74 / 80
第4章
第74話 断罪4
しおりを挟む
「これはキャロラ妃、漸く長い視察より戻りましたが、お元気でいらっしゃいましたか」
わざと鷹揚にナイジェルスが訊ねると、明らかにキャロラは狼狽え、答えることができない。
「なぜユートリーまで、い、生きていたの?葬儀をしたんじゃないの?一体どうなっているのよ」
言葉にするつもりはなかっただろうが、キャロラの小さな声が漏れ聞こえる。なんとか情報を整理しようと考えるのだが、ナイジェルスとユートリーが生きて目の前にいるという衝撃に打ちのめされ、考えがまとまらないようだ。
「あ、あの」
何か言いたそうなキャロラ妃を遮ったのは国王。見たこともないほど冷たい視線で睨みつけている。
「ふたりは死んでなどいない。死んだと言うのは犯人を炙り出すための嘘だ。まんまと引っかかりおって」
「っ!」
キャロラには王妃より愛されているという自信があった。国王はいつも自分に愛溢れる視線を向け、美しさを愛で、何でも我儘を聞いてくれた。
位は王妃のほうが上だが、それ以外はすべて自分の方が上だと優越感さえ持っていたのだ。
「おまえたちは身の程を弁えるべきだった。その程度で王妃の王子を害そうなど烏滸がましいにも程がある」
「そんなっ」
「キャロラは側妃に過ぎん。トローザー、おまえも出来損ないのくせにつまらん夢を見たものだな」
話をしているうちにゴールダイン王子が戻ってきた。その手にはいくつかの手紙を持っている。
「父上、これを」
それに見覚えがあったキャロラ妃は一気に青褪める。
「だ、だめっ!」
取り返そうと手を伸ばしたキャロラの腕を王笏が強く払い除けた。
「ギャッ」
ガッと音が響いて皮膚が裂け、骨が折れたのか指の向きがおかしくなっていた。キャロラの腕から血が滴る。ぽたり、ぽたりと小さな音にも関わらず、静まり返った室内に大きく響いて、痛みに呻いたキャロラが座り込んだ。
「本当に愚かな者共だ。いちいち証拠を
残しておくとはな」
寵妃だったはずの血に塗れたキャロラに目もくれず、封筒の中を漁る。
その手紙にはターナル伯爵夫人からの、キャロラの指示にどう応えるかが書かれており、キャロラ親子がどうナイジェルスを襲撃する計画をターナル伯爵と企てたかが明らかにされた。
「本当に分相応という言葉を知らなかったようだな?甘やかした余も悪かったのだろうが。ナイジェルス襲撃についてはキャロラ、トローザーとターナル伯爵家に厳罰を処す。そして!
次はソイスト侯爵令嬢ユートリーの毒殺未遂事件についてだ」
キャロラ妃とトローザー、ミイヤが拘束されて部屋の中央に立たされる。
キャロラの腕からは流血がポタポタと止まらないが、国王は床に血溜まりが出来ようとも一向に構わない。
3人ともあまりの恐ろしさに項垂れて震え続けていると、
「面を上げろ」
国王の厳しい声が響き渡った。
キャロラ妃とトローザー、ミイヤが顔を上げる。
すると先程はいなかったはずの、王妃とソイスト侯爵、リラ夫人と嫡男サルジャンも姿を見せた。
「お、お父様お母様助けて!お兄さまぁ」
ミイヤが叫ぶが、誰もそちらを見ようともしない。
「黙れ!発言を許した記憶はない」
ハッとしたミイヤだが、最後の希望の両親にちらちらと目をやることは止めなかった。
「断罪の前に一つ教えておこう」
国王が、少しだけ楽しそうに口角を上げると続けた。
「ミイヤ・ソイスト、おまえとソイスト侯爵家との養子縁組をマーカスの申立により解除した」
その言葉の意味を、ミイヤは暫く理解できなかった。
「わからぬか?本当に愚かなものだ。つまりおまえは既にミイヤ・ソイストではなくただのミイヤ、平民ということだ」
わざと鷹揚にナイジェルスが訊ねると、明らかにキャロラは狼狽え、答えることができない。
「なぜユートリーまで、い、生きていたの?葬儀をしたんじゃないの?一体どうなっているのよ」
言葉にするつもりはなかっただろうが、キャロラの小さな声が漏れ聞こえる。なんとか情報を整理しようと考えるのだが、ナイジェルスとユートリーが生きて目の前にいるという衝撃に打ちのめされ、考えがまとまらないようだ。
「あ、あの」
何か言いたそうなキャロラ妃を遮ったのは国王。見たこともないほど冷たい視線で睨みつけている。
「ふたりは死んでなどいない。死んだと言うのは犯人を炙り出すための嘘だ。まんまと引っかかりおって」
「っ!」
キャロラには王妃より愛されているという自信があった。国王はいつも自分に愛溢れる視線を向け、美しさを愛で、何でも我儘を聞いてくれた。
位は王妃のほうが上だが、それ以外はすべて自分の方が上だと優越感さえ持っていたのだ。
「おまえたちは身の程を弁えるべきだった。その程度で王妃の王子を害そうなど烏滸がましいにも程がある」
「そんなっ」
「キャロラは側妃に過ぎん。トローザー、おまえも出来損ないのくせにつまらん夢を見たものだな」
話をしているうちにゴールダイン王子が戻ってきた。その手にはいくつかの手紙を持っている。
「父上、これを」
それに見覚えがあったキャロラ妃は一気に青褪める。
「だ、だめっ!」
取り返そうと手を伸ばしたキャロラの腕を王笏が強く払い除けた。
「ギャッ」
ガッと音が響いて皮膚が裂け、骨が折れたのか指の向きがおかしくなっていた。キャロラの腕から血が滴る。ぽたり、ぽたりと小さな音にも関わらず、静まり返った室内に大きく響いて、痛みに呻いたキャロラが座り込んだ。
「本当に愚かな者共だ。いちいち証拠を
残しておくとはな」
寵妃だったはずの血に塗れたキャロラに目もくれず、封筒の中を漁る。
その手紙にはターナル伯爵夫人からの、キャロラの指示にどう応えるかが書かれており、キャロラ親子がどうナイジェルスを襲撃する計画をターナル伯爵と企てたかが明らかにされた。
「本当に分相応という言葉を知らなかったようだな?甘やかした余も悪かったのだろうが。ナイジェルス襲撃についてはキャロラ、トローザーとターナル伯爵家に厳罰を処す。そして!
次はソイスト侯爵令嬢ユートリーの毒殺未遂事件についてだ」
キャロラ妃とトローザー、ミイヤが拘束されて部屋の中央に立たされる。
キャロラの腕からは流血がポタポタと止まらないが、国王は床に血溜まりが出来ようとも一向に構わない。
3人ともあまりの恐ろしさに項垂れて震え続けていると、
「面を上げろ」
国王の厳しい声が響き渡った。
キャロラ妃とトローザー、ミイヤが顔を上げる。
すると先程はいなかったはずの、王妃とソイスト侯爵、リラ夫人と嫡男サルジャンも姿を見せた。
「お、お父様お母様助けて!お兄さまぁ」
ミイヤが叫ぶが、誰もそちらを見ようともしない。
「黙れ!発言を許した記憶はない」
ハッとしたミイヤだが、最後の希望の両親にちらちらと目をやることは止めなかった。
「断罪の前に一つ教えておこう」
国王が、少しだけ楽しそうに口角を上げると続けた。
「ミイヤ・ソイスト、おまえとソイスト侯爵家との養子縁組をマーカスの申立により解除した」
その言葉の意味を、ミイヤは暫く理解できなかった。
「わからぬか?本当に愚かなものだ。つまりおまえは既にミイヤ・ソイストではなくただのミイヤ、平民ということだ」
40
あなたにおすすめの小説
【完結】もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
あまぞらりゅう
恋愛
キアラ・リグリーア伯爵令嬢は、同じ人生を繰り返していた。
彼女の最期はいつも処刑台の上。
それは婚約者のダミアーノ・ヴィッツィオ公爵令息の陰謀だった。
死んだら、また過去に戻ってくる。
その度に彼女は婚約者のことを激しく憎んで、もう愛さないと強く胸に誓っていた。
でも、何度回帰しても彼女は彼を愛してしまって、最後は必ず破滅を迎えてしまう。
キアラはもうダミアーノを愛したくなかったし、愛なんてものは信じていなかった。
――そして七回目の人生で、彼女は真実を知る。
★元サヤではありません!(ヒーローは別にいます!)
★不快になるような残酷な描写があります!
★他サイト様にも投稿しています!
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます
紅城えりす☆VTuber
恋愛
*完結済み、ハッピーエンド
「今まで役に立ってくれてありがとう。もう貴方は要らないわ」
人生をかけて尽くしてきた優しい継母。
彼女の正体は『邪魔者は全て排除。常に自分が一番好かれていないと気が済まない』帝国史上、最も邪悪な女であった。
継母によって『魔女』に仕立てあげられ、処刑台へ連れて行かれることになったメアリー。
メアリーが居なくなれば、帝国の行く末はどうなってしまうのか……誰も知らずに。
牢の中で処刑の日を待つ彼女の前に、怪しげな男が現れる。
「俺が力を貸してやろうか?」
男は魔法を使って時間を巻き戻した。
「もう誰にも屈しないわ。私は悪逆令嬢になって、失った幸せを取り戻すの!」
家族を洗脳して手駒にする貴族。
罪なき人々を殺める魔道士。
そして、私を散々利用した挙句捨てたお義母様。
人々を苦しめる悪党は全て、どんな手を使ってでも悪逆令嬢である私が、断罪、断罪、断罪、断罪、断罪するのよ!
って、あれ?
友人からは頼りにされるし、お兄様は急に過保護。公爵様からも求婚されて……。
悪女ムーブしているのに、どうして回帰前より皆様に好かれているのかしら???
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〇約十一万文字になる予定です。
もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。
読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる