転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

67話 ファルナーク・ディオグランデの企み

ファルナーク・ディオグランデ。

精霊カーバンクルの復讐対象者に入っていて、一族はスキルと魔法を封印され、混乱状態に陥っているはずなのに、今この人は平然と過ごしている。

公爵家は王家の次に偉い立場だから、周囲から一族の異常を気取られないよう、平然と過ごしているよう振る舞っているのかな? 何にしても、この人がアイリス様に一目惚れして、婚約を申し込んでいたのは驚愕の事実だよ。

「婚約を申し入れたが、すぐにお断りの手紙が届いた。私はその理由を、今この場で聞きたい。そのために、強引に入ったのだ」

この人、理由を聞かない限り、ここから帰らないつもり? このままだと大迷惑に繋がるから、アイリス様も言うべきか思案している。

「手紙に書いていた通りです。私と貴方とでは、身分が違い過ぎます。私は、今後も医療の研究に携わっていきたい。研究を継続させながら、公爵家の令嬢教育を行なっていたら、私の身体が保ちません」

貴族の教育って、そんなに厳しいの? 

メイド見習いの私も礼儀や食事の作法を習っているけど、日本で礼儀作法を習っていたせいか、そこまで厳しく感じない。平民と貴族の教育内容で、大きな差があるのだろうか?

「だから、10歳という今の段階で、婚約を申し込んだ。そもそも君の場合、今の時点で熟練した国内国外研究者たちと堂々と渡り合い、周辺諸国の言語をいくつか話せるから、外交能力に申し分なし」

アイリス様、他国の言語も話せるの!?
10歳なのに、凄すぎる。

「あとは、公爵家に通用する教養を身に付ければいいだけだ。今から教育を始めれば、研究についても、そこまで時間を削がれないはずだが?」

この人、シャロンさんたちと同じくらいの年齢のはず、話し方や物事の考え方が子供じゃない。それだけ公爵家の教育レベルが高いってことだ。今言った内容だって、きちんと段階を踏んで説明しているし、一目惚れしただけあって、アイリス様の事をよく見ている。

「正直に言いますと、相手がどんな身分の方であろうとも、今は婚約など考えられません。私にとって大切なのは、私の研究を受け入れ、互いの価値観が合う方を求めていますので」

アイリス様、上手く断れるよう話しているけど納得してくれるかな?

「私の場合、その価値観が合っているのか不安なわけだ。わかった、婚約の件に関しては、それで納得し、矛を一旦収めよう」

その言葉を聞いて私も安心したけど、そこから驚きの発言が放たれる。

「アイリス、君はいつまで王都に滞在している?」
「研究の方で、ちょっとした事件が起こりまして、それが落ち着くまでは、王都に滞在しています。少なくとも、あと1週間程は滞在するかと」

1週間か、それだけの期間があれば、シャロンさんやシンさんたちと、もっと仲を深められるし、カーバンクルたちの動向を近場で観察できる。

「丁度いい。それなら私とデートしないか?」
「は? デートですか?」
「今の私たちに必要なのは、互いの価値観を知ること。まずは、私の家に来てもらい、公爵家の事を知ってもらいたい」

私たちは公爵家の事情に精通しているからこそ、この人の発言に、誰もが耳を疑う。ここで過剰な反応を見せれば、入口に見せている護衛の男性に察知されるかもしれないので、私もデート発言で驚いているように振る舞っているけど、内心胸ドキドキ状態だ。

ファルナーク様はカーバンクルの存在に気づいて、鎌をかけているの?
それとも、純粋な気持ちで尋ねているの?
アイリス様、どうする?

「わかりました。こちら側からお断りを入れていますし、私もファルナーク様に誠意を見せないといけませんから、一度公爵家に伺わせて頂きます」

「そうこなくてはね」

ファルナーク様は、アイリス様の答えに満足する。
この人、どこまで真実を言っているのかな?

カーバンクルによる制裁が起こる前に、彼女に一目惚れして、婚約を申し込んでいるから、私たちを怪しんで、探りを入れているということは考えられない…よね?

アイリス様はホテルの住所と電話番号を教え、公爵家と子爵家の当主で連絡を取り合い、日程を決めることとなる。

自身の思惑通りになったせいか、ファルナーク様はご機嫌となり、シャロンさんや先程のメイドの女性に謝罪を入れてから、護衛の男性と共に子爵家を後にする。

馬車を見送った私たちは、暗い面持ちでリビングへと戻ってくる。

「アイリス、あれで良かったの?」

シャロンさんは気にしてくれているのか、アイリス様に声をかけてくる。

「仕方ないわ。頑なに断り続けると、機嫌を損ね、公爵家から何をされるかわからないもの。それに、あれ以上居続けてもらうと、護衛の男性かファルナーク様自身に勘付かれる危険性もあった」

「それは…そうね。あの人の考えがわからないわ。オリエント子爵家は本家から、何が起きているのか何も聞いていないけど、私と同じように、スキルと魔法を封印されているはず。それなのに、あの余裕は何なの?」

やっぱり、みんなも私と同じ考えを持っている。

「トーイ、ディオグランデ公爵家の人たちって、カーバンクルの件で相当混乱しているよね?」

「それは間違いないよ。奴らは自分たちの身に何が起きているのか理解しているからこそ、タウセントに公爵家の者を送り込み、そいつらは聖域を目指して、現在も活動している」

タウセントの方で何か起きたら、こっちに連絡が入る手筈になっているけど、今の状況が気になるところ。

「ただ、奴らは公爵家として100年もの間、この国の中枢に大きく関わってきた。この闇を王家に知られた場合、どんな未来が訪れるのか不明であるからこそ、力の源を失ったと悟られないよう、どの家も平常心を保ちつつ生活しているようだね」

腐っても公爵家、100年間カーバンクルから甘い汁を吸い続け、この国の中枢にまで入り込んでいる以上、その抵抗も計り知れない。

「ユミルが名前を知ってしまったけど、こういう形での発覚なら、不審に思われることもない。ただ、あいつがアイリスに本当に惚れているのか不明だけど、今後も接触してくる以上、表にケンイチロウ、裏にカーバンクルで護衛した方がいいね」

もしかして、国内で有名なアイリス様を利用して、何らかの情報を引き出そうとしている? いずれにしても、復讐対象者である貴族が、私たちに近づいてきたのは事実だ。

私も、気を引き締めよう。
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