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メラロニアスが加わったことで、施設、特に他国人が多い地域の対策がより細やかになった。
効果はすぐに現れる。使い勝手が格段によくなったと、それは船乗りから船乗りへ、キャラバンからキャラバンへとどんどん広がった。
最初にメラロニアスは他国の言葉が話せる者を各施設に必ず一人以上置くよう進言した。サービスだけではなく、習慣や文化の違いにより起こりうるトラブルの予防にも力を入れる。
その一環で自らも使用人に向けて語学のトレーニングを行いながら、簡単な挨拶、簡単な案内、質問の対応力、日常会話と、段階を追ってレベルが上がるごとに手当を出すようパルティアに勧めた。
学べばそれだけ収入が増えると聞けば、やる気そこそこの者も頑張ってみようという気になる。そうしていつしか、パルティアとアレクシオスの宿泊施設で働く者は二カ国以上の言葉を操ることが普通となり、他国から客を連れての接待に利用されることも増えていった。
担当のメイドが通訳として連れ出されることも増え、宿泊事業の他、通訳派遣業にも手を広げた。
メイドより通訳のほうが短い時間で高い収入を得られるため、メラロニアスの語学研修も大変な人気で、留学仲間をひとり引き抜いてきたほどである。
平民であっても採用されれば一から教育を受けられ、よりよい仕事をすることができると噂になると、働きたいという者が殺到するようになり、人を選ぶことが一つの仕事になったがとうとう手が回らなくなった。
そこでパルティアは、エルシドの古参メイドであるエリオラとアンシュを呼び、採用面談はふたりに任せることにした。
一足先にメイド長になったメニアとともに、エルシドでパルティアと親しくなった平民の娘たちで、メニア同様信頼できる使用人である。
「ようやく私たちもパルティア様のお役に立てるのですね」
アンシュが言うと、パルティアは驚いたように首を振った。
「何を言うの!貴女たちは今までだってすごく役に立つ素晴らしい仕事をしてきたわ。これからはもぉっと活躍してもらおうということなの。よろしくね」
パルティアとアレクシオスは、決して無闇に事業を拡大しているわけではなく、自信がないときもあるのだが、蓋を開けてみるとどれもこれも成功してしまう!
ほんの数年でエンダライン侯爵家は宿泊観光業の宗主くらいに言われるようになっていた。
「なんだか少し疲れたわ」
珍しくパルティアが早くに横になっていると聞き、アレクシオスが早馬で帰宅した。
「パーチィ!具合が悪いと聞いた、大丈夫なのか?医者には?」
「大丈夫よ、ちょっと疲れただけ。お医者様は明朝いらしてくださるわ」
翌朝、心配症で繊細で過保護なアレクシオスは、診察中おろおろと部屋のまわりを歩き回る。医師が出てくると待ちきれずすぐに訊ねて。
「それで、パルティアは?」
「はい、おめでとうございます」
「おめでとうとはなんだ!具合が悪いと言っているのに!ん?おめでとう?えっ?」
「御懐妊でございます」
皆の動きが止まる。
結婚以来五年、まったく気配もなく、少し諦めかけていたのだから。
「やったあー!」
いつも穏やかで冷静なアレクシオスとは思えないほどの、歓喜の絶叫が廊下に響き渡った。
効果はすぐに現れる。使い勝手が格段によくなったと、それは船乗りから船乗りへ、キャラバンからキャラバンへとどんどん広がった。
最初にメラロニアスは他国の言葉が話せる者を各施設に必ず一人以上置くよう進言した。サービスだけではなく、習慣や文化の違いにより起こりうるトラブルの予防にも力を入れる。
その一環で自らも使用人に向けて語学のトレーニングを行いながら、簡単な挨拶、簡単な案内、質問の対応力、日常会話と、段階を追ってレベルが上がるごとに手当を出すようパルティアに勧めた。
学べばそれだけ収入が増えると聞けば、やる気そこそこの者も頑張ってみようという気になる。そうしていつしか、パルティアとアレクシオスの宿泊施設で働く者は二カ国以上の言葉を操ることが普通となり、他国から客を連れての接待に利用されることも増えていった。
担当のメイドが通訳として連れ出されることも増え、宿泊事業の他、通訳派遣業にも手を広げた。
メイドより通訳のほうが短い時間で高い収入を得られるため、メラロニアスの語学研修も大変な人気で、留学仲間をひとり引き抜いてきたほどである。
平民であっても採用されれば一から教育を受けられ、よりよい仕事をすることができると噂になると、働きたいという者が殺到するようになり、人を選ぶことが一つの仕事になったがとうとう手が回らなくなった。
そこでパルティアは、エルシドの古参メイドであるエリオラとアンシュを呼び、採用面談はふたりに任せることにした。
一足先にメイド長になったメニアとともに、エルシドでパルティアと親しくなった平民の娘たちで、メニア同様信頼できる使用人である。
「ようやく私たちもパルティア様のお役に立てるのですね」
アンシュが言うと、パルティアは驚いたように首を振った。
「何を言うの!貴女たちは今までだってすごく役に立つ素晴らしい仕事をしてきたわ。これからはもぉっと活躍してもらおうということなの。よろしくね」
パルティアとアレクシオスは、決して無闇に事業を拡大しているわけではなく、自信がないときもあるのだが、蓋を開けてみるとどれもこれも成功してしまう!
ほんの数年でエンダライン侯爵家は宿泊観光業の宗主くらいに言われるようになっていた。
「なんだか少し疲れたわ」
珍しくパルティアが早くに横になっていると聞き、アレクシオスが早馬で帰宅した。
「パーチィ!具合が悪いと聞いた、大丈夫なのか?医者には?」
「大丈夫よ、ちょっと疲れただけ。お医者様は明朝いらしてくださるわ」
翌朝、心配症で繊細で過保護なアレクシオスは、診察中おろおろと部屋のまわりを歩き回る。医師が出てくると待ちきれずすぐに訊ねて。
「それで、パルティアは?」
「はい、おめでとうございます」
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「御懐妊でございます」
皆の動きが止まる。
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「やったあー!」
いつも穏やかで冷静なアレクシオスとは思えないほどの、歓喜の絶叫が廊下に響き渡った。
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