55 / 140
幼少期
55 農家の手伝いと平民の生活
しおりを挟む
「おっちゃーん、きたよー」
「おう、若様。こんなとこまで来てもらって」
「なんのなんの。こっちが頼んだことだからね」
ってことで、アンナの課外授業の最後を飾るのは農家の手伝いだ。
農家なら朝一番で来るべきってのは分かるんだが、アンドレ商会も朝以外は忙しくて対応できないし、夕方にする作業もあるから大丈夫と許可をもらってる。
ま、朝方の忙しい時間帯に領主とはいえ部外者がやってきて邪魔するのも悪いしな。
「ここでお野菜が作られていますのね。私、知っていますわ。お野菜は朝のうちに採るんですよね?」
「ほほ、よくご存じで。ですが、夕方に採ることもあるのですよ」
「なぜですか?」
「野菜は採ってすぐが美味しいですからな。夜からは街の方で様々なお店が開きますから、そこに納品する野菜は夕方に採って運ぶんですよ」
「そうなのですねっ!」
まあ、おっちゃんの言うことは半分本当で半分嘘だ。
夜の営業に合わせて新鮮な野菜を求めているのは野菜を売りにしている一部の高級店で、ほとんどの店は朝に市場で売られている野菜を夜でも使っている。
当然、ゲルハルディ家でも朝のうちに仕入れた野菜を夜飯に出しているから、富豪や貴族階級が訪れる高級店ってわけだ。
「んじゃ、アンナはおっちゃんに教わりながら手伝ってみな。俺とレナは逆側からやっていくから」
「あ、若様。本日採るのはキャベツとほうれん草ですからな」
「ナイフは持っているから大丈夫だよ。レナ、向こうから一緒にやろうか」
「はい、マックス様」
アンナはおっちゃんに任せて、俺とレナは逆側からやっていく。
ま、採るのはそこまで多くではないから直ぐに終わるだろ。
「……結構、難しいですのね」
「いえいえ、初めてにしてはお上手ですよ。ウチの息子などいくら教えても雑で困りますからね」
「お子さんもお手伝いを?」
「いずれはこの畑を継いでもらわなければなりませんからね。子供のころから出来ることは少しずつ教えていっているのですよ」
「……今は姿が見えませんけれど」
「ええ、今は妻が帳簿の書付や税の計算の仕方を教えていますからな。夕方はそれほどやることがないので、わたし一人でやっているのですよ」
「……農家の方もお勉強を?」
「お嬢様や若様に比べれば勉強というほどのものでもありませんよ。生きていくうえで必要なことだけ」
税計算などはやらなくても役所の方で処理する手はずになっているが、自前で処理すればその分、税の優遇が受けられる。
ま、この辺は前世の確定申告と似たようなもので、少しの手間を負うだけで手取りが増えるならやって損はないってものだな。
「朝から農業をやって、夕方からは勉強とかホント、頭が下がるよ」
「なになに、店を開いている者も服を作っている者もどなたも変わりありませんよ。それに、ご領主一族のほうが大変ではありませんか」
「そうか? 昨日も父上は騎士団の連中とぶつかり稽古していただけだぞ」
「ご領主様が守ってくださるから我々は安心して暮らせるのです。それに奥方様が書類仕事に追われていることも知っていますよ」
「父上が書類仕事もできれば母上もここまで苦労はしなかったんだがなぁ」
「人にはそれぞれ向き不向きがありますからなぁ。……さて、今日はこのくらいでよいでしょう」
「ああ、アンナの課外授業に付き合ってもらって悪かったな」
「なになに、こちらも手伝っていただいて助かりましたからなぁ。今日はお店の方でお嬢様の手摘みサラダが振舞われることでしょう」
「えっ!?」
「おいおい、俺が手伝った時には普通の野菜として出していなかったか?」
「ほっほっほっ、若様が初めて手伝っていただいた時も次期領主様の手摘み野菜炒めになっていましたよ」
うん、聞いてないな。ま、俺はここで手伝うのも慣れたものというか、若手の騎士連中としない見回りに出るときにはいろんなところで手伝っているからな。
俺だけじゃなくて爺様も父上も見回りの時にはいろんな店で手伝ってるらしいから、ゲルハルディ家は領民から慕われてるって言われるんだよな。
「アンナ、お礼を」
「はい、本日は貴重な体験をありがとうございました」
「なんのなんの、こちらはお嬢様が手摘みなさったお野菜ですので是非ご夕食に」
「ああ、それはいいな。アンナも自分で採った野菜の味を知っておいた方が良いぞ」
「……はい、お兄様」
アンナは子供らしく野菜があまり好きではないが、自分で採った野菜ならば素直に食べるかもしれないしな。
キャベツはサラダをメインにしてもらって、ほうれん草はベーコンと炒め物にでもしてもらうか。
ああ、父上と母上にも出さないと拗ねるだろうし、そっちはパリパリキャベツにでもしておくか。
酒飲みだし、そっちの方が嬉しいだろ。
「おう、若様。こんなとこまで来てもらって」
「なんのなんの。こっちが頼んだことだからね」
ってことで、アンナの課外授業の最後を飾るのは農家の手伝いだ。
農家なら朝一番で来るべきってのは分かるんだが、アンドレ商会も朝以外は忙しくて対応できないし、夕方にする作業もあるから大丈夫と許可をもらってる。
ま、朝方の忙しい時間帯に領主とはいえ部外者がやってきて邪魔するのも悪いしな。
「ここでお野菜が作られていますのね。私、知っていますわ。お野菜は朝のうちに採るんですよね?」
「ほほ、よくご存じで。ですが、夕方に採ることもあるのですよ」
「なぜですか?」
「野菜は採ってすぐが美味しいですからな。夜からは街の方で様々なお店が開きますから、そこに納品する野菜は夕方に採って運ぶんですよ」
「そうなのですねっ!」
まあ、おっちゃんの言うことは半分本当で半分嘘だ。
夜の営業に合わせて新鮮な野菜を求めているのは野菜を売りにしている一部の高級店で、ほとんどの店は朝に市場で売られている野菜を夜でも使っている。
当然、ゲルハルディ家でも朝のうちに仕入れた野菜を夜飯に出しているから、富豪や貴族階級が訪れる高級店ってわけだ。
「んじゃ、アンナはおっちゃんに教わりながら手伝ってみな。俺とレナは逆側からやっていくから」
「あ、若様。本日採るのはキャベツとほうれん草ですからな」
「ナイフは持っているから大丈夫だよ。レナ、向こうから一緒にやろうか」
「はい、マックス様」
アンナはおっちゃんに任せて、俺とレナは逆側からやっていく。
ま、採るのはそこまで多くではないから直ぐに終わるだろ。
「……結構、難しいですのね」
「いえいえ、初めてにしてはお上手ですよ。ウチの息子などいくら教えても雑で困りますからね」
「お子さんもお手伝いを?」
「いずれはこの畑を継いでもらわなければなりませんからね。子供のころから出来ることは少しずつ教えていっているのですよ」
「……今は姿が見えませんけれど」
「ええ、今は妻が帳簿の書付や税の計算の仕方を教えていますからな。夕方はそれほどやることがないので、わたし一人でやっているのですよ」
「……農家の方もお勉強を?」
「お嬢様や若様に比べれば勉強というほどのものでもありませんよ。生きていくうえで必要なことだけ」
税計算などはやらなくても役所の方で処理する手はずになっているが、自前で処理すればその分、税の優遇が受けられる。
ま、この辺は前世の確定申告と似たようなもので、少しの手間を負うだけで手取りが増えるならやって損はないってものだな。
「朝から農業をやって、夕方からは勉強とかホント、頭が下がるよ」
「なになに、店を開いている者も服を作っている者もどなたも変わりありませんよ。それに、ご領主一族のほうが大変ではありませんか」
「そうか? 昨日も父上は騎士団の連中とぶつかり稽古していただけだぞ」
「ご領主様が守ってくださるから我々は安心して暮らせるのです。それに奥方様が書類仕事に追われていることも知っていますよ」
「父上が書類仕事もできれば母上もここまで苦労はしなかったんだがなぁ」
「人にはそれぞれ向き不向きがありますからなぁ。……さて、今日はこのくらいでよいでしょう」
「ああ、アンナの課外授業に付き合ってもらって悪かったな」
「なになに、こちらも手伝っていただいて助かりましたからなぁ。今日はお店の方でお嬢様の手摘みサラダが振舞われることでしょう」
「えっ!?」
「おいおい、俺が手伝った時には普通の野菜として出していなかったか?」
「ほっほっほっ、若様が初めて手伝っていただいた時も次期領主様の手摘み野菜炒めになっていましたよ」
うん、聞いてないな。ま、俺はここで手伝うのも慣れたものというか、若手の騎士連中としない見回りに出るときにはいろんなところで手伝っているからな。
俺だけじゃなくて爺様も父上も見回りの時にはいろんな店で手伝ってるらしいから、ゲルハルディ家は領民から慕われてるって言われるんだよな。
「アンナ、お礼を」
「はい、本日は貴重な体験をありがとうございました」
「なんのなんの、こちらはお嬢様が手摘みなさったお野菜ですので是非ご夕食に」
「ああ、それはいいな。アンナも自分で採った野菜の味を知っておいた方が良いぞ」
「……はい、お兄様」
アンナは子供らしく野菜があまり好きではないが、自分で採った野菜ならば素直に食べるかもしれないしな。
キャベツはサラダをメインにしてもらって、ほうれん草はベーコンと炒め物にでもしてもらうか。
ああ、父上と母上にも出さないと拗ねるだろうし、そっちはパリパリキャベツにでもしておくか。
酒飲みだし、そっちの方が嬉しいだろ。
176
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す
金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。
「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」
魅了魔法? なんだそれは?
その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。
R15は死のシーンがあるための保険です。
独自の異世界の物語です。
兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる