転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

68話 敵の本拠地に招待されちゃった

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ファルナーク様が帰って以降、平和な時間が続く。

彼が突然来訪し、アイリス様へ告白、そのまま婚約を断った理由を強引に聞き出して帰っていくものだから、彼女は自然な流れで、シャロンさんやシンさんに殿下の誕生会の件も話していき、今回のお誘いで感じる不安を吐露していく。

自分の抱えている不安を素直に打ち明けたことで、アイリス様は2人と意気投合、昼食後の今では、他愛もない普通の世間話で笑い合う仲にまで発展するのだから、私とトーイも内心大きく驚いている。

そして、程なくして、シャロンさんの両親が友人と共に帰宅したのだけど、その友人とされる人物の顔を見て、空気が一変する。

「お父様!?」

そこには、マーカス様がいた。世間話で笑い合っていた雰囲気も吹き飛び、私たちは驚きで立ち上がる。

「どうして、ここに?」
「緊急事態…と言えばいいのかな」

歯切れの悪いマーカス様、何があったのだろう?
緊急事態という割には、そんなに焦っていないように見えるけど?

「まさか、研究面で何か?」
「いや、そちらは頗る順調だよ。実はね、私のいる会場に、ディオグランデ公爵がオリエント夫妻と共に来られて、私にある通達をしたんだ」

確か、マーカス様は学会に来られた方々と、共同研究を組む上での話し合いを会場の会議室で行なっていたはず、何故ファルナーク様の父、ディオグランデ公爵様がそこへ来られたの?

「通達?」

今朝、ファルナーク様が来訪されたことと、何か関係があるのかな? 私たちは固唾を飲んで、マーカス様の次の言葉を待つ。

「今朝、君たちはファルナーク様とお会いになったね?」
「はい」

情報伝達が速い!
なんで、もう伝わっているの?
トーイも、警戒心が剥き出しとなる。

「おっと、トーイとユミルは、事情を知らないから先に説明しよう。まず、オリエント子爵夫妻には、私からこちらの事情を説明していることを言っておく。子爵、あれを」

「ええ」

そう言うと、オリエント子爵は懐から小さなスマホのような端末を取り出す。

「これは《簡易携帯》と呼ばれている高性能な魔道具端末で、王都に住んでいる貴族の当主は、必ず常時身に付けておくよう、法律で義務付けられている。王都内であれば、持ち主が何処にいようとも、互いに連絡が行える代物だ」

転生者がいて、蒸気機関車が存在する程、科学も発展しているから、スマホのようなものがあってもおかしくない。

「ディオグランデ公爵はこれを経由して、君たちの事情を知り、学会関係者に連絡して私の所在を掴み、王城で荷物搬入をしていたオリエント子爵と偶々出会ったことで、一緒に会場へ来られた」

ファルナーク様とディオグランデ公爵、嫌な予感しかしない。
何を言われるのだろう?

「公爵は息子さんから、今朝起きたアイリスとの一件を王城で聞いた上で、『明日の昼、アイリス嬢を我が家に連れてくるといい。初めての訪問で緊張するだろうから、その時に息子と居合わせたメンバーの中でも、ユミルとシャロン嬢も連れてきても構わない』と仰られた」

「な!?」「平民の私も!?」「分家の私まで!?」

怪しさ満点だよ。
シャロン様はわかるけど、私は平民で幼児、行く必要性を感じない。
それに、どうしてトーイは省かれたの?

「公爵は学会関係者と話し合ったことで、ユミルの功績を知ったのですよ」
「あれのせいか~」

私は、両手を頭に乗せて項垂れる。
あれのせいで、私だけが目立ってしまい、トーイは外されたのか~。
トーイを見ると、何故か子爵様を見ている。

「トーイ。あなた方の事情についても、私の方から全て説明しています」
「了解。それなら、僕は元の姿に戻って、ユミルだけを護衛する」

そっか、トーイはカーバンクルなんだから、姿を消して、私たちと一緒に来ればいいんだ。

「それが賢明ですね」
「それに、公爵家に入り込むことで、みんなの調査が正しいのかを、僕自身で見極めることができる」

ああ、善と悪に偏りがあると言ってたよね。
そう考えると、今日出会ったファルナーク様は善なの?

「ユミルは、何も考えないで応対した方がいいよ」
「え、なんで?」

全員がトーイの言葉に、うんうんと頷いている。

「全部、顔に出ているからだよ」
「え、そうなの!?」

なんか恥ずかしい。

「君の場合、物事を難しく考えると、顔に出る性質なんだよ。変に考えず、素直に答えるのが吉だね」

う、全員が頷いている。

「わかった。アイリス様とシャロン様の護衛は、誰がやるの?」

敵の本拠地に乗り込むのだから、トーイだけで全員を護衛するのはきついよ。それに分断でもされたら、彼女は絶対私を選ぶと思う。

「心配ご無用さ。僕が3人を表から護衛するからね」

部屋へ入ってきたのは、ケンイチロウさんと真っ白な豹へと変化したレパードだ。何故か、尻尾が黒いままなのが気になるけど、彼らはランクAの実力者。2人が表側の護衛にいてくれたら心強いし、目立つから相手側も警戒して、迂闊に動けないはずだ。

「うむ。相手の出方がわからない以上、こちら側の守りを最大限に高めるべきだ。トーイが招待されていない以上、君は姿を消しユミルを、私が影からアイリスを、オリエント子爵家に協力するカーバンクルのイマリが姿を消し、シャロンを護衛すればいい」

おお、鉄壁の布陣だ。

「そして、公爵家に向かうメンバー全員で、相手側がこちらの状況を知っているのか、そうでないのかを見極める必要がある」

レパードの言う通りだ。
私も、公爵家の真意を知りたい。

こちら側にいるカーバンクルの存在に気付いていれば、明日必ず何らかの行動を起こすはずだ。最悪、私たち3人の誰かを誘拐する可能性だってあるから、私も慎重に行動しよう。

「お父様、お母様。私も本家に行かないといけないの? 本家が分家の貴族を招集する時って、お茶会や誕生会とか特別なイベントの時のみよ? 行動が怪し過ぎるわ。お話の際、何か怪しい点はなかったのですか?」

「それは私も思ったが、公爵自身は機嫌も良く、息子さんの語る本気に押し負けたと笑っていた。これは推測だが、彼は本気でアイリス嬢のことを好いているのかもしれない」

「「は?」」

アイリス様もシャロンさんも、呆れてものが言えない。つまり、ファルナーク様は本気でアイリス様に一目惚れして、彼女1人だと心細いから、私たちを招待したのではと言いたいようだけど……。

う~ん、事情を知るからこそ、それはありえないでしょと思う。ファルナーク様が帰って以降、私は公爵家に関わる情報を、トーイとシャロン様から聞き出している。

公爵様は、王族の近衛騎士団の団長だと聞いている。

スキルも魔法も封印され、《反射》という天下の宝刀を使えない以上、今は死活問題に直面している。

息子のファルナーク様だって、アイリス様と遊んでいる余裕なんかないはずだ。そんな状況下での招待、得体の知れない不気味さが、私たちの身体を襲う。
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