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第一章
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葉は僕が食べるのをやめているのを見て、どうぞ食べながらで、と言う。言われてはじめて僕は食べていなかったことに気づいた。
「兄と二人で家を出てからしばらくは、兄の貯金を使って生活をしました。父は商売上手で豊かな暮らしをしていたので、貯金もそれなりにあり、二週間ほどは二人で宿を借り、働きながら生活することができました。しかし、その後は宿を借りるお金がなくなり夜の街を二人でトボトボと歩いていると、運の悪いことに、盗賊に出会ってしまいました。所持品を奪われそうになっている時に現れたのが、悠様でした。突然小声で走って、と言われ三人で無我夢中で走り、どうにか逃げ切ることができました。そして、王宮に着いた時初めて彼が王子だと言うことを知ったのです。」
たしかに悠なら、サラリと言いそうだ。
「彼は、私が半獣人だと知っても変わらず接してくださいました。そればかりか、知り合いの獣人に私のためにピアスを大金を払って、購入してくださったのです。」
そう言って、右耳を見せてくれた。瞳と同じ琥珀色のピアスは、葉によく似合っていた。
「この方に仕えたいと思った私は、体が大きいことに加え、すぐにお役に立てるように武術を習いました。兄には家に帰るようにと説得したのですが、私が心配だと一緒に王宮に残ることになりました。学校で成績が良かった兄は、悠様と同じ年齢だったため、勉強をお教えすることにしていました。そして、今年で彼と会ってから、ちょうど六年になります。」
「えっ!ちょっと待って。じゃあ葉さんは今十六歳!?」
「はい、そうです。葉、と呼び捨てでいいですよ。」
「うん。僕よりずっと年上だと思ってたら、僕と一つしか変わらないんだね。」
「薫様は、十五歳ですか?」
「そうだよ。」
えー!と驚きつつ、僕は気になっていたことを尋ねた。
「ちょっと前から思ってたんだけど、葉のお話を聞いて気になったことがあって…」
「何でしょうか?」
「どうして悠は獣人に親切なの?この王宮に来た時に、他の王子は皆僕たちを嫌っているようだったけど…。」
「私も彼に会ったばかりの頃に、そのことが気になって彼に直接尋ねてみたんです。そしたら、なんでも昔ある獣人と仲良くなり、命を助けてもらったことがあるようで。どうしても恩返しをしたくて、今も探している、とおっしゃっていました。」
「それでなんだね。」
「はい。私の話も本当はもっと後に話そうと思っていました。しかし、違っていたら申し訳ないのですが、先程薫様が寂しそうに見え、少しでも気が楽になればと思い…」
彼の心配そうな声に優しさを感じる。
「ありがとう。さっきくれたりんごをすりおろしたものは、僕を育ててくれた人がよく風邪をひいた時に出してくれていたもので、懐かしくなっちゃって。」
「なるほど。それでしたら、悠様に手紙を出すことを伝えてみてはどうでしょうか?きっと喜んで大量のレターセットを持ってきてくださると思いますよ。」
その様子を想像して少し笑ってしまった。
「そうしてみるよ。」
そう言うと、葉は大きく頷いた。それから葉との話に夢中になっていると、あっという間に時間が過ぎて、外を見るとオレンジ色の光が窓から差し込んでいた。もうこんな時間だ、と意外に思っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「兄と二人で家を出てからしばらくは、兄の貯金を使って生活をしました。父は商売上手で豊かな暮らしをしていたので、貯金もそれなりにあり、二週間ほどは二人で宿を借り、働きながら生活することができました。しかし、その後は宿を借りるお金がなくなり夜の街を二人でトボトボと歩いていると、運の悪いことに、盗賊に出会ってしまいました。所持品を奪われそうになっている時に現れたのが、悠様でした。突然小声で走って、と言われ三人で無我夢中で走り、どうにか逃げ切ることができました。そして、王宮に着いた時初めて彼が王子だと言うことを知ったのです。」
たしかに悠なら、サラリと言いそうだ。
「彼は、私が半獣人だと知っても変わらず接してくださいました。そればかりか、知り合いの獣人に私のためにピアスを大金を払って、購入してくださったのです。」
そう言って、右耳を見せてくれた。瞳と同じ琥珀色のピアスは、葉によく似合っていた。
「この方に仕えたいと思った私は、体が大きいことに加え、すぐにお役に立てるように武術を習いました。兄には家に帰るようにと説得したのですが、私が心配だと一緒に王宮に残ることになりました。学校で成績が良かった兄は、悠様と同じ年齢だったため、勉強をお教えすることにしていました。そして、今年で彼と会ってから、ちょうど六年になります。」
「えっ!ちょっと待って。じゃあ葉さんは今十六歳!?」
「はい、そうです。葉、と呼び捨てでいいですよ。」
「うん。僕よりずっと年上だと思ってたら、僕と一つしか変わらないんだね。」
「薫様は、十五歳ですか?」
「そうだよ。」
えー!と驚きつつ、僕は気になっていたことを尋ねた。
「ちょっと前から思ってたんだけど、葉のお話を聞いて気になったことがあって…」
「何でしょうか?」
「どうして悠は獣人に親切なの?この王宮に来た時に、他の王子は皆僕たちを嫌っているようだったけど…。」
「私も彼に会ったばかりの頃に、そのことが気になって彼に直接尋ねてみたんです。そしたら、なんでも昔ある獣人と仲良くなり、命を助けてもらったことがあるようで。どうしても恩返しをしたくて、今も探している、とおっしゃっていました。」
「それでなんだね。」
「はい。私の話も本当はもっと後に話そうと思っていました。しかし、違っていたら申し訳ないのですが、先程薫様が寂しそうに見え、少しでも気が楽になればと思い…」
彼の心配そうな声に優しさを感じる。
「ありがとう。さっきくれたりんごをすりおろしたものは、僕を育ててくれた人がよく風邪をひいた時に出してくれていたもので、懐かしくなっちゃって。」
「なるほど。それでしたら、悠様に手紙を出すことを伝えてみてはどうでしょうか?きっと喜んで大量のレターセットを持ってきてくださると思いますよ。」
その様子を想像して少し笑ってしまった。
「そうしてみるよ。」
そう言うと、葉は大きく頷いた。それから葉との話に夢中になっていると、あっという間に時間が過ぎて、外を見るとオレンジ色の光が窓から差し込んでいた。もうこんな時間だ、と意外に思っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
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