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2章 家族との別離(今世)
18話 突然の出来事
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猫カフェ付近で軽いショッピングをしたこともあり、帰りが少し遅くなってしまった。今の時間は午後5時00分、定食屋ガブリの営業時間は午前7時から午後2時までで、夜の営業はないから安心だけど、もうすぐ夕ご飯だから、アルドさんたちも心配しているかもしれない。
「リット、少し遅くなったね」
「大丈夫、今日は家でベイツさんや咲耶たちと夕ご飯を食べる約束をしているから許してくれるよ」
猫カフェの土地の周囲は、私もリットも行ったことがないから、ついつい色んな店に立ち寄ってしまった。定食屋ガブリの味は私好みの味付けだから、夕飯も楽しみだな。お友達の家での夕食、これもこの世界に来てから初めてだよ。
「さあ、入って入って」
リットがポケットから鍵を取り出し、《本日は閉店しました》と掲げられたガブリのお客さん用入口となる扉の鍵穴に入れた。
「あれ? 開いてる? なんで?」
閉店して3時間も経過しているのだから、入口を閉めておかないと、泥棒が入ってしまうわ。店を経営しているアルドさんとミントさんが、そんなミスをするなんて珍しい。
「お父さ~ん、入口が開いたままだよ~~~」
店の中に入り、リットが大声で奥にいるアルドさんに言っているにも関わらず、返事が返ってこない。
「ねえリット、なんだか静か過ぎない?」
「うん、私もそう思う。まるで、誰もいないような静けさだ。それに、店の中が薄暗い」
今の季節は秋から冬に移り変わろうとしている時期のせいもあって、日が暮れるのも早くなっている。おまけに、店の中は照明も付いていないので、余計に薄暗く、このまま歩くと危ないわ。
「ちょっと待ってね。照明をつけるから」
リットが入口近くの壁についているボタンを押すと、天井に設置されている照明がついたのだけど、私たちの視界には信じられないものが映っていた。ベイツさんもルウリもフリードも私も、この光景を見て絶句するしかなかった。客用のテーブルや椅子が全て壊されており、壁には何かをぶつけた痕のような凹みがいくつもあり、周囲には赤い液体が飛び散っている。まるで、化け物に襲撃されたかのようだ。
「何…これ? 店が滅茶苦茶だ。お父さんは? お母さんは?」
リットは慌てて、店の奥へと入っていく。
「待てリット!! ルウリ、来てくれ!! フリード、咲耶を頼む!!」
「わかった!!」
「了解です、ルウリは早く行ってあげなさい!!」
ベイツさんが、急いでリットを追いかける。私はそれを見て我に返り、後をついて行こうとしたら、照明をつけたのか、奥の部屋の灯りが漏れてきた。
「何、これ!? お父さん!! お母さん!!」
「くそ!! 誰が、こんなことを!!」
突然、リットとベイツさんの大声が奥から聞こえてきた。私も急いで奥に位置する住居エリアへ足を踏み入れると、3時間近く前に見たガブリの光景と全く異なる景色が目の前に飛び込んできた。
部屋中の家具や荷物類があちこち散乱しており、全てが破壊されている。そして、床にミントさんとアルドさん…らしき2人が倒れていた。顔が誰かに殴られたのか識別できないくらい赤黒く膨らんでおり、2人の両手、特に指先があちこち折られている。
「お父さん…お母さん…ねえ…返事してよ…」
「アルドさん…ミントさん…」
リットと私が呼んでも、2人からの返事は返ってこない。
まさか…私が最悪の言葉を連想しようとした時、急に身体が浮遊感に襲われる。
「べ…ベイツさん!!」
「離して‼︎ お父さんとお母さんが!! 離して~~~~」
突然、抱き上げられたせいか、リットが錯乱したわ!!
「咲耶、リット、無理矢理ですまんが移動させるぞ。今すぐ2人に回復魔法を施さないと、手遅れになってしまう」
ベイツさんが、私たちを店の方へと無理矢理移動させた。私とリットにとっては、その行為よりも、彼の言葉に驚いた。
「お父さんとお母さんは…生きてるの!?」
ピクリとも動かないから、私もリットも最悪な事態を想定したけど生きているの?
「ああ、かなり危険な状態だが生きている。必ず、助けてみせるさ。フリード、俺とルウリは今から緊急手術を実施する。その間、咲耶とリットのことを頼む」
緊急手術、ドラマとかでよく聞くセリフだ。
2人の容体が、それだけ危険なんだ。
「やれやれ、仕方ありませんね。ルウリの方が私より回復魔法を得意としています。2人で、リットの両親を救ってみせなさい。その間、もし誰かが再度襲撃に来るようであれば、私が対応しましょう」
「すまん、恩にきる!!」
そうか、ルウリとフリードは数多くのスキルと魔法を持っているから、回復魔法だって使えるはずだ。
「ベイツさん、お願いします!! お願いします!! どうか、お父さんとお母さんを助けて!!」
必死に懇願するリット、Aランク冒険者と魔法に精通したルウリがいるとはいえ、心に、一抹の不安が残る。ダメダメ、こういう時は不安なことを考えず、2人が回復してくれることを祈るしかない。
「ベイツさん、私からもお願いします!!」
ベイツさんは、私とリットの抱える不安を取り払ってくれるかのような笑顔を見せる。それが不思議と、私たちに安心感をもたらせる。
「任せろ!! こういう緊急事態は、俺も慣れてる。ハイポーションやマナポーションも、常に5本常備しているからな」
「ベイツ~~、回復魔法で少し回復させたから、2人にハイポーションを頼むよ~~」
ルウリは大怪我を負った2人を見ても動じず、その場ですぐに回復魔法を行使してくれているんだ。
ベイツさんもルウリも、凄い。
この人たちなら、リットの両親を救ってくれるかもしれない。
「わかった、すぐ行く!!」
そう言うと、ベイツさんは颯爽と奥へと走っていった。
私とリットに、何か手助けできることはないのかな?
あれだけ赤黒く腫れているなら、冷たい水とタオルを持っていけば、少しは楽になるんじゃあ……
「あなたたちは邪魔になるので、絶対に奥へ行ってはいけません」
フリードが私の心を読んだのか、居住エリアへ続く狭い通路に立ちはだかっている。私とリットは無理にでも通り抜けようと思ったけど、何故か小さな黒猫のフリードが巨人のように感じてしまい、足を動かせなくなってしまう。
「フリード、通して…お父さんとお母さんのもとに行きたいの」
リットが悲しい目で、フリードを見つめる。
「子供に、親のあんな姿をいつまでも見せられませんよ。それに、あそこまでの重体となると、回復魔法[イムノブースト][ヒール][キュア]、そしてポーションなどの投薬による複合療法を施さないといけません。いいですか…」
フリードは、ルウリとベイツさんによる治療方法を私たちに優しく教えてくれた。回復魔法は3系統あり、どれも万能ではない。
・大気中に存在する魔素を利用して身体を修復させる魔法[ヒール]
→大気中に漂う魔素を体内へ大量に入れてしまうと、抵抗の無い者は拒否反応を起こしてしまい、怪我を悪化させる。これには個人差があるため、《魔素抵抗値》を事前に検査しないと大変なことになる。
・人の免疫能力を促進させて身体を回復させる魔法[イムノブースト]
→軽症程度なら使用してもいいけど、重症以上の場合、この魔法だけで完治させて
はいけない。無理にやってしまうと、その人の寿命を減らしてしまうらしい。
・身体の毒素を浄化させる魔法[キュア]、
→毒素を取り除くだけで、怪我は治療されない。
冒険者の場合、魔物との実戦により魔素抵抗値が非常に高くなっているので、回復魔法[ヒール]の単独でも問題ないけど、一般人はかなり低いので細心の注意を払わないといけない。三種の回復魔法とポーションなどの投薬、この4つのバランスは個人によって異なるので、使用の際はかなりの集中力を要する。私たちが行くと、その集中が乱れてしまい、かえって危なくなるという。そう説明された事で、私もリットも納得し、ミントさんとアルドさんの容体が回復してくれることを、ここで祈るしかないのだけど、無力な自分たちにもどかしさを感じてしまう。
「あなたたちは、ここで自分の出来うる事をやりなさい」
自分の出来うる事?
フリードに言われて、私はハッとなる。
お客様スペースでもあるこの場所は、周囲に血が飛び散っており、テーブル類も破壊されている。この中で私ができることと言えば、一つしかない。重体の2人が回復したとしても、この惨状を見たら絶対に傷つくわ。ミントさん、アルドさんのそんな顔を見たくないし、リットにもそんな両親の顔を見せたくない。まだ使った事ないけど、スキル《原点回帰》に全てを賭けよう。
「リット、今からスキルを使うわ。上手くいけば、この惨状をなかったことにできるから、私に力を貸して‼︎ 」
「なかった事って……それよりお父さんとお母さんが…心配」
今のリットは両親のことで、頭がいっぱいだ。
その気持ちもわかるけど、今は回復することを信じて次のことを考えなきゃダメ。
「死なないわ‼︎ ベイツさんと精霊ルウリを信じて‼︎ 私はこの惨状をなかったことにできると思うけど、店の家具類や食器類の配置を全然知らないの。だから、元に戻ったら、あなたが修繕された物品類を元の場所に戻してほしい」
ぶっつけ本番だけど、必ず壊れた物品を元に戻してみせる。
リットに、不安な顔を見せちゃダメ。
成功できる事を信じて、リットを説得するんだ。
「咲耶は、そんな事ができるの? うん……わかった、回復したお父さんとお母さんに、こんな状態を見せたくない。私も手伝う!!」
リットも覚悟を決めたのか、さっきまで悲嘆に暮れていた顔がキュッと明るくなる。スキルで破壊された物品類を元の状態に戻して、リットがそれらを片付けていく。初めての作業だから、どのくらいの時間がかかるかもわからない。
「フリード、治療ってどのくらいかかるの?」
「通常であれば、7時間程の施術ですが、《Aランクのベイツ》と《フェアリーバードのルウリ》の組み合わせであれば、まあ2~3時間程度でしょうね」
そうなると、目標は2時間以内に元の状態へと戻さないといけない。
絶対に、目標時間内に店を元の定食屋に戻してみせるわ‼︎
「リット、少し遅くなったね」
「大丈夫、今日は家でベイツさんや咲耶たちと夕ご飯を食べる約束をしているから許してくれるよ」
猫カフェの土地の周囲は、私もリットも行ったことがないから、ついつい色んな店に立ち寄ってしまった。定食屋ガブリの味は私好みの味付けだから、夕飯も楽しみだな。お友達の家での夕食、これもこの世界に来てから初めてだよ。
「さあ、入って入って」
リットがポケットから鍵を取り出し、《本日は閉店しました》と掲げられたガブリのお客さん用入口となる扉の鍵穴に入れた。
「あれ? 開いてる? なんで?」
閉店して3時間も経過しているのだから、入口を閉めておかないと、泥棒が入ってしまうわ。店を経営しているアルドさんとミントさんが、そんなミスをするなんて珍しい。
「お父さ~ん、入口が開いたままだよ~~~」
店の中に入り、リットが大声で奥にいるアルドさんに言っているにも関わらず、返事が返ってこない。
「ねえリット、なんだか静か過ぎない?」
「うん、私もそう思う。まるで、誰もいないような静けさだ。それに、店の中が薄暗い」
今の季節は秋から冬に移り変わろうとしている時期のせいもあって、日が暮れるのも早くなっている。おまけに、店の中は照明も付いていないので、余計に薄暗く、このまま歩くと危ないわ。
「ちょっと待ってね。照明をつけるから」
リットが入口近くの壁についているボタンを押すと、天井に設置されている照明がついたのだけど、私たちの視界には信じられないものが映っていた。ベイツさんもルウリもフリードも私も、この光景を見て絶句するしかなかった。客用のテーブルや椅子が全て壊されており、壁には何かをぶつけた痕のような凹みがいくつもあり、周囲には赤い液体が飛び散っている。まるで、化け物に襲撃されたかのようだ。
「何…これ? 店が滅茶苦茶だ。お父さんは? お母さんは?」
リットは慌てて、店の奥へと入っていく。
「待てリット!! ルウリ、来てくれ!! フリード、咲耶を頼む!!」
「わかった!!」
「了解です、ルウリは早く行ってあげなさい!!」
ベイツさんが、急いでリットを追いかける。私はそれを見て我に返り、後をついて行こうとしたら、照明をつけたのか、奥の部屋の灯りが漏れてきた。
「何、これ!? お父さん!! お母さん!!」
「くそ!! 誰が、こんなことを!!」
突然、リットとベイツさんの大声が奥から聞こえてきた。私も急いで奥に位置する住居エリアへ足を踏み入れると、3時間近く前に見たガブリの光景と全く異なる景色が目の前に飛び込んできた。
部屋中の家具や荷物類があちこち散乱しており、全てが破壊されている。そして、床にミントさんとアルドさん…らしき2人が倒れていた。顔が誰かに殴られたのか識別できないくらい赤黒く膨らんでおり、2人の両手、特に指先があちこち折られている。
「お父さん…お母さん…ねえ…返事してよ…」
「アルドさん…ミントさん…」
リットと私が呼んでも、2人からの返事は返ってこない。
まさか…私が最悪の言葉を連想しようとした時、急に身体が浮遊感に襲われる。
「べ…ベイツさん!!」
「離して‼︎ お父さんとお母さんが!! 離して~~~~」
突然、抱き上げられたせいか、リットが錯乱したわ!!
「咲耶、リット、無理矢理ですまんが移動させるぞ。今すぐ2人に回復魔法を施さないと、手遅れになってしまう」
ベイツさんが、私たちを店の方へと無理矢理移動させた。私とリットにとっては、その行為よりも、彼の言葉に驚いた。
「お父さんとお母さんは…生きてるの!?」
ピクリとも動かないから、私もリットも最悪な事態を想定したけど生きているの?
「ああ、かなり危険な状態だが生きている。必ず、助けてみせるさ。フリード、俺とルウリは今から緊急手術を実施する。その間、咲耶とリットのことを頼む」
緊急手術、ドラマとかでよく聞くセリフだ。
2人の容体が、それだけ危険なんだ。
「やれやれ、仕方ありませんね。ルウリの方が私より回復魔法を得意としています。2人で、リットの両親を救ってみせなさい。その間、もし誰かが再度襲撃に来るようであれば、私が対応しましょう」
「すまん、恩にきる!!」
そうか、ルウリとフリードは数多くのスキルと魔法を持っているから、回復魔法だって使えるはずだ。
「ベイツさん、お願いします!! お願いします!! どうか、お父さんとお母さんを助けて!!」
必死に懇願するリット、Aランク冒険者と魔法に精通したルウリがいるとはいえ、心に、一抹の不安が残る。ダメダメ、こういう時は不安なことを考えず、2人が回復してくれることを祈るしかない。
「ベイツさん、私からもお願いします!!」
ベイツさんは、私とリットの抱える不安を取り払ってくれるかのような笑顔を見せる。それが不思議と、私たちに安心感をもたらせる。
「任せろ!! こういう緊急事態は、俺も慣れてる。ハイポーションやマナポーションも、常に5本常備しているからな」
「ベイツ~~、回復魔法で少し回復させたから、2人にハイポーションを頼むよ~~」
ルウリは大怪我を負った2人を見ても動じず、その場ですぐに回復魔法を行使してくれているんだ。
ベイツさんもルウリも、凄い。
この人たちなら、リットの両親を救ってくれるかもしれない。
「わかった、すぐ行く!!」
そう言うと、ベイツさんは颯爽と奥へと走っていった。
私とリットに、何か手助けできることはないのかな?
あれだけ赤黒く腫れているなら、冷たい水とタオルを持っていけば、少しは楽になるんじゃあ……
「あなたたちは邪魔になるので、絶対に奥へ行ってはいけません」
フリードが私の心を読んだのか、居住エリアへ続く狭い通路に立ちはだかっている。私とリットは無理にでも通り抜けようと思ったけど、何故か小さな黒猫のフリードが巨人のように感じてしまい、足を動かせなくなってしまう。
「フリード、通して…お父さんとお母さんのもとに行きたいの」
リットが悲しい目で、フリードを見つめる。
「子供に、親のあんな姿をいつまでも見せられませんよ。それに、あそこまでの重体となると、回復魔法[イムノブースト][ヒール][キュア]、そしてポーションなどの投薬による複合療法を施さないといけません。いいですか…」
フリードは、ルウリとベイツさんによる治療方法を私たちに優しく教えてくれた。回復魔法は3系統あり、どれも万能ではない。
・大気中に存在する魔素を利用して身体を修復させる魔法[ヒール]
→大気中に漂う魔素を体内へ大量に入れてしまうと、抵抗の無い者は拒否反応を起こしてしまい、怪我を悪化させる。これには個人差があるため、《魔素抵抗値》を事前に検査しないと大変なことになる。
・人の免疫能力を促進させて身体を回復させる魔法[イムノブースト]
→軽症程度なら使用してもいいけど、重症以上の場合、この魔法だけで完治させて
はいけない。無理にやってしまうと、その人の寿命を減らしてしまうらしい。
・身体の毒素を浄化させる魔法[キュア]、
→毒素を取り除くだけで、怪我は治療されない。
冒険者の場合、魔物との実戦により魔素抵抗値が非常に高くなっているので、回復魔法[ヒール]の単独でも問題ないけど、一般人はかなり低いので細心の注意を払わないといけない。三種の回復魔法とポーションなどの投薬、この4つのバランスは個人によって異なるので、使用の際はかなりの集中力を要する。私たちが行くと、その集中が乱れてしまい、かえって危なくなるという。そう説明された事で、私もリットも納得し、ミントさんとアルドさんの容体が回復してくれることを、ここで祈るしかないのだけど、無力な自分たちにもどかしさを感じてしまう。
「あなたたちは、ここで自分の出来うる事をやりなさい」
自分の出来うる事?
フリードに言われて、私はハッとなる。
お客様スペースでもあるこの場所は、周囲に血が飛び散っており、テーブル類も破壊されている。この中で私ができることと言えば、一つしかない。重体の2人が回復したとしても、この惨状を見たら絶対に傷つくわ。ミントさん、アルドさんのそんな顔を見たくないし、リットにもそんな両親の顔を見せたくない。まだ使った事ないけど、スキル《原点回帰》に全てを賭けよう。
「リット、今からスキルを使うわ。上手くいけば、この惨状をなかったことにできるから、私に力を貸して‼︎ 」
「なかった事って……それよりお父さんとお母さんが…心配」
今のリットは両親のことで、頭がいっぱいだ。
その気持ちもわかるけど、今は回復することを信じて次のことを考えなきゃダメ。
「死なないわ‼︎ ベイツさんと精霊ルウリを信じて‼︎ 私はこの惨状をなかったことにできると思うけど、店の家具類や食器類の配置を全然知らないの。だから、元に戻ったら、あなたが修繕された物品類を元の場所に戻してほしい」
ぶっつけ本番だけど、必ず壊れた物品を元に戻してみせる。
リットに、不安な顔を見せちゃダメ。
成功できる事を信じて、リットを説得するんだ。
「咲耶は、そんな事ができるの? うん……わかった、回復したお父さんとお母さんに、こんな状態を見せたくない。私も手伝う!!」
リットも覚悟を決めたのか、さっきまで悲嘆に暮れていた顔がキュッと明るくなる。スキルで破壊された物品類を元の状態に戻して、リットがそれらを片付けていく。初めての作業だから、どのくらいの時間がかかるかもわからない。
「フリード、治療ってどのくらいかかるの?」
「通常であれば、7時間程の施術ですが、《Aランクのベイツ》と《フェアリーバードのルウリ》の組み合わせであれば、まあ2~3時間程度でしょうね」
そうなると、目標は2時間以内に元の状態へと戻さないといけない。
絶対に、目標時間内に店を元の定食屋に戻してみせるわ‼︎
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