気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

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閑話

108 ストレス発散にカレー作り

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「今日はカレーを作ります」

「はい?」

 辺境伯となって、ゲルハルディ領に帰ってきた俺はなんだかんだと忙しい日々を送っていたのだが、正直ストレスがマッハすぎてヤバいのでカレーを作ることにした。
 前世でもストレスが溜まりすぎると、煮込み料理やお菓子作りなど時間のかかる料理をする癖があったのだが、この世界でも性質はそう変わらないようだ。
 ゴールディ国から米がやってきたのもそうだが、カレンベルク領で育てていたスパイス類がある程度、形になってきたのでそれを利用して何かしようと思ったのがきっかけといえばきっかけか。

「カレーって何なん?」

「カレーってのはスパイスで肉や野菜を煮込んだ料理だな。南大陸では割とポピュラーな食事らしい」

 じつはこの世界では南大陸でカレーらしきものが作られているのだが、唐辛子……この世界では虫除けの実と呼ばれているソレ……が食料とみなされていないので辛いというよりもスパイスの風味がするスープのような料理らしい。
 ま、それじゃあ俺が満足できないので、唐辛子も入れて前世のスープカレーというか、バターチキンカレーのような感じにしようと思う。
 で、商機を嗅ぎつけたのか、レナだけでなくアイリーンも調理場にいるわけだ。

「材料はスパイス各種に、鶏肉、野菜は基本はトマトと玉ねぎだけど、それだけじゃ寂しいし人参とジャガイモも入れておこうか」

 他にも味付けように塩やウスターソースも用意して、この世界では辛すぎるのは不評だから生クリームでマイルドにしてみるか。
 まずはスパイス各種を混ぜ合わせてカレー粉を作る作業からだが、正直これだけでも価値があると思うんだよな。
 鳥肉にまぶして焼くだけでもタンドリーチキン風になるし、野菜炒めに使ってもいい。
 ま、カレンベルク領の試験栽培だけじゃゲルハルディ領を満たすだけのスパイスを作れないし、市井には流せないんだけど。

「そうそう、いいよ、料理長」

「相変わらず坊ちゃんは面白いものを考えますなぁ。スパイスなんてのは薬にするか、せいぜい香りづけに1種か2種使うもんですよ」

「1種や2種で香りづけになるなら、多い方が面白い味になるでしょ。とはいえ、混ぜすぎてもごちゃつくし、研究はしていかなくちゃだけどね」

 前世では安い金額でスパイスが買えたから基本的なカレー粉の配合は知ってるけど、本当に基本的なので本格的なカレーを作るなら研究は必須だろう。

「んで、野菜と鶏肉を炒めて、さっきのスパイス……なんでしたっけ? カレー粉?」

「そうそう、それを入れて香りが立ってきたら、荒く潰したトマトを入れてね」

「……ほう、やはり複数種類を使うと香りが違いますねぇ」

「この複雑な香りがこの料理の肝らしいからね」

 足りないスパイスもあるので、前世とは若干香りが違うが、まあ仕方がない。

「具材に十分に火が通ったら、生クリームとバターを入れてね」

「坊ちゃんの方には入れないんで?」

「こっちは辛いのが好きな人用。バターは入れるけど生クリームは入れないよ」

 レナや母上なんかは辛いのが苦手だから、トマトや生クリームで辛味を抑えたカレー、俺や父上なんかは辛いのが得意だから、その辺を抜いた普通のバターチキンカレーだ。

「炊いた米にかけて食べても良いし、さっき焼いてもらったナンにつけて食べても良いよ」

「パンでも米でもいいってのは画期的ですなぁ」

「まあ、米にかけるなら小麦粉なんかを入れてトロミを付けたほうが食べやすいだろうけどね。今回はナンで食べようか」

 おそらく屋敷中にスパイスの香りが飛んでいるから、昼食はカレーになるだろうし、今やるのは本当に試食だ。
 試食分だけ米を用意するのも面倒だし、一枚のナンを適当に切ってもらって、それぞれがカレーにつけて食べることにする。

「ほう、香りの割には味はおとなしいんですねぇ」

「そうですか? 私は辛味を抑えたほうも結構辛く感じますよ」

「ん~、ウチは辛いのでも平気かな」

「これでも辛いなら、前に作ったラッシーも一緒に提供するかな……料理長、出来る?」

「材料はあるんで、大丈夫ですよ」

「じゃ、レナと母上、あとはアンナには辛味を抑えたほうに加えてラッシーもお願い。俺と父上とアイリーンの分は辛い方でアイスティーにしてもらおうかな。屋敷のみんなにはそれぞれ希望を聞いて、提供してあげて」

 父上や母上、アンナにもアイリーンが第二夫人として認められているので、今は一緒に食事をしたりしている。
 アイリーンはレナや母上ほどには辛いものも苦手としていないから、どちらかというと俺や父上に味覚が似てるんだよな。

「なあなあ、これって領内に出したら売れそうやん?」

「スパイスの量が確保できないからダメ」

「え~、ケチ」

「スパイスが確保できるように画策はしてるから、それまで待ってくれ」

「む~、分かったわ」

 南大陸からの交易ではこれ以上のスパイスの確保は難しいし、他の辺境伯を巻き込んでスパイスの生産量を上げるつもりだ。
 あ、ちなみにカレーは家族は元より、屋敷の使用人たちからも好評で、スパイス確保を迫られるのは後々の話だ。
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