記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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19話 霊視と黄泉葬送

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宿屋に戻り、リオンのいる部屋に入って、彼にスキルの取得だけ教えると、何故か黄泉葬送より霊視で驚いていた。そして、私が本当にゴーストや生き霊を認識できるのかを確認するための依頼を、明日受けてみようということになった。

「そんな依頼、あるの?」
「ゴーストや生き霊の潜む病院関係の依頼を受ければいい」
「なるほど。そういえば、回復魔法で身体を回復できるのに、病院って必要なの?」
「そうか…記憶がないから、その辺りの常識も知らないんだな。あのな…」

リオンによると、この世界には回復魔法も存在するけど、水属性と光属性のどちらかを持つ人にしか扱えない。しかも、属性を持っていたとしても、その人の相性次第で扱えない場合もあるので、国内においても使用者がかなり少ない。そのため、魔法に頼るだけでなく、科学の力であらゆる病気を根絶させるための研究所が国中に設置され、そこで得られた実績を携えて、大勢の患者さんを治療させる病院が国中に建設された。現在、どの国家においても、病気に侵された場合は回復魔法に頼らず、病院へ行くことが義務付けられているんだね。

「俺も霊視持ちだけど、ユイのような討伐系スキルを持っていないから、ゴーストを討伐できる魔道具を必ず所持している。ハティスは、どうなんだ?」

「僕は闇属性のブラックフェンリル、魔物や冒険者のゴーストなんか頻繁に見ているし、森の中で漂う奴等を闇魔法で討伐したこともあるから、今更街中で見たとしても驚きもしないよ」

リオンはスキル[霊視]持ち、ハティスは闇属性の魔物だから、ゴーストには慣れているんだ。私、幽霊になったことはあるけど、自分の目で幽霊を見たことない。

「ユイ、街内にいるゴーストは、基本大人しくて無害だけど、油断だけはするな。時折、厄介な奴が紛れている時もある。話し合いになっても、下手に同情なんかするなよ。最悪、身体に憑かれるからな」

「怖!」

翌朝、冒険者ギルドの掲示板で私たちの選んだ依頼は、病院内で使用済みとなった廃棄物を産業廃棄処分場へ運ぶこと。スキル[アイテムボックス]、空間魔法[収納]、魔道具[マジックバッグ]のいずれかを持つ人の限定依頼となっているけど、私がレアスキル[分解]持ちであることを先方に伝えると、廃棄物を分解出来れば、依頼達成報酬を支払うことになったので、私たちは依頼先のアカシエル病院に向かう。 

私が少し緊張しながらハティスやリオンと歩いていると、近くの喫茶店の扉が開き、誰かが出てきた。あの人って、昨日の朝、冒険者ギルドへ行く途中でぶつかってしまった人だ。

「やあ、おはよう」
「おじさん、おはようございます!」
「おいおい、おじさんはやめてくれ。私には、ガイという名前があるんだ」
「すいません。私は、ユイです」
「今日は、仲間とお出掛けなのか。それなら、人にぶつからないだろう」
「もう、あの時だけですよ」

私はガイさんとお別れすると、リオンが不思議そうに私を見ている。

「さっきの人、友人か?」
「昨日余所見したせいで、あの人にぶつかっちゃっただけの関係」
「殆ど他人じゃん! 会ったばかりの人に、おじさんは失礼過ぎだろ!」
「あはは、ぶつかって咄嗟に出ちゃったんだよね。今回も、つい…」
「他の街だと、やばい大人だっているんだから、怒られる言葉は厳禁だぞ」
「えへへ、気をつける。あれ? ハティス、どうしたの?」

私とリオンが話し合っていると、ハティスは何故か離れていくガイさんを見ている。

「ううん、なんでもない」

変なハティス。もう少しで病院だ、この世界のゴーストや生き霊って、日本とどう違うのか気になる。

○○○

病院に到着しての第一印象、それは日本と似ていること。外観はともかく、内部は清潔感に満ちていて、消毒液のような匂いを感じる。ハティスを病院内に入れられないから、敷地内の従魔用スペースで待機してもらっている。

受付に到着すると、綺麗な20歳くらいの女性がいて、顔色が少し悪い。その横には、存在感の希薄なおデブで半透明な男性がいる。女性との距離感が近いし、周囲の人々や女性自身もその事に全く気づいていない。

ゴーストで間違いないけど、こうやって視認しているからわかるけど、少しでも視線を外すと、その存在を見過ごしてしまう。これが、この世界のゴーストの特性なの?

「リオン、あれ」
「ちゃんと、見えているんだな。あれは、やばい部類だ」
「やばいの?」

「あいつはゴーストであることを自覚して、相手に気づかれないよう憑いているし、討伐されないよう、遮断系のスキルで存在感を希薄にさせているんだ。霊視持ちであっても、こうして間近に来ないとわからないレベルだ。今は放置して、受付を済ませよう」

「う、うん」

順番が来るまで、私は気づかれないよう、悪霊の動きに注視すると、男性が受付の女性と応対するときに限り、敵意を見せている。

「すいません、この依頼を受けるパーティーの者です」
「ああ、聞いています。少々お待ちください」

リオンが依頼書を女性に渡すと、悪霊が彼を睨む。

『ガキ、レイナに触れやがったな!』

お互いの手が、ほんの少しだけ触れ合っただけで怒るの?

『誰にも渡さねえ! レイナは俺だけのもんだ!』

何かドス黒いものが悪霊からニョロニョロと出てきて、リオンに向かっていく! リオンは顔色を変えることなく、その場から動かず、誰にも気づかれないよう、必死に魔法か何かで次々と黒いものを斬っていく。

『俺が見えるのか!?』

敵意が、殺意に変わった!?
だめ! 今すぐ討伐しないと!

【悪霊を天界に送りますか? 大地の栄養分にしますか?】

急に何? 
これって黄泉葬送による選択だけど、内容がおかしくない?

このスキルは使用時も特殊で、霊視持ちじゃないと、視認できないし認識も察知もされない。周囲には、沢山人がいるけど、誰も悪霊に気付いていないし、他のゴーストだっていないけど、どんな効果を及ぶすのかわからない。

でも、このままだとリオンが危ない。
もう、ここで使うしかない!
私は……【大地の栄養分】を選択する。
こんな奴を、天界に行かせたくないよ。

選択した途端、床が黒く変色し、そこからドス黒い2本の手が出現し、何かが這い出てくる。

「な…」
「リオン、何も反応しないで」
「お…おう」

良かった、ステータス欄の説明通り、私たち以外、誰も気づいていない。這い出てきた者は、身長2メートルくらいの漆黒の何か。魔力を感じないし、ゆらゆらしていて人型なのか不明だけど、なんか可愛い。

漆黒の者はさっきのおデブの男性に狙いをつける。

『なんだよ…お前…化…うわああ』

巨大な腕を大きく振り上げると、物体や人を通り抜けて、あの男性を掴む。

『死んでもストーカーをやめない愚者』
『何をする気…あ、ああ、や、やめ』

うっわ……大きな口をぱかっと開けて、その人を丸呑みすると、悪霊の断末魔が聞こえ、やがて途絶える。

『美味い。中々の憎悪と執着心。必要となったら呼べ』
【善行ポイントを25獲得し、計165となりました】

私は静かに頷くと、漆黒の者は消えていった。
受付の女性を見ると、顔色がほんのりと良くなっている。

「係の者をお呼びしますので、少々お待ちください」
「はい、ありがとうございます」

あれだけの現象の中、周囲の人たちは普通に行動していて、騒動に発展していないけど、この場にいないゴーストたちに察知されていないか心配だ。私たちは壁際の席で待っている間、リオンにさっきの黄泉葬送と悪霊の断末魔について説明する。

「怖! なんだよ、大地の栄養分って!」
「ちょっと可愛かったよね」
「何処がだよ! でも…まあ、助かった。ありがとな」

思わぬところで、黄泉葬送の効果を知れて良かった。
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