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第40話
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不祥事に塗れて紹介状もなく叩き出されたルイーフに、貴族家の仕事は見つからなかった。しかし裁判所は支払い計画を作るようしつこく催促をくり返す。
ある日大家の代理という見慣れぬ男が、家賃の回収にやって来た。
「今無職だって聞きましたが、家賃は遅れずに払ってもらわないと困りますよ」
そこには配慮の欠片もない。
「払えないなら、こちらで仕事を斡旋しましょうか?」
代理人を名乗った男は、知り合いの貴族がメイドを探しているから紹介しようとルイーフを誘った。
「私の口利きなら必ず雇ってくれる。そこで働くというなら、給料を貰ってから家賃を払ってくれればいい」
「貴族の屋敷でメイドですか?家賃払うのを待ってくれるんですか?」
「そう言うことです、どうします?」
「や、やります。お願いします」
「いいでしょう、あちらにも連絡を入れねばなりませんから明後日に迎えに来ます。ともに参りましょう」
「ありがとうございますっ!」
トーソルドのせいでどん底だったルイーフは、また貴族の屋敷で働けるなんて運が向いてきたと頭を下げながら、ニヤニヤと笑っていた。
「ジャブリック様、ご報告にあがりました」
「おお、エーズか。首尾はどうだね?」
それはルイーフに大家の代理人と名乗った男だった。
「紹介してほしいそうですよ」
「そうか、よくやってくれた!じゃあ希望通りに行ってもらおうじゃないか」
ハハハと楽しげに声をあげて笑うジャブリックの目は、冷たく光っていた。
ルイーフは知らなかったが、ジャブリックは嫌がらせをするためだけに、借家の持ち主からルイーフの住む家を買い求めていたのだ。平民街の小さな屋敷を買うくらい、伯爵にとって造作のないことだから。
「慰謝料の支払いが滞っているというのに、裁判所はずいぶんゆっくりしておるな!まったくこれだから役人仕事と言われるのだ。せっかくだから私が直接慰謝料の回収をしてやろう」そう言って。
ジャブリックが男を使ってルイーフに紹介する貴族の屋敷は、メイドや下働きの女中がいつしか姿を消してしまうと噂があり、まともな伝手のある者は決して近寄ることはない。
エーズは勿論そんなことを教えることはなく、ただルイーフに羽振りの良い貴族だからしっかりお仕えするようにとだけ、言い含めて子爵家に送り届けた。
「ジャブリック様、これを」
「ああ、アニエラへの慰謝料として渡してやろう。聞いてはいたが、けっこうな金額だな」
ルイーフを受け取った子爵が、エーズに持たせた礼金をジャブリックが貰う。
普通メイドを紹介したくらいで礼金を寄越すことはないので、そんなものを態々出す後ろ暗い理由があるということだ。
子爵はその噂通りに、二度とルイーフを屋敷から出さないだろうと、手のひらにずっしりくる重みを感じながら考えていた。
「何処に行くのやらなあ、あの女は」
もちろんトーソルドも悪かった、そんなに嫌なら逃げ回らずに結婚したくないと談判すればよかったのだ。
言ったからといってその願いを聞いてやったかはわからないが、トーソルドは親の注意を右から左へ流して浮気を続けた。
それでも結婚式に応じたのだから、何だかんだ言っても結婚したらちゃんと切り替えて、アニエラを大切にするだろうと思っていたのに。
ジャブリックはトーソルドだけでなく、ルイーフにも手を回していた。しかしルイーフもどうやってもトーソルドから離れず、実家の男爵家に注意してものらりくらり。
よほどトーソルドを愛しているのだと思っていたが、怪我をして戻ってきたら即座に捨てた。世話をすると言えば、年金をすべて渡して見逃してやってもよいと思ったのだが。
ジャブリックは知っていたのだ、ルイーフが近衛騎士に憧れていたことを。
二人が付き合いだしたのは学院の騎士課に通っていたトーソルドが、近衛の准騎士になった頃。これが他の騎士団なら目もくれなかっただろうと女生徒に噂されていた。
トーソルドが掴みかけた栄誉も、アニエラの幸せな結婚も、すべてを壊したルイーフを許す気などさらさらない。
ジャブリックは怪しい噂がある子爵にメイドをひとり紹介し、その礼金をもらっただけ。その後そのメイドがどうなったかは、ロイリー家の誰も興味を持つことなく、その女が住んでいた借家は借り主が戻らなくなって半年後、家主によって売り払われた。
===========================
まっ、まさかのHOTランキング(女性向け)1位!
夢?夢ー?何度も見返し、驚きすぎて手が震えつつ、大感激しています。お立ち寄りくださった方、お気に入りにしてくださった方、感想くださった方、皆様、本当にありがとうございます。(感想のお返事は少しづつさせて頂いております)
現在仕事が決算の佳境を迎えていますが、頑張れそうな気がします(*´ェ`*)
改めまして御礼申し上げます。
本日から新作「御令嬢、あなたが私の本命です!」公開しました。
拗らせ王子と王子の恋を応援する側近の、じれじれラブストーリーです。
過去の完結作品などもどうぞよろしくお願いいたします。
ある日大家の代理という見慣れぬ男が、家賃の回収にやって来た。
「今無職だって聞きましたが、家賃は遅れずに払ってもらわないと困りますよ」
そこには配慮の欠片もない。
「払えないなら、こちらで仕事を斡旋しましょうか?」
代理人を名乗った男は、知り合いの貴族がメイドを探しているから紹介しようとルイーフを誘った。
「私の口利きなら必ず雇ってくれる。そこで働くというなら、給料を貰ってから家賃を払ってくれればいい」
「貴族の屋敷でメイドですか?家賃払うのを待ってくれるんですか?」
「そう言うことです、どうします?」
「や、やります。お願いします」
「いいでしょう、あちらにも連絡を入れねばなりませんから明後日に迎えに来ます。ともに参りましょう」
「ありがとうございますっ!」
トーソルドのせいでどん底だったルイーフは、また貴族の屋敷で働けるなんて運が向いてきたと頭を下げながら、ニヤニヤと笑っていた。
「ジャブリック様、ご報告にあがりました」
「おお、エーズか。首尾はどうだね?」
それはルイーフに大家の代理人と名乗った男だった。
「紹介してほしいそうですよ」
「そうか、よくやってくれた!じゃあ希望通りに行ってもらおうじゃないか」
ハハハと楽しげに声をあげて笑うジャブリックの目は、冷たく光っていた。
ルイーフは知らなかったが、ジャブリックは嫌がらせをするためだけに、借家の持ち主からルイーフの住む家を買い求めていたのだ。平民街の小さな屋敷を買うくらい、伯爵にとって造作のないことだから。
「慰謝料の支払いが滞っているというのに、裁判所はずいぶんゆっくりしておるな!まったくこれだから役人仕事と言われるのだ。せっかくだから私が直接慰謝料の回収をしてやろう」そう言って。
ジャブリックが男を使ってルイーフに紹介する貴族の屋敷は、メイドや下働きの女中がいつしか姿を消してしまうと噂があり、まともな伝手のある者は決して近寄ることはない。
エーズは勿論そんなことを教えることはなく、ただルイーフに羽振りの良い貴族だからしっかりお仕えするようにとだけ、言い含めて子爵家に送り届けた。
「ジャブリック様、これを」
「ああ、アニエラへの慰謝料として渡してやろう。聞いてはいたが、けっこうな金額だな」
ルイーフを受け取った子爵が、エーズに持たせた礼金をジャブリックが貰う。
普通メイドを紹介したくらいで礼金を寄越すことはないので、そんなものを態々出す後ろ暗い理由があるということだ。
子爵はその噂通りに、二度とルイーフを屋敷から出さないだろうと、手のひらにずっしりくる重みを感じながら考えていた。
「何処に行くのやらなあ、あの女は」
もちろんトーソルドも悪かった、そんなに嫌なら逃げ回らずに結婚したくないと談判すればよかったのだ。
言ったからといってその願いを聞いてやったかはわからないが、トーソルドは親の注意を右から左へ流して浮気を続けた。
それでも結婚式に応じたのだから、何だかんだ言っても結婚したらちゃんと切り替えて、アニエラを大切にするだろうと思っていたのに。
ジャブリックはトーソルドだけでなく、ルイーフにも手を回していた。しかしルイーフもどうやってもトーソルドから離れず、実家の男爵家に注意してものらりくらり。
よほどトーソルドを愛しているのだと思っていたが、怪我をして戻ってきたら即座に捨てた。世話をすると言えば、年金をすべて渡して見逃してやってもよいと思ったのだが。
ジャブリックは知っていたのだ、ルイーフが近衛騎士に憧れていたことを。
二人が付き合いだしたのは学院の騎士課に通っていたトーソルドが、近衛の准騎士になった頃。これが他の騎士団なら目もくれなかっただろうと女生徒に噂されていた。
トーソルドが掴みかけた栄誉も、アニエラの幸せな結婚も、すべてを壊したルイーフを許す気などさらさらない。
ジャブリックは怪しい噂がある子爵にメイドをひとり紹介し、その礼金をもらっただけ。その後そのメイドがどうなったかは、ロイリー家の誰も興味を持つことなく、その女が住んでいた借家は借り主が戻らなくなって半年後、家主によって売り払われた。
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夢?夢ー?何度も見返し、驚きすぎて手が震えつつ、大感激しています。お立ち寄りくださった方、お気に入りにしてくださった方、感想くださった方、皆様、本当にありがとうございます。(感想のお返事は少しづつさせて頂いております)
現在仕事が決算の佳境を迎えていますが、頑張れそうな気がします(*´ェ`*)
改めまして御礼申し上げます。
本日から新作「御令嬢、あなたが私の本命です!」公開しました。
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