【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる

文字の大きさ
72 / 80
第4章

第72話 断罪2

しおりを挟む
 国王の刺すような視線に、トローザーは不安を覚えた。

 ─うまくいってるよな?ミイヤの言ってることがおかしいと、信じられる話じゃないと─

 僅かに狼狽えた顔を見せたトローザーを無視し、次に王はミイヤに話しかけた。

「おまえは何を泣き叫んでいたのだ?落ち着いて話すがいい」

「は、はひ」

 震えが止まらず、はっきりと言葉が発音出来なくなっている。
 それを見たトローザーは、これなら王がミイヤを信じることはないだろうと気を緩めたが。

「わ、わたしは、でんっ、トローザー殿下と婚約するために」
「トローザーと婚約だと?」

 止める間もなかった。

「トローザーは隣国の公女と婚約の話が進んでおる。おまえとなどありえないことだ」
「え・・・うそ!」

 王に暴露されたトローザーは否定することもできずに目を逸らした。

「うそ!殿下、うそでしょう?うそーっ!」

 それはまさに絶叫だった。

「いやーっ!婚約するのにユートリーが邪魔だからって言ったくせにーっ!だ、だからわたし」
「や、やめろミイヤっ、おまえは混乱しているんだ!落ち着いて話そう、な?」
「わたし、わたしは混乱なんかしてない」
「いや、してる!」
「私と婚約するって言ったのに、騙したのねーっ!」
「おまえと婚約するわけがないだろう!子爵の娘のくせに王族に嫁げるわけがなかろう」

 ミイヤの顔が醜く歪む。

「違うっ!私は子爵令嬢なんかじゃないっ!殿下が、ユートリーがいたら婚約できないってぇぇぇっ私に毒を渡したのにぃぃぃぃっ」

 罵り合いの中で、皆が待ち侘びた言葉が転がり出した。

「ばっ!バカかおまえ、嘘をつくなっ」
「嘘じゃないっ」

 収集がつかなくなっている。
ミイヤは鼻を垂らしながら泣き叫び、トローザーはミイヤに殴り掛かりそうな勢いで。

「黙れっ!」

 必要なことは聞けたと、国王の怒鳴り声が部屋を揺らした。

「もういいぞ、カーテンを開けろ」

 侍従が控えの間に掛けられていたカーテンを重々しく引き上げていくと、トローザーとミイヤはナイジェルス王子を見て幽霊でも見つけたように、呆然とする。

「え、どういう・・・」
「私は襲ってきた賊をすべて返り討ちにしたのだよ、賊たちはこれを身に着けていた」

 国王が手を伸ばし、それを受け取る。

「これはターナル伯爵家の紋章だ・・・」

 重く沈んだ声であった。



 ナイジェルスが一歩前に動くと、背に隠れていたユートリーが姿を現す。
 それを目にしたミイヤが「ギャッ」と叫び声を上げたと思うと、バタリと倒れ込んだ。

「ふん、気を失うとは。誰か気つけ薬を与えて目を覚まさせろ!これでは処罰ができん!」

 父が漏らした処罰という言葉に、トローザーはハッとした。
 医師が呼ばれて、無理矢理ミイヤの意識を呼び戻すと、カチカチと歯が噛み合わないほどに震え出す。

「いや、やめて!こっちに来ないで」
「ミイヤ!よくも私を殺したわね」

 ユートリーが低い声でミイヤに躙り寄ると、座り込んでガタガタと震えて顔を隠している。

「いや、いやよやめて怖い!誰か助けてっ!」

 しかし誰一人、ミイヤの肩を抱く者すら現れなかった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

さようなら、私の愛したあなた。

希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。 ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。 「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」 ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。 ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。 「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」 凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。 なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。 「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」 こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...