアルバイトなら働けるんじゃないかな?」
「そっか、その手があった‼︎ 募集されたら、速攻で応募しよう‼︎」

この世界は10歳からアルバイト可能と聞いているから、リットも大喜びだ。

この後、私たちは周辺を2時間程散策し、地理をしっかりと把握したところで、リットのいる店へと戻ることにした。彼女もフリードといっぱいお話しできたのが嬉しかったのか、『猫カフェが完成したら、お客様第一号になる‼︎』と宣言してくれた。
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