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第4章
第73話 断罪3
「やだ、やめて!わたしは悪くないわ。だって、で、殿下がど、毒をって」
震えながら頭を抱えてミイヤはずっとブツブツと呟いているが、決して顔をあげようとはしない。
「バカっ!何を言い出すんだ、嘘を言うなやめろっ」
ミイヤに飛びかかろうとしたトローザーは、ナイジェルスの護衛たちに拘束されて、叫び声を上げ続けている。まるで自分の声でミイヤの声を掻き消そうとでもするように。
じっと睨んでいた国王が立ち上がり、王笏でガツッと床を叩いた。
「いい加減にしろ!もうおまえたちがやったことはすべてわかっている」
それは体の芯から凍りつきそうな冷たい低い声で、トローザーを固めるのに十分なもので。
「余の権限により断罪を行う。正当性を証明するため直ちに法務大臣を呼べ」
流石のトローザーも、ミイヤと同じように震え始めた。
「お呼びと伺い罷り越しました」
召喚に応じたのは裁判官でもある法務大臣メーテラ伯爵が参上の挨拶を述べて顔を上げ、ナイジェルスにその視線が吸い付いた。大臣がほっとした顔を浮かべたのを見てから、国王はいよいよそれを始めた。
「まずナイジェルスの件からだ。法務大臣、ナイジェルスは本日ソイスト侯爵家の助けを得て無事に帰還したが、ナイジェルスを襲った逆賊共を返り討ちにした際に、その持ち物を証拠に持ち帰っていた。公正を期すために大臣も確認するように」
侍従がナイジェルスが持ち帰ったターナル伯爵家のちぎれた紋章を、メーテラ法務大臣に渡すと、それがどの家門の物か理解した大臣は沈痛な表情を浮かべた。
「間違いないな」
「はい、これは間違いなくターナル伯爵家の紋章でございますが、どちらで入手されたのでしょう?」
血液のついたそれは服から剥ぎ取られたものと見られ、ナイジェルスが襲撃されたことを知る者なら状況を察することができたが、メーテラは念のために訊ねた。
ターナル伯爵家がナイジェルス第二王子を害そうとしたとすると、それはターナル伯爵夫人の姉、キャロラ妃が絡むと誰にでも想像ができる。
「襲撃犯の服から切り取ったものだ」
ナイジェルスの答えを疑うことなくメーテラは頷き、国王が次の指示を与える。
「キャロラを呼べ。キャロラがこちらに来たら、ゴールダイン!おまえが指揮をして宮を調べてこい」
「なっ!父上、母上に何をなさるんですか!宮を調べるなど」
「黙れっ!いいと言うまでその口を開くな!これ以上許しを得ずに話すつもりなら舌を切るぞ」
ひっ!とトローザーが声を上げかけて、グッと口を噤んだ。
「ご機嫌よう陛下、お呼びと伺いました」
そう言って謁見の間に現れたキャロラ妃は、一歩足を踏み入れて悪い予感に襲われた。しかし戻ることもできず、部屋の入口で立ち止まったのだが。
「キャロラはそちらに」
国王が入口近くに立とうとしたキャロラを中に招き入れると渋々応じたが、やたらと汗を拭き取っている。
ゴールダイン王子がそっと席を外した。
気づいたトローザーだが、キャロラに注意を与えることはできない。
─これが終わりの始まりか─
トローザーは項垂れた。
「キャロラ、そちらを見よ」
国王が王笏を向けた先を見て、目を見開いた。
「え、え?」
キャロラの目には、間違いなくナイジェルス王子とユートリーが映っている。
─死んだはず─
ギロリとナイジェルスがキャロラを睨みつけた。
震えながら頭を抱えてミイヤはずっとブツブツと呟いているが、決して顔をあげようとはしない。
「バカっ!何を言い出すんだ、嘘を言うなやめろっ」
ミイヤに飛びかかろうとしたトローザーは、ナイジェルスの護衛たちに拘束されて、叫び声を上げ続けている。まるで自分の声でミイヤの声を掻き消そうとでもするように。
じっと睨んでいた国王が立ち上がり、王笏でガツッと床を叩いた。
「いい加減にしろ!もうおまえたちがやったことはすべてわかっている」
それは体の芯から凍りつきそうな冷たい低い声で、トローザーを固めるのに十分なもので。
「余の権限により断罪を行う。正当性を証明するため直ちに法務大臣を呼べ」
流石のトローザーも、ミイヤと同じように震え始めた。
「お呼びと伺い罷り越しました」
召喚に応じたのは裁判官でもある法務大臣メーテラ伯爵が参上の挨拶を述べて顔を上げ、ナイジェルスにその視線が吸い付いた。大臣がほっとした顔を浮かべたのを見てから、国王はいよいよそれを始めた。
「まずナイジェルスの件からだ。法務大臣、ナイジェルスは本日ソイスト侯爵家の助けを得て無事に帰還したが、ナイジェルスを襲った逆賊共を返り討ちにした際に、その持ち物を証拠に持ち帰っていた。公正を期すために大臣も確認するように」
侍従がナイジェルスが持ち帰ったターナル伯爵家のちぎれた紋章を、メーテラ法務大臣に渡すと、それがどの家門の物か理解した大臣は沈痛な表情を浮かべた。
「間違いないな」
「はい、これは間違いなくターナル伯爵家の紋章でございますが、どちらで入手されたのでしょう?」
血液のついたそれは服から剥ぎ取られたものと見られ、ナイジェルスが襲撃されたことを知る者なら状況を察することができたが、メーテラは念のために訊ねた。
ターナル伯爵家がナイジェルス第二王子を害そうとしたとすると、それはターナル伯爵夫人の姉、キャロラ妃が絡むと誰にでも想像ができる。
「襲撃犯の服から切り取ったものだ」
ナイジェルスの答えを疑うことなくメーテラは頷き、国王が次の指示を与える。
「キャロラを呼べ。キャロラがこちらに来たら、ゴールダイン!おまえが指揮をして宮を調べてこい」
「なっ!父上、母上に何をなさるんですか!宮を調べるなど」
「黙れっ!いいと言うまでその口を開くな!これ以上許しを得ずに話すつもりなら舌を切るぞ」
ひっ!とトローザーが声を上げかけて、グッと口を噤んだ。
「ご機嫌よう陛下、お呼びと伺いました」
そう言って謁見の間に現れたキャロラ妃は、一歩足を踏み入れて悪い予感に襲われた。しかし戻ることもできず、部屋の入口で立ち止まったのだが。
「キャロラはそちらに」
国王が入口近くに立とうとしたキャロラを中に招き入れると渋々応じたが、やたらと汗を拭き取っている。
ゴールダイン王子がそっと席を外した。
気づいたトローザーだが、キャロラに注意を与えることはできない。
─これが終わりの始まりか─
トローザーは項垂れた。
「キャロラ、そちらを見よ」
国王が王笏を向けた先を見て、目を見開いた。
「え、え?」
キャロラの目には、間違いなくナイジェルス王子とユートリーが映っている。
─死んだはず─
ギロリとナイジェルスがキャロラを睨みつけた。
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