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23話
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「まあ、メルマ様の言うこと聞いたほうがいいと思う。ツィータード様が休んでいた間、エスカ嬢ヤバかったんだよホント」
「ヤバかったって?」
「なんか妄想すごいっていうかだな。僕やロズは事情知ってるから余計、あいつヤバいって思って近寄らないようにしてたくらいだ」
もっと詳しく聞きたかったが、ノックの音が響いて。
扉を開けるとマリエンザと、隣りに大きな包みを手にしたロズが立っていた。
「これはメルマ様が持たせてくださったお弁当です」
ロズが包みを開くと、蓋のついた入れ物が四つ。
「購買や食堂に行くと、アレに絡まれるかもしれないからと、これから毎日持たせてくださるそうです」
「まあ!メルマ様にそこまでしていただくなんて悪いわ」
「いや、マリエンザ様。これくらいしてもまだ足りないくらいかもしれませんよ?注意しすぎて困ることはありませんから」
ロズはよほどダーマを警戒しているようだ。
「なあ、あとでダーマ嬢が何をやらかしたのか教えてくれ」
好奇心に負けたツィータードは、ニヤっと笑った。
そのあとロズとオーリスの十数日間をまとめた話しは、めまいがしそうなものだった。
「とにかく、来る日も来る日もツィータード様が攫われた!自分との真実の愛を邪魔するムリエルガ様に!って言うわけだ」
「そうそう、かわいそうなツィータード様、私が助けて支えてあげなくてはぁぁっ!」
「本当に、背筋冷たくなるほど気持ち悪かったな」
こんな話しを延々とし終えると、二人は一緒に肩をすくめた。
「うーん。そこまでいくと、もしかしたらマリが狙われるかもしれないな」
「私なら大丈夫よ。狙われても自分の身は自分で守れるわ」
その言葉に驚いたように、ロズが
「甘く見てはダメダメ」
とマリエンザを諌めている。
マリエンザはそのへんの令息より遥かに強い・・・というか、もしかしたら学院の武術の先生より強いかもしれないとツィータードは思っている、が、だからといってこんな妄想膨らませたイカれた者と対峙しても大丈夫だとは思わない。
「そうだよマリ。相手はちょっと常軌を逸しているんだ。警戒して足りないことはない。おとなしく私に守らせて」
─マリより弱いけど、気持ちだけはね─
そう、言葉に秘めた思いを込めた。
マリエンザも、私強いから大丈夫とはさすがに言わない。
─守られるって素敵─
ありがたくツィータードの言葉に甘えることにした。
学内には当たり前だが弓は持ち込めない。まあこんなに近い距離にいる相手にはそもそも弓では役に立たないので、護身用に投擲用のミニナイフを数本持ち歩いている。だがせっかくの気持ちなので、それも秘密にしておくことにした。
その日以降、四人のランチは時々リリやツィータードの幼馴染コリドーなども交えて、楽しく過ごしている。
その分ダーマの怒りは溜め込まれていった。
午前の授業が終わり、すぐツィータードに声をかけようとするのにいつも誰かしらに声をかけられて、気づくとどこかに消えてしまうのだ。
最近は朝も帰りも男子生徒たちと行動をともにしていて、話しかける隙もない。
「誰かが私の邪魔をしている!」
誰か。
そう、ダーマをよく思わないのはマリエンザしかいない。きっとあの伯爵令嬢が男子生徒に金でも掴ませてツィータードに近づけないようにしているんだ!
まあまあ近い。
ダーマをよく思わず、ロズたちに金を掴ませたのは、ツィータードの母メルマだが。
クラスが違うこともあり、メルマはマリエンザにまでは護衛を手配していなかった。さすがに学院内でそこまでいってしまうとは思わなかったからだ。
しかしツィータードが危惧したように、一向に思うようにいかないダーマの怒りは、ある日からマリエンザへと向けられた。
マリエンザが教室から出ると視線を感じる。
休み時間になるとすぐ、ダーマが見張りにいくからだ。
リリやロリエラが怖がるほど、強い視線で睨んでいるが、マリエンザは無視を決め込んでいる。
そのうち、教師たちがダーマの行動を問題視するようになった。
一度注意をしたが、ただそこに偶然立っていたと居直られてしまう。何事も起こしていないうちはそれ以上の注意が難しく、それでも、一種異様な様相に教師たちも監視を怠らないようにし、どうしたものかと頭を悩ませていた。
マリエンザとツィータードはますます仲睦まじく、試験までは同じ家庭教師に教えてもらっていることもあり、常にともにいる。
ダーマはマリエンザの隙を探し続けた。
三日間の考課試験の最終日。
「マリ、試験はどうだった?」
「休んだ割にはできたほうだと思うわ」
「私もだな」
ツィータードは、へらりと笑ったが。
「本当?」
疑いの目を向けると、ハハっと笑って
「ちょっとヤバいのが無くはない」
そう白状した。
試験が終わると採点のために三日間休みになり、結果発表後に学内のパーティーが催されるのが慣例だ。
「休みはどうする?」
「一日は、リリたちとお茶会をする予定よ」
「じゃあ、二日間は遠乗りでも行かないか?」
「二日間?」
「あっ、ちゃんと夕方には帰ってくるやつだ」
マリエンザは、二日もかかるところに行きたいのかと訊いたつもりだが、ツィータードは違う意味に気づいて焦って言い直した。
「いいわ、でも三日のうち二日私でいいの?コリドー様たちと過ごしたいなら」
「いや、マリと一緒がいいよ」
二人で休みの予定を話しながら馬車に乗り込むのを、ダーマがじっと見つめていた。
「ヤバかったって?」
「なんか妄想すごいっていうかだな。僕やロズは事情知ってるから余計、あいつヤバいって思って近寄らないようにしてたくらいだ」
もっと詳しく聞きたかったが、ノックの音が響いて。
扉を開けるとマリエンザと、隣りに大きな包みを手にしたロズが立っていた。
「これはメルマ様が持たせてくださったお弁当です」
ロズが包みを開くと、蓋のついた入れ物が四つ。
「購買や食堂に行くと、アレに絡まれるかもしれないからと、これから毎日持たせてくださるそうです」
「まあ!メルマ様にそこまでしていただくなんて悪いわ」
「いや、マリエンザ様。これくらいしてもまだ足りないくらいかもしれませんよ?注意しすぎて困ることはありませんから」
ロズはよほどダーマを警戒しているようだ。
「なあ、あとでダーマ嬢が何をやらかしたのか教えてくれ」
好奇心に負けたツィータードは、ニヤっと笑った。
そのあとロズとオーリスの十数日間をまとめた話しは、めまいがしそうなものだった。
「とにかく、来る日も来る日もツィータード様が攫われた!自分との真実の愛を邪魔するムリエルガ様に!って言うわけだ」
「そうそう、かわいそうなツィータード様、私が助けて支えてあげなくてはぁぁっ!」
「本当に、背筋冷たくなるほど気持ち悪かったな」
こんな話しを延々とし終えると、二人は一緒に肩をすくめた。
「うーん。そこまでいくと、もしかしたらマリが狙われるかもしれないな」
「私なら大丈夫よ。狙われても自分の身は自分で守れるわ」
その言葉に驚いたように、ロズが
「甘く見てはダメダメ」
とマリエンザを諌めている。
マリエンザはそのへんの令息より遥かに強い・・・というか、もしかしたら学院の武術の先生より強いかもしれないとツィータードは思っている、が、だからといってこんな妄想膨らませたイカれた者と対峙しても大丈夫だとは思わない。
「そうだよマリ。相手はちょっと常軌を逸しているんだ。警戒して足りないことはない。おとなしく私に守らせて」
─マリより弱いけど、気持ちだけはね─
そう、言葉に秘めた思いを込めた。
マリエンザも、私強いから大丈夫とはさすがに言わない。
─守られるって素敵─
ありがたくツィータードの言葉に甘えることにした。
学内には当たり前だが弓は持ち込めない。まあこんなに近い距離にいる相手にはそもそも弓では役に立たないので、護身用に投擲用のミニナイフを数本持ち歩いている。だがせっかくの気持ちなので、それも秘密にしておくことにした。
その日以降、四人のランチは時々リリやツィータードの幼馴染コリドーなども交えて、楽しく過ごしている。
その分ダーマの怒りは溜め込まれていった。
午前の授業が終わり、すぐツィータードに声をかけようとするのにいつも誰かしらに声をかけられて、気づくとどこかに消えてしまうのだ。
最近は朝も帰りも男子生徒たちと行動をともにしていて、話しかける隙もない。
「誰かが私の邪魔をしている!」
誰か。
そう、ダーマをよく思わないのはマリエンザしかいない。きっとあの伯爵令嬢が男子生徒に金でも掴ませてツィータードに近づけないようにしているんだ!
まあまあ近い。
ダーマをよく思わず、ロズたちに金を掴ませたのは、ツィータードの母メルマだが。
クラスが違うこともあり、メルマはマリエンザにまでは護衛を手配していなかった。さすがに学院内でそこまでいってしまうとは思わなかったからだ。
しかしツィータードが危惧したように、一向に思うようにいかないダーマの怒りは、ある日からマリエンザへと向けられた。
マリエンザが教室から出ると視線を感じる。
休み時間になるとすぐ、ダーマが見張りにいくからだ。
リリやロリエラが怖がるほど、強い視線で睨んでいるが、マリエンザは無視を決め込んでいる。
そのうち、教師たちがダーマの行動を問題視するようになった。
一度注意をしたが、ただそこに偶然立っていたと居直られてしまう。何事も起こしていないうちはそれ以上の注意が難しく、それでも、一種異様な様相に教師たちも監視を怠らないようにし、どうしたものかと頭を悩ませていた。
マリエンザとツィータードはますます仲睦まじく、試験までは同じ家庭教師に教えてもらっていることもあり、常にともにいる。
ダーマはマリエンザの隙を探し続けた。
三日間の考課試験の最終日。
「マリ、試験はどうだった?」
「休んだ割にはできたほうだと思うわ」
「私もだな」
ツィータードは、へらりと笑ったが。
「本当?」
疑いの目を向けると、ハハっと笑って
「ちょっとヤバいのが無くはない」
そう白状した。
試験が終わると採点のために三日間休みになり、結果発表後に学内のパーティーが催されるのが慣例だ。
「休みはどうする?」
「一日は、リリたちとお茶会をする予定よ」
「じゃあ、二日間は遠乗りでも行かないか?」
「二日間?」
「あっ、ちゃんと夕方には帰ってくるやつだ」
マリエンザは、二日もかかるところに行きたいのかと訊いたつもりだが、ツィータードは違う意味に気づいて焦って言い直した。
「いいわ、でも三日のうち二日私でいいの?コリドー様たちと過ごしたいなら」
「いや、マリと一緒がいいよ」
二人で休みの予定を話しながら馬車に乗り込むのを、ダーマがじっと見つめていた。
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