【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる

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第4章

第74話 断罪4

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「これはキャロラ妃、漸く長い視察より戻りましたが、お元気でいらっしゃいましたか」

 わざと鷹揚にナイジェルスが訊ねると、明らかにキャロラは狼狽え、答えることができない。

「なぜユートリーまで、い、生きていたの?葬儀をしたんじゃないの?一体どうなっているのよ」

 言葉にするつもりはなかっただろうが、キャロラの小さな声が漏れ聞こえる。なんとか情報を整理しようと考えるのだが、ナイジェルスとユートリーが生きて目の前にいるという衝撃に打ちのめされ、考えがまとまらないようだ。

「あ、あの」

 何か言いたそうなキャロラ妃を遮ったのは国王。見たこともないほど冷たい視線で睨みつけている。

「ふたりは死んでなどいない。死んだと言うのは犯人を炙り出すための嘘だ。まんまと引っかかりおって」
「っ!」

 キャロラには王妃より愛されているという自信があった。国王はいつも自分に愛溢れる視線を向け、美しさを愛で、何でも我儘を聞いてくれた。
位は王妃のほうが上だが、それ以外はすべて自分の方が上だと優越感さえ持っていたのだ。


「おまえたちは身の程を弁えるべきだった。その程度で王妃の王子を害そうなど烏滸がましいにも程がある」
「そんなっ」
「キャロラは側妃に過ぎん。トローザー、おまえも出来損ないのくせにつまらん夢を見たものだな」

 話をしているうちにゴールダイン王子が戻ってきた。その手にはいくつかの手紙を持っている。

「父上、これを」

 それに見覚えがあったキャロラ妃は一気に青褪める。

「だ、だめっ!」

 取り返そうと手を伸ばしたキャロラの腕を王笏が強く払い除けた。

「ギャッ」

 ガッと音が響いて皮膚が裂け、骨が折れたのか指の向きがおかしくなっていた。キャロラの腕から血が滴る。ぽたり、ぽたりと小さな音にも関わらず、静まり返った室内に大きく響いて、痛みに呻いたキャロラが座り込んだ。

「本当に愚かな者共だ。いちいち証拠を
残しておくとはな」

 寵妃だったはずの血に塗れたキャロラに目もくれず、封筒の中を漁る。
 その手紙にはターナル伯爵夫人からの、キャロラの指示にどう応えるかが書かれており、キャロラ親子がどうナイジェルスを襲撃する計画をターナル伯爵と企てたかが明らかにされた。



「本当に分相応という言葉を知らなかったようだな?甘やかした余も悪かったのだろうが。ナイジェルス襲撃についてはキャロラ、トローザーとターナル伯爵家に厳罰を処す。そして!
次はソイスト侯爵令嬢ユートリーの毒殺未遂事件についてだ」

 キャロラ妃とトローザー、ミイヤが拘束されて部屋の中央に立たされる。
キャロラの腕からは流血がポタポタと止まらないが、国王は床に血溜まりが出来ようとも一向に構わない。
3人ともあまりの恐ろしさに項垂れて震え続けていると、

「面を上げろ」

国王の厳しい声が響き渡った。



 キャロラ妃とトローザー、ミイヤが顔を上げる。
 すると先程はいなかったはずの、王妃とソイスト侯爵、リラ夫人と嫡男サルジャンも姿を見せた。

「お、お父様お母様助けて!お兄さまぁ」

 ミイヤが叫ぶが、誰もそちらを見ようともしない。

「黙れ!発言を許した記憶はない」

 ハッとしたミイヤだが、最後の希望の両親にちらちらと目をやることは止めなかった。

「断罪の前に一つ教えておこう」

 国王が、少しだけ楽しそうに口角を上げると続けた。

「ミイヤ・ソイスト、おまえとソイスト侯爵家との養子縁組をマーカスの申立により解除した」

 その言葉の意味を、ミイヤは暫く理解できなかった。

「わからぬか?本当に愚かなものだ。つまりおまえは既にミイヤ・ソイストではなくただのミイヤ、平民ということだ」
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