転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

60話 君に、何が起きたんだ? *視点 シン・ユズリハ

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いつも明るく、笑顔で語りかけてくる君の姿が、今でも脳裏に浮かんでくる。あの頃は、君もご家族の人たちも皆明るく、住む家からも、活気が溢れているのがわかり、僕から見れば、正直羨ましいと思ったくらいだ。

僕はユズリハ男爵家の長男、父が王城で文官をしているも、強い権力など持ち合わせてなどいないため、生活レベルは平民とそう変わらない。邸自体はあるものの、彼女-シャロン・オリエントの子爵家と比べると、雲泥の差がある。オリエント子爵家は、11年前に起きた隣国での出来事もあって有名となり、資産が大幅に増えたことで、今では物品輸送に関わる商会を経営している。

収納力と輸送力とその安全性に関しては、他の貴族や王家からも注目を置かれ、僕と彼女の家が隣同士、祖父の頃から強固な信頼関係を築けているおかげで、僕たち一家も商会に関わらせてもらっている。そして、僕とシャロンは幼馴染という間柄、仲も良好だ。

事態が急変したのは、僕の知る範囲で今から10日程前。
オリエント家の家族全員が、突然スキルと魔法を使えなくなった。
正直、これは異常事態だ。

オリエント子爵家は、カーバンクルから愛されているディオグランデ家の分家にあたる。スキルが全て封印されている以上、本家でも何らかの異常が起きていると考えたオリエント子爵は、急ぎディオグランデ公爵に連絡を入れたものの、子爵家以外でそういった異常はないと聞かされる。

僕たち一家はその異常事態について、内密にオリエント子爵家から相談され、貴族界隈でそういった事象が起きていないか探りを入れているものの、収穫は今のところゼロ。オリエント子爵家が周囲に知られないよう、この異常性を秘匿扱いしているように、他の貴族も隠蔽している可能性が極めて高い。何の成果も得られないまま数日程経過すると、今度はオリエント商会の経営する店に、異変が起きる。

商会の人たちは遠方へ物品を輸送した際、必ず近辺で開かれている物品店へ行き、人の生活に役立つ物を購入し、それらを王都で経営しているお店で販売しているが、棚に陳列されている魔道具が、突然客の前で暴走したり、店の窓ガラスが割れたりする事象が発生した。怪我人こそいなかったものの、冒険者ギルドに事故原因の調査を依頼するも不明のままで終わってしまい、商業ギルドからの要請もあり、店を一時的に閉めることになってしまう。

その事故以降、店の悪評が周囲にばら撒かれてしまい、評価が急速に落ちていき、人々は店に近づかなくなる。《スキルと魔法の封印》《店での事故》《悪評》、全てが何一つ解決されないまま、今新たな騒動が起きた。

こういった不可解な事象であっても、必ず原因が存在する。
僕自身、まだ何もわかっていないのが歯痒い。

少しでも役立とうと、王都中の店を巡り、物珍しいものを物色しつつ、情報収集をしているが、手掛かりが依然ゼロのままだ。僕がシャロンのもとを離れた期間は2日程、彼女からフリマ出店の件を聞いていない。貴族がフリーマーケットに介入してくること自体は、それほど珍しい行為じゃない。保存状態の良い高価な品々を格安で販売提供することで、平民たちにも喜ばれているからな。

問題は、貴族自身が店に立つこと。

貴族が平民の服を着て、フリマに立ち寄る場合もあるが、店先での客寄せとなると、話は別だ。正体が露見された場合、その情報はお茶会や夜会などを通して、あっという間に広がり、家の品格を疑われてしまう。とにかく、今は彼女を手伝おう。店の撤去作業を、1人だけでやらせるわけにはいかない。トーイとユミルも、僕たちの雰囲気に気遣ってくれたようで、シャロンに気付かれないよう去ってくれたのは助かる。使用人たちの行方が気掛かりだであるものの、今はシャロンの安全を最優先だ。

「シャロン、僕も手伝うから、早々に引き上げよう」

泥だらけのせいで、かなり見窄らしい姿に変化している。誰か知らないが、僕ら子供に対して、やっていい仕打ちじゃない。

「ねえ、シン」
「なんだ」

「私たち家族は、これまで皆に喜ばれるよう、真っ当な商売を営んできた。事故で店の営業が出来ない以上、お客様方に心配をかけないよう、フリーマーケットに参入させてもらい、格安で信頼の置ける商品を販売して、皆に喜んでもらおうと思い行動しているのに、この仕打ちは何なの? なんで、こんな目に遭うの? 商会が、何か悪さをしたのかな?」

大雨の影響で周囲に誰もいない状況の中、シャロンが真っ直ぐ純粋な目で、僕に質問をぶつけてくる。

フリマに参入した理由は、皆に心配をかけないため…か。
シャロンらしいな。

「君たちは、何もしていない。それだけは断言できる。何者かが君たちの力に怯え始め、きっと何かしらの小細工を入れてきたんだ」

とは言え、ここまでの不測の事態は、普通に考えておかしい。相手側も、こんな短期間のうちに動かなければいけない理由でもあるのか? 捜査の手が入れば、痕跡でばれる危険性だってあるのに。

「相手って誰よ!!」

何も悪いことをしていないのに、この理不尽な仕打ちに耐えられなくなったのか、シャロンは怒りの形相で、貴族令嬢らしくない大声を僕にぶつけてくる。君のストレスがそれで軽減されるのなら、僕は甘んじて暴言を受け入れよう。

「魔道具の暴発! 突然起きたガラスの破壊! 商業ギルドと本家による営業停止命令の通達! フリマの手続き上の不手際を理由にした店荒らし! こんな立て続けに不幸が起こるなんてありえない! 幸い、怪我人もいないから、お客様から訴えられることはないけど……理不尽だよ……最悪だよ…」

「今は大雨だから、好きなだけ泣けばいい」

シャロンは僕の胸にもたれ、大声をあげて泣き叫ぶ。大雨で誰もいない状況だから、好きなだけ泣き叫ぶといい。

シャロンの発言で、1点気になる内容がある。

商業ギルドはわかるが、何故本家からも、営業停止の通達が届いた? 本家のディオグランデ公爵家は、国の剣と盾両方の性質を併せ持つ稀有な存在だが、商業ギルドが動いている以上、営業を停止させる命令など必要ないはずだ。

それに、怪我人がゼロというのも気にかかる。営業中に、魔道具の暴走が立て続けに3度起きたと聞いているし、窓ガラスの破壊に関しても、発生時刻は営業中の時間帯だったはず、それで怪我人がゼロだなんておかしいだろ? 不意に起こる事故である以上、至近距離にいる人々が魔法を展開したとしても、まず防御に間に合わない。

一体、誰が何の目的でこんな事を? 

手掛かりが何もないからこそ、あの穏やかなシャロンがここまで心を乱している。ご両親も、相当負担になっているだろう。オリエント子爵が大きく動けないからこそ、本家の公爵家とも無関係なユズリハ男爵家だけで調査するしかないが、捜査はかなり難航している。

でも、僕は…諦めない。

《魔道具暴走》《ガラス破壊》《スキルと魔法の使用不可》《フリマでの騒動》、こういった結果には、必ずそうなるまでの過程が存在する。こういった事象を引き起こす何かが、必ず絡んでいるはずだ。

僕は、それを必ず突き止める。
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