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第3章
第60話 国王は知った
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トローザー王子は焦っていた。
まずソイスト侯爵家に潜入させ、ミイヤの手伝いをしていたセル・リナスが姿を消した。
父、国王から与えられた三人の影のうちの一人だ。
そして今度はソイスト侯爵家に忍び込ませた二人目サモン・ナカリーと連絡が取れなくなり、川に落ちたナイジェルスと兄を襲わせた者の探索をしていた三人目ツュール・ブッランも、もうニ日何の連絡もして来ないのだ。
影が連絡を怠るなどあり得ないことだ。それが途切れたとなると、捕まえられたか死んだか。
目立たぬよう行動する王家の影を捕まえる、または死に至らしめるほどの者が、的確に意図して動いているとなると、それはこちらの計画が知られていることに他ならない。
「しかしそれならミイヤがまだ自由でいることの理由がわからん」
ほとぼりが冷めるまで会いに来てはいけないと言い聞かせたお陰で、ミイヤはこの数日顔を見せていない。
ただ手紙だけは毎日届いており、咎められたりはしていないことを知っていた。
「トローザー殿下の影が行方不明で、探していらっしゃいます」
アラメーが国王に報告をしている。
「影が消えたのか?」
「はい、消えたというか、拘束されております」
「誰に?」
「ソイスト侯爵家の手の者に」
困ったように眉をハの字にしたアラメーが首を竦める。
「なっ!ソイスト家に潜入させただと?あの馬鹿者が」
「しかも二人」
「はあ?二人?」
庭師と駆け落ちしたと言われていたメイドのセル・リナスは、ミイヤに屋敷を辞めると言ったあと、すぐ拘束されてソイスト家の秘密の地下牢に放り込まれていた。
そのあとに潜入したサモン・ナカリーはユートリーの棺を確認したと報告をいれた後、ミイヤの部屋で工作しようとしたところを拘束され、セルと同じ牢に入れられている。
ソイスト家の秘密の地下牢は地下三階のとても深いところにあり、いくつもの鍵を開けねば辿り着くことができないものだ。
そこに入れられたセルとサモンのことを何故アラメーが知っているかと言うと。
影を務められる者はそう多くない、狭い世界だ。伝手のある者が敵対関係でなければ、情報交換をすることもあった。
「尋問などはまだしていないそうです」
「何故だ?捕まえたらすぐ吐かせたほうがよかろう?」
「何の準備もなく拘束を解かれたら、我ら影は即自死を選びます」
あ・・・と、国王は言い淀んだ。
「ですから、今はまだ拘束しているのだと。それに尋問していないと言うことは既に他の証拠があるのではありませんか」
それはトローザーにとって良い話と言えないものだ。ひたひたと追い詰める足音がトローザーに迫っていると知り、国王は沙汰を下す覚悟を決めていた。
まずソイスト侯爵家に潜入させ、ミイヤの手伝いをしていたセル・リナスが姿を消した。
父、国王から与えられた三人の影のうちの一人だ。
そして今度はソイスト侯爵家に忍び込ませた二人目サモン・ナカリーと連絡が取れなくなり、川に落ちたナイジェルスと兄を襲わせた者の探索をしていた三人目ツュール・ブッランも、もうニ日何の連絡もして来ないのだ。
影が連絡を怠るなどあり得ないことだ。それが途切れたとなると、捕まえられたか死んだか。
目立たぬよう行動する王家の影を捕まえる、または死に至らしめるほどの者が、的確に意図して動いているとなると、それはこちらの計画が知られていることに他ならない。
「しかしそれならミイヤがまだ自由でいることの理由がわからん」
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ただ手紙だけは毎日届いており、咎められたりはしていないことを知っていた。
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「はい、消えたというか、拘束されております」
「誰に?」
「ソイスト侯爵家の手の者に」
困ったように眉をハの字にしたアラメーが首を竦める。
「なっ!ソイスト家に潜入させただと?あの馬鹿者が」
「しかも二人」
「はあ?二人?」
庭師と駆け落ちしたと言われていたメイドのセル・リナスは、ミイヤに屋敷を辞めると言ったあと、すぐ拘束されてソイスト家の秘密の地下牢に放り込まれていた。
そのあとに潜入したサモン・ナカリーはユートリーの棺を確認したと報告をいれた後、ミイヤの部屋で工作しようとしたところを拘束され、セルと同じ牢に入れられている。
ソイスト家の秘密の地下牢は地下三階のとても深いところにあり、いくつもの鍵を開けねば辿り着くことができないものだ。
そこに入れられたセルとサモンのことを何故アラメーが知っているかと言うと。
影を務められる者はそう多くない、狭い世界だ。伝手のある者が敵対関係でなければ、情報交換をすることもあった。
「尋問などはまだしていないそうです」
「何故だ?捕まえたらすぐ吐かせたほうがよかろう?」
「何の準備もなく拘束を解かれたら、我ら影は即自死を選びます」
あ・・・と、国王は言い淀んだ。
「ですから、今はまだ拘束しているのだと。それに尋問していないと言うことは既に他の証拠があるのではありませんか」
それはトローザーにとって良い話と言えないものだ。ひたひたと追い詰める足音がトローザーに迫っていると知り、国王は沙汰を下す覚悟を決めていた。
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