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24話
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試験休み初日。
ムリエルガ家の厨房では、マリエンザの友人を招いての茶会と聞いた料理人たちが腕をふるっていた。
「マリ様を支えてくださった大切なおともだちと聞いたからには」
そう、贅を尽くしすぎた菓子がたった四人の令嬢のために用意されて、リリたちは驚きのあまりポカンと口が閉まらなくなるほどだった。
「す・・・ごい・・これ」
でもとってもうれしそう。
特に、カーラの家はそれほど豊かではないため、こんな菓子にまみれたような茶会は夢のようだった。
「もし食べきれなかったらというか、絶対に食べきれないと思うのだけど、そうしたらお土産にお持ち頂いてもいいと思うの」
料理人たちのはりきりぶりに、マリエンザは少し頬を赤らめた。
茶会が始まると楽しいお喋りが飛び交う。
最初はツィータードとの恋話。
みんな、あの状態からどう持ち直し、今に至るのかを聞きたがった。
全部は話せない・・・。領地で戦闘があったことは言わない方がいいとターディが言うから。
支障のなさそうなことだけかいつまんで話すと辻褄が合わないところがあったが、盛り上がっていたせいか誰にもつっこまれずに済んだ。
そしていよいよ。
ダーマの話が始められると、誰が言うわけでもなく声が潜められる。
ムリエルガ家の庭園だから、他に誰が聞いているわけでもないのだが。
「毎日、ツィータード様を探して学内中歩いたり、なんで休んでいるのか、いろいろ聞きまわったりしていたのよ」
「ドロレスト侯爵家まで行ってしまったそうよ」
「ええっ!」
それは聞いていない。ツィータードもそんな話はしていなかったとマリエンザは思い出そうとしていたが記憶がない。
「門番にけんもほろろに追い出されて、それでね」
令嬢たちは、自然と顔を寄せあう。
「・・・・・・」
一層小さな声でロリエラが囁くと。
「ええーっ!?」
「うそ!うそでしょう?」
「怖すぎるわ、それ」
「って、それ誰から?」
あまりに衝撃的で、マリエンザはその話の発信元を知りたいと訊ねた。
「これはね、エルトス子爵令息から聞いたのよ」
「エルトス子爵って、ドロレスト侯爵のタウンハウスのお隣りだったかしら?」
「隣のとなり。カーナル様とおっしゃって、兄のおともだちなの。帰宅されたときにすごい騒ぎになっていたので、否応なく見てしまったそうよ」
ロリエラが、否応なくというときにとてもうれしそうな顔をしていたのが、なんだかおかしくて令嬢たちは声を立てて笑ってしまった。
「ああ、はしたなかったかしら」
「大丈夫。ここだけですもの」
「まだあるわ。男女別の教室のときにね」
カーラはダーマと同じクラス、つまりロズたちとも机を並べている。
ロズやオーリスから聞いたことも、カーラから聞くと目線が違うためか、新たな発見があるが、女子教室での出来事まではさすがにロズたちも知らないだろう。
ダーマがどこまでやってしまうのか、マリエンザは楽しくなって、カーラの話に聞き入った。
「今日は楽しかったわ」
「本当に。お菓子も最高!」
「またやりたいわね、この顔ぶれで」
マリエンザが言うと、
「ぜひっ!」
令嬢たちは声を揃えて返事をした。
手を付けることのなかった菓子は、それぞれの希望に応じて土産として持たせ、エントランスで皆を見送る。
そういえばいつもツィータードで頭がいっぱいで、こんな風に女の子の友人とお茶をしたこともなかった。
「マリ、おともだちはお帰りになったの?」
「おかあさま!ええ、さきほど」
「楽しそうだったわ」
「とっても楽しかった!またみんなで集まりたいのだけど」
イルメリアはうれしそうに微笑んでマリエンザを抱きしめた。
「ムリエルガ家のこどもは強くなければならないとは言っても、マリにももっと女の子らしい楽しみを知ってほしいと思っていたの。リリちゃんや他のご令嬢と、たくさん楽しく過ごしてほしいわ」
「ありがとう、おかあさま」
ふふっと笑って。
「それで何をあんなに盛り上がって話していたの?おかあさまにも教えて」
そのあとは、母娘で『ダーマ・エスカ大会』を催し、お行儀悪いほど笑い転げて。
ただ、イルメリアは笑っていただけではない。
調査を続行し、何かあれば毅然と罪を問えるようにどの話も忘れずに頭に叩き込んでいた。
来たるべき日に備えて。
ムリエルガ家の厨房では、マリエンザの友人を招いての茶会と聞いた料理人たちが腕をふるっていた。
「マリ様を支えてくださった大切なおともだちと聞いたからには」
そう、贅を尽くしすぎた菓子がたった四人の令嬢のために用意されて、リリたちは驚きのあまりポカンと口が閉まらなくなるほどだった。
「す・・・ごい・・これ」
でもとってもうれしそう。
特に、カーラの家はそれほど豊かではないため、こんな菓子にまみれたような茶会は夢のようだった。
「もし食べきれなかったらというか、絶対に食べきれないと思うのだけど、そうしたらお土産にお持ち頂いてもいいと思うの」
料理人たちのはりきりぶりに、マリエンザは少し頬を赤らめた。
茶会が始まると楽しいお喋りが飛び交う。
最初はツィータードとの恋話。
みんな、あの状態からどう持ち直し、今に至るのかを聞きたがった。
全部は話せない・・・。領地で戦闘があったことは言わない方がいいとターディが言うから。
支障のなさそうなことだけかいつまんで話すと辻褄が合わないところがあったが、盛り上がっていたせいか誰にもつっこまれずに済んだ。
そしていよいよ。
ダーマの話が始められると、誰が言うわけでもなく声が潜められる。
ムリエルガ家の庭園だから、他に誰が聞いているわけでもないのだが。
「毎日、ツィータード様を探して学内中歩いたり、なんで休んでいるのか、いろいろ聞きまわったりしていたのよ」
「ドロレスト侯爵家まで行ってしまったそうよ」
「ええっ!」
それは聞いていない。ツィータードもそんな話はしていなかったとマリエンザは思い出そうとしていたが記憶がない。
「門番にけんもほろろに追い出されて、それでね」
令嬢たちは、自然と顔を寄せあう。
「・・・・・・」
一層小さな声でロリエラが囁くと。
「ええーっ!?」
「うそ!うそでしょう?」
「怖すぎるわ、それ」
「って、それ誰から?」
あまりに衝撃的で、マリエンザはその話の発信元を知りたいと訊ねた。
「これはね、エルトス子爵令息から聞いたのよ」
「エルトス子爵って、ドロレスト侯爵のタウンハウスのお隣りだったかしら?」
「隣のとなり。カーナル様とおっしゃって、兄のおともだちなの。帰宅されたときにすごい騒ぎになっていたので、否応なく見てしまったそうよ」
ロリエラが、否応なくというときにとてもうれしそうな顔をしていたのが、なんだかおかしくて令嬢たちは声を立てて笑ってしまった。
「ああ、はしたなかったかしら」
「大丈夫。ここだけですもの」
「まだあるわ。男女別の教室のときにね」
カーラはダーマと同じクラス、つまりロズたちとも机を並べている。
ロズやオーリスから聞いたことも、カーラから聞くと目線が違うためか、新たな発見があるが、女子教室での出来事まではさすがにロズたちも知らないだろう。
ダーマがどこまでやってしまうのか、マリエンザは楽しくなって、カーラの話に聞き入った。
「今日は楽しかったわ」
「本当に。お菓子も最高!」
「またやりたいわね、この顔ぶれで」
マリエンザが言うと、
「ぜひっ!」
令嬢たちは声を揃えて返事をした。
手を付けることのなかった菓子は、それぞれの希望に応じて土産として持たせ、エントランスで皆を見送る。
そういえばいつもツィータードで頭がいっぱいで、こんな風に女の子の友人とお茶をしたこともなかった。
「マリ、おともだちはお帰りになったの?」
「おかあさま!ええ、さきほど」
「楽しそうだったわ」
「とっても楽しかった!またみんなで集まりたいのだけど」
イルメリアはうれしそうに微笑んでマリエンザを抱きしめた。
「ムリエルガ家のこどもは強くなければならないとは言っても、マリにももっと女の子らしい楽しみを知ってほしいと思っていたの。リリちゃんや他のご令嬢と、たくさん楽しく過ごしてほしいわ」
「ありがとう、おかあさま」
ふふっと笑って。
「それで何をあんなに盛り上がって話していたの?おかあさまにも教えて」
そのあとは、母娘で『ダーマ・エスカ大会』を催し、お行儀悪いほど笑い転げて。
ただ、イルメリアは笑っていただけではない。
調査を続行し、何かあれば毅然と罪を問えるようにどの話も忘れずに頭に叩き込んでいた。
来たるべき日に備えて。
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