記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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18話 ユイの帰還

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結局5時間くらいしか日本にいられなかったけど、心はすっごく充実している。私は家族との話し合いよりも、生涯記憶に残る思い出を重視して、色んな人たちに干渉した。勿論、結婚式の後になって直接話し合うことも考えたけど、私の性格を考えたら、日本に長く滞在すればするほど、私の執着心が強くなると思っての配慮だ。現に、お別れする時、手が震えて、帰還ボタンを押せなかったもの。最後は、優奈と圭吾さんに助けられたよ。

司会者やビデオ撮影者の人たちだけは、直接干渉しちゃったけど、出席者たちにはカメラとプロジェクターを経由した間接的な干渉のおかげで、定着率の増加を最小限に抑えることに成功した。

そして、絶対に帰還できるよう、私はある特典を使用しておいた。
それは、スキル[タイマー]だ。

善行ポイントを消費しての一時使用だけど、これはステータス上において、指定した条件を達成した時のみ、アラームで私にのみ教えてくれる効果がある。それを使い、定着率が10%上がるごとに、アラームが鳴るよう設定しておいた。そのおかげで、ビデオ撮影時に70%を超えたことを知ったから、慌ててお別れの挨拶をした。後のことは、司会者とビデオ撮影者に頼んでいるから、出席者全員が生涯記憶に残る結婚式になっていると思う。

うん、心はスッキリ爽快!
これで、今世の自分と向き合える!

「ユイ、戻ってきたんだね!」

ハティスはベッドで寝ている私を、ずっと傍で見守ってくれていたんだね。余程嬉しいのか、尻尾をブンブン振りながら、私の顔を舐めてくる。

「うん。全て、上手くいったよ」

私が清々しい気持ちで起き上がると、ステータス画面が出現する。

【[鈴からの手紙]を入手しました】

「鈴さんからの手紙?」

とりあえず、読んでみよう。

【ユイちゃんへ】
おめでとう。
貴方は正しい選択をして、異世界に戻れましたね。

前世の未練を見事断ち切ったご褒美として、不可視のゴースト族を視認できるスキル[霊視]と、そのゴースト族を討伐できる[黄泉葬送]をプレゼントします。統合型スキル[料理道・極み]に追加しているので、貴方の身体に影響はありませんよ。これらのスキルを十全に扱えるかは、貴方の技量次第です。私のフォローもここまでだから、仲間たちと一緒に新たな生を満喫してね。
【水先案内人 鈴】

「もしかして、ずっと見守ってくれていたのかな? 鈴さん…ありがとう」

幽霊を視認できる[霊視]、幽霊を討伐浄化できる[黄泉葬送]か、料理と何の関係もないスキルなのに、料理道に組み込めたんだ。きちんと扱えるよう、これから訓練していこう。この部屋って、ブライトさんの仕事部屋と隣接しているはずだから、あの扉を開ければ、彼がいるはずだ。

ハティスと一緒に隣の部屋に繋がる扉を開けると、ブライトさんがいた。

「ユイ! もう、帰ってきたの!」

彼は私の姿を見て、慌てて立ち上がる。すぐ近くにある窓からは、夕暮れの陽が差し込んでいるので、あと少しで夜を迎えるってところかな。

「えへへ、色々と事情が…」

部屋にはブライトさんしかいないので、私は事情を打ち明けると、彼は複雑な面持ちとなる。

「なるほどね。ご家族の病気、妹さんの結婚式、そりゃあ干渉せざるをえない状況よね。魔法を使えない日本で、こっちのボーナス特典を使えたのも驚きだわ。あなたは、満足なの? 碌に話せなかったんでしょ?」

「大満足です! 家族だけの話し合いは無理でしたけど、会場関係者の方々は善良な人ばかりだったので、結婚式で起きた出来事が世間に広まることもないと思います」

あの出来事がネットに暴露されないよう、ボーナス特典を利用して、私の求める約束事を確実に守り通してくれる人を捜索したら、司会者とカメラマンの男性を見つけ出せた。

司会者の男性は、必ず誰かと一緒にいたので、実体化した状態で接触して、『新婦の優奈さんは、私の家庭教師をしてくれた女性なんです。ちょっとしたサプライズをしたいので手伝ってくれませんか』と言い、彼には実体化した私の写真を撮ってもらった後、お祝いの言葉を贈りたいとせがんで、壁際にビデオカメラをセッティングしてもらった。本人がそこにいるのだから、その場で話せばと言ってくれたけど、込み入った事情があって無理なんですと言ったら、彼は渋々ながら了承してくれた。御礼として、善行ポイントを500消費して出した5000円札を渡してから、お祝いメッセージの入った記録媒体を新郎新婦に必ず渡してくださいと、お願いしておいた。

カメラマンの男性には、1人で佇んでいるところを見計らい、カメラと男性にだけ干渉できるよう半透明の状態で姿を見せると、彼は真っ青になって逃げようとしたから、『逃げないで! 私は新婦の姉-唯と言います。結婚式だから、祝ってあげたいの!』と言ったら、彼は立ち止まってくれたので、『あなたは、いつも通りに披露宴を撮影してください。ただ、私が所々で色んな場所から這い出てくるので、驚かずに必ず撮影を続行してください。這い出ても、誰も気づかないので問題ありませんから』と言ったら、彼は顔色を悪くしたまま、苦笑いで了承してくれた。初めこそ怖がっていたけど、途中から楽しんで撮影してくれた。

「あなたに未練がないのなら、それでいいわ。善行ポイントを全部使ったの?」
「残りは140です。色々と節約しながら使ったんですけど、それでもギリギリでした」
「2人の病気だけど、既に手遅れなのよね? ボーナス特典で完治なんてさせたら、絶対に怪しまれるわよ?」

「えへへ、そこも大丈夫です!」

2人の病気を治療するにあたっての注意事項は、怪しまれないように行うこと。その場で完治させることも可能だけど、どう考えてもお医者さんたちに怪しまれる。だから、病気を少しずつ治していく特典がないか徹底的に探すと、一つだけ候補があった。

それが《突然変異》。

正常な細胞内にあるDNAが何らかの要因で突然変異してしまい、それがきっかけとなって、最終的に癌細胞へと変化してしまい、身体を少しずつ蝕んでいき、様々な病気を誘発させ、人を死なせてしまうと、テレビ番組で紹介されていた。

正常な細胞が何らかの要因で、突然悪いものに変化するのなら、その逆があってもおかしくない。この場合、私のボーナス特典が原因で、2人の中で悪さを働く癌細胞全てが、少しずつ時間をかけて突然変異を起こしていき、正常な細胞へと変化させればいいんだよ。健康になっていく2人を見て、お医者さんたちも驚くだろうけど、完全治癒よりはましだと思う。

この突然変異の消費ポイントは、遙子さんが7000、お父さんが4000。

消費ポイントが完全治癒より高かったけど、司会者とカメラマンの男性に干渉することも考慮し、色々とやりくりすることで、何とか140だけ残せたんだ。

ブライトさんには、そこをきちんと説明していく。

「なるほど、自分なりに色々と考えていたのね。あなたが未練なく、この地に戻れたのなら良いわ」

「もう一つだけ報告があります。私が正しい選択をしてここへ戻れたので、神様がご褒美として、ゴーストを視認できるスキル[霊視]とゴーストを討伐浄化できる[黄泉葬送]を料理道の中に組み込んでくれました」

そう言うと、ブライトさんは呆れた顔をする。

「マジで、料理と何の関係性もないわね。まあ、神様だからそういった行為も許されるのね。ゴーストや生霊を討伐浄化できる黄泉葬送に関しては、私も初めて聞くけど、光魔法で似た効果を持つものもあるから、そう驚かれることもないでしょう。ロイドには、私から報告を入れておくわ。もう少ししたら、私の業務も終わるから、その後にせせらぎの宿へ送るわね」

「はい、ありがとうございます!」

今日は色々あって、精神的に疲れたよ。
優奈、圭吾さん、幸せな家庭を築いてね。
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