7 / 183
第一章
7 side悠
しおりを挟む
俺が父上の機嫌を取るために、薫という名の獣人国の王子の世話を見ようとしていると勘違いした弟の那とようやく話をつけることが出来た。お前のように自分にとっての利益ばかり考えていると痛い目にあうぞ、と心の中で忠告しておく。急いで駆けつけた時には、彼は部屋の中で意識を失っていた。外では雪が降っていると言うのに、部屋の中は凍えるように寒かった。どうしてこんなにひどいことができるのだろうと、一瞬怒りで頭の中がいっぱいになったが、彼を助ける方が先だと思い直す。俺の部屋に運ぼうと、彼を抱き上げると、予想していたよりもずっと軽くて驚いた。よく見ると頬が痩せているし、その頬には涙の跡があった。
彼をベットに寝かせると、暖に呼びに行かせた医者がちょうどやってきた。事情を話すと、医者はすぐに診察を始めた。
「高熱が出ています。栄養不足と寒い場所に長くいたせいでしょう。注射をうち、様子を見ましょう。部屋を暖かくしてください。」
と言って注射をうった。俺と医者は、ベットの横に椅子を持ってきて、そこで彼の様子を夜の間見ることにした。がんばれ、と彼の細くて熱い手を握りながら念じた。
医者をはじめとする俺たちの懸命な看病に反して、彼の熱は数日後も未だ下がらないままだった。医者も、
「体力が低下しているにしても、回復が遅すぎます。」
と困惑しながら言った。このまま熱が下がらなければ、死んでしまうかもしれないとも。そんな時、暖が、
「私が、彼にお会いした時に、彼はそのチョーカーを外そうとしておられました。もしかしたら何か関係があるのかもしれません。」
と言った。暖が訪れた時にはもう具合が悪そうだったと聞いていたが、それもチョーカーが関係している可能性がある。俺は彼のチョーカーを外そうとしたが、力が強いはずの俺でも外すことができない。よく見ると、つなぎ目がなかった。どうすれば良いのか途方に暮れていると、暖が遠慮がちに言った。
「あの、那様にお尋ねすると言うのはいかがでしょうか?那様なら知っていらっしゃるかも…」
「確かに、あいつに聞いてみるしかないな。」
いつも外出していることが多いやつだが、幸い、今日は自分の部屋にいるらしい。俺は暖と共に那のところへと向かった。
彼をベットに寝かせると、暖に呼びに行かせた医者がちょうどやってきた。事情を話すと、医者はすぐに診察を始めた。
「高熱が出ています。栄養不足と寒い場所に長くいたせいでしょう。注射をうち、様子を見ましょう。部屋を暖かくしてください。」
と言って注射をうった。俺と医者は、ベットの横に椅子を持ってきて、そこで彼の様子を夜の間見ることにした。がんばれ、と彼の細くて熱い手を握りながら念じた。
医者をはじめとする俺たちの懸命な看病に反して、彼の熱は数日後も未だ下がらないままだった。医者も、
「体力が低下しているにしても、回復が遅すぎます。」
と困惑しながら言った。このまま熱が下がらなければ、死んでしまうかもしれないとも。そんな時、暖が、
「私が、彼にお会いした時に、彼はそのチョーカーを外そうとしておられました。もしかしたら何か関係があるのかもしれません。」
と言った。暖が訪れた時にはもう具合が悪そうだったと聞いていたが、それもチョーカーが関係している可能性がある。俺は彼のチョーカーを外そうとしたが、力が強いはずの俺でも外すことができない。よく見ると、つなぎ目がなかった。どうすれば良いのか途方に暮れていると、暖が遠慮がちに言った。
「あの、那様にお尋ねすると言うのはいかがでしょうか?那様なら知っていらっしゃるかも…」
「確かに、あいつに聞いてみるしかないな。」
いつも外出していることが多いやつだが、幸い、今日は自分の部屋にいるらしい。俺は暖と共に那のところへと向かった。
23
あなたにおすすめの小説
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる