雪を溶かすように

春野ひつじ

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第一章

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 かまくらの中は雪でできているから寒いと思っていたら、思っていたよりも暖かくてびっくりしていると、

「意外と暖かいだろう?」

と自慢げな悠。中にはテーブルと三つの椅子が並べてあって、その一つの椅子に腰掛けた。葉が、持ってきた荷物の中から昼食を取り出し、配ってくれる。はい、と渡されたお椀の中身はシチューだった。湯気が立ち上り、美味しそうなにおいが広がる。

「いただきます!」

三人で手を合わせて言うと、スプーンで掬い、息を吹きかけて冷ましながら食べる。

「美味しい!」

外で、寒いのもあって、暖かいシチューが身体に染み渡った。

「ありがとうございます。パンもありますよ。」

そう言い、パンを配ってくれる葉。もらったパンを手でちぎって口の中に入れる。温かくふわふわのこのパンをどこかで食べたことがあるような気がして、首をかしげる。

「あっ!」

思い出した。暖が届けてくれたパンだ。どうしたのかと驚いて顔を上げた葉に尋ねる。

「もしかして、このパンって暖が持ってきてくれたパン…?」

「気づいていただけましたか?そうです、兄があなたにお届けしたパンです。」

「やっぱり!こんなに中がふわふわなパン、食べたことなくて、また食べたいと思ってたんだ。今日食べれて嬉しい!」

「それはよかったです。」

微笑み、また作ります、と言ってくれる。そのあと食べることに集中していると悠が、

「そうだ!薫、体調の方がよかったら、今日買い物に行かないか?」

と言う。

「でも、悠は用事とかないの?」

「あぁ。今日はたまたま何もない日だし、時間もまだたくさんあるぞ。」

「だったら行きたい!」

「じゃあ決まりだな。食べ終わったら一旦部屋に戻って準備をしてから出かけよう。」

「うん!」 

そう言うと僕たちは少し急ぎ目にご飯を食べて、かまくらを出た。そして、また来た道を戻って部屋に帰った。



 部屋について今度はもっと暖かい格好の方が良いと言われたので、服を重ね着した。準備が終わり、部屋を出ようという時に、

「先に次の部屋を決めておくか?」

と悠が言う。確かに決めた後に行った方が家具を買う時にイメージしやすい気がする。

「できたらそうしたい。」

「おう、わかった。」

そう言って案内してもらい、三つの部屋を見せてもらう。どの部屋も自分の国にいた時よりもずっと広くて落ち着かなくなりそうだったから、一番小さい部屋を選んだ。窓からは王宮の外が見渡せるところも気に入った。

「この部屋にする!」

「ここなら明るくていいな。よし、買い物の間に掃除をしておいてもらおう。」

そう言って部屋の入り口に控えていた人に掃除を頼んでいた。僕も、よろしくお願いします、と言うとお任せくださいと畏まった様子で言われた。そのあと人間国にいる獣人が珍しいからか、視線を感じたけど気にしないことにして、悠の後をついて行った。
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