雪を溶かすように

春野ひつじ

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第一章

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 「薫様、少しは何か召し上がった方が良いのではないかと思いまして…。」

そう葉が言う途中で僕のお腹がグゥーと鳴った。恥ずかしいのとタイミングの良さに二人でクスクスと笑ってしまった。

「お腹も返事してるし、食べようかな。」

葉はテキパキとベットの横にあった少し小さめのテーブルに紅茶とお粥を並べる。さっきは気がつかなかったけど、りんごをすりおろしたものもあった。まずは紅茶を一口飲む。いい香りとともに、体の芯から温まる気がする。そしてお粥。胃に優しいように味は薄めだけど、ひさしぶりに食べた温かいご飯にホッとする。

「美味しい!」

僕が言うと、嬉しそうに、

「実は私が作ったのですよ。」

と言った。驚きながら、体つきから武術が得意なのかと思っていたと言うと、もちろん得意だが、料理の方が好きだと言う。そんな話をしている間に、食欲はそんなにないと言っていたのにペロリとお粥を食べ終えてしまった。

「お口にあったようで、よかったです。」

と言ってりんごの方を勧めてくれる。すりおろしたりんごは、僕が風邪を引いた時によく凱が出してくれたものだ。一気に懐かしさが込み上げてきて俯いた僕に、葉は突然、

「実は私は獣人と人間のハーフなんです。」

と言った。

「えっ?」

聞き返す僕に、

「嘘じゃないですよ。」

と言って、犬の耳としっぽを出して見せてくれた。

「じゃあ、暖も…?」

「いえ、私と兄は母が違うので、兄は人間です。」

突然のことに混乱している僕に、葉は少し長くなりますが、と前置きして話しはじめた。

「先程述べたようには私の母は獣人でした。妻である兄の母を亡くした私の父は、自分の屋敷に仕えていた私の母に一目惚れし、その二人の間に生まれたのが私です。私が獣化はできないけれど半獣化はできるという体質で生まれたことと、母が私を産んだと同時に亡くなったということで、父には嫌われていました。母がすぐに亡くなったことで、獣人が右耳につけるピアスももらうことができませんでした。」

獣人は皆、生まれてすぐに特殊なピアスをつける。理由は、自分の力を制御するため。それがないと、特に幼い頃はいつ獣化するのかを制御できない。

「力を制御できずに、周りから避けられていた私に、兄だけは優しく接してくれました。家の中に閉じ込められていた私に、外の世界を教えてくれたり、三歳しか変わらないのに、父に私のことを自由にするべきだと懸命に話してくれました。しかし、何年もその繰り返しで私たちは、母が亡くなり私に興味がない父にその言葉は届かないことに気づき、私が十歳の時に家を出ることにしました。家を出ても何もメリットはないのに、私と共に出てくれた兄には、感謝してもしきれません。そして、家を出て行く宛もなく街を歩いていた私たちを助けてくれたのが、悠様です。」
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