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閑話
109 カリンの正体
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「おにいちゃん、おねえちゃん」
「おお、そうだぞ。マックスお兄ちゃんだ」
「はい、レナお姉ちゃんですよ」
「むー、お兄様、お姉さまですよ。カリン」
ゲルハルディ家は三兄妹で、長男が俺ことマックス、長女が色々とあったが現在は貴族としての自覚も芽生えてきたアンナ、次女であり末娘が目の前にいるカリンだ。
「まあまあ、カリンはまだ小さいし舌足らずになっても仕方ないだろ?」
「でも、お兄様。カリンも4歳ですよ?」
「アンナも小さい時はお兄ちゃんって呼んでたけどな?」
「そうですね。私もお姉ちゃんと呼ばれていましたよ?」
「嘘ですっ!」
「いやいや、確か俺が王都から戻ってきたあたりからお兄様って呼ぶようになってなかったか?」
「はい、マックス様が旅に出ていた間にお義母様が教育した結果でしたね」
「……覚えていません」
「ま、カリンはその時のアンナの年齢と同じくらいだけど、成長は人それぞれだからな。長い目で見てやらないとな」
「むー、お兄様とお姉さまが甘やかすのですから、私だけでも厳しくいきますよ。カリン、マックスお兄様、レナお姉さまですわ」
俺に何かあった時のスペアとして教育を受けていたアンナは、カリンも同じように教育を受けないのが不満なのかもな。
ま、あんまり厳しくするようなら注意するけど、貴族令嬢としては必要な教育でもあるから、しばらくは静観しておくかな。
「マックス? ……マックスがなんでここにいるの?」
「おいおいカリン、それはひどくないか? 辺境伯になったとはいえ、ここは実家なんだからいてもいいだろ?」
「マックスもレナもおうとにいるはず」
ん? おうと……王都? なんで? いや、確かに俺もレナも叙爵式で王都には行っていたが、母上やアンナがわざわざカリンに伝えたとは思えない。
「カリン、俺もレナも王都には行ったが、いつもはここにいるんだぞ?」
「ちがう……マックスはおうとで、がくえんに、かよってるはず」
は? 学園? 貴族学園のことか? ……いや、確かに俺もレナも本来なら貴族学園の初等部に通っているはずだが、ゲームのヒロインであるミネッティ伯爵令嬢と婚約しなかった以上、学園に通う意味はない。
誰かが伝えた? ……いや、それはない。だったら……。
「レナ、アンナ。カリンと2人で話がしたいから、2人きりにしてくれるか?」
「わかりました、マックス様」
「え? お兄様?」
「悪いな、埋め合わせはいずれするから」
アンナは混乱していたが、レナは何かを察したのか、直ぐに部屋を出てくれた。
「カリン、もしかして、カリンとして以外にも記憶があるのか?」
「しんじてもらえるか、わからない」
「安心しろ、俺も前世の記憶がある。この世界はゲームの世界で、マックスはその中では、この年齢の頃に貴族学園に通っているはずだ」
「うん! そう!」
マジか。……明らかに知っている言動だったから言ってみたが、本当に俺と同じように前世の記憶があるとは思ってなかった。
いや、よく考えたらミネッティ伯爵令嬢も前世の記憶があるようだったし、文献でも前世の記憶があるとしか考えられない人物も多い。
意外と異世界転生が盛んなのか?
「この世界のことを知っているってことは、前世では成人だったのか」
「ちがう。じょしこうせい」
「ん? この世界は成人向けの美少女ゲームの世界だろ?」
「ちがう。このせかいは、すぴんおふの、まっくすが、しゅやくの、あーるぴーじー」
は? 何言ってるんだ? マックスが主役? マックスは悪役令息であって、主役にはならんぞ?
「俺とカリンでは前世が違うのか?」
「ううん、たぶんおなじ」
カリンが言うには、俺が言っているゲームも存在したらしいのだが、カリンは前世が未成年ということで未プレイ。
どうも、俺の幼なじみたちは俺が死んだ後に会社を退社、クラウドファンディングで開発費を集めて、マックスが主役のスピンオフを作成したらしい。
スピンオフではマックスは王都には行かずにゲルハルディ領で過ごし、辺境伯となるらしい。
「はー、クラウドファンディングねえ。そういう制度があるのは、知ってたけどなぁ」
「くりあはしてないから、えんでぃんぐはわからない」
「ま、そこまで望むのは贅沢ってもんだよ。それに、この世界はゲームを基準にしてるけど、現実だからな。エンディング通りになるとは限らないだろ」
「そう……かも」
ま、俺としては幼なじみたちが、俺が死んだ後も活躍してることが知れただけでも大収穫だけどな。
この世界のエンディングがどうなるのかはわからないが、エンディング後も俺たちの人生は続くわけだし、努力しない理由にはならんだろ。
「で、クラウドファンディングでゲームを作って、そいつらはどうしたんだ?」
「なくなった、なかまの、しりょうをつかって、げーむをつくりつづけてた」
「資料?」
資料ってなんだ? 亡くなった仲間ってのは俺のことだろうけど、資料なんか残してたっけ?
「しっこくのしょうまし、とか……やみにおちた、けいやくしゃ、とか」
しっこくのしょうまし……漆黒の召魔士!? は!? 俺の黒歴史ノートの中身っ!?
なんで!? あれは実家の机の引き出しに封印していたはず!?
「な……何作くらい出してたんだ?」
「? ……20くらい? わたしは、みせいねんだから、なかみは、しらないよ?」
そうだよ! あの黒歴史ノートは同人ゲーム制作時代から、死ぬ直前までのアイディアだから、ほとんどが成人向けだよ!
ああクソ! あいつらめ、こっちが死んだからって勝手に人の黒歴史を掘り起こしやがって!
絶対この世界で天寿を全うした後、来世で会って、とっちめてやらんとな。
「おお、そうだぞ。マックスお兄ちゃんだ」
「はい、レナお姉ちゃんですよ」
「むー、お兄様、お姉さまですよ。カリン」
ゲルハルディ家は三兄妹で、長男が俺ことマックス、長女が色々とあったが現在は貴族としての自覚も芽生えてきたアンナ、次女であり末娘が目の前にいるカリンだ。
「まあまあ、カリンはまだ小さいし舌足らずになっても仕方ないだろ?」
「でも、お兄様。カリンも4歳ですよ?」
「アンナも小さい時はお兄ちゃんって呼んでたけどな?」
「そうですね。私もお姉ちゃんと呼ばれていましたよ?」
「嘘ですっ!」
「いやいや、確か俺が王都から戻ってきたあたりからお兄様って呼ぶようになってなかったか?」
「はい、マックス様が旅に出ていた間にお義母様が教育した結果でしたね」
「……覚えていません」
「ま、カリンはその時のアンナの年齢と同じくらいだけど、成長は人それぞれだからな。長い目で見てやらないとな」
「むー、お兄様とお姉さまが甘やかすのですから、私だけでも厳しくいきますよ。カリン、マックスお兄様、レナお姉さまですわ」
俺に何かあった時のスペアとして教育を受けていたアンナは、カリンも同じように教育を受けないのが不満なのかもな。
ま、あんまり厳しくするようなら注意するけど、貴族令嬢としては必要な教育でもあるから、しばらくは静観しておくかな。
「マックス? ……マックスがなんでここにいるの?」
「おいおいカリン、それはひどくないか? 辺境伯になったとはいえ、ここは実家なんだからいてもいいだろ?」
「マックスもレナもおうとにいるはず」
ん? おうと……王都? なんで? いや、確かに俺もレナも叙爵式で王都には行っていたが、母上やアンナがわざわざカリンに伝えたとは思えない。
「カリン、俺もレナも王都には行ったが、いつもはここにいるんだぞ?」
「ちがう……マックスはおうとで、がくえんに、かよってるはず」
は? 学園? 貴族学園のことか? ……いや、確かに俺もレナも本来なら貴族学園の初等部に通っているはずだが、ゲームのヒロインであるミネッティ伯爵令嬢と婚約しなかった以上、学園に通う意味はない。
誰かが伝えた? ……いや、それはない。だったら……。
「レナ、アンナ。カリンと2人で話がしたいから、2人きりにしてくれるか?」
「わかりました、マックス様」
「え? お兄様?」
「悪いな、埋め合わせはいずれするから」
アンナは混乱していたが、レナは何かを察したのか、直ぐに部屋を出てくれた。
「カリン、もしかして、カリンとして以外にも記憶があるのか?」
「しんじてもらえるか、わからない」
「安心しろ、俺も前世の記憶がある。この世界はゲームの世界で、マックスはその中では、この年齢の頃に貴族学園に通っているはずだ」
「うん! そう!」
マジか。……明らかに知っている言動だったから言ってみたが、本当に俺と同じように前世の記憶があるとは思ってなかった。
いや、よく考えたらミネッティ伯爵令嬢も前世の記憶があるようだったし、文献でも前世の記憶があるとしか考えられない人物も多い。
意外と異世界転生が盛んなのか?
「この世界のことを知っているってことは、前世では成人だったのか」
「ちがう。じょしこうせい」
「ん? この世界は成人向けの美少女ゲームの世界だろ?」
「ちがう。このせかいは、すぴんおふの、まっくすが、しゅやくの、あーるぴーじー」
は? 何言ってるんだ? マックスが主役? マックスは悪役令息であって、主役にはならんぞ?
「俺とカリンでは前世が違うのか?」
「ううん、たぶんおなじ」
カリンが言うには、俺が言っているゲームも存在したらしいのだが、カリンは前世が未成年ということで未プレイ。
どうも、俺の幼なじみたちは俺が死んだ後に会社を退社、クラウドファンディングで開発費を集めて、マックスが主役のスピンオフを作成したらしい。
スピンオフではマックスは王都には行かずにゲルハルディ領で過ごし、辺境伯となるらしい。
「はー、クラウドファンディングねえ。そういう制度があるのは、知ってたけどなぁ」
「くりあはしてないから、えんでぃんぐはわからない」
「ま、そこまで望むのは贅沢ってもんだよ。それに、この世界はゲームを基準にしてるけど、現実だからな。エンディング通りになるとは限らないだろ」
「そう……かも」
ま、俺としては幼なじみたちが、俺が死んだ後も活躍してることが知れただけでも大収穫だけどな。
この世界のエンディングがどうなるのかはわからないが、エンディング後も俺たちの人生は続くわけだし、努力しない理由にはならんだろ。
「で、クラウドファンディングでゲームを作って、そいつらはどうしたんだ?」
「なくなった、なかまの、しりょうをつかって、げーむをつくりつづけてた」
「資料?」
資料ってなんだ? 亡くなった仲間ってのは俺のことだろうけど、資料なんか残してたっけ?
「しっこくのしょうまし、とか……やみにおちた、けいやくしゃ、とか」
しっこくのしょうまし……漆黒の召魔士!? は!? 俺の黒歴史ノートの中身っ!?
なんで!? あれは実家の机の引き出しに封印していたはず!?
「な……何作くらい出してたんだ?」
「? ……20くらい? わたしは、みせいねんだから、なかみは、しらないよ?」
そうだよ! あの黒歴史ノートは同人ゲーム制作時代から、死ぬ直前までのアイディアだから、ほとんどが成人向けだよ!
ああクソ! あいつらめ、こっちが死んだからって勝手に人の黒歴史を掘り起こしやがって!
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