紳士オークの保護的な溺愛

こむぎこ7g

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"守る"ではなく"頼られる"

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■ ガスパールの独白・続

――若い声は、待たない

その夜、あなたは珍しく、よく話しました。

暖炉の火を見つめながら、
指先でカップを回し、
まるで思考を声にする練習をするように。

「……街の奥って、怖いだけじゃないですね」

私は、頷くだけに留めました。
聞くことは、得意ですから。

「もちろん、視線は集まりますし、
 正直、肩がぶつかりそうになるたびに
 “あ、やっぱり小さいな”って思います」

あなたは、そこで一度笑う。

「でも、
 誰も私を押し潰そうとはしなかった」

私は、その言葉を噛み締めました。

――それは、事実だ。
――だが、私がいない時間だ。

あなたは、ちらりとこちらを見る。

「ガスパールは、
 たぶん、もっと怖い想像をしてたでしょう」

……的確すぎて、返す言葉を失います。

「ええ」

私は、正直に答えました。

「あなたが立ち止まり、
 誰かに囲まれ、
 声も届かなくなる――
 そういう場面を、
 私は何度も思い描いた」

あなたは、眉を下げる。

「それは……
 私が弱いから、ですか」

その問いは、
若さ特有の、まっすぐさでした。

私は、首を横に振ります。

「いいえ。
 私が、失うことに慣れているからです」

言葉にした途端、
胸が少し痛みました。

あなたは、少し考えてから、
一歩、私に近づく。

見下ろす形になる。
やはり、体格差は埋まらない。

それでも、あなたは言いました。

「……だったら、
 全部、想像しなくていいと思います」

私は、思わず問い返す。

「それは……無責任では?」

あなたは、首を振り、
はっきりと言いました。

「一緒に行くなら、
 一緒に見ればいい」

……若い。
あまりにも。

「ガスパールは、
 後ろに立つ癖があります」

その言い方は、責めていない。
ただ、事実を述べている。

「でも私は、
 前を歩いても、
 後ろを振り返る場所が
 決まってる方が、安心です」

私は、息を吸い、
ゆっくりと吐きました。

「……あなたは、
 随分と大胆ですね」

そう言うと、
あなたは少し照れて、しかし笑いました。

「若いので」

その一言で、
私は完全に負けました。



私は、あなたの前に立ち、
しゃがみます。

目線が、ようやく合う。

「……では、提案です」

あなたは、瞬きをする。

「あなたが行きたい場所を、
 あなたが決める」

「私は、
 あなたの半歩後ろを歩く」

「危険だと判断したときだけ、
 その理由を、
 言葉で説明します」

あなたは、少し考えてから言いました。

「……それって、
 頼っていい、ってことですか」

私は、迷わず頷きます。

「ええ。
 私は……
 あなたに頼られることを、
 恐れていただけでした」

あなたは、静かに微笑んだ。

「じゃあ、
 次は工房街まで、
 一緒に行きましょう」

その言葉に、
胸の奥が、じんと温かくなる。

「……案内を、お願いします」

そう答えた自分の声は、
思ったよりも、軽やかでした。
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